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DESIRE

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第三章

 その巨大な像を見上げてだ。私は呆然としながら彼女に言った。
「話には聞いていたけれど」
「ええ、私もね」
「こんな大きな像はフランスにはないわ」
「このお寺自体がもうね」
「ノートルダム寺院と比べてもね」
 ユゴーも作品の中に出したあの寺院ともだった。フランスが誇るその寺院と比較しても。
「引けを取らないわね」
「そうね。本当にね」
「こんな大きなお寺。それに像は」
「少なくとも像はないわね」
「凄いわね、これは」
 巨大なだけでなく緻密に造られた像も見てだ。私は言った。
「これが日本なのね」
「噂以上のものがあるわね」
「成程ね。いい勉強になるわ」
「そうね。けれど服のデザインには」
「あっ、それもちょっとね」
「ちょっとって?」
「ここには博物館。この国の昔のものを集めたものもあったわね」
 私はこう覚えていた。マネージャーはそれが何かも答えてくれた。
「正倉院というわ」
「そこにも行ってね」
「勉強してみるのね」
「少なくとも。凄い刺激を感じるわ」
 心の中で感じた。私が求めていたそれを。
 それでだ。私は彼女にこう言ったのだった。
「いい感じよ。それじゃあそこも行ってね」
「服とかも見てみるのね」
「ええ、そうするわ」
 答えてだ。それからだった。
 私達はその正倉院にも行った。そこにある日本の私達の時代だとシャルルマーニュよりも前の時のもの、服も見た。それも見てであった。
 私は奈良を後にして日本の鉄道で次の古都京都に向かった。その京都に向かう途中にだ。
 私はその電車の中で隣に座っている彼女に言った。正倉院で見たことを。
「あの古代の服はね」
「いい感じだっていうのね」
「ええ。面白いわ」
 礼服で古代の中国のものを模したものだが何処か日本的なものもあった。それも見てだ。
 私はだ。こう言うのだった。
「あの服は男性用に。若い男の子のものにしてもね」
「それはまた随分と冒険じゃないかしら」
「冒険なら望むところよ」
 私は微笑んで言葉を返した。
「そういうのならね」
「挑戦ってことね」
「そう。何でもそれだから」
 だからだとだ。私は彼女に微笑んだまま言葉を返した。
「フランスに返ったらやってみるわ」
「早速刺激を受けたのね。いいことよ」
「鹿も大仏も。それに」
「それに?」
「ええ。周りは山ばかりだけれど」
 奈良はそうだった。盆地にあるのがわかる。だから周りは山に囲まれている。しかしアルプスやフランスの山達と違いどの山も見事な緑だ。
 その緑の山達も見てだ。私は思ったのだ。
「あれが日本の自然ね」
「自然からも刺激を受けるわよね」
「ええ、アルプスからもそうだし」
「それならね」
 私は言っていく。
「この自然もね」
「見るのね」
「そしてね」
 それだけではない。勿論。
「新しいデザインを開発するわよ」
「燃えてるわね」
「いえ、l静かよ」
「静かなの」
「静かな情熱っていうのかしら」
 私が今出した言葉はこれだった。
「今はそうの中にあるわ」
「これはイギリスの言葉、いえアメリカね」
「英語?センスがないわね」
「まあそうだけれどクールジャパンね」
 マネージャーはこの言葉を私に言ってきた。 
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