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なりたくないけどチートな勇者

作者:南師
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16*あまりいい趣味ではないね

 
前書き
すっかり弾補充を忘れてた
ごめんなさいです 

 
乙女二人に裸を覗かれるという、『あれ?普通逆でないの?』な事件から一夜あけ、自分は食堂に下りて来た。

「ではナルミ、作戦内容の最終確認をしよう。」

そして一番に言われたのがこれである。

「なぜいまさら。つか、目を見て話せ。」

「……無理だ、というか理由は解るだろう?」

あー、うん、何となく。
つか

「ごめん。」

「…いや、私達が行ったから悪いのだ。……と、それより作戦。昨日お前は会議マトモに聞いて無かったろう。」

そういやそうだ、メランコリってたからね。

「で、だ。作戦に変更は無いが、実はお前にお願いがあるのだ。」

……偽者だ、こいつ。
エリザがお願い?命令で無くて?

ありえない。

「……なんか、失礼なこと考えてないか?」

「滅相もない。」

「…まあいい。で、お願いはと言うとだな……その前に、あの国の将軍、ズール・スペンタを知ってるか?」

「いんや、全く。」

「あの国の実質的最高権力者だ、三年前からいきなり国を仕切り出した。そのせいで今ではすっかり軍事国家になっている。」

あー、そんな感じなの聞いたような無いような…

「で?」

「ん、実はな、奴が権力を持ち始める二ヶ月前に奴は最近発見された古代遺跡の調査に行っているらしいのだ。」

はぁ、古代遺跡ねぇ……
だからなにって話し……あ、わかった。

「そこで見つけたなんか、今では失われた技術で作られた魔法具とか魔導書みたいな、なんか変なもんを見つけてそれを悪用して…例えば王様を洗脳とかして自分に有利な環境を作った可能性があると。」

実にテンプレートな展開だ。
オーパーツで帝国支配とか、考えても普通やらんて。

「察しが良いな、その通り。現に前回砦で捕まえた指導者のオークが、何も覚えて無く記憶に介入された痕跡もあるらしい。」

「さらに言うと魔獣大量召喚もそれを使った可能性があるね。」

「ああ、だからお前にはそれの調査も依頼したい。更に言うと、もし本当に洗脳されているとしたら、上層部の洗脳を解いて保護し、投降するようにして貰いたい。」

つまり王様からあの国の兵士に投降するよう言って貰う訳ね。
それにこれが成功したらすぐに戦争が終わる。
これは頑張らねば。

「あくまでこれは依頼であって命令では無い。危険ならすぐにやめても構わない。」

「わかった、やってみる。」

なるたけ血を流させない、これが自分のやり方。
と、自己満足に浸っている所でエリザか聞いてきた。

「ところで、その黒い棒はなんだ?」

ゆびを指す先には昨日貰った黒い刀、その名も一護。
あのあとよくよく考えたら、刀が自分の物になったって言う事実と、以外にカッコイイ黒い刀にテンションが上がり、腰のベルトにさして持ち歩いていたのだ。

気分は侍。
ただ二メートルは普通に動きずらい。
細い所は特に。

「これは、自分の愛刀、名前を一護と言う。平たく言うと自分の武器だ。」

漢《おとこ》の浪漫、刀を自慢気に紹介する。

「ほぅ、これが伝説の……これを使うと言う事は、今回の戦いにお前は本気で臨むと言うことだな。」

いやいやいや、何を勘違いしてんのか。
本気もなにも、昨日初めて存在知ったんだよ。

「死にたくないからね。」

でもめんどいのでそのままでいいや。

「そうか……こんな事に巻き込んですまなかっな。」だいぶこの前のは反省してるようだ。
関心関心。

「乗り掛かった船さ、気にするな。そんな事よりも、お前も気をつけろよ。」

これは戦争だ、だからエリザとていつ死ぬかわからん。

「大丈夫だ、私は飛竜に乗って戦況を見ながら魔石で指示を出す。魔獣が出て来ない限り死なん。では、昼頃にはここを発つから準備しとけよ。」

そう言って席を立つエリザ。
しかし、話しの最中、最後まで目は合わせてくれなかったな…

そしてエリザが扉をくぐろうとした時、自分はふと閃いた。

「まて、エリザ。」

「ん?なんだ?」

「ちょい付き合え、実験したい事がある。」


*********エ☆


とりあえず昼過ぎ。
自分は飛竜部隊を所定の位置まで移動させ、そのまま裏から透明になって城の中まで潜入したのですが……

「なんか嫌な空気。」

みんなぴりぴりしている、当たり前だけど。
と、そんな事はどうでも良い、問題は。

「…どうやって騒ぎを起こそうか。」

これである。
街の中心にある城で何かしらの騒ぎを起こせというミッションなのだが、いかんせん何をしたら良いか……

王様掠うか?

いやいや、それはまずいな。
もしかしたら王様も被害者かもしれんし。
だいたいこーゆーのは武器庫を爆発させればミッションコンプリートな気もするが、なにせ爆弾が無い。

というかこの世界では戦争で火薬を使うという発想が無いらしい。
ぶっちゃけだいたいが魔法を使うとか。
だから武器庫襲撃しても魔法使える兵士がいる限りあまり効果が無い。

と、考えながらうろうろしていると、いつのまにか庭に出ていた。
いくつかお花も咲いているが、やはり戦争中なので周りの兵士も雰囲気が険しい。
顔は兜でわからんが。

そして、そろそろ時間的にヤバイと感じ初めた所で、どこからともなく

「ギャァァァァス!!」

雄叫びが聞こえた、うるせー。
これは多分飛竜だな、朝飯ん時も叫んでたのを聞いたから間違いない。

………ん?飛竜?

この声の大きさは結構近くにいるぞ。
味方の飛竜がこんな近くにいたら騒ぎになっているはずだ、つまり……



「ビンゴ!」

歩いて2分、やはりいた。
大量に繋がれた飛竜達が、兵士から餌を貰っていた。

よくよく考えたら、こっちも飛竜を持っててなんら不思議は無い、むしろ無い方が不思議だ。
そしてこれは結構都合が良い。

こいつらが暴れて手が付けられなくなったら彼らの戦力も落ち、何よりかなりの騒ぎになる。
てな訳で、まずは手始めに鼻をほじり、ちょいと汚いがハナクソ確保。

そして

「鼻空想砲《ノーズファンシーキャノン》!!」

ドゴォン!

ハナクソを奴らの目の前で爆発させた。

「ギャァァァァ!!」

すると案の定、竜達は騒ぎ出した。
一匹が騒ぐと隣も騒ぎ、さらにその隣もってな具合に一気に騒ぎがおっきくなってった。

ついでだからもう一発。

ドゴォン!!

「キェェェェェ!!」

騒ぎに乗り遅れた奴らの前でも爆発を起こし、すべての竜がパニックになった。
もう手はつけられまい。

「「「「うおぉぉぉぉぉ!!!」」」」

「敵襲!各兵配置に付け!!」

雄叫びが聞こえ、敵兵達の慌てる声が響き渡る。
あちらも首尾よくやれたようだ。

と、調子ぶっこいて油断していると

「貴様!何者だ!!」

「ふぇっ!?」

後ろには二十人くらいの兵士さん。

……あ、ハイドって攻撃すると解けるんだった。

って!魔法はやめっ!炎怖い!!

「加速装置ー!!」

とりあえず逃げ。
奥歯を噛み締め超加速。

兵士達の姿はすぐに見えなくなった。

……なんと言うか、古いな、このネタ。


**********コ☆


はぁはぁはぁ……つ、疲れた。
どこへ行っても敵敵敵で、さらに敵。
やっとこさ敵のいない所にきたと思ったら、こんどはここがどこだかわからないっと。

全く、とっとと姿消しときゃよかった。

とりあえず、ここはどこだろう。
なんかお城の中の、結構高いとこっぽいけど……

とりあえずうろうろ、しかたないからうろうろ。
お、なんか扉発見。

「………ざ…な……」

ん?なんか聞こえる。
つか叫んでる。

「…なん……ひ…ゅう……」

あぁ、多分会議室だここ。
飛竜が使えないのにだいぶご立腹なようだ。

タッタッタ

ん?だれかきた。

バンッ!

「失礼します!」

「なんだ!今忙しいのだ!!」

兵士が開けた所に素早く潜りこむ自分。
なんか、スパイっぽくなってきた。
部屋には長テーブルが二つ、向かい合うようにならべられていて、そこにそれぞれ八人、計16人が座っている。
一番奥には豪華な椅子には王様らしき青年が座っている、自分と同じくらいの年齢だ。

「ただいま城内に謎の黒服の男が潜んでいるらしく、その報告を。」

あ、それ自分。

「うるさい!そんなものお前らで何とかしろ!」

報告に反応したのは赤い鎧の厳ついおっちゃん。
さっきから叫んでんのはこいつか。

ちなみに顔以外は鎧でわからん。

「しかし、飛竜を暴れさせたのがその男らしく…」

「なら何か、貴様らはその男が飛竜を暴れさせるのを見ながらそいつを取り逃がしたと言うのか。」

「え……あ…あの…」

がたがた振るえ、すっかり怯えてる兵士さん。
しかしまぁ、なんだ。
他の人達はなんでこうも興味示さんかね。
一番奥に座ってる王様なんて目が虚ろよ。

てゆーか、なんでここに幼女がいるのさ。
ノアちゃんと同じくらいか、それより下の身長だよ。

他のいかにも貴族な鎧着た方々もみんな目の焦点合ってないし、やっぱり洗脳説は正しかったのかね。
なんか、捻りがないな。

と、自分が暢気に観察してると

「もういい、役立たずはいらん。」

そういいながら赤い鎧の…多分こいつがズールだな、がなんか取り出しながら近付いてきた。
正確には横の兵士に。

「お前には魔獣召喚の糧になってもらう。」

そういいながらズールは、取り出した青緑色の石を兵士の額にあてた。
兵士は足がすくんでで動けないのか、真っ青になりながらさっきより振るえている。
そして…

「あ…アァァァァァ!!」

バタンッ!

!!?
どうした!?
いきなり叫び出した思ったら倒れたぞ!?

「ふん、この程度か。」

そう言いながら、ズールはさっきより青っぽくなった石を見ながら席に座った。

ここまで起きても、誰一人この状況に興味を示さない。
背筋に嫌な悪寒が走った。

とりあえず、今はどうにかして洗脳を解かねば。
洗脳を解く、つまりコントロールを元に戻すのだ。

「…トラップカード『洗脳解除』。」

ほんとは永続だが、んなこといまはどーでもいい。
よするに、こいつらが元に戻れば良いのだが…

だが…

「ぐ、ぐぁぁぁぁぁ!!」

……あれ?
なんでズールが悶えるの?
なんで他の人達は変化ないの?

「ぐっ……は、こ、ここは…」

え?なんで?
もしかしてズールの方が洗脳されてたの?

と、今だパニクってる自分を他所に、座っていた鎧姿の細身の男が立ち上がり、ズールに近寄る。

「……なぜ、洗脳が解けた?」

「な…せん、のう?なんの事だ、ヒュー。」

「うるさい。全く面倒だ、一回洗脳が解ければ抵抗が付きかけずらくなると言うのに。」

はぁ、とため息をつきながら剣を抜き。

「もう貴様は用済みだ。」

今だに動けないズールに……て、やばっ!!

「死ね。」

ガキィン!!

すんでの所を一護で受ける。
あっぶねー。

「……何者だ、貴様。」

「報告聞いて無かったの?謎の黒服だよ。」

キィン!

そう言いながら剣を弾き、ズールを掴んで後ろに跳び、間合いを開く。

「洗脳を解いたのはお前か?」

「…ズールさん、持ってる石貸して。」

ヒューを無視して小声でズールに要求する。
多分あれが魔獣召喚の鍵だ、だからあいつに渡す訳には…

「あ、あれの事か?」

彼の指さす先は、ヒューの足元。
運ぶ時落ちたのかよ。

「俺の質問に答えろ。」

幸いヒューは気付かないらしく、むしろ無視された事に苛立っている。
ちなみに、今だに他の人達は反応を見せない。

「答えてなんかいーことあんの?」

挑発して、意識を自分に向けさせる。
その間に石を念力でばれないように動かす、が

「質問に質問で返すな!!…ん?」

気付いた、というか怒鳴りながら左足を前にだしたて偶然踏ん付けた。
当然奴はそれを拾い、自らのポケットにしまった。

「ふん、召喚石をとろうとしたらしいが、残念だったな。」

うわぁ、なんて嫌味な笑顔。
キモイ、ギザキモス。

「ついでにもう一つ教えてやろうか。」

ヒューがそう言って、右手を上に掲げると…

ザッ!

他の人達が一斉に立ち上がった。
みんな無表情で、虚ろな目をしながら。

怖っ!!

「ここにいる者は皆偽者だ、本物はほらここに。」

そう言いながら奴は手鏡を取り出した。
中では幼女が必死に鏡を叩いている。

「鋼鉄の自動人形《オートマータ》と言ってな、鏡に閉じ込めた者と同じ容姿、同じ力を得る便利な遺産《ロスト》だ。」

クソッ!
なんでロストとか変な所で横文字使われてんだよ!
つか、自慢してるよ、こいつ。

「さらにはこの召喚石、これは誰かの額に当てるとその者の魔力をねこそぎ吸ってそれを使い魔獣を召喚する。しかも魔力を市販の魔石に移して、それで魔獣を呼ぶ事もできるのだよ。純粋な魔力だから普通に召喚するより格段に召喚しやすい。」

うわぁ、なんかいや。
やっぱりキモイ、こいつ。

「そ、そんな事話して良いのか?」

自分が嫌悪感に襲われていると、ズールがヒューに話しかけた。
今だに腰が抜けたように座っている姿はなんか滑稽。

「別に今から死ぬ奴らに知られても、問題は無い。」

そう言うと、ただ立ってただけの人形達が、一斉に首だけこっちに向き始めた。

だから怖っ!!

「いけ。」

そうヒューが号令をかけると、一斉に襲い掛かってきた。
みんな無表情で、ゾンビみたいな動きで。

「チッ!このっ!」

とりあえず近くの奴の右腕を軽く切った、が

「かわいそうに、腕から血がでている。」

そう言いながらヒューは、切られた人が閉じ込められている鏡を取り出し、自分に見せびらかす。

その腕からは、確かに血が出ている。
人形からは何もでないが。
というかこれは…

「どうすれゆーんね、これ。」

人形切ったら本人が傷付くから人形攻撃出来ないし、人形に守られてるヒューに攻撃する手だても思い浮かばない。
しかもズールが腰抜かしてる上に、窓と扉の前にはすでに人形が待機していて逃げれない。




はっきり言おう、ピンチである。
 
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