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カルメン

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第三幕その二


第三幕その二

「じゃあはじまりね」
「何を占おうかしら」
「それじゃあさ」
 ここでカルメンが戻ってきた。そうして皆に対して言う。
「あたしが占っていいかしら」
「カルメンが?」
「ええ。どうかしら」
「そうね。それじゃあ」
「どうぞ」
 フラスキータとメルセデスは顔を見合わせたがカードをカルメンに渡すことにした。そうして自分達の側に座ったカルメンに対して問うのであった。
「何を占うのかしら」
「大金持ちの御爺ちゃんと結婚するとか」
「永遠の恋とか」
「おいおい、それは駄目だよ」
 ダンカイロは二人の女の言葉に笑って言うのだった。
「ホセがいるのに」
「そうだったわ」
「そうだったわね」
「ええ、今のところはね」
 カルメンは二人の言葉ににこりともせず言葉を返した。
「けれど」
「ここはあれだろ」
 レメンダートはカルメンの言葉をよそに笑って話しだした。
「王宮に住むとか大勢の手下の親分になるとかな」
「だったら俺は金にダイアモンドに宝石だ」
 ダンカイロもそれに続いて笑って言う。
「そういうのがいいな」
「それもいいけれど」
 だがカルメンは彼等の話には乗らない。真面目な顔でカードを切る。そうして誰にも言わないことを占うのだった。彼女だけがわかることをであった。
「ダイアにスペード。つまりは」
 出て来たカードを見て呟く。
「死ね。まずはあたしで」
 自分のことだ。
「そして彼ね。二人共死ぬのね」
 だがそれをみても驚きはしない。平然と受け止めていた。
「カードが教えることは運命。ならそれでいいわ、運命はどうしようもないから」
「やけに暗いな。どうしたんだ?」
 レメンダートがカードを切り終えたカルメンに対して問うた。
「何かあったのか?」
「別に」
 だがカルメンはその問いには答えない。誤魔化すだけだった。
「何でもないわ、気にしないで」
「そうか。ところでダンカイロ」
 レメンダートはここでリーダーに対して声をかけた。
「何だ?」
「ここの税関の方は大丈夫なんだろうな」
「ああ、大丈夫だ」
 彼はニヤリと笑って仲間の言葉に答えた。
「そっちはもう抱き込んである」
「そうか。じゃあ安心だな」
「ああ。明日の朝に出発だ」
 そうしてこう言うのだった。
「いいな、明日は」
「大儲けで宴会をして」
「派手に騒ぎましょう」
 皆でそんな話をする。彼等は彼等で騒いでいた。カルメンだけは何処か達観した顔になっていたが。
 その頃彼等が今いる岩山に。一人の男に連れらて青い服の少女が来ていた。案内人の男は周囲を警戒しながら少女を案内していた。
 少女はミカエラだった。フードで顔を隠しているがそこにある顔は思い詰めたものであった。その顔で彼女も辺りを警戒しながら歩いていたのだった。
「ここだよ」
「ここなんですね」
「ああ、密輸団はここにいる」
 案内人はそうミカエラに告げる。
「そう。ここにあの人がいる」
 ミカエラはその言葉を聞いて呟く。その顔には固い決心があった。
「それなら」
「本当にいいんだね?」
 案内人はミカエラに顔を向けて尋ねた。
「ここから先は一人でだけれど」
「はい」
 そう言われてもその顔にある決意の色は薄れることはなかった。
 
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