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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第15話 最初の訓練

新暦75年4月………



「はぁはぁ………」

広いグラウンド。
朝早く、機動六課の訓練場でランニングをする新人達。
スターズはスターズで、ライトニングはライトニングでそれぞれ集団で走っていた。

「エローシュ、遅いぞ!!」
「む、無理………あ、足が………」

フラフラになりながらシグナムの怒鳴り声に返事をする。
視線の先には固まって走るライトニング4人の姿が………

「情けないと思わんのか!!男のくせに一番遅いのだぞ!!」
「ひ、人には不得意な事もあるんで………もう………無理………」

そう言ってコースから外れたエローシュはその場に寝そべって大きく呼吸を繰り返す。

『本当に情けねえな………』
「これでも頑張っている方なんだ………むしろあの4人が凄すぎなんだ………小学生じゃないぞ全く………」

未だに走り続ける4人を見てエローシュが呟く。
真白は一生懸命付いていこうとしているが、もう限界みたいだ。
対して他の3人はまだまだ余裕がありそうだ。

「全く情けない………」
「すいません………」

シグナムのキツい言葉にしょんぼりと謝るエローシュ。

「………まあいい、昨日より距離は伸びている。せめて完走するようにしろ。たったの10Kmだろうが」
「いや、小学生に10Kmって………俺、インドア派なのに………高校球児かっての………」
「何か言ったか?」
「いいえ何も………」

睨まれ、そっぽを向いて答えるエローシュ。
そんな話をしている内に真白を除いた3人は走り終わったのか、ゆっくり歩いて息を整えている。

それが終わると真っ直ぐエローシュの所へやって来た。

「エローシュ、だらしがない」
「うるさい、ルーちゃん達が化物過ぎるんだよ………」
「私やエリオ君はお兄ちゃん達と昔から模擬戦や訓練はしてたから。でも私達もやっぱりキツいよ」
「とか言いつつ余裕そうなキャロちゃんでした」
「1人ナレーションだ………」
「そこまでだ。ただでさえ時間が短いんだ、次の訓練を始めるぞ」

エリオが突っ込んだ後、シグナムの言葉で再び訓練が再開された………









「皆集まったね!それじゃあ、いよいよ魔法の訓練始めようか」

スターズとライトニングのスケジュールは違う。
まだ学生であるライトニングの新人達は早朝基礎トレーニングを行い、学校が終わってから魔法のトレーニングへと移る。

対してスターズの面々は午前中に基礎トレーニング、午後からみっちり魔法のトレーニング。

そしてスターズは昼休みを終え、午後のトレーニングへと移っていた。

「先ずは皆それぞれの力を確認できるように模擬戦をします。特にティアナに該当することなんだけど、皆どんな特徴があってどんな魔法を使えるか確認してほしいの」
「はい!!」
「いい返事だね、取り合えず皆好きなように戦っていいから。1人で戦うもよし、ティアナの指示を聞いて動くもよし。そこは自由でいいよ。でも出来れば連携して欲しいけど………」

そう言ってバルトを見つめるなのは。

「あん?どうした?そんなにじろじろ見て。いいから始めようぜ!!」
「ご覧の通り、バトルジャンキーな人もいるから大変だからいきなり無理は言わないから」
「は、はい………」

スバルの返事を聞いたなのははレイジングハートを展開した。

「なのは、言ってたデバイスは?」
「あっ、はい!シャーリーに頼んで用意してもらいましたよ」

そう言ってカード型デバイスを渡すなのは。

「………ウォルフバイルね………まあいい、セットアップ」

バルトがデバイスを展開すると大きな斧のデバイスが展開された。

「よし、準備完了だ。さっさと始めようぜ!!」
「焦らないでバルトさん。そろそろ………来た!!」

そう言って訓練所の入り口を見ると、ヴィータ、フェイト、シグナムがこっちにやって来ていた。

「模擬戦は5対4でやります。先に私達のポジションだけど、フロントアタッカーがヴィータちゃんとシグナムさん、ガードウィングがフェイトちゃん、センターガードが私だよ。以上をふまえて上手く考えて戦うように。さあ皆デバイスを構えて」

「隊長副隊長が勢揃い………」
「良いじゃない、私達の力がどこまで通用するか試してみましょう」
「うん。ティア、指示お願いね!」
「任せなさい!」

なのはにそう言われ、皆それぞれ気合いが入る。
ティアナ、スバル、ギンガ、加奈がそれぞれデバイスを展開した。

「それじゃあ制限時間は120分で、始め!!」

訓練所がミッドの街並みに変わり、なのはが大きく宣言した………










「くはは!!いいね、いいね!!強い奴と戦えるのは最高だ!!!」

そう1人で笑いながら真っ直ぐ突っ込んでいくバルト。

「あっ、バルトさん!!」
「スバル、ほっときなさい。それより今の私達の状況を確認するわよ」

ティアナがスバルを止め、話し始めた。

「先ずは加奈さん以外の私達は空を飛べない。だけど隊長達全員が空戦魔導師」
「うわっ………」
「だけどミッドの街並みって地上にいたほうが有利ね」
「流石ギンガさんその通りです。この密集している街の中は空中よりも地上の方が有利です。なのでこの街並みを生かしたら戦い方をしようと思います。」
「生かした戦い?」

加奈がそう質問するとティアナがニヤリと笑った。

「はい、内容は………」

そう言ってティアナは4人で集まり説明を始めた………










「なのはこのまま待ってていいの?」
「うん、フェイトちゃん」
「しかし本当に来んのか?」
「うん、バルトさんは真っ向から突っ込んで来るから。バルトさんは固く、フェイトちゃん並みの速さ。バルトさんには悪いけど最初に沈めさせてもらうの。動きが止まったら頼むねヴィータちゃん、シグナムさん」
「了解だ!」
「任せろ」

街の上空、見つけてくださいと言っているかのように4人固まっているなのは達。

「いいねぇ………美人と殺れるなんてよ………」
「バルトさん、模擬戦ね」

そんな4人の前にバルトが現れた。

「固いこと言うなって、殺すつもりじゃないと訓練にならないだろ?」
「なのは、大丈夫だろうな?」

さっきから物騒な事ばかり言っているバルトに不安を覚えたのかヴィータが質問した。

「大丈夫、バルトさんの使ってるヴォルフバイルは非殺傷設定にしか出来ないから」

そんななのはにほっと一息吐くヴィータ。

「………もういいよな?それじゃあいくぜ!!!」

そんなバルトの言葉と共に体に電気が蓄電されていく。

「魔力変換資質!?」
「そう、私と同じなの。………いや、多分私より上手く使えると思うよ」
「それは面白い………」

シグナムが獲物を狙う様な目でバルトを見つめる。

「みんな、私とフェイトちゃんがバックでロングレンジから足を止めつつ攻撃するので、ヴィータちゃんとシグナムさん、クロスレンジでお願いします」
「いや、私だけでやらせてもらう」
「シグナムさん!?」
「ああ………シグナムの悪い癖だなこりゃ………」

ヴィータはため息を吐きながらそう呟く。
対してシグナム、は目をギラギラさせながらバルトを見ていた。

「済まないな。だが高町にそこまで言わせるのだ、仕方がないだろう」

レヴァンテインをバルトに向け構えるシグナム。
そんな答えに大きくため息を吐くヴィータ。

「………じゃあヴィータちゃんとフェイトちゃんは他の4人の相手をお願い。私はシグナムさんが危なくなったら援護させてもらうから」
「………分かった。じゃあ私センターガードするね、ヴィータ」
「了解だ」
「加奈ちゃんは管理局最強の盾って大悟君が言う程だから油断しないでね」
「任せて」
「そっちこそ油断するなよ」

そう言ってフェイトとヴィータは離れていった。

「………まあいい、先ずはそっちの2人から順番にだな………さあ、行くぞ!!!」

斧を振り上げ、レヴァンテインを構えているシグナムに向かって突っ込んでいった………












「………いたな」
「………いたね」

フェイトとヴィータが新人4人を探していると地上の街の交差点で仁王立ちしている加奈がいた。

「明らかに罠だな」
「罠だね」

空中で止まった2人は一旦一定の距離を取り様子を伺う。

『加奈さん!!』
「行け、フェアリー!!」

「「!!」」

加奈を見ていた2人に横ビルの死角から6基のスフィアが3基ずつフェイトとヴィータに向かっていく。

「サークルバインド!!」

フェアリー達は2人が逃げ始める前に魔力の糸でグルグル巻きにした。

「しまっ!?」
「くそ………!!」

『スバル、ギンガさん!!』

グルグル巻きにされた2人に向かってウイングロードで走って来るスバルとギンガ。

「「インパクトバンカー!!」」

それぞれ左右の手に魔力をため、思いっきりぶつけた。

「不味い!!」
「バルディッシュ!!」

『ディフェンサー・プラス』

完全に直撃したかに見えた2人の攻撃はバルディッシュが発動したディフェンサー・プラスにより逸らされ、難を逃れた。

「くそっ、油断した、サンキューフェイト」
「やっぱり選ばれただけあるね」

ファアリーによるバインドを解き、スバルとギンガを見据える2人。

「「はああああ!!!」」

逸らされた2人も直ぐに体勢を整え再び向かってくる。

「へん、動ければこっちのもんだ!!」

グラーフアイゼンを構え、身構えるヴィータ。
しかしスバルとギンガは攻撃のモーションでヴィータとフェイトに向かっていったが、2人ともフェイントのみでそのまま駆け抜けていった。

「シルエット解除」

2人が抜けた瞬間、いきなり魔力のスフィアが現れる。

「えっ!?」
「なんだこりゃ!?」

スフィアは既に2人を包囲しており逃げ場がない。

「ミラージュバレット、エクストリームシフト!!」

展開されたスフィアが一斉に細いレーザーのような砲撃魔法を発射した。

「くっ!?」
「ちっ!?」

フェイトは軽い身のこなしでレーザーの雨を上手く避け続ける。
しかし致命傷は無いものの、所々直撃していた。
対してヴィータは完全に防御態勢。
両手でシールドを張って何とか防いでいた。

「くそっ、味な真似を………面倒だ、一気に叩く!!」

シールドを上空に構えたヴィータはそのまま無理やり上昇。
スフィアの円を抜けるとグラーフアイゼンをラケーテンフォルムに変えた。

「フェイト避けろよ!!ラケーテンハンマー!!」

カートリッジを排出したグラーフアイゼンはロケットの様にカートリッジの魔力を噴出し、推進剤として大きく回転しながら先ほどのスフィアの場所へと降りるヴィータ。

「でやあああああああ!!」

回転により更に威力の増したハンマーの前にスフィア達は簡単に蹴散らされる。

「ヴィータ、力づくなんだから………だけど!!」

ハーケンフォームにしたフェイトは高速でウイングロードにいるギンガへと向かっていく。

「くっ!?」

何とか斬撃をリボルバーナックルで受け止めたギンガだったが、受け止めたと思った瞬間衝撃が無くなった。

「えっ!?」

それと共に不意に背後から感じた違和感。
その違和感を察知し、とっさに振り返るとフェイトが今度は今にもハーケンを降り下ろしており、何とか反応したギンガはまたも左腕で受け止めた。

「よく反応したね」
「は、速すぎる………」
「まだまだ行くよ………!!」

またも高速移動でギンガを翻弄するフェイト。

(まだよ………まだ………)

対してギンガは防御に徹し、一生懸命フェイトに食らいついていた。

「どうしたのギンガ、防戦一方だよ?」
「分かってます………だけどもう少しで………」












「一点必中………ディバインバスター!!」
「うおっ!?」

ラケーテンハンマーの回転が終わった瞬間、ウイングロードにいたスバルから砲撃魔法が放たれた。

「技の終わり際を狙ったのか………スバルも頭使うじゃないか」
「バカにしないで下さい、私だってティアナの相棒なんです!」
「言うじゃねえか、だったら見せてみろ!」

ハンマーフォルムに戻したヴィータは真っ直ぐスバルに向かって突っ込む。

「なんの!」

対してスバルは真っ向から右拳で立ち向かう。

「インパクトバンカー!!」

ハンマーと拳がぶつかった瞬間スバルの右拳にためていた魔力が爆発する。

「うっ、重っ………!!」
「まだまだ行くぞ!!」

魔力が爆発したにも関わらず押されるスバル。
ヴィータは連続でスバルをハンマーで攻撃し続ける。

「くううっ………!!」
「どうしたギブアップか?」

からかうように言うヴィータ。それでも攻撃の手は緩めない。
そしてついに耐えきれなくなったスバルはウイングロードから落っこちた。

「いや、わざと落ちた………逃がすか!!」

落ちるスバルを追うように追撃にでるヴィータ。

「貰った!!」

そう思いハンマーを振り下ろした時だった。

「なっ!?」

ハンマーを下ろした瞬間スバルは引っ張られるようにビルの方に移動したのだ。

「あれはフェアリーか!!」

そこにはフェアリーがビルに固定されていて、そこにスバルは引っ張られていた。
ヴィータも直ぐに追撃に出ようと体を反転させようとしたそのときだった。

「なっ、なんだこれ!?」

体が何かに押さえられているように身動きがとれないヴィータ。

「よし、成功ね」
「先ずはヴィータ捕獲と………」

「ティアナ、加奈………!!」

ビルの隙間から現れたティアナと加奈。
暴れても全く身動きがとれない。

「な、何だよこれ!!」
「私とティアナの複合魔法、ミラージュネットでも名付けましょうか。私のフェアリーによって作ったネットをティアナの幻術で隠したのよ」
「出来れば斬撃が出来るフェイトさんを捕まえたかったけど、フェイトさんだと寸前で高速移動で逃げられそうでしたから………」

「くそっ、舐めすぎた………」
「ティアナ急ぎましょう、いくらギンガでも長い間フェイトの相手をするのは無理があるわ」
「そうですね………ってスバルは?」
「スバルは真っ先にギンガの所へ向かったわ」
「いつの間に………って急がなくちゃ!!」

そう言ってティアナと加奈はその場を後にした………

「………って放置かー!!!」

残されたヴィータは蜘蛛の糸にかかった蝶のようにその場にいるのだった………













「はあああ!!」
「があああ!!」

2つの閃光がぶつかり合う。
1つは赤、もう1つが黄色。

片方は騎士のような洗練された剣士。もう片方は野生で生まれた獣のような豪快な戦士。

シグナムとバルトである。

「いいな、いいなあ!!!チマチマした訓練には飽き飽きしてたが、こういうレベルの高い奴と戦えるだけでも来た意味があるってもんだ!!」
「くっ、そんな余裕でいていいのか?」
「ちっ!?」

腹部に蹴りを喰らい後ろに下がるバルト。

「シュランゲバイセン!!」

シュランゲフォルムに変えたシグナムは中距離から連結刃による攻撃に切り替えた。

「はっはー!!!」

そんな攻撃をバルトは楽しそうにヴォルフバイルで弾き近づく。

「ならば!!飛竜一閃!!」

一回レヴァンテインを鞘に収め、カートリッジを排出。

「おっ!」

バルトは相変わらず楽しそうにバックステップ距離をとった。

「距離を取ったところで無駄だ!!」

連結刃になったレヴァンテインに魔力を乗せ撃ち出すシグナム。
砲撃魔法程の大きさのある斬撃がバルトに向かっていく。

「へっ、面白い………ならば!!」

斧を後ろに片手に構え、シグナムの斬撃を待つシグナム。

「斬り裂け、クリティカルブレード!!」

斧に溜めた魔力を一気に振り下ろした。

「なっ!?」

飛竜一閃の攻撃はバルトのクリティカルブレードにより斬り裂かれた。

「いい技だったぜ。だが俺の方が上だったな!!」

そう言いきった後、高速でシグナムに向かうバルト。

「くっ!?」
「遅い!!」

咄嗟にバックステップで距離を取ろうとしたシグナムだが、バルトの横なぎの斬撃を避けきることが出来なかった。

「くううっ………!!」

何とか左腕で鞘を持ち斬撃を防いだが、その威力に耐え切れる事が出来ず、更にバックステップした事もあり、体勢を崩したまま後ろに吹き飛ばされた。

「もらった!!」

流石のシグナムもその状態では無防備同然。
バルトの追撃を躱す事は出来ない。

だが………

「バスター!!」

シグナムに斬りかかろうとした瞬間、上空からピンクの砲撃は発射された。

「なのはテメェ………」
「バルトさん言ったよね。これは個人戦じゃないよ、チームで戦ってるんだよ」
「はっ、俺は群れるのは嫌いだ。お前らみたいな奴らならともかく、何故雑魚と組まなきゃならん。アイツ等の中で使えんのは、性格のキツそうなペチャパイ女だろ?」
「………バルトさん、加奈ちゃんに直接それ言わないでね。加奈ちゃん気にしてるんだから」
「俺は名前は言ってないぜ、結構酷い奴だななのは」
「えっ!?ち、違うよ!!別に私はそういう意味で言った訳じゃ………」

普段の日常会話になりつつなる2人だが、そんな会話もバルトに向かって飛んできた連結刃によって強制終了になった。

「高町、一応敵味方なのだ、世間話は終わってからにしてもらおう」
「ご、ごめんなさい………」
「巨乳サムライ、まだ余裕そうだな」
「きょ、巨乳サムライ!?………くっ、貴様はデリカシーというものは無いのか!?」
「俺はオープンなんだよ」
「オープン過ぎるの………」

そんななのはの言葉を聞かず、斧を再び構えるバルト。

「さて、今度はどうする?2人がかりでも構わないぞ」

先ほどと同じように心から戦いを楽しんでいる笑み。

「高町、援護を頼む」
「良いんですか?」
「悔しいが奴の力は私よりも上だろう。戦い様はあるが、そこまでする必要は無い。これは個人の決闘では無いのだからな」

それを聞いてなのはは笑みをこぼした。

「分かりました、だったら2人でバルトさんを懲らしめましょう!」
「ああ、そうするか!」

そう言ってなのはは一歩下がり、シグナムはレヴァンテインをシュベルトフォルムに戻した。

「よし、だったら第2ラウンドと行くか!!」

雷を帯びたバルトはもの凄いスピードで駆け出した………













「はあ!!」
「きゃああああ!!」
「ギン姉!!」
「スバルもよそ見しない!!」
「えっ!?うわああああ!!」

ウィングロードの上で防戦一方だったナカジマ姉妹。
スバルが救援に来たが、事態は変わらずフェイトのスピードと時々繰り出すプラズマバレットによって攻撃に転じられずにいた。

そしてそれにも耐え切れず、フェイトの斬撃が2人に入る。

「これで最後!行くよ、プラズマスマッシャー!!」

攻撃を受け、動きが止まった2人に更に追い打ちをかける様に放たれた砲撃魔法。

「スバル!!」
「えっ!?」

ギンガは咄嗟にトライシールドを展開するが、スバルは反応が遅れ、そのまま動けずにいた。

「くっ!!」

もはやどうしようも無く、睨むように直撃を覚悟するスバルだったが………

「………あれ?」

その砲撃はスバルを飲み込む事は無かった。

「………ギリギリだったわね」
「加奈さん!!」

何とかギリギリ間に合った加奈がフェアリーによって作り出されたシールドによって守られたのだった。

「加奈にティアナ!?ヴィータはやられたの!?」
「今、バインドで動けなくなっているわ。その内に装甲の薄いあなたを先に倒させてもらうわ」
「そう簡単にいかせないよ加奈!」

そう言ってプラズマランサー4人に向けて複数展開するフェイト。

「行け!!」

そう言って一気に4人に向けて発射した。

「フェアリー!」
「クイックバレット!」

加奈のフェアリーとティアナの連射した魔力弾は自分達だけでなく、スバルやギンガに向かっていたプラズマランサーを打ち落とした。

「加奈がともかくティアナも予想以上に出来るね………!!」
「「舞朱雀!!」」

ウイングロードでフェイトを挟み打ちにするように左右から上がってきたナカジマ姉妹。
そして2人とも同じ技でフェイトに攻撃した。

「甘いね!!」

しかしその場は空の上。いくら足場を作ったとしても三次元で動く魔導師、ましてやフェイト相手にクロスレンジで挑んでも無謀に等しかった。

「あっ!?」
「きゃ!?」

流れるような連撃も更に上空に飛んだフェイトに当たるはずもなく、空振りに終わってしまった。

「エンジェルリング!」
「えっ!?」

しかしその上空へ移動したフェイト。
いきなり現れた大きな光の輪に驚き、逃げる前に光の輪が縮み、フェイトをしっかりと捕らえた。

「くっ、まだ縛り付けてくる………」
「簡単に私のバインドから逃げられると思わない事ね………ティアナ仕上げよ」

「ギンガさん、スバル!!」

加奈にそう言われ、ティナアはスバルとギンガに言葉を掛けた。

「行きます!!ギン姉後よろしく!!ディバインバスター!!」

フェイトに真っ直ぐ向かっていくスバルのディバインバスター。

「!?バルディッシュ!!」

フェイトの呼び声に答えたバルディッシュが先ほどと同じ、ディフェンサープラスでスバルの砲撃を逸らした。

「だけどこれで終わりです!!」

しかしそれも束の間、ギンガが左拳を構えてフェイトに向かって突っ込んでいた。

「うそ!?」
「貰った、インパクトバンカー!!」

既にバルディッシュにバリアを張ってもらった後であり、そのバリアも先ほどの砲撃で破壊されてしまったフェイトは無防備のままだ。

「くっ!!」

覚悟を決め、身構えるが………

「えっ!?」
「うそ!?」

「ぜぇぜぇ………な、何とか間に合った………」

ギンガの拳を受け止めたハンマー。
その持ち主のヴィータが息切れしながらそこに居た………












「フープバインド!!」

桜色のバインドでバルトを拘束したなのはだったが、バルトはいとも簡単に破った。

「相変わらず簡単にバインドを破るの………」
「お前もいつの間にかバインドするからな………バカみたいに砲撃魔法の威力は高いから全身強化してても危ないときがあるからな………」
「全身強化だと?」
「バルトさんは自分の雷で筋肉に電気を送って強制的に自分のポテンシャル以上の動きが出来るようにしているんです」
「そんな事をしては体がもたんだろう!?」
「バルトさんは頑丈だから」
「そういう問題なのか………?」

とはいえ六課では一番付き合いの長いなのはの言うことであり、なおかつ実際にその様に動いているとなると信じるしかなかった。

「だからあのバルトさんを止めるには蓄電している電気を一回放出させるしかあのスピードを止める手立てが無いです。一回空になればまたあの状態になるまで電気を蓄積させないといけませんから」
「そこが狙い目か」
「はい。そうすればバルトさんは無能です!!」

「誰が無能だゴラァ!!」

そんな会話をしている2人に雷の斬撃が向かってくる。

「なのは、この状態じゃなくても手も足も出ねえじゃねえか!!」
「それはクロスレンジでの話です。ロングレンジなら負けないですよ!!」
「てめえ………バインド、砲撃とうざったいんだよ!!」
「バルトさんだっていくら止めてもしつこく突っ込んで来るじゃないですか!!」
「俺は一応ベルカ式の魔導師だ!!」
「私はミッド式です!!」

またも言い争いを始める2人。

「全くこの2人は………」

そんな2人を見てため息を吐くシグナムだった………











「ヴィータ、予想以上の速さね。………これはちょっと不味いかも………」
「スバル、ギンガさん、一旦下がって!!」

ティアナの指示を受け。ウイングロードをつたって地上へと滑り降りる2人。

「潰す!」

物騒な言葉を言ったヴィータはグラーフアイゼンを空高々に上げた。

「何をする気………?」

加奈がそう呟くとヴィータのハンマーがどんどん大きくなっていき、約10倍程の大きさになった。

「えっ?」
「うそ?」
「やばい!」
「ちょ!?何よあれ!!」

「轟天爆砕、ギガントシュラーク!!」

巨大化したハンマーをそのまま振り下ろすヴィータ。

「スバル逃げて!!」
「だめ、ギン姉間に合わない!!」
「加奈さん、フォースフィールドを!!」
「ごめん、物理攻撃は防げないわ!!」

加奈のフォースフィールドはいかなる魔法も通さないが物理攻撃は別。
ヴィータのギガントシュラークも同じ。
しょせんフィールドなため、武器自体の攻撃をシールドみたいに耐えきれるわけではなく、フィールド外から魔力を防げるだけであった。

なので、フィールドを通り過ぎて、ハンマーが加奈を踏み潰す形になる。

「これで………終わりだ!!」

4人が逃げきる前にハンマーは無情にも4人に向かって振り下ろされた………










「バスター!!」

ディバインバスターよりも少し威力が弱い砲撃を連射するなのは。

「ちっ!!」

斧で斬り裂きながらなのはに向かって突っ込んでいくが………

「シュランゲバイゼン!!」

先程のシグナムの連結刃がバルトを襲う。

「うおっ!?」

鞭のように動くレヴァンテインに直ぐに反応できなかったバルトは咄嗟に体をひねった事で、何とか避けることが出来た。

「ちっ、流石にキツいな………」
『我を使うか?』
「うるせえ、お前を使うまでもねえ」
『だが来るぞ』

「ちっ!?」

バルバドスの言葉に文句を言いつつ、向かってきたピンクの砲撃をバックステップで避ける。
すると更にピンクの誘導弾が向かってきた。

「ボルティックランサー!!」

負けじとバルトも雷の誘導弾を発射した。
互いに相殺しあうが、数の多いなのはが圧倒的に有利で、

「くそっ!!」

残りは斧でなぎ払う事になり………

「貰った!!翔けよ隼、シュツルムファルケン!!」

ボーゲンフォルムから放たれた一撃はバルトにへと一直線で飛んでいった………










「今回の模擬戦は生存2人ですね」

スターズの面々を見てなのはがそう呟いた。
時間が過ぎ、タイムアップといった形で模擬戦が終わり、生き残っていたのは加奈とバルトのみ。

スバル、ギンガ、ティアナはヴィータのギガントシュラークを喰らい、既にフェイトによってダメージを受けていたスバルとギンガは耐えきる事が出来ずダウン。ティアナは加奈の援護もあり、何とか耐えきったのだが、フェイトの追撃でダウン。

逆にシュランゲバイゼンをかろうじて避け、何とか致命傷にならなかったバルトはテンションが上がって戦いが更にヒートアップしていた。

「いやぁ~いい運動した………」
「余裕そうですねバルトさん」
「加奈も2対1になっている状態で良く耐えたもんだ」
「あ、ありがとうございます………」

バルトにまさか褒められるとは思ってなかった加奈は思わず口ごもってしまった。

「さて、ひとっ風呂でも入ってくるか………」
「えっ、バルトさんこの後ミーティングだよ!!」
「おいなのは………女の汗ばんだ匂いもそんなに嫌いじゃ無いが、女としてどうかと思うぞ」
「バルトさん!!」
「ちゃんと出てやるから取り敢えず汗くらい流せって言ってるんだよ。固い事ばかり言ってると老けるぞ」
「バルトさん!!!!」

レイジングハートを構え砲撃魔法を発射する前に直ぐに消えたバルト。

「もう………」
「で、どうするなのは?」
「………1時間後ミーティングルームに集合で」
「くくっ、了解!」

ヴィータに笑われ、なのははぶすっと不貞腐れた顔をして中に入っていくヴィータを見つめていた。

「じゃあシグナムさん、私これから本局の方へ行かなくちゃいけないので、エリオ達の事お願いします」
「ああ、任せておけ」

シグナムとフェイトもそれぞれ中へ入っていった。

「それじゃあみんなも1時間後にミーティング室に集合で。取り敢えずお疲れ様」
「「「はい………」」」
「なのはもお疲れ」
「何か色んな意味で疲れたの………」

なのはは加奈と話しながら中へと入っていく。

「………ねえギン姉」
「スバル言わなくても分かってるわ」
「でも………」

顔を俯いたまま、その後の言葉が出ないスバル。

「スバル、落ち込まないの。分かってた事じゃない、私達のレベルなんてあの人達には全然敵わないって」
「ティア………」
「ティアナの言う通りね。悔しいけど私もまだまだよ。お母さんのシューティングアーツも桐谷さんの技も通用しなかった………ハッキリ言ってショックだったわ。だけど私達はまだまだな分、もっと強くなれる。ここにいる意味をしっかり考えて毎日を頑張りましょう」
「ギン姉………」
「私ももっと戦術を考えてどんな相手にも負けない様にするわ、だから落ち込んでたら取り残されるわよ?」
「ティア………うん!!」

2人に言われ、やっと顔を上げたスバル。
いつも通り生き生きとした顔になった。

「よ~し、頑張るぞーー!!!」
「いきなり叫ぶな!!」
「あたっ!?」

いきなり大声で怒鳴られ、思わずスバルを叩いたティアナ。

「全く………」

そんな2人を見て、思わず笑みをこぼすギンガだった……… 
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