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カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
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第一部
  阿修羅との戦い Ⅰ

 
前書き
遅くなるかもと言ったな。・・・アレは嘘だ。
というわけで、どうぞ。 

 
『来たか神殺し!!!』

「・・・~!声が大きい・・・!」

 耳を塞ぎながら鈴蘭が呻く。先程船の上空に現れた時よりもテンションが上がっているらしく、声が数段大きくなっているのだ。しかも、相手は三柱。数が増えれば当然音量も大きくなるわけで、木々を大きく揺らすその声量はそれだけでも攻撃と言えるほどであった。

「奴にとっては因縁の相手を横から奪った憎き敵じゃからの。気合も入ろう。奴にとってみれば、娘の(かたき)を奪われたようなもんじゃしな。」

 とミーコ。

「バカンスを邪魔するKY(愚か者)にはお仕置きが必要なの。ビシバシと躾て来るの。」

 沙穂を煽るのはリップルラップル。

「頑張るであります!!!」

 殺る気満々の沙穂も、リップルラップルに頷き返した。

「昔からKYな奴だったの。自分が正義だと信じ込んでいるから、他人にどれだけ迷惑を掛けようと気にしないの。ここら辺で人間に倒されて、考えを改めるといいの。」

 どうやらリップルラップルは阿修羅があまり好きではないようで、言ってる内容が結構エグい。だが、『他人に迷惑掛けて』云々は、魔殺商会の人間が一番言っちゃいけない言葉だと思うが。

舎脂(シャーチー)だって、最初は無理やりだったかもしれないけど、最終的には快楽で堕とされて幸せな雌・・・。」

「ハイハイハイハイストップストップスト~ップ!!!女の子が何言ってるんだ!!!」

 暴走し始めたリップルラップルを慌てて止める翔希。これ以上はタグの変更をしなければいけない為、かなり必至だった。

『何をグズグズしている!始めるぞ!!!』

 馬鹿やっている鈴蘭チームに業を煮やした阿修羅が叫んだ。

「ありゃ、かなりお怒りのご様子。じゃぁ沙穂ちゃん。」

「なんでありますか?」

 コテンと可愛らしく首を傾げた沙穂。これから死闘を繰り広げるというのに、その姿には僅かな緊張さえも感じ取ることは出来ない。

 彼女にとって、殺し合いとは日常(・・)だったのだから、今更緊張する訳もない。あのドクターをして、壊れている(・・・・・)と言わしめたカンピオーネ。ただの少女にも見える彼女の本質が、表面化していた。

「斬ってよし!」

 その一言を聞いた瞬間、彼女の雰囲気が一変する。

 ニタァと狂気に顔を歪ませ、己の闘争本能に従って体に力を貯める。限界まで力を貯めたその瞬間・・・

「了解であります!!!」

 ドン!!!

 地面にクレーターを残し、彼女は跳んだのだ。己の敵の元へ。


☆☆☆


 先ず先制攻撃をしたのは、沙穂だった。敵は全て、上空数十メートルに浮いていたというのに、彼女は、魔術なども一切使わずに、カンピオーネとしても異常な、最早人外とも言える大跳躍を行ったのだ。砲弾のように一直線に跳んだ彼女は、三柱の内の一柱と交差したその瞬間、神器”今月今夜(こげつこんや)”を抜き放った。その抜刀術は、最早神速とも言える程であり、人間として最高峰の実力を持っていると言ってもいいだろう。

「ぬ、甘く見るな!」

 今まで三柱同時に喋っていたが、今度ばかりはその余裕も無かった。三柱の内、沙穂の攻撃に反応出来たのはたった一柱。その一柱が、今にも攻撃を受けそうだった一柱の目の前に、分厚い氷の盾を出現させたのである。・・・否、それは既に盾などというレベルの大きさではなく、巨大な壁と言えるほどのものであった。

「危なかった・・・。」

「コッチも甘く見ないで欲しいであります!!!」

 神である彼らをしても、完全に防ぎきることは難しいと思える攻撃だったが故に、防御が間に合った事を喜ぶ阿修羅たちであった。しかし、沙穂の叫びと共に、神の権能を用いた氷の盾は、いとも簡単に叩き切られたのである。

「何!?」

 流石に阿修羅まで攻撃は届かなかったようだが、自身が生み出した盾を容易く破壊された事に驚きを隠せない阿修羅。その隙を見逃す程、沙穂は甘くない。

「喰らうであります!」

 突き出した右手。それが突然変形したのだ!

 生まれたのは砲口。刹那の内に完全変形したその砲口から、鈴蘭の権能で創り出したオリハルコン製の弾丸が雨あられと降り注いだ。

「ガアアアアア!?」

 『腕が変形する』などという、神話の時代にも起こり得なかった珍事に、今度ばかりは対応出来なかった阿修羅。不意を打たれた上に、弾丸がオリハルコン製では成す術もなく、大量の弾丸をその身に受けてしまった。

「何と!?」

「奇怪な・・・!!!」

 重力には逆らえず、地面に落下していく沙穂に攻撃を仕掛けることすら忘れ、呆ける阿修羅たち。しかし、彼ら以上に驚いている人間がいた。


☆☆☆


「へ、変形したですって!?」

 鈴蘭達と一緒にその戦闘を見つめていたアリスである。実は、カンピオーネとなってから沙穂が戦闘するのはこれが初めてである。一体、彼女がどんな神を弑逆したのかさえ、今まで賢人議会は把握出来ていなかった。鈴蘭が彼らに売ったのは、鈴蘭自身の情報のみだからである。

 先程、阿修羅が叫んだ『我が宿敵インドラを殺した神殺し』という言葉から、沙穂が雷霆神インドラを弑逆して神殺しになったのだということは推測出来る。しかし、現在の沙穂が一体いくつの権能を持っているのかさえ、賢人議会は把握していないのだ。

 当然彼らは、沙穂が改造人間―――というよりは、機械人間(サイボーグ)?―――であることなど知る由もない。そもそも、カンピオーネの義母であるパンドラですら機械人間(サイボーグ)がカンピオーネとして新生出来るか分からなかったのだから、当然であるが。正真正銘、世界初の事例なのだ。

「自身の肉体を付け替える神は存在したけど・・・腕が銃になる神なんて・・・。」

 自身の肉体を付け替える神といえば、裏の世界で有名なのがサルバトーレ・ドニが一番最初に弑逆した神である、ケルト神話の神王ヌアダだ。彼は戦闘で腕と王権を失った後に、医神ディアン・ケヒト作の銀による義手を得て力を回復する。その後ディアン・ケヒトの子ミアハによって腕が治ったため王に再臨した。

 このように、肉体を別の何かで補った神は、数は少ないが存在する。・・・が、腕がマシンガンに変形する神など、今まで聞いたこともない。

 アリスが混乱している間にも、沙穂は数十メートルから落下したというのに、またも魔術などを使用せず、肉体性能のみで地面に着地した。そこに、流石は闘神というべきか、いち早く混乱から立ち直った阿修羅たちの攻撃が降り注いだ。

「ぐうう・・・傷が深い。人の子の武器と馬鹿にしておったが、神殺しが使うとこれ程恐ろしい武器となるとは・・・・・・。」

 氷の権能を扱う阿修羅が呟く。彼は、傷の回復を急ぐため、積極的には攻撃に参加せず、牽制程度に氷の弾幕を降らしている。また、他の二柱も、彼が回復するための時間稼ぎに徹していた。

 一柱は、呪力により様々な武具を作り出して沙穂目掛けて投げつけ、一柱は天に向けて何かを呟いている。

 沙穂は、この上空からの猛攻に攻めあぐねているようだ。

「もう、何なの一体!?そもそも、ずっと聞きたかったんだけど、何であの神様三人もいるの!?」

 ちょっとイライラしている鈴蘭が叫ぶ。すると、横で結界を張っていたリップルラップルが、生徒に教授をするように語りだした。

「阿修羅は、自身の神格を分けているの。」

「神格を・・・分ける?」

「どういうことですか?」

 アリスも、その話には興味があったので入る。リップルラップルは気にすることもなく、話を進めた。

「強力な神格を複数所持する『まつろわぬ神』なら、不可能な話じゃないの。とは言っても、それが出来る神は限られるの。凄く少ないの。」

 自身の言葉を刻み込むようにユックリと話しながら進める。

「普通、神は自身の持つ全ての神格の能力を、使い分ける事が可能なの。でも、強力な能力になればなるほど、同時に使用するのは難しくなってくるの。しかし、自らの神格を分離することが出来れば話は別なの。分離された時点で、その神は一柱の『まつろわぬ神』としてこの世に君臨するの。勿論、元々持っていた力を分離するんだから、一柱一柱は多少弱くなるの。・・・だけど、数が増えるのはそれだけで脅威なの。今アイツは、自身の持つ神格を分けて、数で沙穂を圧殺しようとしているの。」

 リップルラップルの言葉に、事態が予想以上にマズイ方向へ向かっている事を自覚するアリス。鈴蘭のほうを向くが、鈴蘭自体は平然としたものだ。

「まあ、数が増えれば厄介になるのは当然だよねぇ・・・。ところで、今分かれている神格は、誰と誰と誰?」

「恐らく、主神格であるインド神話の『アシュラ』に、イラン・インド神話の『ヴァルナ』って所じゃないかの?あとの一柱はよくわからんが。」

 ミーコの言葉に、思わず叫ぶアリス。

「ヴァ・・・ヴァルナ神って、《天空神》じゃないですか!?その他にも、《司法神》や《水神》などの属性すらも持っている、最高神ですよ!?」

「いや、恐らく今は《水神》としての神格しか持っていないの。《天空神》は『ブラフマン』に、《司法神》は『ヤマ神』に既に奪われているの。ずっと水の権能しか使っていないのがその証拠なの。そして多分、最後の一柱は、インド神話の『ラーフ』なの。さっきから、太陽を隠そうとして権能を使っているの。」

 言われた鈴蘭とアリス、ミーコが空を見上げると、確かに日食が起きようとしていた。先程から妙に暗いと思っていた彼女たちだが、まさか日食まで起こせるとは思って居なかったようだ。

「『ラーフ』・・・確か、霊水アムリタを神々に黙って勝手に飲んで、それを太陽の神と月の神によって密告され、ヴィシュヌに頭を跳ね飛ばされた神ですよね。霊水アムリタを飲んでいた為に完全には死なず、頭だけで宇宙を漂って太陽と月を食べるという・・・。」

 呟くアリスに、コクリと頷くリップルラップル。

「其のとおりなの。」

「でも、体全部あるよ?頭だけなんじゃ・・・?」

 鈴蘭の質問に、軽く答える。

「分裂された神格は、主神格の姿と同じになるの。それが何故かは不明なの。」

「成程。」

 納得する鈴蘭。

「兎に角、恐らく『ラーフ』の権能は『時間を操る』か、『闇を操る』のどっちかだと思うの。」

「な、何で?」

「古来、太陽と月は、どちらも時間を表すのに使われているの。それを食べるという表現から、『時間を司る機能を奪う』と解釈する事が出来るの。もしくは、『光を発する物の機能を奪う』と解釈して、光の反対である、闇を操る能力の可能性もあるの。・・・・・・大穴で、『《不死》の属性を持つ太陽を食べる』という表現から、不死殺しの能力かもしれないの。」

「・・・・・・これは、厄介な展開になってきたねぇ・・・。」

 鈴蘭の溜息が、溢れた。
 
 

 
後書き
因みに、ここに描いてある考察は、全部作者の妄想です。あと、何ページか前の沙穂の倒した神についての考察レポートは、この戦いを見たアリスが書いたものです。
原作でアテナがやっていた分裂を、阿修羅にも使わせてみました。 
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