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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾

作者:遊佐
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立志の章
  第7話 「俺に任せろ! 必ず助けてやる!」

 
前書き
あー昨日の夜、12話書きあがりました。
現状、一日2話のペースで書いています。
ただ、今後はちょっと遅れそうです。その理由は……まあ、後書きで。

それより、この話でAMスーツの弱点がわかります。
……まあ、原作読んでればわかって当然なんですが。
そう、ラスボスはあの人ですよ。(嘘) 

 




  ―― 劉備 side 北平近郊 ――




「え……?」

 私の前で、鮮血が飛んだ。

「桃香様!」

 愛紗ちゃんの声が酷くゆっくりと聞こえた気がした。

「あ……あ……」

 私はなにか言葉を出そうとするけど、息ができないぐらいに口が動かない。

「お兄ちゃん! お姉ちゃん!」

 鈴々ちゃんの声がしたとき、私はその場に座り込んでしまった。

「……だめじゃないか、桃香」

 盾二さんの声が聞こえる。

「戦えないのに、戦場に……前に出ちゃ。ダメだろ……?」

 血が……血が流れている。

「こういう……危ない目にあうんだから」
「グッ……グゾッ……」

 盾二さんのナイフを持った右手が、上に跳ね上がる。
 私の後ろに迫っていた賊の頭目らしき男が、鎖骨から首にかけて切り裂かれてその場に倒れた。

「まったく……痛いじゃないか」

 盾二さんは、私をかばったときに斬り裂かれた額の血をぬぐう。
 けど、裂かれた傷は結構深いらしく、血が止まらない。

「俺に傷をつけるとは……賊とはいえ褒めてやるよ。まったく」
「お兄ちゃん! けがしているのだ!」

 鈴々ちゃんが心配そうに走ってくる。
 さっき声をあげた愛紗ちゃんは、私が傷ついていないことにほっとしつつ、盾二さんを見る。

「だいぶ血が出ておいでです。少し治療したほうがよろしいかと」
「んー……痛みはないけど、血管切れたかな? 目に血が入りそうだ。誰か布持ってない?」
「お兄ちゃん、鈴々のを使うのだ」
「ありがとう」

 盾二さんは鈴々ちゃんから受け取った布を、額に巻いて止血しました。

「とりあえず周辺の賊はもう戦闘の意思はないだろ。賊の頭目もこいつだったみたいだし、あとは兵たちに掃討と捕縛をお願いしよう。愛紗、頼めるかい?」
「わかりました。お任せを」
「あ、あと白蓮にも伝令だして。賊の頭目始末したからあとよろしく、と」
「はい」
「鈴々も手伝うのだ!」
「ああ。ご主人様、桃香様をお願いします」
「わかった」

 盾二さんは矢継ぎ早に指示を出すと、愛紗ちゃんたちはそれぞれの仕事に向かいました。
 そして私はまだ立つことも、しゃべることもできず、座り込んでいます。

「大丈夫? 桃香?」

 盾二さんが私を覗き込んできます。
 その目は――

(いつもの――盾二さん)

「無事でよかったよ。さすがに振り向いたときに桃香の後ろに賊がいたのを見たときは、背筋が凍るかと思った」
「……っ、めんなさい」

 ようやく出た言葉に自分でうなだれてしまう。
 私は……なにしてんだろう。
 盾二さんは、みんなのために戦い、殺された邑の人たちの敵を討っていたのに。
 盾二さんのやっていたことが非道だったから? ちがう。
 盾二さんが怖かったから? それもある、けどちがう。
 盾二さんが――

「……まるで、別人みたいだった」
「ん?」
「ご主人様が、まるで別の人みたいで……」
「んー、あー……戦っているときの俺って怖い?」
「……(コクン)」
「そっかぁ」

 盾二さんが苦笑しながら私の頭に、ポンっと手を置いた。

「ごめんな。怖がらせて……」
「……っ!」

 ちがう、ちがうの!

「ちがうの!」
「?」
「怖かったけど……怖かったけど! でも、違うの……」
「……えーと?」

 ご主人様が戸惑った声を上げる。
 ……なんだろう。わかんない。でもモヤモヤして……やだ、この感じ。

「ごめんなさい……自分でもよくわかんない」
「……うん、そっか」

 盾二さんが、ふっと息を吐いて私の頭をなでる。
 なんでだろう。
 心地よさを感じながら涙があふれた。




   ―― 趙雲 side ――




 不覚――
 まさに不覚だった。
 側面を突くつもりが、敵の一部隊に引きずられてしまった。
 すぐに撃破したとはいえ、その分白蓮殿に負担をかけたことは否めない。
 だが、そんな内心の自虐心をよそに、白蓮殿の明るい声が響いた。

「いやあ、完全勝利、だったな! 良かった良かった!」

 白蓮殿の笑い声に……自分が情けなくなる。
 一時的とはいえ、遊兵になってしまったのだ。
 叱責を受けて良いはずなのに、白蓮殿はまったく責めてこない。
 私がもっと早く敵の意図に気づいていれば……白蓮殿の本隊が苦戦することもなかったはずだ。

「やったね、白蓮ちゃん! さっすが~!」
「いやいや、桃香や星たちの力があってこそだよ……ありがとう」
「えへへ、私は何もしてないけどね♪」

 劉備殿……いや、桃香殿は努めて元気に振舞っている。
 先程聞いたが、あの盾二殿が桃香殿をかばってけがをしたらしい。
 大事無いそうだが、額の血がなかなか止まらなかった様子で今は休まれている。

「それにしても、賊が増えたな……」

 白蓮殿の呟きに、私は神妙に頷く。

「確かに。最近の雰囲気、なにやらおかしなものを感じます」
「うーん……確かに賊は増えたけど、おかしな雰囲気か。どう思う、桃香?」
「そうだねぇ……私もなにか変な感じはするかな」
「そっか……のんびり屋の桃香が感じているってのはよほどなんだな」
「あーっ、ひどぉぉい! 私、そんなにのんびりしてないもん!」
「ぷぷっ、そう思ってないのはお姉ちゃんだけなのだ」

 いつの間に現れた、鈴々よ。

「むー、鈴々ちゃんまでそんな事いって~! みんなひどぉい!」
「「(にゃ)ははは」」

 そんな笑い話に華が咲く三人。しかし私は空を仰ぎ、目を細める。

(――いずれ、動乱が来る)

 予感めいたものが私の脳裏にこびりついて離れない。

(その時私は――主を得ているのだろうか?)

 自らが求める主……その主の姿がなぜか一人の男の顔に――

「そういえば、盾二がけがしたんだって?」
「!」

 私は、酷くうろたえた自分に疑問を抱きつつ、それを表に出さないように顔を引き締めた。

「うん……私を庇ってね。ご主人様に迷惑かけちゃった」
「そっか。まあ大事無いならいいよ。それにしても……盾二、すごく強かったんだな」

 そうだ。聞いた話ではたった一人で賊のほとんどを倒したらしい。
 直接殺しただけでも短時間で実に千人を超えた、と聞いている。

「うん……ご主人様、自分は守勢は得意だけど、攻勢は得意じゃないから愛紗ちゃんたちに任せる、って言ってね。自分は一人で突撃して、ほとんどの賊の人たちを倒しちゃったの」
「……確か、盾二って自分の武器は腰の短刀だけだったよな? それだけで千人も?」
「うん。何でも『あーまーどまっするすーつ』っていう服のおかげで、剣も矢も通らないんだって」
「……そりゃすごいな」

 なんと……剣も矢も通らない服? そんなものがあれば無敵ではないか。

「うん。まあ頭は無防備だからそこ狙われたらけがしちゃうけど……私を庇ったときも額を切られちゃったし。でも、一人で賊を倒したのは本当だよ」
「ああ……あの遺体はまさしく短刀で『斬られた』か『殴って殺された』ってのが多かったけど……まさか素手で殴っただけで、頭を砕くほどの力とはな」

 千人を一人で殺す。まさしく『一騎当千』。しかも、模擬戦のときのように軍略にも優れている。文武共にこれほど見事とは……

(む? 私は何を考えているのだ?)

 一瞬浮かんだ考えが何なのか、自分でもわからずに思い出そうとするが……

「とにかく、盾二のけがの手当てもある。賊の捕縛と遺体の処理が終わったら都に戻るぞ!」

 白蓮殿の宣言に、その考えは霧散してしまった。




   ―― 盾二 side 北平 ――




 賊の討伐後、俺たちは都に戻ってきた。
 隊は解散し、今はそれぞれ宛がわれた部屋で休んでいる。
 すでに日が暮れ、夜の帳が下りる頃。
 俺は夕食を食べ、膨らんだ腹に満足しつつ額に手を当てる。
 額の傷は結構深かったが、何とか止血も済み今もバンダナのように布を巻いている。

(ヘッドガードがあれば、こんな傷もなかったんだがな)

 向こうの世界で、一刀を担いで逃げるときに落としてきてしまったオリハルコン製のヘッドガード。
 あれがあればこんな傷も受けなくて済んだのだが……

(言っても詮無いことか。ぶっちゃけ修行不足ってことだな。俺もまだまだ……)

 これが先輩たちに知れたら情けない、とかバッカでぇ、とかいわれそうだ。
 特に大槻あたりにはニヤニヤと、嘲笑されそうだ。
 アイツ、普段スプリガンのトップとセカンドの先輩二人に散々こき使われているから、俺と一刀を後輩だといって先輩風吹かすことがある。
 確かに俺たちが今着ているAMスーツは、アイツのデータを元に統合試作型として調整されたものだ。
 だからといって同世代の奴に先輩風吹かされてもな……下手したらこっちが年上の可能性もあるのに。

(そういやムーンライトソードを賭けて、模擬戦やろうっていってたんだがな)

 月光剣――大槻がアーカム研究所から勝手に持ち出して、いつの間にか私物化した遺物(オーパーツ)
 確か、ティアさんに散々説教されたけど先輩たちとの賭けに勝ったから、という理由で自分のものにしたと聞いていたが。

(一刀が欲しがってたんだがなあ……高周波振動ブレードだと居合ができないってぼやいていたし)

 俺の近接格闘はナイフとCQCだし、基本守勢だから遠距離攻撃の銃が主体だしな。
 とはいえ……こっちの世界に銃は持ってきていない。武装は携帯していたナイフのみ。全部あのときに置いてきてしまった。

(武器、か……当面はナイフでいいか。どの道、こっちでAMスーツを傷つけられるのはほぼいないだろうし)

 AMスーツの物理防御力は、この世界のどんなものより優れている。それこそ岩に潰されても動けなくはなるが圧死することはないだろう……十トンぐらいまでは。
 さすがにそれを超える衝撃だとAMスーツのパワーフィールドでも相殺できない。
 それに連続で強い衝撃を喰らえば、スーツはともかく中身が持たない。パワーフィールドとて万能ではないのだ。

(何より怖いのが……ここが中国ってことなんだよな)

 そう。AMスーツが最も恐れる技……浸透撃。
 AMスーツのパワーフィールドを無効化し、身体の内部に打撃を与えるAMスーツ殺しの技。
 かつて仙人といわれ、スプリガン最強を誇った(おぼろ)という男。その男にかかればAMスーツとてただの服でしかない。

(中国拳法の達人ならば浸透撃の使い手もいるはず……用心しないと本気でやられる)

 先輩のツテで朧と模擬戦をしたときは、一刀で三分。俺で五分ともたなかった。
 硬気功も怖いが、軽気功も怖い……正直、あれはトラウマだ。
 そんな達人がこの世界にも……いや、英雄豪傑が数多くいるこの時代ならば、確実に存在すると考えるべきだ。

(味方ならともかく……敵になったらやっかいなんてもんじゃないな。対策は考えておかないと……)

 そんな物思いに耽っていた時だった。

「失礼します。お休みのところ申し訳ありません。北郷様は起きていらっしゃいますか?」

 扉の向こうで誰かの声がする。

「ああ、起きていますよ……どなた?」

 俺は椅子から立ち上がり、扉を開ける。
 そこには侍女が深々とお辞儀をしていた。

「お休みのところ、申し訳ありません。実は北郷様に面会を求める方がいらっしゃったのですが……」
「面会? こんな時間に?」
「はい……一応、明日にしてはとお伝えしたのですが、急用だと……」
「ふむ……誰?」
「ご本人は『華佗』とおっしゃっていましたが……」
「!!」

 俺は、衝撃に目を見開く。

「す、すぐに逢わせてくれ! どこにいる!?」
「あ、は、はい……こちらに」

 侍女に案内され、逸る気持ちを抑えながら客間に着く。
 そこには茶を飲みつつ座っている華佗がいた。

「華佗!」
「おお、北郷。先日以来だ。夜分すまないな」
「それはかまわない……なにかわかったのか?」
「うむ……実はちょっとした情報があってな」
「それは、一刀の……?」
「ああ」

 華佗の言葉に期待が膨らむ。

「目覚めさせる方法がわかったのか!?」
「いや、確実ではないんだが……まずは落ち着いて聞いてくれ」

 逸る俺を嗜めてくる。
 わかっている。焦っては意味がない。

「実は、あれからすぐに仲間の……五斗米道の情報網を使って彼のような症状を調べようとしたんだが。その際に妙な伝言があってな」
「妙な伝言……?」
「ああ、なんでも仲間が『貂蝉』という人物から伝言を頼まれたらしい。北郷という名前の人間が五斗米道に接触してくるだろうから、もし困っているようなら本人を連れて『ある場所』に華佗と共にくるように伝えて欲しい、と」
「貂蝉……? 誰だ?」
「わからん。俺も初めて聞いた名前だ。ただ、連絡を受けた人からは容姿を見て驚くな、ということだけは聞いている」
「……そうか」

 貂蝉、か。そんな英雄はいなかったような気がするが……くそ、一刀ならわかっただろうに。

「で、どこに連れてこい、と?」
「それがちょっと問題でな……五斗米道の総本山である、『鶴鳴山』というところがある。そこは代々、五斗米道の者しか入れない場所なんだが……なぜかそこで待つ、ということなんだ」
「……つまり、俺は一緒には行けない、ということか?」
「ああ……申し訳ないがそうなる。一応、場所も秘匿することになっているから道中の同行も認められない」

 そんな場所に一刀を預けねばならんのか……

「……そこにいけば一刀は治る、のか?」
「わからん、としかいえん。ただ、総本山には俺もまだ知らない治療法が眠っている。長老の中には俺の及びもつかない力を持っている人もいる。少なくともこのまま待つよりは総本山に連れて行くほうがいいのは確かだ」
「……そうか」
「だが、あんたが不安なのもよくわかる。だから無理強いはしない。俺が総本山にいって、その方法を調べてくるという手もある……時間はかかると思うが」

 華佗が申し訳なさそうに言ってくる。
 だが、俺の心は決まっていた。

「いや、貴方は仁のある医者だ。俺は貴方を信じている。ゆえに、一刀を託す。どうか……どうか一刀を救ってやってくれ」

 俺はその場に膝を着き、床に頭をこすり付けて土下座した。
 
「……おう、応っ! お前の信頼、確かに受け取った! 俺も俺の命と誇りにかけて、かならず彼を治してみせる!」

 そう宣言し、こちらの手を取る。

「俺に任せろ! 必ず助けてやる!」
「ありがとう……どうか、よろしく頼む」

 俺はその言葉に涙し――

 その夜、一刀は華佗と共に旅立った。
 
 

 
後書き
で、その理由なのですが。
真・恋姫の蜀ルートのチェックのために、再度イチからやり直してるのですが……
蜀ルートのライターに一言言いたい。細かいところはしょりすぎてつまらないんだよ!

なんというか大味なのですよ。黄巾のところで半年後、戦い終わりましたってふ ざ け ん な!
魏や呉に比べとんでもなく大味です。たぶん容量の関係で削ったとか言い分もあるかもしれませんが、プレイする側にはそんなの関係ねぇ、ですよね。

それに変なところで専門用語バリバリなのに、必要なところで省いたり考えが浅かったりして……
なので、原作に沿ってやるのは一時やめて、独自ルートを開設しました。

とはいえそのままずっとかどうかは……プロットは決まってますので、お楽しみに。 
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