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裏生徒会と正しい使い方

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第1話 『残念ながら私がその1%だ』

「あー…暇だ」
盗浦(ヌスウラ) 峰年(ミネトセ)は、ポツリと呟いた。
ここは朝礼前の学校。いつも通りの椅子に座っていつも通りの机に伏せって、変える力が現在無いのなら妙な博打をしない方がいいといういつも通りの結論を出すと、峰年は近くにいる友人にいつも通りの台詞を吐くだけに留まった。
「峰年君はいつも暇そうだね」
峰年の恐らく一番の友人といえよう節黒(フシグロ) 仙翁(センノウ)は、スケッチブックから顔を上げて苦笑した。
彼の身長は平均よりやや高く、しかし小柄な峰年を見るのに見下すことをよしとしていないそうで、微妙に腰を下げながら峰年を見ている。
「そうだな。暇だ暇だと思っていればいつか大きな暇潰しの機会が訪れる。しかし私が暇潰しを必死に追えば、暇潰ししすぎて飽きることになるからな」
「へぇ、成る程」
仙翁は微笑んだ。
「…というわけで、バナナを空から降らせてくれ」
「えっ、言ってること違わない?」
仙翁は困ったような顔をした。
「いいツッコミだ。しかし、あと何分で可能だ?」
「ぅぅん…聞く?」
仙翁は困った表情のまま携帯電話を取り出した。
「そうだな。聞くだけ聞いておこう。何かの伏線になるかもしれんしな」
「なるかなぁ…?」
仙翁は少し携帯電話を弄ると、峰年に手渡した。
「もしもし」
『峰年様ですか?』
初老の男の声がした。
彼は鶴絵(ツルエ) 務蒔(ムジ)という名の仙翁に仕える執事である。
実は仙翁は、ダイアモンドより堅いと言われているC9N12という物質をイオンストリーム法によって商業的に生産出来るようにし、炭素繊維製の商品の加工技術で独走している会社『GAKREKHUBAHA(ガクレクバハ)』の初代社長の1人息子で、そのせいもあったりなかったりでなかなかに背景が豪勢だったりするのだ。
時間さえ与えれば基本的なことはなんでもこなす謎の執事務蒔は、その中の1人にすぎない。
「鶴絵、相も変わらずなことを言うが手続きのようなものなので我慢して頂きたい、これからの指示は節黒 仙翁のものだと思って聞け」
『かしこまりました』
務蒔の落ち着いた声。
「この学校の天井をバナナを投下して敷き詰めるのに何分かかる?」
ワンテンポ置いて、
『大体、60分程になりましょう』
「ほう、…内訳は?」
『バナナ調達に27分、バナナを届けるのに14分、バナナで屋根を敷き詰めるのに15分、あとは計画調節の時間でございます』
「27分?随分とかかるではないか」
『申し訳ございません。只今、瀞踏(トロフミ)様が病気で寝込まれておりまして、どこかの店に置いてある物を買うしかないといった状況なのです』
「成る程。彼が元気になれば何分で調達出来る?」
『7分程度でしょうか』
「流石だな」
峰年は満足しながら少し笑った。
『えぇ。彼に助けられたことも少なくありません』
 「彼も、な」
それから少しの間話をして、峰年は通話を切った。
「…うむ、随分と暇は潰れた。元来の意味は込めずに有り難う」
峰年は仙翁に携帯電話を返した。
「…そうだ、」
峰年はなんとなく手をポンと打った。
「どうしたの?」
「そういやお前に言ってなかったことがあったなとふと思ってな」
「何?」
「何か面白い話してますか?」
「わっ」
「おや」
2人が気づかない内に、よくあることだが、凌霄(ノウゼン) 葉蓮(ハレン)が2人に近づいていた。
彼女は峰年や仙翁より1学年下だが、周りに避けられているらしくよく峰年や仙翁の元に遊びに来る。
「の、凌霄さん、おはよう」
「どもっす」
 葉蓮は近くにあった椅子を引くとそれにどかっと座り込んだ。
「ふっ、流石だな。全く気配を感じなかったぞ」
峰年はニヤリと笑った。
「別に、見られたくて見られてきてるわけじゃないしいいんすけど」
葉蓮は頭の後ろで腕を組んだ。
「…そうだな。凌霄、君も道連れだ」
峰年は葉蓮を見てニヤリと笑った。
「…なんすか?」
葉蓮は胡散臭そうに目を細めた。
「私はこれから、ある組織をつくろうと思う」
「組織…?」
仙翁は少し怪訝な顔をした。
「ほーぅおーっ。で、何するんすか?」
葉蓮は投げやりな感じに言うと上を向いた。
「裏生徒会、というのを知っているかね?」
峰年は2人を見回した。
 「裏生徒会を立ち上げるんですか?」
 葉蓮は峰年を一瞥した。
 「…ほう、鋭いな」
 峰年は笑みをつくってみせた。
 「裏生徒会なんて、真似るか潰すかのどっちかすから」
 「…成る程な。では、私も一言言わせて頂こう」
 峰年はそう言うと葉蓮の肩に手をポンと置いた。
 「…凌霄、今から私の自己満足タイムが始まろうとしていたのだ。それを根元から折らないでと懇願しておこう」
 「…失礼しました」
 葉蓮は無表情で言った。
 「…というわけで、先程のネタバレを無かったことにして話を戻そう。繰り返すが、裏生徒会を知っているか?」
 峰年は余裕に見える笑みで2人を見た。
「…裏生徒会って、名前しか聞いたことないなぁ。前に近所の高校にあった、生徒会を倒そうとする組織だよね?」
「その通りだ」
峰年は頷いた。
「…それで私はなんと、驚くことなかれ、裏生徒会を立ち上げることにしたのだ!」
「「…」」
「…下手に驚いた振りをされたら少し傷ついていたところだよ…、まぁ結論を正式に認めたところで、途中経過は後から全員の耳に否応なしに入れてやろうと思う。つまり、」
「…」
「…ご協力感謝する。つまり、他のメンバーを集めようということなのだ!」
「「…」」
「なかなか痛々しい子になってきたな、まぁ別に構わんが。…それで、具体的な勧誘方法で、いいのを知らないかね?」
峰年はまるでその答えを知っているかのような余裕の笑みで2人を見た。
「えっ、いや、特に、浮かぶのは…ごめん」
「まぁ取り敢えず、普通の親交を持っている常識人が1人しかいないメンバーじゃ、勧誘も始動も並大抵のことじゃないっすね」
葉蓮はゆったりと椅子にもたれかかった。
「そうだな」
峰年はそう言いながらも笑みを崩さない。
「…だが、なんとかしなければ面白くないではないか」
「それで、何か候補かそれに近いものはあるの?」
仙翁は、結局は不安げに峰年を見た。
「今から0から考える」
峰年は自信に満ちた笑みで答えた。
「…えっとまず、宣伝媒体を考えよう。学校に貼り紙をするのなら学校の許可を得る必要があるし…まぁそもそもその手は難しいとは思うけど」
「学校に関係無いと無理だな。だがカモフラージュに燃える気になったら採用する価値がある」
「学校側を騙せて一般生徒を騙せないのが考えつけばですけど」
葉蓮は不機嫌に聞こえかねない声で言った。
 「…てかやっぱり、この学校の人しか駄目にするんすか?」
 「あぁ、好奇心や能力を持った者達を集めるだけでは面白くない」
 「へぇえ…」
「うーん、学校の前でビラ配りは?効果薄いかな」
「まぁ大体のものは効果が薄いだろう。しかし、例え積み重ねることが出来ても即効性が無ければまずは見送ろうと思う」
「…もしかして、…あ、ごめん、なんでもないよ」
仙翁は慌てたように口をつぐんだ。
その様子を見ていた葉蓮は、少しして峰年を見た。
「…あなたのことは嫌いじゃないすけど、冷たい目していいっすか?」
「その通り、賢いな」
峰年は肩をすくめた。
「…今日中にメンバーをあと2人集める」
峰年は2人を見てからニヤリと笑った。
「な、なんで?」
「…理由とは後からついて回るという言葉は便利だな。私のような馬鹿者が簡単に拡大解釈できる」
峰年はフッと笑った。
「…」
仙翁は、ふぅと息を吐いた。
葉蓮はひきつったようにニヤリと笑っている。
「…さてそこで、ハイリスクハイコストミディアムリターンな方法を1つ思いついた」
峰年は親指を伸ばした。
「放送室ジャック」
「それ出来る?」
仙翁は怪訝な顔をした。
「ふっ、放送部は実質廃部同然。あとは放送室の鍵を手に入れれば後は乗り込むだけ」
「その鍵をどうやって手に入れるんすか?」
「いやなに、私はこの学校のマスターキーを盗み出して鍵屋に持っていって複製したことがあってね、」
峰年は淡々と言った。
「…で、それはどこにあるの?」
「家」
「…盗浦君、」
仙翁はたしなめるような目で峰年を見た。
「もしかして、毅蔭さんに取ってきてもらうの?」
「理解が早いな」
峰年がそう言って悠々と携帯電話を取り出すと、仙翁の非難する目が強くなった。
「毅蔭さん仕事あるんだから、あんまり酷使しない方がいいよ」
「ハハッ、まるで常人の為に常人をたしなめるようだなぁ相対的常人」
峰年は立ち上がりゆっくりと回転しながら言った。
「安心しろ。あの人は私の想像を遥かに越える。むしろあの人があれだけ年を食って私の常識から少ししか乖離していなければ、期待が高いだけにショックが大きい。喉を通らない物とかも出てくるやもしれん位に」
「それとこれとは違うと思うけど…」
「まぁまぁ。あちらだって断ればいいだけだ。考える気はない。全Y削げだ」
峰年は携帯電話を耳に当てた。


峰年は銀色の軽自動車を見つけ、手を軽く振った。
車が峰年の左に停まると後部座席のドアが勝手に開いた。
「…おや、」
峰年は開かれたドアからおはようと挨拶をしながら車内に乗り込んだ。
「おはようございます」
運転席の毅蔭(ギオン) 黎梨(レリ)が、峰年の方を向いて頭を下げた。
「おはよう」
峰年が声のする左を、左なのだ、向くと、煤同母(ススイロ) 辺路(ベロ)が峰年をじっと見上げていた。
「おはよう」
峰年は返しておいた。
辺路と黎梨は数年前、辺路が生まれたことを契機に引っ越すことにしたそうで家の近い峰年はそれから2人と仲良くしている。
黎梨は20代後半で、峰年は彼女の微笑んだ表情しか見たことが無い。
辺路は6才で、彼も彼でいつも楽しそうに笑っている。
「…煤同母は、学校じゃないのかね?」
峰年は運転席に声をかけた。
「休ませました。本人が休みたいと言うから」
黎梨は平然と答えた。
「どうした?いじめられてるのか?」
峰年は辺路を見た。
「うん、いじめられてはいるよ」
辺路はあっさり答えた。
「なんか対策はいらないのか?」
「うぅん、まぁまだいいかな」
「丈夫だな」
「うんだってね、みんなぽくのことキモいとし
かいわないもん。それかんがえたらいみかんが
えなきゃなんでもないよねって」
「悟ったか」
「ということで、私としては特に対策を行なっ
ていません」
黎梨は静かに言った。
「あまり圧力をかけすぎても重くなるだけですし」
「成る程考えないことにした。…それで、今日
はどうしたのだ?」
「きょうはね、れりちゃんにてきとうにどこか
におろしてもらって、そこからてきとうにある
きまわるわるんだよ」
「なんだその開拓者みたいなのは?」
「なんかおもしろそうでしょ?」
「…まぁ、分からなくはないな」
3人で雑談をしていると車は学校の前に到着した。
「さて、私の鍵はどこかな?」
「助手席の私の鞄の中です」
「はい分かった」
峰年はそう言うと対角線上の助手席に身を乗り
出して、黄土色の鞄を引き寄せた。
中を漁ってマスターキ一のコピ一を取り出すと
鞄を戻した。
「それでなにするの?」
辺路が近寄ってきた。
「なかなかいい質問だ。と特に考えずに言っ
おこう」
峰年はフッと笑った。
「ありがとう」
辺路は淡々と言った。
「では、」
峰年は車のドアを開けて外に出た。
峰年が運転席に近づくと窓が下に降りた。
「助かったよ。感謝するだろう」
微笑みながら一礼をする黎梨と手を振る辺路に手を軽く振ると、峰年は1時限目がとっくに始まっているであろう学校へ悠々と歩を進めた。
 
 

 
後書き
初めましてさるとんどる(こんにちワン)、おみのづえSPです。

暁で最初の投稿になります。

一応、これの投稿時点では、3話まで完成しております。

3話までと4話以降の違い

3話までは完成済みの物をコピペして作られますが、その都合で文字がおかしくなる可能性があります。

何でコピペすると、『っ』が『つ』になるんだろう…。

そのせいで『峰年はフッと笑つた』とか表示されるんだが。時代情緒とかいらない。

他には、どうやら『?』も半角になってるようですね。

まぁ何はともあれ、感想突っ込みオチの無い漫談等お待ちしております。

 
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