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インフィニット・ストラトス ~天才は天災を呼ぶ~

作者:nyonnyon
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第4話

「なんて失礼な方ですの!! これだから極東の猿は嫌ですのよ!!」
「おい」
「何かしら、極東の猿如きが私と気安く口が聞けると思って?」

 セシリア・オルコットとやらが、俺と風音、さらには日本すらも侮辱するような言葉を吐いた。 笑ったのは風音なので仕方ないが、わざわざそこまで言う必要は無いだろう。

「ぷぷ、クヒッ……、……、はぁ、落ち着いた。 あぁ、ごめんねぇ、セシリアさんだったよね? 国家代表候補生っていうことは超エリートだね」
「当然ですわ!!! この私が同じクラスというだけでも光栄に思わなくてはいけないほどよ」
「ふ~ん。 私たちは極東の猿ねぇ。 だって、一夏、どう思う」

 いきなり話題を振るなよ……。 オルコットがギンギンに睨んでるんだよ。

「まぁ、私たちが極東の猿なら、セシリアさんは猿以下だけどね」
「なんですって!!!!」
「まぁまぁ、落ち着いて。 落ち着いて。 セシリアさんが猿以下って言ったのは、よく考えたらわかることじゃない。 

セシリアさんはISの超エリート。 文化も先進的で世界の最先端を行っていると思っている(・・・・・)イギリス出身だから。 だから、私たちを『極東の猿』とか言っちゃってる……。

 でも、現在世界の最先端を行っているのはISであり、ISを作ったのは日本人である『篠ノ之 束』博士。 そして、今でも世界最強と名高いIS操縦者は、現在、私たちの担任を務めて下さっている『織斑 千冬』さんであり、名前からもわかる通り、当然日本人。 世界で初めてISを動かせることができた男である『織斑 一夏』君、世界で二番目にISを動かせることができた男『御神(みかみ) 龍成(りゅうじょう)』君だって日本人だよ。 ……まぁ、御神君は本当に日本人かよお前って感じの銀髪と赤と青のオッドアイとかいうキモイ容姿だけどね。ボソッ」

 ボソッと何かつぶやいたみたいだけど、まぁ気にしなくてもいいか。

「どうかな? 私の言葉の意味が理解できた? 私達を極東の猿だというのはいいけど、それを言うと自分が極東の猿以下だと言っているようなもんだよ。 それにしてもセシリアさんって本当に国家代表候補生筆頭なの?」
「ど、どういうことですの」

 どう言うことだ? 俺もわかんねぇ。

「あれ? わかんない? じゃあ言っちゃうけど、国家代表候補生ってことはのちの国家代表になるかもってことでしょ? ちゅまり!!! ……つまり!!! セシリアさんの発言は国家の発言ってことに等しいわけだよ。 そのセシリアさんが日本を侮辱する発言をした。 これはイギリスが日本を侮辱したのと同じレヴェルの事なんだよ。 ……で、なにが言いたいのかと言うと、もしこの発言を篠ノ之 束博士が聞いていたらどう思うかなぁってことだよねぇ」

 ニヤリといやらしく笑う風音。 なんで束さんが関係するんだ?

「篠ノ之博士は関係ないじゃありませんの!!」

 オルコットもよくわかってないらしい。

「そうでもないんだよねぇ。 ISを生み出した稀代の天才『篠ノ之 束』博士。 各国のトップが好き勝手に彼女の頭脳を狙うものだから、彼女は行方をくらませた。 その彼女が、このIS学園に何もしてないとでも思ってるの? きっと何かしら各国の動向を探る仕掛けを随所にしてると思うけどなぁ。 今頃君の発言も何度もリピートして聞きなおしているかもね。 日本を侮辱した君の発言を、ね。

 ふふ、ますます訳がわからないと言った顔だね、セシリア・オルコットさん。 まだ解らないのかい? 束博士の愛国心を知らないわけじゃ無いだろう? IS発表のキッカケにもなった『白騎士事件』。 そこで、彼女は2000発のミサイルから日本という国を守るために動いた。 別に国会議事堂が吹き飛んでも日本が壊れる訳じゃないのにも関わらずだよ? そんな日本が大好きな彼女が聞いているかもしれないのに、日本を侮辱したセシリアさん。

 うぷぷ、行く末が心配だねぇ。

 急にイギリスに配備されている全ISが停止なんて事もあり得るかもねぇ。 きっとイギリス政府は驚くだろうさ。 一斉に原因調査も始めるだろう。 そこにこのIS学園でおきたセシリアさんの日本侮辱発言があったと情報が行けば……。 おっと、野暮なことは言うもんじゃないよね。 その全てを計算して、全ての責任を負う覚悟でセシリアさんは侮辱発言をしたんだろうし……」
「そ、それは……」

 たじろぐオルコット。 というより風音の顔が物凄く邪悪です。 怖ぇっす。

「そ・れ・にぃ、私は束博士に直接電話できるんだよ。ボソ」

 束さんに聞かれていた場合の未来を想像したのか、若干青ざめるオルコット。 そこに追い討ちをかけるように風音が耳打ちした。 声が小さくて何を言っているかはオルコットにしか聞こえていないだろうが、オルコットの顔色が目に見えて悪くなっていく。

 うぉぉぉ、風音がめちゃめちゃあくどい顔になってる!!!!

「な~んて、嘘だけどねぇ」

 席に戻って来た風音は、そんなことを物凄くいい笑顔でのたまった。 極限まで顔を真っ青にしていたオルコットは、からかわれていたのだという事が分かり、瞬時に赤面。 大声で風音に当たり出した。
 風音は飄々と「えぇ、だってぇ、もしかしたらあり得ることだしぃ」とか「そんなに怒るとお肌によくないよぉ」とか言ってオルコットの追撃をかわしている。

 う~ん、風音って面白いやつだよなぁ。 俺とも気さくに話してるしな。 まるで十年来の友達のようだな。 まさか、今日初めてあって話すやつだとは誰も思わないだろう。

 ……そう、あれは教室中の視線を一心に浴びているときのことだった。










 どうする、どうする!? どうするよ、おれ!!!

 今、教室の中心でかなりの強敵を前に一歩も動けなくなった俺、『織斑 一夏』は、この教室にいる経緯を今一度振り返っていた。


 外で働きながら、俺の学費などを払うように努力してくれている姉、『織斑 千冬』をなんとか楽させるために、授業料も安く、卒業後の就職率もいい藍越学園に入学しようと、試験を受けに行った。 カンニング対策とやらで試験前日に会場が知らされることになる制度には少し驚いたが、まぁ納得してしまうところでもある。
 しかし、その試験会場がやたらと前衛芸術の様な造りで、かつ『俺、無駄に道とか作っちゃう~。 型にハマらない俺カッコイイ』的に面倒くさい造りだった為に道に迷ってしまう。 なんと案内板まで無い不親切さなのである。 小さい子供なら確実に迷子になるだろう。

 しばらく試験会場である建物内を歩き回り、やっと見つけた試験会場らしきドアを開けると、急に着替えを催促され、さらに奥には何故か男には動かせないはずのISがあった。

 なぜこんなところに? と疑問にも思ったが、そこはスルーして着替え(カンニング防止政策の一環だろう)を行おうと制服に手をかけた。
 ブレザーを脱ぎ、綺麗に折りたたむ。 シワになれば面倒なので。 ただ、着替えらしきものはなく、服を脱ぐだけと相成ってしまった。 俺自身が着替えの服を持っているはずもない。 というより持っていたらカンニング対策の意味が無いだろう。 どうすればいいのか聞こうと、案内役のおばさんを振り返ろうとした時、何故か足元にあったモップに躓き、こけそうになる。
 近くにつかめそうな物はISしかなく、仕方なく一機数億とまで言われるISに、内心壊れるなよと祈りながら手をかけたんだが……。

 次の瞬間にはISを装着していた。

 体を包んだ全能感は今でも忘れられないぜ。

 そのあとは話が一気に進んだのであまりよく覚えていないが、IS学園に入学することになった。 なんでも男でISを動かしてしまったのだから仕方がないのだとか。 『IS学園に入学しないと最悪世界から命を狙われるよ?』なんて脅しじみた事も言われきがする……。
 様々な検査を受け、俺以外に見つかった二人目の男のIS操縦者と顔合わせ、注意事項等を聞きたくもないのに延々と聞かされ続け、今日この日を迎えた訳である。

 正直甘かったと言う他ない。

 教室にたったひとり男が俺だけという状況はものすごく辛かった。 まさかもう一人の男のIS操縦者と別のクラスにされるとは夢にも思って見なかった。 来るまでは女の秘密の花園ヒャッホウ!!! なんて弾たちと盛り上がっていたんだけどな。
 まぁ、弾たちは女紹介しろと血涙を流しながら迫ってきたけど……。

 人の視線ってこんなにも圧力をかけれるんだなぁ……。

 そんな現実逃避じみた事を考えながら、この状況をどうしようか考えていたのである。

 あぁ、ダメだ。 いい案なんか浮かぶ訳が無い!! そんなことより誰でもいいから話しかけてくれよ!! この空気の中で俺から話しかけるなんてできるはず無いだろ!?

 もともとほぼ女子高だったのだから仕方ないのだろうが、男である俺を興味津津と言った感じで見ているが、遠巻きにして見てるだけで、誰ひとりとして俺の近くにくる気配は無い。

 今日初めて訪れた、これから一年お世話になる教室。 学園の方針なのか、席は出席番号順や、五十音順などではなく、自由となっていた。
 自由ならばと、窓側の席にしようかと思ったのだが、既に数名の女子グループが陣取っており、そこに突撃する勇気などまったくなかった。
 ならば廊下側の一番後ろをと思ってみても時すでに遅く、女子に取られていた。 この学校には俺ともう一人以外男がいないので席を取るのは女子ときまっているが……。
 その後も隅等死角になりやすい所を狙ってみたが、そう言う死角になりやすい所は早々と他の女生徒の手に落ちていたのである。

 なので、仕方なく一番中央の席に座った訳だが、これが辛かった。

 どの女子も「あれが噂の……」だの「あんた声かけてきなさいよ……」だのと小声で牽制し合っているのだ。 そんなことなら声をかけてくれればいいのに……。

 そうやっていたたまれない空気の中に身を置いているとき、風音がやってきたのである。

「おっはよ~。 今日からお世話になるきょうし・つぅ!!! 席はどこかなぁ~。 え? 自由? フリーダムだねぇ」

 周りのみんなが男である俺がいることにヒソヒソと小声になる中、馬鹿でかい声で教室に入ってきた少女が風音だった。

「じゃあやっぱり、窓際!!! ……埋まってる。 廊下側!!! こっちもダメ。 う~ん。 ……んん!! 君は今噂の男性IS操縦者の『織斑 一夏』君だね!! 私は『友永(ともなが) 風音(かざね)』。 これから一年よろしくね!!! あ、それと、ここって空いてる? 座る席ないんだよねぇ」
「お、おう。 空いてるぞ。 あぁ、知ってるみたいだけど一応名乗っとく。 『織斑 一夏』だ、よろしくな。 友永」

 いきなり自己紹介されたが、なんだか緊張が一気に抜けた感じがする。 周りの視線も風音に集中したみたいで、随分軽くなった。

「うんうん、よろしく♪ あ、私のことは風音でいいよ。 ふーちゃんでも可。 まぁふーちゃんって呼ぶのは知り合いのおねぇさんだけだけどね」
「そうなのか? じゃあ風音でよぶわ」
「オッケー。 私も一夏って呼ぶし、問題ないよね?」
「おう、いいぞ」

 そんな感じで一気に緊張のほぐれた俺は、風音と時間いっぱいまで喋り続けた。 途中、ファースト幼馴染の箒が来たが、簡単に2、3言葉を交わすだけに留まった。 久しぶりにあったけど変わってねぇなぁ。
 副担任の山田先生が来てから、ひと悶着あったりもしたが、そのあとかなり余裕を持って自己紹介などを済ませることができた。
 まぁ、千冬姉が担任として出てきたことには焦ったが……。 出席簿、超痛いっす。

 スパァァァァンッ!!!!!!!!

 何かを叩いた異常にいい音が響いた。 叩いたのは千冬姉、叩かれたのは風音。 使用された凶器は出席簿である。

「友永……、今バカな事を考えていただろう?」
「ふはははは!!!! 流石織斑先生、見抜かれてしまいましたか!!! 実はこの、『叩かれてもイタクナーイ』君65号の実験を行おうと思いまたちまして。 それで先程から一夏君を途轍もなくいい音で叩かれている、織斑先生の『シュッセキヴォアタック』に目をつけた訳であります!! 何とかして先生から『シュッセキヴォアタック』を受ける必要があったのですよ」

 なに!? あの出席簿で叩かれっても痛くも痒くもないっていうのか!!! すごいアイテムだなぁ。 風音……くれねぇかなぁ。

「勝手に変な技名を付けるな、馬鹿者が。 しかしそうか、程ほどにしておけよ? これは預かっておく」

 そう言って『叩かれてもイタクナーイ』君65号は千冬姉に回収されてしまた。 なんともったいない……。 それにしてもいきなり65号ってなんだ?

「ち、回収されたか」
「ちょっと勿体無かったな。 千冬姉の主席簿アタックを無効化できるアイテムなんて」
「チッチッチッ、一夏まだまだだね。 『出席簿アタック』じゃなくて、『シュッセキヴォアタック』だよ!! 65号はなかなかいい出来だったから惜しかったなぁ。 まぁいいや、まだまだ73号まで持ってきているから余裕余裕!!!」

 ちょ、おま、どんだけ持ってきてんだ。








 てな、感じで仲良くなったのである。

 オルコットと風音の言い合いも千冬姉の介入により、収束を迎えてきたようだし、めでたしめでたしってところか?

「よし、ならば月曜日にクラス長をかけた戦いを執り行う。 織斑、オルコット、しっかりと準備しておくんだぞ? あと、友永、オルコットの試合もあるから皆見たければ見にくればいい。 こちらの試合は織斑VSオルコット戦後だ」

 あれ? 俺がオルコットと戦うことになってる!!? なんで!!? 
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