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なりたくないけどチートな勇者

作者:南師
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13*なんたら無双

自分の心の闇を突いたエリザ姫を叱責したが、ミミリィ隊長に止められてしまった。
しかも、いつもみたいな強気な態度では無くただの少女と化した姫にこれ以上怒る気にもなれず、だがストレスを発散しきってない自分は仕方なく、二度寝する事にした。

そしてベッドに戻ろうとした、その時

「……グ…ガァァァァァァ!!」

うるさい鳴き声と共に変な生き物がでてきた。
あれか、あれが噂の失敗作か。

「…バリス、あれはなんだ?」

とりあえずいつのまにかいたバリスに聞いてみる。

「あれは、魔獣だ。並外れた魔力と力を持った化け物だ。って!まだ召喚するのか!?」

そうか、魔獣は召喚する物なのか。
あいつらが自分の二度寝を邪魔したのか…

そして、召喚されかけの魔獣とやらが

「…ギャァァァァ!」

叫んだ、耳をつんざくほど叫んだ。

さて、ここで考えてみよう。
イライラマックスなキレやすい近頃の若者が、寝ようとした途端にこんな強烈目覚ましを喰らったらどうなるでしょうか、それも二回も。


正確・キレる。

「うるせぇ鳥頭!リバーストラップオープン!『奈落の落とし穴』!」

もちろん自分も例外ではなく、ぶちギレた。
ポケットからトラップカードを取り出し、発動したのだ。

「ギャァァァァ!」

「グゴォォォォ!」

すると、出て来る途中の謎生物二体は、どこかに落ちた。
そりゃああの巨体で攻撃力1500以下は無いだろうからねぇ。

だが、それだけで収まる程近頃の若者は甘くないのだ!

「もう一体も邪魔!マジックカード!『ハンマーシュート』!」

ゴッ!

当然残りの一体も墓地送りだ。


……楽しい。
なんかこれ、アニメみたくて燃える。
実際あんま遊○王のアニメはみたこと無いが。

そして、いい気になった自分は叫んだ。
原作にあった台詞ではないが、調子に乗った自分はとにかく中二な事を叫びたかったのだ。

「魔獣を召喚ねぇ…その決闘《デュエル》、受けて立つ!!我が『次元帝デッキ』に敵う者などいない!!」


………


…………………


………ごめんなさい、皆さんそんな目で見ないで下さい!

何があったかと言うと、皆さんそろって『こいつ、何いってんの?精神危ない人?』的視線を送ってくれているのです。

おかげで正気に戻りました。
そして自分は黄色い救急車に乗るつもりはありません。

つーか考えてみたら、現実で次元の裂け目とかマクロコスモスとか使ってもねぇ。
しかもモンスター召喚出来るかもわからんし……

穴だらけだよ……ハァ。

いくらクラスで第二位のデュエリスト(全四人)だからって、現実で使おうとか、調子に乗りすぎだね、自分。
激しく後悔しております。

ちなみに自分はデッキ破壊にはどうやっても勝てません。

とかくだらないこと考えてると、後ろからバリスの声が。

「ナルミ!また魔獣が!」

んー?
うげっ!今度は四体!?
やめてくれよもう。

とりあえず。

「…トラップカード、『激流葬』。」

ゴバァァァ!

どこからともなく現れた水が、水栓トイレよろしくな流れをしながらでてきた魔獣を飲み込んで、魔獣ごと消えた。

イヤなやられかただ。

水が無くなってしばらくすると、敵の兵隊さんたちが

「うわぁぁぁぁ!」

「ま、魔獣が!魔獣全部がやられるなんて!」

「何なんだよ!どんな怪物がいるんだよ!?」

「うわぁーーん!!死にたくないよぉー!!」

大混乱しながら、逃げ惑いはじめた。

まさに阿鼻叫喚と表すに相応しい光景だ。
しかし最後の一人よ、死にたくないなら兵士になるな。

と、どう収拾つけようかと考えていると

「静まれぇい!」

なんかあちら側の、緑の髪で、髭ふっさーなリーダーっぽいの(ごつい、鼻が潰れてる、生理的になんか嫌な容姿。)が喝をいた。
それに伴い、火のついたピクミンの様だった敵兵士達がピタリと止まった。

「まだ魔獣ならいる!兵の数もこちらが多い!こちらが負ける道理など無い!腐っても帝国の兵士ならこれくらいでうろたえるな!!」

と、彼が叫ぶと途端にビシッと兵士達は隊列をもどし、最初の状態に戻った。
でも大多数は顔が青く、振るえている。

とりあえず、しばらくはこなさそうなので、こちらもやることやりますか。
そう思い、自分は未だに泣いている姫に近寄って声をかけた。

「エリザ姫。」

すると、姫は一瞬ビクッと動いて、恐る恐る自分を見てきた。

「もう自分は怒ってない、だがそっちももうあんなこと言わないでくれ。
ぶっちゃけあれは、自分にとって最大の心の闇でね。
そして、自分も言い過ぎた、すまなかった。」

「……私も、ごめ、んなさい。これ、からは、きをつけます。」

自分が謝ると、多少呂律が回ってないが、姫も謝ってきた。

「うん、でもそんなに気にしないでもいいよ。
ただ今まで見たいな我が儘は少し控えて欲しいけど、いつもの姫のままが一番いい。」

「…うん、わかった。」

うん、これにて一件落着。……多分。

よし、あとは…

「んじゃ、話も着いたし行きますか。」

あそこの敵さんだけですね。

「…ナルミ、あいつら倒せるか?」

「ん~?大丈夫でしょ。」

そう言いながら、パジャマ代わりに着ていた黒ジャージの上を脱いだ。
Tシャツのが動きやすいもんね。
もちろんこれも黒、無地の黒。

ちなみに、本物のパジャマは裾がボロボロで、まだなおしてない。

「これ、持ってて。」

「お、あ、ああ。」

そして、近くにいたバリスにジャージをあずけ……

「うおっ!重っ!なんだこれ!?お前こんなん着て過ごしてたのか!?」

………合成繊維は、この世界では重いらしい。

とりあえずバリスに預けた、そして

「……ナルミ。」

さあ行こう、とした矢先に姫が自分に声をかけた。

「どうした、姫様。」

「………エリザでいい、それより。」

そう言いながら、姫、いやエリザは一拍おいて。

「存分に暴れてこい!お前は私の自慢の近衛兵だ!その力、見せつけやれ!」

いつもの調子で、でもなんか違う感じのする雰囲気で言った。
それに対して自分は。

「おう!」

それだけ答え、壁の穴から跳び出した。

雨降って地固まるとはこのことかね。


**********━☆

さて、カッコつけて飛び出した自分は今、敵さんの目の前に向かって

「あああぁぁぁぁぁぁ!!」

飛んでいます、すげースピードで。
ぶっちゃけ制御できません。

ズシャァ!!

……

………し、死ぬかと思った。
なんとか着地出来たけど、死ぬかと思った。
まだ心臓バクバクいってるよ。

やっぱりやるもんじゃないね、ゴムゴムのロケット。

「……貴様!何者だ!?」

ん?おぉ、気付かんかったが目的地には着いたようだ。
目の前の髭が警戒しながら剣を構えてる。
ちなみに、後ろの兵士はみんな怯えてる。

そんなに怖いかね、自分。

「よ。元気?」

とりあえず、爽やかに挨拶。
第一印象大事だよね。

「何者だと聞いている!おとなしく答えろ!」

ばっさり切り捨てられた。
取り付く島もないね。

しかたないので脅かしてみよう。

「…いゃあ、自分はあの魔獣とやらを倒した者でして。」

途端にざわめく兵士達。
大半の兵士達は顔に出てる恐怖の色がより一層濃くなった。

「そんな訳あってたまるか!単独であの魔獣達を倒したなど!有り得るはずがない!」

さすがリーダー、威勢は良いね。
でも、ねぇ。

「事実なんだししゃーないじゃん。
つか、震えながら言われても…プッ。」

軽く怯えてるから滑稽としか言えない。
おーおー、どーした真っ赤だぞ。風邪か?

「き、貴様……行くぞお前ら!帝国の力を見せつけてやれ!!」

「お、おぉーーーー!!」

お、いくのか?
大半がやる気ねーぞ?
志気が足りん志気が。

とか何とか考えてると、髭を先頭に兵士達が走ってきた。
もとい襲ってきた。

まぁどっちにしろ行かせないけど。
とりあえず。

「ゴムゴムの」

殺すつもりも無いけどね。

「ガトリング!」

ドガガガガガ!

「うわぁぁ!!」

「ぎゃぁぁ!!」

とりあえず先頭の300人は撃破~。

……

………あれ?
どうした敵兵、来ないのか?
みんなしてなぜ止まった?

すると敵兵の一人が

「う」

う?

「うわぁぁぁぁ!」

叫んだ、それを皮切りに

「あぁぁぁぁ!」

「う、腕が!腕が伸びた!増えた!」

「殺される!俺達はここで皆殺されるんだ!!」

敵、錯乱。
どうしようか。

………。

「ゴムゴムの」

めんどいので気絶して貰いましょ。

「鞭!」

バシュ!

伸びた足で一気に薙ぎ倒す。

「うわぁっ!」

「ピストル!」

ズドン!

拳で一直線に殴り飛ばす。

「ギャァァ!」

「もいっちょガトリング!」

ドガガガガガ!

とどめにもっかいガトリング。

「ゴベァッ!」

「……ふぅ。」

前半分は片付いたかな。
あとは後ろ半分か…

「なぁ。」

「「「ひぃっ!」」」

んな怯えんでも。

「……もう降参してくんね?」

ぶっちゃけ、もうめんどい。
しかし、この交渉に水を差す輩がいた。

「な、ならん!降参などあってはならん!」

偏屈髭ジジイ、復活。
いや、結構ボロボロだけどね。

そしてこのジジイ、とんでもないことしやがった。

「貴様ら!ここで降参して、助かると思ってるのか!!」

おい、なんだそれ。

「降参した途端、捕まってこいつらになぶり殺されるだけだぞ!」

まて、そんなこと言うと…

「イヤなら戦え!こいつらに一矢報いてやれ!ただ黙って殺されるな!!」

「「「「う…、あぁぁぁぁぁぁ!!!」」」」

あぁ、やっぱり。
パニックになった彼らは自分目掛けて特攻してきた。
ついでに魔法と矢の雨のオマケつき。

このジジイ、これが目的か。

「チッ!ゴムゴムのぉ!」

あーもう!

「バスーカァ!!」

ズドンッ!!

めんどくせーなぁ、おい!

「「「うわぁぁぁ!」」」

自分特製、衝撃波付きゴムゴムのバスーカ。
多分これで残りは200人くらい。

「「「あ、あぁぁぁぁ!!」」」

その200人もみんな逃げてった。
ミッションコンプリート、かな?

「ウォォォ!」

!?

ガキン!

あっぶね!
髭の存在もっちり忘れてた!

「貴様は!貴様は帝国の最大の障害だ!貴様だけは絶対に殺す!」

このジジイ、勝手に攻めて勝手に障害呼ばわりか。

「ゴムゴムのぉ」

腹立つ、寝てろ!

「ライフル!」

ズドッ!

「ごっ…がぁっ!」

ズシャッ!

………

……………ふぅ。

これで本当にミッションコンプリートだ。
いゃあ、疲れた。
そういやギアセカンド使った方が早く終わったかな?

…まぁいいや。
とりあえず。

「おぉーーい!こいつらの片付けやっといてくれ!そして朝飯お願い!」

朝ごはんをたべよう。
あぁー、腹減った。




……いや、別に肉でなくてもいいけどね?



~サイドエリザ~

エリザとバリス、そして近衛隊の面々は、壁の穴からナルミの戦いを見て

ドゴォッ!

「兄様。」

ドガガガガガ!

「何だ?」

ズバシャァ!

「ナルミはいったい何者なんでしょうか?」

ドガァ!!

「………わからん。」

見とれていた。

真面目に作戦を考えてた自分はなんだったのかとも思ったが、それ以上にナルミの理不尽なまでの強さに目を奪われてしまったのだ。
周りの兵士達も皆、ナルミの戦いぶりをみて呆然としている。

ちなみに、エリザはケンカからもう立ち直ってすでにいつもの様子に戻ってる。

そして、しばらくするとナルミが

「おぉーーい!こいつらの片付けやっといてくれ!そして朝飯お願い!」

と、敵の司令官を吹っ飛ばして言ってきた。

「……わかった!お前たち、敵兵の回収と朝食の用意を初めろ!」

「「「ハイ!」」」

正気に戻ったエリザが指示を出すと、皆元気よく答え、迅速に行動を開始する。
その時、兵士達の会話が微かに聞こえてきた。

「…俺、あの方に一生ついていきてぇ。」

「俺もだ、弟子にして貰えないかな?」

「あの手足が伸びる、“じげんていでっき”って武術、あれだけでも教えて貰いたいよな。」

皆、ナルミの事を褒め讃えている。
それを聞いたエリザは、一気に気をよくしながら、近衛隊をひきつれて食堂へと向かって行った。。

ちなみに余談だが、ナルミはこのあと“次元帝デッキ”とは武術の名前で無い事を兵士達説明するはめになったのだった。


*********≠☆

「報告します、敵味方共に死者は0、砦への損害もありません。」

「あ~、ゼノア、固い。誰もいないんだからいつもどーりにしてくれ。」

ここは食堂、今エリザとバリス、そしてナルミ含むエリザの近衛隊がゼノアの報告を聞きつつ、一同揃って食事をしている。
普通、王族と近衛隊が一緒に食事など常識では考えられない事だが、この姫様はこの方が落ち着くと言う事でよく同席させているのだ。
ちなみにバリスは全く気にも止めていない。

「むぅ、しかし…」

「あ、兄様なら気にしないでも別にいーぞ。どうせ最初から気にしていないだろうし。」

「…わかった。」

こんな風に部下にタメ口を強要するのもこの姫様の特徴である。

「とりあえず被害は無い。だが捕虜が多過ぎるのがいまの所1番の問題だ。」

何たって約4800人の捕虜である、この砦に全て収容出来るスペースは無い。

「ふぅむ……、飛竜に乗せて山の刑務所へと飛ばすか。よし、飛竜部隊と、あと少し実戦部隊をよこすよう王都へ連絡をしてくれ。」

「…エリザが指揮官なんだ、お前がしてくれ。」

「む、しかたないな。」

そう言いながらエリザは、魔石を受け取り王都へ連絡をとる。

その間の近衛隊の様子はと言うと。

「先生、本当に強いですね。とゆうか私の時は本気を出してなかったんですね。」

「…はぅ……かっこよかったです。」

「やっぱ毎日あんな重い服着て鍛えてるからですか?」

「……出来れば、あの技も教えて下さい。」

「ハハハ、もうあの強さは異常だよねぇ。」

「魔獣を一人で、しかも七体も殲滅なんて、本当何者ですか。」

「なぁ、今からでも俺の近衛隊にはいらねーか?」

「………朝ごはんくらい静かにたべさして。」

ナルミを囲んで雑談タイムの真っ最中。
当のナルミはうんざりしている。

「兄様!勝手にナルミを引き抜かない!」

報告を終わらせ、魔石を終わらせ置いたエリザが叫びながらバリスを叩いた。

「いてっ!やめろよ!」

「兄様が悪いのです。と、そんなことより。」

そう言ってエリザは一呼吸置いて真面目な声で言った。

「なぁ、このまま防衛戦を続けるよりもいっそ、こっちから攻めるのはどうだろうか。」

瞬間、空気が変わった、が

「…………なぁ、報告した後に聞くって事はもう王都からは攻める気満々の方々がくるのか?だったら質問でなくて確認でね?」

いつもの調子でナルミがしゃべる

「……プッ…アッハッハッハ!いや確かに!実際攻めるために援軍を送って貰っている。確かにこれでは順序が逆だな。」

そしてエリザが笑った事でいつもの空気へと即座に戻った。

「じゃあ再度言う!明日、準備が整い次第敵国へ攻め入る!ゼノア、それまでに体を休めておくように兵達へと伝えておけ!」

「あぁ、わかった。」

そう言ってゼノアは食堂から出ていった。
そして、エリザはナルミと向かい合い

「ナルミ。」

「ん?」

「朝はすまなかった、これからは気をつける。」

謝った。

「いや、自分も言い過ぎた、ごめんな。」

ナルミも謝りそして続けた

「エリザ、とりあえずこれは喧嘩両成敗という事で水に流そう。」

そして、手をのばした。

「お?あ、ああ。」

それの意味がわかったエリザは、しっかりと手を掴み、二人はきっちり握手を交わした。

「いゃー、仲直りして貰ってよかったですよ。」

「ほんとに、あれほど先生が怖いと思った事いままでなかったしね。」

それを見ながら話すリム副隊長とミミリィ隊長。

「まぁ雨降って地固まると言うし、これからは気をつけてくれるっぽいからもうあそこまでキレる事も無いべ。」

握手をとき、二人の会話に笑いながら答えるナルミ、しかしその横で

「??きれる?雨??りょーせい?ナルミ!」

「んぁ?」

「さっきから雨やら切るやら水やら、何を言っていたのだ?」

「あん?慣用句とかは通じないの!?あれ?でも今まで普通に通じる慣用句もあったし、あれ?れれ?」

「いいから、どうゆう意味だ?何が流れて何を切るのだ?」

「あ、あぁ、まず喧嘩両成敗って言うのは……」


その後、午前中がナルミ先生による日本の諺、慣用句講座が食堂で開かれた。
生徒は皆、興味津々で聴き入ったそうだ。



ちなみに、終わった直後にナルミが呟いた

「……通じる諺と通じない諺があるって………なんて半端な翻訳機能だ。」

という言葉は誰にも聞き取れなかったそうな。
 
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