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ラインの黄金

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第一幕その一


第一幕その一

                   舞台祝典劇ニーベルングの指輪
                     序夜 ラインの黄金
                    第一幕  はじまりの河
 青く澄み切った河だった。その河の中に今三人の美しい乙女達が泳いでいる。
 青い眼に濃い青緑の長い髪をしており身体は透き通るように白い。水色の薄い、そのまま河の水に溶けてしまいそうな衣を着てそのうえで河の中を舞うように泳いでいる。その乙女達は泳ぎながら朗らかに笑っていた。
「ヴァイアーーーー、ヴァーーーーガーーーーー」
 歌いながら声もあげていた。
「聖なる波よ揺れ動きなさい」
「ヴォールリンデ」
 一人がその歌う彼女に声をかけてきた。
「一人で見張りをしているのね」
「そうよ、ヴェルグンデ」
 ヴォークルンデは笑顔で彼女に返した。
「けれど貴女が来れば二人になるわよ」
「いいえ、三人の方がいいわ」
「私もってことね」
 ここで最後の一人が二人のところにやって来た。
「そういうことなのね」
「そうよ、フロースヒルデ」
「それが一番ね」
 三人揃うとさらに明るい笑顔を見せ合うのだった。
「さあ、それじゃあ三人で」
「黄金を見張りましょう」
「あの輝かしい黄金を」
 そんな話をする二人のところにある小男がやって来た。そして河の岸辺から声をかける。
 黒く癖の強い髪を無造作に伸ばし顎鬚も不細工に伸ばしている。高い鼻には疣が多くあり目は血走っている。そして黒いタキシードの上着とズボンを着ている。ネクタイも黒い。その彼が来たのだ。
「おおい、娘さん達」
「あら、誰なのかしら」
「わしのことを知らないのか?」
 小男は曲がった背中をそのままに声をかけてきたのだった。
「わしのことを」
「さあ、誰かなんて」
「見たところニーベルングかしら」
 こう察しをつけてきたのだった。
「その御顔見たら」
「そうなの?貴方は」
「ああ、そうさ」
 男はそのことを認めてきたのだった。
「わしはニーベルングの主アルベリッヒ」
「アルベリッヒ?」
「ニーベルングの国であるニーベルハイムから来たのさ」
「またどうしてここに来たの?」
「このライン河に」
 娘達は泳ぎながら水面に出て彼に問うのだった。
「実はだ、ラインの乙女達よ」
「実は?」
「そう、わしがここに来たのは遊びたいからなんだよ」
 こう彼女達に話すアルベリッヒだった。
「あんた達とね。いいかい?」
「つまり私達と付き合いたいってことかしら」
「まさか」
 乙女達はアルベリッヒに顔を向けて尋ねてきた。
「だったら中に来たら?」
「そうよ。このライン河の中に」
「私達のところにね」
「行ってもいいんだね」
 アルベリッヒは彼女の言葉を聞いて問い返した。
「それだったら」
「ええ、どうぞ」
「是非ね」
 乙女達は誘うような笑みを浮かべ彼に言ってきた。
「さあ、どうぞ私達の世界へ」
「水の世界へ」
 こう言ってアルベリッヒを誘う。彼はそれを受けて河の中に入る。そうして河の中に入ってコンクリートで舗装された水底に足を踏み入れると。急に顔を顰めさせた。
「何だ?ここは」
「あら、どうかしたのかしら」
「いやにつるつるして滑ってしまう」
 こう言って不平を漏らすのである。
 
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