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領主は大変

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第四章

「領主としてね」
「そうです。領民を見捨ててはです」
「領主ではないからね」
「では早馬を送りますか」
「領民達も砦に入れよう」
 そして保護するというのだ。
「確かあまりいない筈だしね」
「では彼等はそうして」
「早馬を送ってそのことを伝えてくれ」
 連絡のことも忘れない。
「そしてね」
「さらにですね」
「すぐに主力を率いて境に向かう」
 伯爵は席を立った。
「そうするよ」
「畏まりました。では」
「留守は弟達に任せる」
 彼には多くの弟や妹達がいる。尚姉も一人いる。
「彼等にね」
「はい、それでは」
「武器は槍にボウガンに」
 武器の話もした。
「いや、弓の方がいいね」
「騎馬ですから足を止めましょう」
 騎兵隊の武器はその機動力と衝撃力だ。その二つをどうにしかなければ勝負にもならないのだ。これは騎兵隊との戦いで彼等も知っていた。
「ですからここは」
「敵の足を止める」
「私に策があります」 
 男爵は確かな声で伯爵に言った。
「知り合いに魔術師がいまして」
「魔術師?」
「はい、幸いこの城にすぐに呼べます」
 こうした話になった。
「近くの森に隠者としていますので」
「そうだったんだ」
「では宜しいでしょうか」
「相手が相手だしね」 
 騎馬民族、彼等にとって不倶戴天の敵ならというのだ。
「それなら」
「はい、それでは」
 こうしてその魔術師も呼び出された。その間に伯爵は男爵と共に境に赴く。魔術師と会ったのはその境だった
 見れば黒い法衣に帽子の老人だ。老人はこう名乗ってきた。
「ハインリヒと申します」
「ハインリヒ博士と呼んで下さい」
 男爵が伯爵にこう紹介する。
「博士号も持っていますので。哲学です」
「そうなのか。では博士」
「はい」
 魔術師は応えてきた。
「この境をですね」
「うん、術でどうにか出来るかな」
「私は攻撃の魔法は使えません」
 魔術師はこのことは断ってきた。
「それでも宜しいですね」
「構わないよ」
 伯爵は魔術師のその言葉をよしとした。
「大事なのは攻められないことだからね」
「だからですね」
「うん、いいかな」
 伯爵は彼にあらためて言った。
「その魔術を使ってくれ」
「わかりました」
 魔術師は伯爵の言葉に頷く、そしてだった。
 彼は早速その境で術を使った。すると。
 そこにあるものが出来た、それは溝だった。
 幅にして十メートルはある溝だった。そしてその溝のところにあった土が土塁となる。それは人の高さ程もある。 
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