| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドラゴンクエストⅢ 勇者ではないアーベルの冒険

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第60話 そして、終わりの始まりへ・・・

大魔王ゾーマが、倒れた姿のまま俺に話しかけた。
「アーベルよ、よくぞ我を倒した」

ゾーマに攻撃の気配は無く、ゲームであればこのままエンディングへ一直線だ。
当然俺達も、その道に突き進むつもりだ。
しかし、ゾーマの顔つきは変わっていない。
この状況で、ゾーマに何が出来るのだろうか?

「だが、残念だったな」
ゾーマは、残忍な笑みを浮かべると周囲の状況が一変する。

ゾーマめがけて、黒い霧のような物が集まりはじめた。
やがて球状の固まりとなり、ゾーマを包み込んでいる。

俺達は、黒い球に引きずり込まれるのを耐えながら、先ほどまでゾーマがいたところを注視する。

やがて、黒い球が消えると、無傷のゾーマが姿を現す。
再び闇の衣を身に纏っている。
「やれやれ、せっかく作った絶望の象徴が」
ゾーマは、後ろにそびえていた、かつての居城を眺めると、聞いたことのない呪文を唱えだした。
居城があった場所も黒い霧に覆われると、一瞬のうちに再生した。

「嘘だろ」
「・・・どうして」
タンタルがつばを飲み込みながら答えると、テルルは呆然としながらも感想を口にする。

「闇の力があるかぎり、何度でもよみがえる」
ゾーマの哄笑は、俺達に恐怖を植え付ける。

何故、ゾーマは復活したのだ。
理由がわからない。
だが、考えなければ、俺達は全滅してしまう。

ふと、周囲を見渡すと、この世界の明るさが変化した事に気がついた。
戦闘が終わったときは、月夜の明るさ程度だったのだが、今は夕暮れ時の明るさである。
「そういうことか」
俺の頭で、一つの可能性を思いつく。
「どういうこと?」
テルルが質問する。

だが、今答える訳にはいかない。
答えることで、パーティの士気がくずれる可能性があるからだ。


今回の作戦は失敗した。

俺は今回の作戦に必要なのは、
ゾーマの城へ移動する手段
ゾーマをおびき出すための作戦
ゾーマが纏う闇の衣を引きはがすための光の玉
ゾーマを倒すだけの戦力

これで完璧だと思っていた。

ゾーマが再生に用いた力、間違いなく闇の力だ。
ゲームでは闇の力で再生したことはない。
となれば、闇の力を使わせない必要があったのだ。
それが可能な存在は・・・
「ルビスか」
この世界アレフガルドを作ったとされる精霊の名前をつぶやく。

精霊ルビスは、ゾーマにより塔に封印されている。
ゲームでは、ゾーマの城に向かう過程でルビスを助けることになる。
だが、俺はルビスを助けなかった。
ゾーマを倒せば、世界も平和になるし、そのときにルビスの封印も解けるだろうと勝手に解釈していた。
どうやら、俺の考えが誤りだったようだ。

ならばどうする。
俺は、3人に合図を送ると、手にしたキメラの翼を使用する。
修正ができないのならば、逃げるしかない。
それに、テルルが持つ光の玉は、絶対にゾーマに奪われてはいけない。
脱出しようとする俺達を、ゾーマは冷酷な表情で眺めていた。

「うお?」
「きゃあ!」
俺達は、魔法の壁のようなものに跳ね返され、先ほどまで戦っていた城門の前に戻されていた。

目の前のゾーマは、ニヤリとする。
「知らなかったのか。大魔王からは逃れられない」


ああ、知っていたさ。
それでも、すこしは可能性を信じてみても良いじゃないか。


こうなれば、もう一度ゾーマを倒し、復活する前に退却するしかない。
そう、覚悟を決めたとき、背後からモンスターの気配を感じた。

「いつまでも、1人で相手するとは思ったか」
周囲にはドラゴンやキメラなどの群れが待ちかまえていた。
ゾーマだけでなく、モンスターと同時に戦うだけの力は残されていない。
回復の鍵である、「賢者の石のようなもの」も使用回数に限りがある。


もう、策は尽きていた。
俺に絶望がのしかかる。
最初から、ゾーマは俺の考えを読み取っていたのか。

済まない、テルル。
無理して盗賊に転職してもらったのに。

済まない、セレン。
効率を求めるあまり、癒し系僧侶への配慮を欠けていた。

済まない、タンタル。
勇者がいたら、巻き込まれる事はなかったのに。

そして、済まない勇者よ。
光の玉を奪われてしまう。
勇者の旅は、さらに過酷なものになるだろう。
なんとか世界をすくってくれ。

と、よく見るとタンタルは笑っていた。
俺と視線があうと、ウインクで返す。
策があるのかタンタル。
タンタルは頷くと、俺に呪文を唱えた。

タンタルは魔法使いと僧侶の経験があり、それぞれレベル20までの呪文を覚えていた。
この絶望的な状況を打破する呪文があるのか?

「バシルーラ」
「ウオー」
俺は叫び声を上げながら、上空へと飛ばされていく。



気がつくと、とある城門の前にいた。
懐かしい場所だ。
俺の故郷アリアハンだった。
「バシルーラは追放呪文だから、効果があったのか?」
ゲームの中で、魔王バラモスがバシルーラを使用していたことを思い出す。
「まさか、こんな脱出方法があるとは」
俺は、タンタルの機転に感心して他の仲間の帰還を待つ。

テルルはすぐに俺に追いついていた。

「遅いわね」
セレンとタンタルがまだ戻らない。

ラダトームまでルーラで移動して2人を迎えに行くかと考えていると、セレンがこちらに飛んできた。
「テルル、アーベル」
「どうした、セレン?」
セレンは到着するとすぐ、俺とテルルに抱きつくと、膝をくずした。
「タンタルさんが、タンタルさんが・・・」

 
 

 
後書き
第7章が終了しました。

第7章終了時点でのステータス

テルル
盗賊
ぬけめがない
せいべつ:おんな
LV:39
ちから:123
すばやさ:255
たいりょく:166
かしこさ:107
うんのよさ:138
最大HP:337
最大MP:211
攻撃力:163
防御力:226
EX:605544
パワーナックル、黒装束、ドラゴンシールド、ミスリルヘルム

セレン
僧侶
ふつう
せいべつ:おんな
LV:41
ちから:56
すばやさ:142
たいりょく:121
かしこさ:105
うんのよさ:130
最大HP:242
最大MP:210
攻撃力:123
防御力:229
EX:714989
ゾンビキラー、ドラゴンローブ、みかがみの盾、ミスリルヘルム

アーベル
きれもの
せいべつ:おとこ
LV:42
ちから:39
すばやさ:255
たいりょく:119
かしこさ:179
うんのよさ:132
最大HP:237
最大MP:360
攻撃力:89
防御力:270
EX:780882
賢者の杖、ドラゴンローブ、魔法の盾、ミスリルヘルム

タンタル
ぶどうか
くろうにん
LV:39
ちから:252
すばやさ:166
たいりょく:203
かしこさ:56
うんのよさ:147
最大HP:399
最大MP:49
攻撃力:292
防御力:165
EX:686078
パワーナックル、黒装束、風神の盾、黒頭巾 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧