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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第百五十話 因果応報

                   第百五十話 因果応報
アニューは戻った。しかしそれで全てが終わったわけではなかった。
「それでルイスはどうなのだ?」
「ええ、ルイスでしたら」
沙慈がセルゲイの問いに応えていた。
「今は落ち着いています」
「そうか」
「それにしてもですけれど」
ここで怪訝な顔も見せる沙慈だった。そのうえでセルゲイに対して問い返した。
「ルイスはどうして軍人になったんですか?」
「それは君もわかる筈だ」
セルゲイはまずはこう彼に答えた。
「彼女はあまりにも傷付いた。だからだ」
「そうですか。やっぱり」
「あのガンダムの攻撃を全てを失った」
また言うセルゲイであった。
「その結果だ。戦いを終わらせる為でなく復讐の為に軍に入った」
「薬物投与は」
「最初はあった」
このことも隠さないセルゲイだった。
「私がすぐに止めさせたがな」
「そうだったのですか」
「あまりにもハードな訓練とその薬物投与が彼女を変えてしまった」
また話すセルゲイだった。
「薬物はかなり強いものだった」
「かなり・・・・・・」
「その影響が今も残っているのだ」
「それでルイスはああいったふうに」
「そして精神的なダメージからまだ脱していない」
そのことも見ているセルゲイだった。
「だからあれだけ情緒不安定なのだ」
「・・・・・・そうですか」
「沙慈君」
セルゲイはここで彼を見て言うのだった。
「君のするべきことはだ」
「はい」
「彼女の傍にいることだ」
それだというのである。
「今まで通りな」
「そうですか。今まで通りですか」
「そういうことだ。頼むぞ」
しっかりしてそれでいて優しい声であった。
「彼女のことをな」
「有り難うございます」
「私は思うのだ」
セルゲイは何故か過去を見るような声でまた彼に告げた。
「軍人は武器を持たない市民を守る為にいるが」
「はい、それは」
「男もまた同じなのだ」
こう話すのである。
「男は女を守る為に戦う。そうではないかとな」
「例え力がなくてもですか」
「力は心だ」
心だというのである。
「心があればそれがそのまま力となる。君にはその心が備わっている」
「そんなことはありません」
沙慈はそれは否定するのだった。
「僕は。そんな立派な人間じゃ」
「いや、謙遜することはない」
その彼の言葉を打ち消してみせたセルゲイだった。
「見ている。君は立派な若者だ」
「いえ、それは」
「その証に少尉の側にいつもいてくれているではないか」
「それは」
だがこう返す沙慈だった。
「僕はただ。ルイスが心配だからそれで」
「その心なのだ」
まさにそれだと。セルゲイはまた言った。
「君のその心がそのまま力となっているのだ」
「そうなのですか。その心が」
「だから。彼女の側にいてくれ」
セルゲイの言葉は変わらない。
「これからもな」
「わかりました」
今度ははっきりと答えた沙慈だった。
「じゃあ僕は」
「またすぐに戦いになる」
セルゲイは軍人に戻った。
「行こう。この世界の平和の為に」
「はい」
これで二人の話は終わった。セルゲイは静かに彼の前から姿を消す。しかし艦内の廊下を歩いている途中で横にいるアンドレイに気付いたのだった。
「どうした?」
「聞くつもりはなかったのですが」
まずはこう返すアンドレイだった。
「聞いてしまいました」
「そうか」
「貴方は嘘をついている」
まずはこう言うのだった。
「彼にはそう言っておきながら自分は」
「わかってくれとは言わない」
息子に顔を向けずにでの言葉だった。
「しかし私は母さんを」
「ではそれをどうやって証明してみせるのです?」
アンドレイはあえて意地悪に父に尋ねた。
「貴方が母さんを愛していたということを」
「そのことをか」
「どうするつもりですか、それは」
「いずれわかる」
今はこう言うだけのセルゲイだった。
「それもな」
「わかるものか」
父のその言葉を否定した息子だった。
「私は貴方を許さない」
「許さないのならそれでいい」
それを聞いても構わないというのだった。
「それならな」
「話は聞きました。しかし」
彼は言うのである。
「私は。それでも」
「ならいい。とにかくだ」
彼は息子に対してまた告げるのだった。その言葉は。
彼等は別れた。父と子の間にも因縁があった。それを隠すことはできなかった。
そしてだった。ロンド=ベル自体も宇宙を進みながらそのうえで。今あるものを見ていた。
「敵は?」
「まだです」
カワッセがシーラに対して答えていた。
「まだ出て来てはいません」
「そうですか」
それを聞いて静かに頷くシーラだった。
「まだ見えてはいないのですね」
「はい」
「そしてレーダーにも映っていないですか」
「はい、まだです」
「まだですよシーラ様」
彼女の周りを飛ぶエルとベルが答える。
「まだ出て来ていません」
「シーラ様は何か感じておられるんですか?」
「はい、そうです」
こう答えるシーラであった。
「来ています。東からです」
「東からですか」
「イノベイターの軍勢は確かに迫っています」
「確かに」
ここでシーラに応えたのはアムロだった。
「東の方からかなりのプレッシャーを感じる」
「アムロ中佐が言うのなら」
「それにシーラ様もだと」
二人のことはもうロンド=ベルの誰もが知っていることだった。
「じゃあ間違いない」
「それじゃあ」
「敵が来る」
「東から」
「そうです。ですから」
察したうえで指示を出すシーラだった。
「総員出撃用意です」
「よし、それなら」
「行くか」
「ただしです」
だがここでシーラはまた言うのだった。
「今は我が軍は動かないことです」
「動かない!?」
「どうしてですか?」
「今出撃したら敵に気付かれてしまいます」
だからだというのである。
「ですから今は出ないことです」
「出ないというのか?まさか」
「我が軍は」
「気付かれないように用意しておくことです」
こう言うのであった。
「宜しいですね」
「全軍戦闘用意」
カワッセも告げた。
「しかし出撃はまだだ」
「はい、それなら」
「そういうことで」
皆もこれでわかったのだった。
「マシンに乗ってそのうえで」
「何時でも出られるように」
「何も剣は見せるだけではありません」
ここでもまた言うシーラだった。
「あえて見せないことも大事なのです」
「よし、イノベイター共」
「何時でも来やがれってんだ」
その剣を潜ませての言葉である。今まさに戦いがはじまろうとしていた。
「東から来たら」
「一気に潰してやるぜ」
「覚悟しなさいよ」
アスカも当然ながらもうエヴァに乗っているのだった。
「ぎったんぎったんしてやるから」
「アスカ凄い乗り気だね」
「もうね。今絶好調なのよ」
見れば笑ってさえいた。血に餓えた様な笑みである。
「ロックオンさんが大成功したしね」
「大成功ね」
シンジはここで彼女が何故喜んでいるのかわかったのだった。
「アニューさんのことね」
「そうよ。アニューさんを見事にゲットしたから」
「それでそんなに上機嫌なんだ」
「いいと思わない?ヒロインを連れ戻したヒーロー」
今度はこんなことを言うアスカだった。
「痺れるわよ、それが一番ね」
「まあアスカにはあまりない話かね」
トッドはここでこんなことを言った。
「正直なところな。相手もあれだしな」
「相手?」
ショウは今のトッドに対して返した。
「相手って誰なんだ?アスカにそんな相手がいたのか?」
「御前さんはもうちょっと鋭くなれ」
こう彼に返すトッドだった。
「もうちょっとな」
「どういうことなんだ?トッド」
「俺はわかったぞ」
「俺もだ」
傍らにいるアレンとフェイはわかっているのだった。
「確かにアスカの相手があいつではな」
「そういうのは望めないな」
「?ああ、そうだな」
ここでやっとわかったショウだった。
「彼には無理だな、確かに」
「無理ってさっきから何の話をしてるんだろう」
シンジにはわからないことだった。これは。
「わからないけれど」
「シンジ君も結構鈍感なのかしら」
「そういうのに疎いと思うわ」
マーベルとキーンがここで言う。
「そうなの。疎いだけなの」
「豹馬みたいなのはないわよ、多分」
「あいつまで来るともうな」
「ちずるさんが可哀想だわ」
ニーとリムルは彼女に同情していた。
「あそこまでやって気づいてもらえないのは」
「あんまりだと思うわ」
「あれは私でもわかったぞ」
「ああ、あんたもかい」
ガラリアはバーンに対して述べた。
「やっぱりわかったんだね」
「わからない方がどうかしている」
「シンジはあそこまでいかないのが救いだな」
ショウはここでまた彼を見ながら述べた。
「これからだな。彼は」
「けれどどっちかっていうとヒロインよね、シンジは」
チャムは言うのだった。
「アスカも正統派じゃないけれどヒロインだし」
「えっ、僕ヒロインなんですか」
「あたしが正統派でないってのは余計よ」
ここでやっと彼等の話に気付いた二人だった。
「僕男なんですけれど」
「あたしはどういうヒロインだっていうのよ」
「どんな形でもヒロインだったらいいじゃない」
「そうだな」
そんな彼女に今度言ったのはナナと京四郎だった。
「シンジ君だってね」
「ヒロインになれるのならな」
「男なんですけれど」
シンジはどうしてもそれを言いたいのだった。
「いや、本当に」
「あんたは一矢さんみたいに男らしくなりなさい」
ここでこんなことを言うアスカだった。
「あとはね。タケルさんみたいに」
「アスカってやっぱり」
「一途系だったのね」
「まあわかってたけれど」
アサギとマユリ、ジュリはここでひそひそと話した。
「確かに二人共格好いいし」
「もう凄い人達だけれど」
「何か好みがはっきりし過ぎね」
「あのね、つまりね」
三人の話をよそにシンジに対して言い続けるアスカだった。
「あんたも一途になりなさいよ」
「一矢さんやタケルさんみたいに?」
「ああいうふうになれたら見事なものよ」
また言うのである。
「本当にね」
「確かに一矢さんは凄いよ」
シンジもそれは素直に認めることだった。
「あそこまで一途にエリカさんのことを想えて取り戻せたんだから」
「そうでしょ?タケルさんだってね」
アスカは彼のことも話すのだった。
「お兄さんをあそこまで真剣に見ていてね」
「けれど僕は」
「目指しなさい」
言葉は半ば強制だった。
「いいわね、絶対よ」
「僕何も言ってないけれど」
返答もしていないというのである。
「そんなことは別に」
「あんたも全然わかってないわね」
今度はわかっていないというのである。
「そこまでやれたら誰でも魅力に満ちているのに」
「魅力?」
「そうよ」
それだというのである。
「あんたにもそれができるっていうのに」
「僕は別にそんな」
「口ごたえしないっ」
ぴしゃりとした言葉だった。
「わかったわね、男だったらね」
「男だったら」
「あんたは男なのよ」
「それはわかってるよ」
言わずもがなのことであった。
「ヒロインにされたけれど」
「ヒロインでも男らしくはできるわよ」
「そうなの?」
「そうよ。そんななよなよしたのじゃなくてね」
「ドモンさんみたいに?」
「あれは論外よ」
何故かドモンはそうではないというのである。
「間違ってもあんな人間離れしたのになったら駄目よ」
「そうなんだ」
「ましてやあの変態爺さんや妖怪忍者なんて」
「妖怪忍者?」
「覆面被って軍服で暴れ回ってるあの妖怪よ」
シュバルツを妖怪呼ばわりであった。
「あんな妖怪みたいにはならないでよ」
「あれはちょっと。っていうかかなり」
流石にそれは、というシンジだった。
「普通の人には無理だよ」
「まあ。あれはちょっとな」
トウジも横から言う。
「無茶やな」
「そうかしら」
しかしレイは別のことを言うのだった。
「あれだけ素敵になれたら最高だわ」
「あんたの趣味は聞いてないわよ」
レイに対しても言い返すアスカだった。
「あのね、あれは変態」
「変態なのかしら」
「当たり前でしょ、どうやって生身でこっちの世界に来られたのよ」
「何か拳で次元突き破ったんじゃないかな」
こう予想するシンジだった。
「多分それで」
「それが変態だっていうのよ」
アスカはさらに言う。
「もうね。あんなのだけは論外だからね」
「やっぱりアスカってなあ」
「そうだよね」
シンジはここではトウジの言葉に頷いたのだった。
「偏見あるわな」
「マスターアジアさんにね」
「あたしはああいうのは絶対に駄目なのよ」
その感情を隠すこともないアスカだった。
「素手であそこまで暴れ回ったり常識を破壊しなくったりする人はね」
「それがいいのよ」
しかしレイはこう言うのであった。
「ああしてただ己の道を進む方が一番素敵よ」
「レイの趣味って変わってるんだな」
マサキもここで言う。
「どうなんだよ、あの趣味って」
「さあ。いいんじゃないの?」
その彼に対して返したのはミオだった。
「だって人それぞれじゃない」
「そういうものか?」
「そういうものよ」
また応えるミオだった。
「だから黙って見ていればいいのよ」
「そういうものかよ」
「人の好みには口を出さない」
ミオの言葉は今は妙に真面目なものだった。
「それが鉄則よ」
「それはそうだけれどな」
その鉄則はマサキにしろわきまえているつもりのものだった。
「けれどな。まるで違うタイプだからな」
「あの人とレイちゃんがよね」
「そうだよ。全然違うじゃねえか」
マサキはあくまでこのことを言うのであった。
「それで一緒にかよ」
「一緒になっていいんじゃないの?」
ミオはこれまたかなり極端なことを言った。
「別にね」
「そうかよ。いいのかよ」
「私はそう思うわよ」
「ううむ、そういうものかよ」
「そういうマサキだってそうじゃない」
今度はマサキに対しての言葉だった。
「霧生さんレトラーデさんと」
「何であの人と俺が関係あるんだよ」
「あるじゃない。声が」
「まあ似てるけれどな」
声が似ていることは否定しない彼だった。
「実際のところな」
「内面も結構似てるところあるし」
「御前それレイヴンさんとかヒイロにも言っただろ」
「本当にそっくりじゃない」
また言うミオだった。
「もう何から何まで」
「どうなってんだ、全く」
自分でもこの辺りは納得できるから不思議なのだった。
「本当によ。声はよ」
「声だけはどうしようもないのよね」
セニアがここで言ってきた。
「あたしだってモニカと声が同じだって言われるし」
「それがかなり以前から曲りなりにも気にしていないわけではなかったのです」
「・・・・・・さらに文法がおかしくなってやがる」
マサキも呆れるモニカの今の言葉だった。
「っていうかどういう意味なんだよ、今のは」
「ずっと前から気にしていたってこと」
簡単にこう言ってしまうセニアだった。
「通訳すればね」
「やれやれ、遂に通訳が必要になってきたのかよ」
流石に何も言えなくなったマサキであった。
「全くよ」
「それはそうとしてよ」
ミオがここでまた言ってきた。
「そろそろじゃないの?」
「敵のことか?」
「そうよ。もう来る頃だと思うけれど」
こうマサキ達に述べるのだった。
「どうかしら。そろそろじゃないの?」
「あまり気配とかは感じねえからな、俺は」
彼等はそうなのだった。魔装機のパイロットはそういうものは感じないのだ。彼等はプラーナはあるがニュータイプやそういった存在ではないのだ。
「それでも来るのかよ」
「時間的に」
ミオが言うのはここだった。
「それを考えたらね」
「来るのかよ」
「来るわよ」
また言うミオだった。
「そろそろね」
「そうか。じゃあな」
こう話をしたその時だった。艦内に放送が入った。
「敵艦隊出現」
「ほらね」
「ああ、そうだな」
ここであらためてミオの言葉に頷くマサキだった。
「本当に来やがったな」
「じゃあマサキ」
また言うミオだった。
「出番よ」
「そうだな。さて、どうなるんだ?」
真剣な顔で様子を窺うマサキだった。
「敵が来て。どう動くのかね」
「まあ引き付けてからでしょうね」
セニアはそう予測を立てた。
「それからね」
「それからから」
「だから今はね。待機よ」
引き続いてということだった。
「それでいいわよね」
「ああ、わかったぜ」
そのまま待つのだった。そうして待っているとだった。次にこう放送がかかった。
「総員出撃!」
「よし!」
「行くわよ!」
ここで全機出撃するのだった。出撃した時ちょうどロンド=ベルの右側面にイノベイターの軍勢が向かおうとしていた。丁度いいタイミングだった。
「えっ、何!?」
「どういうことだい、これは」
リヴァイヴとヒリングはそれを見て驚きの声をあげた。
「ロンド=ベルが待っていたかのように」
「出て来るなんて」
「読まれていた!?」
「まさか」
今度はブリングとデヴァインが言う。
「我々の動きが」
「それであえて今出て来た!?」
イノベイター達はそれで自信をくじかれた。出し抜かれたと思いそれで危機を覚えたのだ。
だがアリーは違っていた。凄みのある笑みを浮かべて言うのだった。
「面白いじゃねえかよ」
「面白い!?」
「どういうことなの、一体」
「そうでなくちゃよ。突破する意味がねえぜ」
「突破ね」
「そうさ、突破さ」
こう言うのである。
「突破してやるぜ。今からな」
「もう護りを固めているのにか」
「突破するっていうの!?」
「そうさ。こうでなくちゃ面白くとも何ともねえ」
凄みのある笑みはそのままであった。
「行くぜ、先陣やらせてもらうぜ」
「よし、わかった」
「じゃあ頼むわ」
イノベイター達はここは彼に任せることにしたのだった。
「じゃあな。行くぜ」
「ええ」
「それではな」
「どいつもこいつもぶっ殺してやるぜ」
闘争心はそのままだった。
「派手にな。やってやらあ!」
「よし、僕達もだ」
「行こう」
ヨハン達もここで動いた。
「ロンド=ベルともそろそろ決着をつけないとな」
「いい加減ロスが大きくなってきた」
「ロスとかそんなのはどうでもいいわ」
ネーナは兄達とは別のものを見ていた。それは。
「どいつもこいつも邪魔なのよ。あたしの前から消してあげるわ」
破壊衝動かそれに近いものがあるだけだった。
「一人残らずね」
「僕達も行かせてもらう」
「先陣でな」
「それでいいわよね」
三機のガンダムもここで先陣に出る。イノベイター達は彼等には何も言わなかった。黙認である。そうしてそのま間彼等を行かせるのだった。
四機のガンダムを先陣にして突っ切ろうとするイノベイターの軍勢だった。しかしロンド=ベルは既にその守りを固めているのだった。
「愚か者が。今更来たところでどうなるものでもない」
リーがその彼等を嘲笑していた。
「主砲は右側面に向けているか」
「はい」
「もう向けているわよ」
「よし、ならいい」
彼はホリスとアカネの今の言葉を聞いて満足した声を出した。
「それではそのまま射程内に入れば撃つ。いいな」
「了解」
「じゃあそういうふうにね」
彼等はそれでいいとしたのだった。そうしてそのうえで敵を待つ。既にロンド=ベルのマシンの中には敵に対して攻撃を仕掛けている者もいた。
「行けっ、いいな!」
「わかったニャ!」
「待ちくたびれていたから容赦しないニャ!」
マサキの言葉にクロとシロが応えすぐにファミリアとして出る。そうしてやって来たイノベイターのマシンをその攻撃で撃墜してしまった。
「まずは一機ニャ!」
「ついでにもう一機!」
彼等の攻撃は一機だけでは終わらなかった。小隊単位で攻撃している。
「三機目!」
「四機目もやったニャ!」
「よし、いい調子だぜ」
まずは四機撃墜し機嫌をよくさせたマサキだった。
「このままよ。どんどん潰していくぜ!」
「そうニャ。神様ぶっていても」
「おいら達がそれを否定してやるニャ!」
彼等もまたイノベイター達に反感を覚えているのだった。その攻撃で敵を次々と倒していくのであった。
ロンド=ベルの攻撃は序盤から激しいものだった。しかしそれでもイノベイターの軍勢は果敢に突っ込む。そうしてさらに前に進んだのであった。
「このままいける」
「そうだ、突き破れる」
ヨハンとミハエルは突き進みながら確かな感触を得ていると思っていた。
「よし、それなら」
「突撃だ!」
「さあ、来なさいよ!」
ネーナも血走った目で叫ぶ。
「誰がきても殺してやるわよ!」
彼女は本気だった。そうしてそのままさらに前に出る。しかしここで彼女の直属の機体が全て正面からビームを浴び撃墜されたのだった。
三つの火球となって砕け散る。彼女はそれを見て目を止めた。
「何っ!?砲撃!?」
「すいません、あのガンダムだけは外しました」
「三機撃墜すれば上出来だ」
こうシホミに返すリーだった。
「あのガンダムは他の者に任せる」
「ほう、随分丸くなったものだな」
ブレスフィールドは今のリーの言葉を聞いて述べた。
「今までだと全て撃墜しなければ怒っていたな」
「時と場合による」
こう彼に返すリーだった。
「今はそれでいいからだ」
「そうか。いいのだな」
「そうだ。いい」
また述べるのであった。
「あのガンダムにこだわるより他の敵を撃墜して数を減らしていく」
「それが賢明だな」
「再び主砲発射用意」
そして今こう指示を出すのだった。
「前に出ている敵を小隊単位で狙え。いいな」
「わかりました」
ホリスがそれに応える。リーの指揮は以前に比べて柔軟性の見られるものになっていた。
ロンド=ベルは無理をしてでも突っ込もうとするイノベイターの軍勢を止めていた。そしてそのまま彼等の数を減らすことに成功していた。
「くっ、このままじゃ」
「また出し抜かれるの!?」
そしてそれはそのままイノベイター達の不安になっていたのだった。
「まずい、けれど」
「まだ手はあるわ」
こう言ってだった。彼等の後ろに膨大な軍勢を出すのだった。
そして彼等に対してすぐに命じたのだった。
「行けっ!」
「数で押すのよ!」
その膨大な数の連邦軍やガルラ帝国のものだったマシンに対して命じる。
「そのまま押し潰せ!」
「いいわね!」
マシンには誰も乗っていない。無人操縦である。そのマシン達が数で向かう。しかしその彼等もロンド=ベルによって各個撃破されていった。
「くそっ、駄目か!」
「これだけの数でも!」
「馬鹿かこいつ等」
「一度に出すのならともかく」
ロンド=ベルの面々はその彼等の動きを抑えながら言う。
「各個に出てくればそれで」
「容易に迎撃できるわよ」
「そう来るのなら」
「こっちだてやり易いっての」
つまりは戦力の逐次投入だった。それにより倒されていく彼等だった。
やがてその数を大幅に減らしたイノベイターの軍勢は遂にイノベイター達自身まで前線に出た。しかしであった。
「駄目だ、護りが堅い」
「突破できそうにもないわ」
こう言ってその猛攻の前に歯噛みするだけだった。
「これじゃあ」
「損害は七割に達したし」
しかもその損害も無視できない割合になっているのであった。
「どうする?」
「作戦失敗か?」
「そうね」
戦艦にいるリジェネがここで判断を下したのだった。
「失敗ね。撤退するわ」
「くっ、ここで叩いておきたかったけれど」
「メメントメリまで行かれてしまうのね」
「それならそれでいいわ」
構わないというリジェネであった。
「それでね。リボンズ」
リボンズのところは誰にも聞こえない小さな声だった。
「貴方のところに行くけれど」
「とにかくリジェネ」
「ここは撤退よ」
仲間のイノベイター達はその言葉を聞くことなく自分達の言葉を言うのだった。
「いいな」
「それじゃあ」
「ええ。あと後詰は」
「安心しろ」
「僕達が務める」
名乗りをあげたのはヨハンとミハエルだった。
「最低限の数だけ残しておいてくれ」
「後は引き受ける」
「そう。わかったわ」
彼等の言葉を受けて頷くリジェネだった。何はともあれこれで方針は決まった。
「じゃあ全軍撤退よ」
「ええ」
「それじゃあ」
「見ていることね」
今のリジェネの言葉はロンド=ベルを見てのものではなかった。
「今度は貴方の番よ」
眼鏡の奥に鋭い目をしての言葉だった。イノベイター達がまず戦場を離脱した。
しかし戦場に残った最低限の部隊とそれを率いる三機のガンダムが追撃に移ろうとするロンド=ベルの前に立ちはだかりそのうえで戦うのだった。
「ここからは行かせない」
「覚悟するんだね」
まずはヨハンとミハエルがロンド=ベルの前に立つ。
「どうしても行きたければ」
「僕達を倒すことだ」
「勿論あたし達も生き残ってやるわよ!」
ネーナはここでも荒れ狂っていた。
「さあ来なさい。片っ端からやっつけてやるわ!」
「成程、ここで死ぬつもりなら」
「容赦はしねえぜ!」
ヨハンとミハエルの前にそれぞれグラハムとパトリックが姿を現わした。
「ここで貴様の罪を償ってもらう」
「覚悟はいいな!」
「僕達を倒せるのならな」
「そうするといい」
二人も彼等のその言葉を受けるのだった。
「喜んで戦わせてもらおう」
「今ここで」
「いいだろう。それではだ」
「行くぜ!」
グラハムは両手の剣を構えて突進しパトリックは間合いを取ってビームライフルを放つ。まずはこの二組の戦いがはじまった。
そしてネーナのところにも。彼女が来たのだった。
「いたわね!」
「ふん、また来たのね!」
二人は互いに言い合う。
「ここで!皆の・・・・・・そして私の仇!」
「言っておくわ。あたしは何をしてでも生きてみせるわ!」
早速激しく上下左右に動き回りながら互いに攻撃を出し合う両者だった。
「取ってみせる!」
「やれるものならやってみせなさいよ!」
二人の攻撃はまさに互角だった。どちらも一歩も引かない。
しかしだった。それを見ている刹那が共にいる沙慈に対してこう告げたのだった。
「今だ」
「今?」
「そうだ。伝えろ」
こう彼に告げるのである。
「左だ」
「左!?」
「左に照準を合せろ」
告げる言葉はこれであった。
「そう伝えれば勝てる」
「そう。それじゃあ」
誰に伝えろというのかは最早愚問だった。彼は刹那の今の言葉を受けてすぐに通信を入れた。そしてこう彼女に告げたのだった。
「ルイス!」
「沙慈!?」
「左だ!」
刹那に言われた通りの言葉だった。
「左を撃つんだ!そこを!」」
「左を」
彼のその言葉を聞いて一瞬だが眉を動かした。
「そこを撃てば」
「君の仇が取れるんだ!」
かなりダイレクトな言葉であった。
「だからそこを!早く!」
「わかったわ」
ここまで聞けば充分であった。
「それなら・・・・・・!」
「動きが遅いのよ!」
ネーナは彼等のやり取りを知らずこうせせら笑ったのだった。
「それならね!こっちだって!」
「左!」
ルイスがそこにビームを放った。するとだった。
自然にそこに来たガンダムにそのビームが直撃した。スローネドライの動きがそれで止まってしまった。
「えっ、まさか」
攻撃が当たったのを見て一瞬顔を青くさせるネーナだった。
「あたしの動きを!?」
「今!」
そう思った時にはもう遅かった」
「ここをね狙えば!?」
ルイスがその動きを止めたスローネドライにさらにビームを放つ。最早彼女をしても避けられるものではなkった。
「ああっ!」
「当たった!?全部!」
「どういうことよこれ!」
攻撃を当てられたネーナが怒りの声をあげる。既に機体のありこちから火を放っており彼女の死も最早明らかな状況であった。
「あたしが・・・・・・このあたしが」
「パパ・・・・・・ママ」
ルイスもルイスで言っていた。
「皆・・・・・・私・・・・・・」
「やられるなんて。どうしても生きるつもりだったのに」
「御前は無駄な命を殺し過ぎた」
その彼女に対して刹那が告げた言葉だった。
「その報いを今受けた。それだけだ」
「くっ、認めるものですか」
それを認めるような彼女ではなかった。
「あたしがこんな・・・・・・」
「報いからは逃げられない」
炎に包まれようとするコクピットの中で尚もあがこうとする彼女にまた告げた刹那だった。
「それが今だ」
「こんな、このあたしが」
今炎に身体を包まれながら叫ぶネーナだった。
「このあたしがーーーーーーーーーーっ!」
最後にこう叫んで消えた。スローネドライは爆発の中に消え去った。
「何っ、ネーナ」
「死んだ!?」
妹の死を見てヨハンとミハエルの間に動揺が走った。
「まさか」
「死んだだと!?」
「今だ!」
「戦いの時に注意を外に向けたら命取りだぜ!」
グラハムとパトリックは彼等のその隙を見逃さなかった。
「これで終わりだ!」
「地獄に落ちるんだな!」
グラハムはスローネアインを両手の刀でそれぞれの肩から袈裟斬りにした。パトリックはスローネツヴァイを完全に撃ち抜いた。勝負ありだった。
「ば、馬鹿な・・・・・・」
「僕達が・・・・・・」
これで彼等も炎の中に包まれ消えた。気付けば残っていた敵軍もあらかた倒されてしまっていた。残っているのはロンド=ベルだけだった。
「今回は無難にこなせたわね」
「そうね」
ミサトとリツコが戦場から敵がいなくなったのを見て言い合う。
「上手くいったわ」
「本当に女王様あってのものですた」
「いえ、私は」
そのシーラはグランガランのモニターから今はゴラオンにいる彼女達に対して告げるのだった。
「そんなことは」
「いえ、その通りですよ」
「シーラ様があそこで気付かれたからこそです」
「左様ですか」
「功績は素直に受けてもいいですから」
「たまには」
「有り難うございます」
二人の言葉を受けて微笑むのだった。何はともあれこれでここでの戦いは終わりだった。だがしかしでもあった。まだ戦場には残っている者がいるのだった。
「ルイス」
「あはは・・・・・・」
刹那が彼女の声をかけるが反応はなかった。
「ルイス、聞こえるか」
「パパ、ママ、そして皆」
彼女はまだ彼等を見ているのだった。150
「やったわ。私やったわよ」
焦点の定まっていない目での言葉だった。
「だから。だから褒めて」
「駄目だ」
今の彼女を見て刹那はまた沙慈に声をかけるのだった。
「行け」
「行けってまさか」
「そうだ。そのまさかだ」
こう彼に告げるのである。
「ルイスを救えるのは御前だけだ。行け」
「いいんだね、刹那」
その刹那にこう言葉だった。
「僕で」
「御前だけだ」
またこの言葉を出してみせるのだった。
「だから行け。いいな」
「うん、それじゃあ」
途中まで刹那が同乗していた彼をレグナントの前まで連れて来た。そしてそこでまた言うのだった。
「よし、降りろ」
「うん」
「そして声をかけるんだ」
こう彼に告げるのだった。
「いいな、今からだ」
「わかった。それじゃあ」
「彼女には御前が必要だ」
刹那はまたこの言葉を彼に告げた。
「わかったら行け。いいな」
「よしっ、じゃあ」
刹那の言葉に頷きレグエントのコクピットを叩く。すると暫くしてそのルイスが出て来たのだった。
「沙慈・・・・・・」
「帰ろう、ルイス」
優しく微笑んで彼女に告げた。
「僕達の帰るが場所に」
「帰る場所に」
それあはすぐ側にあるから。
こうも告げるのだった。
「だから帰ろう」
「けれど私は」
彼の申し出に対して口篭ってしまったのである。
「もう」
「帰られるよ」
今度は微笑んでの言葉だった、。
「だからいますぐね」
「じゃあ」
ルイスもそれに応えた。こうして彼女は救われたのだった。
戦いを終えたロンド=ベルは進撃を再開する目指すは第二のメメントメリだった。ルリはここでまたその要塞のことを皆に話すのだった。
「今度のメメントメリはです」
「ああ」
「どういったものですか?」
「姿が見えません」
まず話したのはこのことだった。
「姿は見えません」
「姿が見えない」
「ミラージュコロイドのようなものかしら」
「そうしたものと考えて頂いて結構です」
まさにそれだというのである。
「しかし場所は既にわかっています」
「そう。だったら」
「後は」
「はい」
また皆に応えるルリだった。
「進むだけです」
「思ったより楽か?」
「いや、相手の手の内が読め過ぎだ」
「そう思うと怖いものもあるわね」
ここまで簡単にわかったからだ。罠ではとさえ思う者も出ていた。
「まさかと思うけれど」
「有り得るけれどな」
「確かに」
「ですが罠ではありません」
それはルリが否定した。
「罠でここまで稚拙な応対をするでしょうか」
「はい、それは絶対にありません」
ユリカがこう答えた。
「よし正確な、あえて言えば演技をします」
「その演技が見られません」
ルリが言うにはこうであった。
「ですからそれはありません」
「それじゃあやっぱり」
「ハッキングの際に全部わかったんだ」
「ですから御安心下さい」
ルリの言葉は続く。
「彼等は自らのその傲慢によって倒れるのですから」
「傲慢か」
「それはあるわよね」
「確かに」
このことは誰もが実感していることであった。
「連中はもうな」
「はっきりわかる位にね」
「相手を侮れば必ずそこに隙が生じます」
ここでこうも言うルリだった。
「そこに付け入ればそれで終わりです」
「それが今ってわけなんだな」
「そういうことなのね」
「はい。ですから」
さらに言っていくルリであった。
「この戦いは彼等の自滅に他なりません」
「傲慢な神様の自滅ってわけか」
アキトはふとした感じで言葉を出したのだった。
「そういうことだね」
「そうですね。それではです」
「また進みましょう」
ルリはここでまた言った。
「最後の戦いへ」
「よし」
「それじゃあな」
こうして彼等はそのままメメントメリに向かうのだった。遂に最後の戦いの時が来ていた。
その頃イノベイターの本拠地では。リジェネがリボンズに対して問うていた。
「聞きたいことはね」
「メメントメリのことはもう話したけれど」
「それだけじゃないわ」
こう彼に返していた。
「貴方は一体何なのかしら」
「僕のことかい」
「ええ。私達はイノベイター」
彼女は自分達のことも言った。
「けれど貴方はその私達ですら見下しているわね」
「さて。それはどうかな」
「誤魔化しても無駄よ」
リジェネの今の言葉は剣だった。
「そんなことをしてもね」
「わかっていたのかい」
「わからない筈がないわ」
リジェネの言葉の剣がさらに鋭いものになった。
「貴方のその目だけでね」
「おやおや、君も案外鋭いね」
リボンズは口元を微かに微笑まさせて述べるのだった。
「まさかそこまで見ているなんて」
「見ているわ。そして貴方は」
「僕は」
「この世を一人で治めようとしているわね」
こう彼に問うのであった。
「そうではなくて。超越者である私達をも」
「確かに君達は超越者さ」
ここでこう言ってみせたリボンズだった。
「しかし」
「しかし?」
「僕とは違う」
その次の言葉はこうしたものだった。
「僕は絶対者だ」
「絶対者・・・・・・」
「そうさ。この世の全てを治めるべき者なんだよ」
こう言い切るのだった。
「この世をね」
「言うわね」
今のリボンズの言葉に眼鏡の奥の目を顰めさせる。
「自分一人のものだなんて」
「わかったらすぐに持ち場に戻ってもらおうかな」
リボンズは涼しい顔でリジェネに返した。
「またすぐに彼等が来るだろうしね」
「そのことだけれど」
なおも言うリジェネであった。
「気をつけておくことね。彼等はわかっているわ」
「わかっている。何をだい?」
「私達のこと全てよ」
それをわかっているというのである。
「全てがわかっているわ」
「わかっているかな」
「メメントメリを失い」
最初のメメントメリのことである。
「そのうえ金星でも連戦連敗ね」
「どうとでもなるさ」
そう言われても平然としたままのリボンズだった。
「絶対者の前にはね」
「絶対者であればいいけれど」
今度のリジェネの言葉はいささかシニカルなものであった。
「本当にね」
「神には誰も逆らえないさ」
その神が誰かはもう言うまでもなかった。
「決してね」
「貴方はあくまでそう言うのね」
「最後の最後で勝てばそれで終わりなんだよ」
彼は自分の勝利も確信しているのだった。
「それでね」
「わかったけれどそうはならないと思うわ」
言葉はいささかシニカルなものであった。
「そうはね」
「君にはわからないだけだよ」
リジェネの言葉を一笑に伏すだけのリボンズだった。
「まあ見ていてくれ。僕の最後の勝利をね」
「そうね」
リジェネの言葉はさらに冷たいものになっていた。
「それまで私が生きていればだけれど」
「さて、メメントメリの前が彼等の墓標になる」
ソファーに座ったまま悠然として言うリボンズだった。
「神の光によってね」
「神ね」
またしても冷たいものであるリジェネの言葉だった。
「その神にしろ」
「僕が絶対者だけれど」
「それを造ったのは誰かしら」
こう言うのだった。今のリジェネは。
「それについて考えたことはあるのかしら」
「神はおのずと出来上がるものだよ」
リボンズの傲慢はリジェネの疑問をも完全に打ち消していた。
「それが僕なんだよ。このリボンズ=アルマークなんだよ」
「そして私達は従神というわけね」
「絶対者を補佐する栄誉を受けたね」
「ではそれを受ける幸せを享受するんだね」
「そうなればいいのだけれど」
やはりリボンズの言葉をよしとはしないリジェネであった。
「貴方の言う通りだね」
「やれやれ。君がここまで分からず屋だったなんて」
肩を竦めてみせるリボンズだった。
「僕も計算外だったよ」
「気付いたって言うべきかしら」
リジェネは今のリボンズの態度に対しても冷たかった。
「事実にね」
「まあいいさ。話はこれで終わりだ」
リボンズは話を一方的に打ち切ったのだった。
「君はすぐに前線に向かってくれ」
「そうさせてもらうわ。それじゃあ」
「それじゃあ?」
「さようなら」
リボンズに背を向けての言葉であった。
「これでね」
「妙なことを言うね。これから僕の統治がはじまるのに」
「いえ、それはないわ」
背を向けても言葉はまだ出すのだった。
「絶対にね」
「面白くないジョークだね、全く」
「私もわかってきたのよ」
背を向けたままのリジェネの言葉は続く。
「ティエリアがずっとあちらにいてそしてアニューも戻らなかったのかも」
「下らないね。自分達から従神の座を捨てるなんて」
「人間だからよ」
今のリジェネの言葉であった。
「人間だからだったのよ」
「人間は僕達の道具に過ぎないよ」
今度は道具という言葉が出された。
「所詮はね。治められ導かれるべき存在に過ぎないよ」
「そうね。だったら」
最後に部屋を出る時の言葉だった。
「私達もそうなるわね」
「やれやれ」
部屋から姿を消すその後姿を見て呟くリボンズだった。
「わかってくれないとは。何とも悲しいことだ」
確かに彼は何もわかっていなかった。己のことを。だがそれを思い知ることになる時が遂に来るのだった。それは間も無くのことであった。

第百五十話完

2009・9・17
 
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