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ソードアート・オンラインーツインズー

作者:相宮心
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SAO編-白百合の刃-
  SAO37-六人のユニークスキル使い

  今年も熱い夏がやって来た。こんな日は女の子と海辺でキャッキャッウフフなことをしたり、川辺で夜空に咲く花火を見たり、どこか美味しい店で冷やし中華を食べに行ったり、山に行って自然を満喫したかったのに……。
私は……私達は未だにアインクラッドと言う世界から脱出しておらず、今日もゲームクリアを目指して攻略中。そんな時にだよ。
 謎のメールが私に送らせてきたのだ。

「ここが……裏五十五層『ザトルース』か」

 私は最前線から離れてやって来たのは、のどかで田舎っぽくて古くさい家が立ち並ぶ街、裏五十五層『ザトルース』限られたプレイヤーしか足を踏み入れることが出来ない街だった。
 聞いた話によると、裏層は選抜された少人数にメールを送らせて、裏層にある攻略ダンジョンを一週間以内に攻略することができる権利が与えられる。
 と言うのも、裏層は言わばボーナスゲームのようなものであり、選抜されたプレイヤーは期限内に裏層を攻略すればお得なボーナスが与える。我々攻略組にとっては嬉しい限りの特典であると同時に、みんなに影響させる重大なクエストでもある。まだ誰も失敗したことはないけど、期限内に攻略出来なければペナルティとして、最前線から五層分やり直される。今となっては誰も得しないことになってしまうので、何があっても期限内に攻略をしなければならない。
 その役目に選ばれた私を含めて六人の選抜メンバー。恐らくは全員、攻略組の中から選ばれたはず……そうでなきゃ六人で攻略とか難しい気がする。
 あと、何故かは知らないけど期限で裏層にいる間は何故かHNが二つ名、私の場合は『白の剣士』になっている。
 それと自分の外見は、本来、ソードアート・オンラインで使用するアバターに変わっていた。と言っても、アバターも自分に似せているから対して変わらないかも。
 選抜されたプレイヤーは協力が不可欠なために、予めギルドホームのような家で共同生活する、言わばルームシェアになる。

「ここか…………」

 街と言うか、村に一つだけお洒落で白いレンガで積立てられた家の前へとたどり着いた。扉の前に立っていても仕方ないので、引き開けて中へと足を踏み入れた。

「うわぁ、広っ」

 思わず口から出てしまうくらいのリビングとダイニングの広さ。それぞれの異なる彩色のドアはおそらく寝室だろう。テレビで見た、いつかはあんな豪華な家に住みたい気持ちを表したアジアンテイスト模様の部屋だった。
 彩色異なる扉にノックしたが返答はないので、私が一番乗りか。
 とりあえず、真ん中に置いてある長方形の形をした白いテーブルの隣にある小さなソファーへ座って待機する。

「まさか、もう攻略とかしてない……よね?」

 メールには渡されたから来るようなことを書いてあったけど、このメールは恐らく、人の用事とか関係なく送られるだろう。
 遅い人もいれば早い人もいる。私が遅すぎて待ちきれずに行ってしまった可能性もある。
 そんな風に思っていたら、二人目の来客が訪れた。

「あら? 白銀の美人さんが一番乗りね」

 その人は背が高くてモデルのようなスタイル、金髪のロングヘアの色気のある保健室にいたら嬉しい先生みたいな女性プレイヤー。普通ならば反対側の小さな黒いソファーに座るかと思ったら、大きなソファーの端、私の隣へと座ってきた。

「真面目って……真面目じゃないですよ。あと白銀とか言いますが、本来使うアバターですから」
「わかっている。ただそのツッコミが欲しかっただけよ」

 フフッと彼女?は意地悪そうに笑って言う。

「あたしは『狙撃者』ってつけられているけど、面倒くさいから好きなように呼んでいいわよ」
「じゃあ……狙撃者で」
「つまらない人ね」
「他にどう呼べと……」

 いいですよ、つまんなくて。そこでマリコとかエリカとか呼ぶとかおかしい人になるでしょうよ。

「私は『白の剣士』です」
「白の剣士……ふ~ん、白の剣士ねぇ……」

 狙撃者は私の体を舐め回すようにジロジロに見つめては、左手を顎に添えて言う。

「白の剣士って……あの“白の剣士”でいいの?」
「あ、あのとは?」
「白の剣士って……前に“狂戦士”と呼ばれる人よりも恐れられた『白の死神』だったらしいけど、それは貴女なのかしらね?」

 白の死神、か……。確かに私はそう呼ばれていたわね。今やそう呼ぶ人はいない……とは思う。最近はシリカの友達であるピナの件以来呼ばれてはいない気がする。今は兄であるキリトが『黒の剣士』と呼ばれる対照として、私は『白の剣士』と呼ぶ人もいる。私達が兄妹だって知っている人に関しては特に。
 なら、この人は少なからず私を知っている人なのか? あるいは噂だけは知っているだけなのか。まぁ、私としてはどちらでもいい。今の私はキリカではなく『白の剣士』だ。 

「だったら、私ではなくて『白の剣士』と二つ名で呼ばれているプレイヤーに会って聞いたらいいんじゃないですか?」

 遠回しな言い方をすると、彼女は何も疑問に思わないまま「じゃあ、そうするわね」と軽い感じで受け止めた。

「それにしても暇よね~。しりとりでもしない?」

 それどころか、全然関係ないことを口にしていた。

「別いいですけど……」

 断る理由もないし、暇つぶしにはなるかな。

「じゃあ、あたしから。サル」
「る、る……ルビー」
「ビル」
「またルか、ルアー」
「アイドル」
「ルばっかりつけないでよ!」
「あら、最後にルを連続で使って言うルールはあるのかしら?」
「いや、ないけども……ルーレット」
「トキ」
「やっとル以外だ……キャタツ」
「ツル」
「またルかよ!」

 その後も、狙撃者のルばっかりにさせるしりとりは続いた。わかっていたことだけど、なんか納得し切れない。

「こんなにも疲れるしりとりは初めてだ……」
「あら、一緒忘れられないしりとりになったわね」

 ドヤ顔ばりに彼女はニヤッと勝利者の微笑みを見せつけられた。もう、しばらくしりとりはいいとして、玄関の扉からリビングに向かう曲がり角に視線を変えて言い放った。

「もう、出てきたらどうなの?」
「ひゃ、ひゃい!」

 曲がり角から出て近寄ってきたのは緑色のおさげに、おとなしめで地味なアバター。防具はガッチリとしていて、黒い西洋のような甲冑を着用していた。

「あ、あにゅ…………もりゅ、盛り上がっていたにょで、邪魔しちゃいけないと思いまちゅて、なみゅなみゃはいれまじぇんでちゅじゃ!」
「とりあえず落ち着いたらどうかな!?」

 伝わったけど、あまりにも噛みまくるから心配してしまった。
 しかし、第三者から見れば盛り上がっていたのだろうか? こっちは狙撃者にからかわれ、遊ばれていただけで盛り上がりは感じなかった。

「とりあえず入ってきたら?」
「は、はい! 失礼します……っ!」

 おとなしめの彼女ははっきりと新人さんのやる気のあいさつのように言い、狙撃者が座っているソファーの反対側へと座った。

「あ、わたし。イ……じゃなくて『鋼の騎士』と申します」
「あたしは狙撃者。こっちが白の剣士。気軽に呼んで構わないわ」
「あ、はいゆい。わかりまちゅあた、その……あっと、えっと、そ、その、なんというか、ですね、すみませんが、しりとり上手なんです!?」

 狙撃者は気軽に呼んでとはいうかが、とても気軽に話しているとは思えない。生真面目な性格なのか、緊張しいなのか、あがり症なのか、とりあえず狙撃者みたいな人じゃなくて良かった。気軽に読んでって言った本人は何も気にしてない様子だ。むしろ新鮮な反応を見て面白がっている。

「しりとりなんてただの遊びだよ。暇つぶしのね」

 狙撃者はこっちに振り返ってウインクした。なんだろう、上手く操られているのがイラッとするが……堪えよう。うん、ケンカを売っちゃだめだ。

「あ、あの……あたしなんがいていいんでしょうか?」

 ぽつりと口にする鋼の騎士に対して、狙撃者はすぐに反応した。

「いや、いてくれないと困るよ。この人と相手なんか疲れるし」
「酷いよね~」

 まるでギャルが同意するように指を回して口にした。絶対に酷いと思ってないでしょ。

「あ、いえ。その、わたしが皆さんと一緒に裏層を攻略していいのでしょうか?」
「どうして? 呼ばれたからには、それなりの実力を持っているんでしょ?」

 私がそう言うと鋼の騎士はブルブルと首を振って、不安そうに発言した。

「わたしなんか……ただ守るだけしか出来ない臆病者なんです。ミスも結構多いし……」
「だったら、帰ったらどうなんだ?」

 私が出した声ではない。近くにいる狙撃者の声でもない。女性特有のアルト声をたどって視線を向けると、その声の持ち主はこちらへと睨むように見つめていた。

「ヒッ」

 鋼の騎士は突然やってきた彼女を見て、狙撃者の後ろに隠れて怯えた。おとなしい子には無理もないかな……新たにやって来た人は、赤色の長い髪をしていたけど雰囲気的には男っぽくて、外見はギャルとレディースを合わせたような軽装。近寄ったら殴りそうな雰囲気を感じ取るような威圧。
そして鋼の騎士が怯える最大の理由が……。

「帰りたければ帰ればいいじゃんかよ」
「ご、ごめ……」
「あぁ!? 聞こえねんだよ!」
「ごめ、ごみゃ、ご、ごごごごごごごご……」
「何言ってんのかわかんねぇよ!」
 
 性格での相性の悪さ。まるで蛇と小鳥のように赤髪の人は強気かつ威圧的な声を出し、自然と鋼の騎士は声量も小さくなり、怯えていた。
 赤髪の彼女は威圧した声を発しながら、でかいソファーの反対側で|胡座((あぐら))を組んで座った。

「ちっ、弱そうな奴らばっかだな」

 こちらを見てすぐにその台詞を吐く彼女に、私の中の変なスイッチがONになり、挑発をしてしまう。

「見た目で判断とかないわー。マジないわー」
「あぁ?」

 口の悪い彼女は、ピクッと片方の眉毛が動き、こちらへ睨むような視線を送って挑発に乗ってきた。

「てめぇ…………なんか言ったよな?」
「いや、だってさ…………見た目で判断するなって、常識なことでしょ?」
「弱っちぃ奴は姿形でもわかるんだよ、アホ」

 見た目で判断したら駄目なモンスターなんてウジャウジャいるって言うのに……。見た目がスライムな奴でも結構えぐい奴もいるってこと話せば認識とか変わるのかな?

「今度はガキっぽい人が入って来たかー。すげー頼りになるなー」

 すると今度は、隣に座っている狙撃者が棒読みっぽく口にした。ニヤニヤとわざとらしく笑って、明らかに自分に挑発していた。

「あぁ? 誰がガキっぽいだ?」

 視線は狙撃者に移して睨んでいたが、鋼の騎士みたいに怯えることはない。むしろ笑っていた。

「いや~ね。性格じゃなくて外見を言ったのよ~」
「見た目で判断してんじゃねぇぞ、コラ!」
「あら、さっき見た目する人が見た目で判断しちゃいけないの? クスクス」
「て、てめぇ……」

 狙撃者はクスクスとわざとらしく笑っていた。威圧を無駄に放つ赤髪の人でも、狙撃者は軽くあしらい、操っている。
 まぁでも。挑発したのには変わりないので、狙撃者の煽りに赤髪は黙っていられずに怒鳴るよう発した。

「このやろう……舐めたマネしてんじゃねぇぞ! 痛めつけるぞ!」
「あら、舐めても美味しくないわよ?」
「その舐めるじゃねぇぞ! ふざけているのか!?」
「ふざけている? うん、ふざけちゃってる」
「堂々と言ってんじゃねぇぞオラ! ぶっ潰すぞ!」
「誰を?」
「おめぇに言ってんだよ! 一々聞くなよ! 悟れよ!」

 赤髪は狙撃者に掴みかかる。あ、ちょっとヤバいかも。殴り合いになって無法地帯になってしまったらこれからのことで影響が出る。流石に止めないとまずい。

「お、二人さん。お、おおおおちゅついて……ご、ごめんなちゃい!」
「謝るのか、抑えたいのか、噛むのかどれなんだよ!」

 あらまぁ、なんと言うことでしょう。慣れ合いを込まない一匹狼な不良少女がツッコミ役として変わられました。ついでに空気が和らいだ。

「クスッ」
「あ、てめぇ! 笑ってんじゃねぇぞ!」
「アワワワワワワ、ワワ、ワワワワワワです!」
「もはや意味わかんねぇよ!」

 赤髪の彼女は。怯えていた鋼の騎士が自分の印象を変わったことを気にしだしたのか、立ち上がって、右足をテーブルに置いて私達に宣言した。

「てめぇらとはな、ぜっ――――たいに、仲良くならねぇからな!!」

 赤髪がそう宣言してから数分後。

「たく、一々怯えてんじゃねよ。あたしなんかより悪い奴らなんていっぱいいるんだぞ。この狙撃者とか言う奴とかな!」
「あら、鋼の騎士は“赤の戦士”の威圧した声に怯えたんだから、言葉遣いをよくしたほうがいいわよ。本当はきっと可愛いくせに」
「わ、わたしもそう思います。だって、同じ女の子ですから」
「今のオレはアバターだ! 勝手に女だと決めつけてんじゃねぇ!」

すっかり打ち解けて、普通に会話するようになりました。しかも怯えていた鋼の騎士が、ちゃんと喋るようになっている。
敵対というわけではないけど、見下していた相手を結局は心配するあたり、本来は優しいんだろうな。カーソルもグリーンのままだし、性格と釣り合っていないかもね。いや、性格を表しているかのようにオレンジが来ても困るんだけど……。
 それにしても、赤の戦士って“あの赤の戦士”なのかな……まぁ、いいや。興味ないし。

「あと二人かぁ……」
「たく、おっせよなぁ。別の層で暴れまくっているのか?」

 ため息混じりに赤の戦士は口にする。
 会ってもいないし、どんな人なのかは知らないけど、はっきり言える。

「いや、それはないから」
「あるかもしねぇだろ!」
「ねぇよ」

 そんな人が、危険度がある裏層攻略に招待されるとは思えない。人任せにできるほど、裏層の攻略は簡単でないことは耳にしているはずだ。それに期限内に攻略できなければ、誰も得にはならない五層分やりなおすことになることはわかっているはずだ。できるだけ最初は慎重に行動してしまうはずだ。推測になってしまうけど、ソロでクリアするとは思えない。

「あ、あるかもしれませんよ?」
「鋼の騎士さん、無理に愛想笑いでフォローしなくてもいいんだよ?」
「ほら、こう言ってんだぞ!」
「おい、無理に愛想笑いしていることに気がつけよ、なんでその気になるんだよ」

その後、いつまでも来ない残りのプレイヤーに苛立った赤の戦士は、いないことをいいことにこんなことを大声で宣言をし始めた。 

「おい、残りの奴ら。オレはな、無駄に暴れるお前達とは違って、超強いんだ!! 弱いあんたらに変わってあたしに任せやがれ!! 裏層から逃げても安心して別のところへ暴れていろ!! わかったかコラ!!」

口にはしないが、まるでどこかのガキ大将が言いそうな台詞に呆れてしまう。元気なことはいいけど、もうちょっとなんかないのかと、思ったその刹那。

「無駄にバカ丸出しで騒いでいる人に任される信頼度なんて」

 氷のように冷たくて、

「なに一つないわよ。バカな愚か者」

 透き通った声が綺麗に届いた。

「あぁ?」

 声の主に視線を向けると、長い黒髪をポニーテールで、黒と蒼を基調とした身軽な和装、大人っぽい大和撫子のアバター。そして、ここに現れたと言うことは……。

「てめぇは誰だ!?」
「ここに来たんだから私がどういう人かなんて解り切ったことでしょ。やっぱり、バカのバカでバカが似合うバカね」
「なんだとテメェ!! バカバカカバ言いやがって、ぶっ殺すぞ!」

 黒髪の女性プレイヤーはすげぇストレートと言うか、冷たいと言うかクールと言うか、毒舌って言うか。全体的に手厳しい存在だった。エックスとは違う冷たい威圧。これまた私達とは違うようなタイプの人がやってきたな。

「貴方の発言はガキ丸出しね。その程度の頭だと、かけ算もできなさそうね」
「なんだとオラ! かけ算くらい出来るに決まってるんだろっ!!」
「それもそうだったわね。」

 赤の戦士がキレているのを適当に足らいつつ、私が座っている反対のソファーへ座った。

「ちっ、気に食わねぇな」

 急に冷めた赤の戦士は、毒舌な彼女に舌打ちをして元の位置へ戻った。

「ねぇ、冷たい彼女さん」

 狙撃者は興味津々に笑みを浮かべて、毒舌な彼女を見つめていた。

「何?」
「あたしは狙撃者。銀髪が白の剣士で、大人しい子が鋼の騎士、そんで怒りっぽいのが赤の戦士よ」
「おい、誰が怒りっぽいんだよ! あたしはこいつが気にくわないだけだ!」

 視線は狙撃者に送り、毒舌の彼女に指して吠えるように叫んだ。悪いけど私から見てもあんたは怒りっぽいよ。

「こんなバカに私は好かれたくないわ」
「なんだとオラ!!」
「まぁまぁ、落ち着きなさいって」

 狙撃者が(なだ)めてくれたが、どこが面白そうに見物して、まるでハブとマングースのショーを観賞しているかのように楽しんでいた。
 普通なら空気が悪くなるに決まっている。赤の戦士は怒っているし、ポニテの大和撫子は容赦なく煽っている。でも思いのほか気まずい感じにはならないのはなんでだろう……。狙撃者がそういう風に言葉で少しでも変えているのかな? つか、そんなことができるのか?

「あたし達の名前を教えたから、今度は貴女の番よ。名前を言ってくれないかしら?
「漆黒」
「漆黒?」

 私はその言葉に何かが引っ掛かった。多分他のみんなも同じ気持ちだ。

「漆黒って……あの漆黒でいいのかしら?」
「さぁ? 私はそう名乗った覚えはないわ」

 狙撃者の問いかけに漆黒というプレイヤーは軽くあしらう。でも、狙撃者を見る限り、ほぼ特定しているようにも見えた。顔に迷いがなく余裕がある。
 もしかしたら私の知っている“漆黒”は、今ここにいる“漆黒”と同じなのかもしれない。

「えっと……その……漆黒さんは、KoBに裏切ったって言うのは本当なのですか?」

 小さくビクビク怯えながら口にする鋼の騎士に対して、漆黒は淡々と口にした。やっぱりみんなが思っている漆黒はKoB、血聖騎士団に所属している彼女のことだ。
 鋼の騎士の問いかけに、漆黒は否定することなく口にする。

「抜けただけよ」
「噂つけオラ! 脱退しただけなのになんで裏切り者って呼ばれるんだよ!」

 赤の戦士の言うことはもっともだった。普通に一つのギルトを抜けただけで裏切り者になるのだろうか? 少なくとも私だったら裏切り者とは呼ばない……気がする。
 それを今ここで訊いてもいいんだろうか。誰にでも触れられたくない過去、踏み込んで欲しくない領域があるはずだ。漆黒も何かを抱えているのなら……。

「漆黒、今言ったことは本当?」

 私はこれ以上なにも聞かないことにしようとしていた矢先に、狙撃者は普通に漆黒を訊ねた。

「嘘つく意味あるの?」
「あるじゃない。自分の弱さを隠すために、嘘とかね……」

 片目を閉じ、手フレームを作って漆黒を覗かす狙撃者。カメラのように写し出そうと言うのか? 外見ではなくて、漆黒の心を……。

「別にどうだっていいよ。こいつが裏切り者か裏切り者じゃないかだなんて、さっさとボーナスゲームクリアするぞ」」

 敵視している赤の戦士が発言したことによって、漆黒が血聖騎士団を裏切った話は不思議と広がらずに終わった。多分、エックスはもうそれ以上訊く気はなければ興味ないのと、私も鋼の騎士もこれ以上は訊いてはいけない気がしたから話がこれ以上広がることはなかったんだと思う。広げられそうな狙撃者もまったく気にすることもなく興味が持っているのかもわかんないが、追及することはなかった。
 そう思うと、この中で一番わからないのは狙撃者ね……。

「あら、皆さんお集まりのようで……」

 最後の一人が登場して、選ばれた個性派揃いの六人の女性プレイヤーが集結。

「み、皆さん揃いましたね……」

 おとなしくて唯一まともそうな『鋼の騎士』

「女の子だけだと、まるで修学旅行の夜の時間な気分ね」

 掴みどころのない、人の心を写そうとする『狙撃者』

「なんだよ、女だけか。ひ弱な男子共よりは増か」

 口調など、過去の私に似ている『赤の戦士』

「…………」

 クールかつ毒舌、噂の有名人『漆黒』

 そして、『白の剣士』をつけられた私と、

「皆さん初めまして、剛腕の剛にお姫様の姫で『剛姫(ごうき)』です。一週間よろしく行きましょう」

 一目見てこの人はリーダーシップを発揮しそうな、カリスマ性を持つ印象を与えた―『剛姫』
 実力はわからない。そして難易度もわからないなか、私達は一週間共に暮らして協力していかなければならない。
 この時は、まだ思いもしなかった。この出来事のおかげで今があるということを、この出来事が未来に繋がるとは思いもしなかった。
 ここに――――六人の“ユニークスキル”の使い手が集結した。 
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