| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

DQ4TS 導く光の物語(旧題:混沌に導かれし者たち) 一~四章

作者:あさつき
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

三章 トルネコおばさん
  3-03脱獄の片棒を担がされました

「さあ!出て行きなさい!」
「あらやだ、ごめんなさいね。ちょっと迷っちゃっただけなのよ。すぐに出て行きますから。」

 そんな言い方しなくてもいいのにねえ、でもお仕事だものね、大変ねえ。
 などと思いつつ、素直に出て行こうとすると、当の王子様に呼び止められる。

「ボクはリック。この国の王子です。あなたを旅の商人と見込んで頼みたいのですが……。」

「あらあら、旅の商人だなんて。そんな大層なものじゃ、ないんですのよ。」

「詳しい話は、夜に武器屋の裏で……。」

 王子様と夜に待ち合わせだなんて、ちょっとドキドキしちゃうわね、でも帰らないといけないし、断らないとね。
 と思いつつ、口を開こうとすると、今度こそ女性に追い出された。

「王子様!そのような下賤(げせん)の者と話してはいけません!さあ!出て行きなさい!」


 断りそびれちゃったわね、夜になったらキメラの翼でも使ってくるしかないかしら、せっかく稼いだのに勿体ないわ。
 などと思いつつ、うろうろしていると、今度は牢屋に紛れこんでしまった。

「あら、あれはトム爺さんのとこの。なんて言ったかしら、家出した息子さん。」

 牢番の目を盗み、近付いて話しかける。

「ちょっとちょっと。あなたこんなところで、何やってるのよ。お父さん、心配してるわよ。」
「あっ、トルネコさん!ちょっと、へましちまって」
「へまって何よ。まるで盗みでもしたみたいに、って。あらやだ。まさか。」
「うっ……。は、反省してるよ。つくづく思ったんだ、悪いことはまっぴらだって」
「当たり前でしょう!そんなのは、やる前に思うことよ!お父さん悲しむわよ、息子さんが無事帰って来るように、毎日教会でお祈りしてるのに。あたしとポポロとでかわりばんこに押してあげて、弱った足腰で頑張って」
「だ、だから反省してるって。あんた商人だったよな。だったらキメラの翼を買ってきておくれよ。」
「あなた、あたしに脱獄の片棒を担げっていうの!?嫌よ、あたしまで捕まっちゃうじゃない!あたしには、大事な夫と子供がいるんだから!」
「頼む、頼むよ!この牢獄厳しくってさ、いつ出られるともわからないんだ。このままじゃ、親の死に目にも会えないよ!」
「……わかったわよ。トム爺さんにはお世話になってるし、息子さんが帰らないと悲しむだろうし。ほら、これ。」
「ひゃー、ありがてえ!村に帰ったら、今度こそ真面目に働くことにするよ。じゃあ、一足先に村に帰ってるぜ!」

 再び牢番の目を盗み、冷や冷やしながら外に出る。


 無事に外に出てほっと息を吐き、首を傾げる。

「なんでキメラの翼で帰れたのかしら。屋根に穴でも、空いてたのかしらね。」 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧