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赤髪の刀使い

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安く買って安く売る

「一閃…」

俺は大太刀を鞘から抜き放ち、目の前にいた隻眼鬼面を付けた中身が炎しかない古めかしい鎧武者の姿のボスモンスターをポリゴンの欠片に変える。
目の前にはウィンドウが現れレベルアップとドロップ品のリストが出てくる。

「《存在の力》…これか…」

俺はこの《存在の力》を探して現在最前線に近い25層でもう一度ポップするボスを倒していた。
まぁ…こいつら…確かに強いんだが…

「直線的過ぎるんだよな」

いや攻撃はそこまで直線的ではないが、相手の目を見ていると次に攻撃してくる場所が丸分かりなのだ。
ならばそこを付くように瞬動を使って避けてやればいい。
あとはただの大太刀の乱舞だ。
リズに強化して貰って、元の攻撃力から攻撃力が大体2倍にしたから2層からずっとこれを使っている。
アルゴが言うには性能的には現段階でのプレイヤーの武器の中では中堅クラスだそうだ。

「それにしてもこれが後10個はいるのか…」

先が思いやられるな。







「帰ったぞー」

俺は間借りしているNPCの家に帰ってきた。
ここは3人で共同で全部屋借りてほぼ自分達の拠点にした。
宿のランク的には中間ぐらいだろうか。

この宿に決めた理由は、なんといってもお風呂があるということだ。
このSAOでは汚れないから別に入らなくてもいいんだが…風呂に入らないと一日が終わった気がしない。

「おかえりー
今日はどんな感じだった?」

リズは麦茶のような飲み物を飲みながら俺に問いかけてくる。

「5つだな。
あと10個必要だ」

「まだまだ時間かかりそうね」

まぁ気長に集めるさ。



*


「ただいマー」

アルゴが帰ってきたみたいだ。

「「おかえりー」」

もうここに拠点を構えて1ヵ月、ほぼ我が家と言ってもいいだろう。

「ユウにリズーお土産」

そういってアルゴが俺とリズに渡してきたのは淡いピンク色の髪飾りだった。

「これは?」

「今日検証してきたクエストの報酬♪
ほらほらつけてみて」

言われた通りに付けてみる。

(これだと髪が暴れないで済むな)

俺の髪型は初期のロングな髪をポニーテールにしていたのだが、こういう髪飾りもいいかもしれない。

『聞こえる?』

「ぇ!?
アルゴの声が聞こえた!?」

うん?
どういうこと?

「にゃはは。まともに動いてよかった。
それは簡単に言ったら携帯みたいなものでねー…」

アルゴがいうにはこの髪飾りは同調している髪飾りをつけている人同士だと声に出さずに話すことができるといったもので、範囲は特になくてどこまでもつながるらしい。
迷宮区内ではまだ試してないからまだ何とも言えないらしいけど。
結構クエストがめんどくさいが、日付をまたいでもいいし、何回でも繰り返すことができるクエストだそうだ。

ちなみに通話はこれも思考によってonとoffを切り替えれるらしい。
思考で操作するってフルダイブ型のSAOだからこそありえることだよな。

『あーあー聞こえる?』

リズの声が頭の中に響く。

『聞こえるぞ』

どうやら強く念じたらつながるみたいだな。

これは便利だ。


*


―――ザシュッ

今日も今日とて隻眼鬼面を付けた中身が炎しかない古めかしい鎧武者の姿のボスモンスターをポリゴンの欠片に変える。
存在の力はドロップするときもあればしないときもある。
しかもこのボスは1時間沸きだから連続で狩れない。
別のゲームとかだとチャンネル変更して狩れるんだが…
ないものをいっても仕方ないだろう。

『ユウー鉄鉱石持ってきてー』

頭の中にリズの声が響く。
この髪飾りを手に入れてからリズの要求が多くなった。

(まぁ、いやじゃないんだがな)

ちなみにこの髪飾り迷宮区内でも問題なく使えた。
リンクさせることができるのは5つまでという制限があるが、便利なものには変わりない。

(確かタフトで鉄鉱石を売っている店があったはず)

自分で取るよりは少々高くなってしまうが、今日の狩りでドロップしたいらないものを普通にNPCの店で売ってもいい値段にはなると思う。

そうと決まればとっとと行くか。


*


「おろ?
ユウちゃんじゃねぇか」

俺はタフトに行くために今までいた25層の主街区を歩いていた。
この街の中心に転移門がある。

「えーと…エギルさんでしたか?」

このスキンヘッドの人は確かエギルだったははず

俺は基本ローブを着ているが今は着ずに今日はセーラー服だ。
最近は裁縫スキルをとった人たちによってこういった服もどんどん出回り始めている。
最初に出回り始めたプレイヤーメイド品がメイド服なのはちょっとわからないが。

「おぅよ!
今帰りかい?」

「友達に頼まれたものがあるので今からタフトまで行きます」

もう女の振りも慣れたもんだ。
敬語で話しておけばいいだけなんだがな。

「何頼まれたんだい?」

普通は教えるものではないと思うが、この人なら雰囲気的に大丈夫だろう。

「鉄鉱石を」

「あー鉄鉱石か…うーむ…
これくらいでこれだけ買わないか?」

エギルが俺に提示してきたのは大量の鉄鉱石と相場よりも2割ほど低い金額だった。

「ぇ?」

「んー…あー…まぁいいか。
鉄鉱石を欲しいってことは鍛冶職の子だろ?」

俺は頷く。

「だったらこれを使ってスキルを上げてほしいんだよ。
そうすれば攻略組の装備も整備できるようになる。
それの先行投資ってわけだ」

後でアルゴにエギルについて聞いてみるか。
なぜかアルゴは俺たちが情報を聞いてコルを渡そうとしたら拒否るからな。

「…そういうわけならお願いします」

この程度の金額なら俺の懐も軽くはならない。

「それと買い取りってできます?」

「あぁ」

俺は出てきたトレードウィンドウに今日手に入れたドロップアイテムを色々と放りこむ。

「お、おぉう…
これってA級食材じゃねぇか!」

そうだったのか?
一応1週間分の食料はとってあるから古いものから売りに出したのだが…

「そうなんですか?」

「あぁこの肉は焼くとうまいんだ」

匂いも良いしな、とエギルは言う。
そういや色々料理したがこの肉が1番おいし…2番目か、おいしかった。

「まぁ買い取りお願いします」

「おぅ」

結果としてはNPCよりも高く売れたアイテムと大量の鉄鉱石を持って俺はホクホク顔だ。


「そういえばキリトを見なかったか?」

別れ際にエギルがキリトのことを聞いてきた。

「さぁ…?
一度前線で顔を見たことがありますが一か月前のことなんで」

「んー、まぁあいつなら死ぬことはないだろ」

エギルは子供を見るような目でどこかにいるキリトを見ているのだろう。
優しい雰囲気が伝わってくる。

「では、私はこれで」

「おぅっ!
俺は前線付近で商売してるから何かあったら来てくれ!
安くするぜ!」

「はい」

俺はエギルにお礼を言って別れた。


*


「安く買って安く売る?」

「そう。
エギルっていう商売人は中層プレイヤーの育成のために上層プレイヤーからアイテムを安く買って
中層プレイヤーに安く卸しているの、大体相場の2割引きぐらいでね。
それに中層プレイヤーからのアイテムはちょっと相場より高めに買って上層プレイヤーに相場より高く卸すの、
それでも中層プレイヤーを育成するためにそういったことをしているということを知っている上層プレイヤーには人気の商売人ね」

それだとあまり利益でないよな…

「エギルってプレイヤーは本人も攻略組に参加するほどの斧戦士、自分で狩ったものを売れば生活には困らないってことよ」

今度から利用するか。


「ごはん出来たよー」

リズは厨房からお盆に乗せたご飯を食卓に置く。
今日の献立はカレーだ。
調味料がなかったが俺が一週間ほど頑張って色々作った。
だからこの拠点の厨房には大量の調味料が並んでいる。

「んーおいしそう!」

アルゴはもうスプーンを手にいつでも食べれる体勢だ。

「「「いただきます」」」

これが俺の日常、崩されたくない日常。
この3人で生きて現実世界に戻れたなら静かに暮らしたい。
平和な暮らしがしたい。

それが俺の望みだから… 
 

 
後書き
最近原作なんてガン無視で突き進んでいるような…

男の娘は萌えです! 
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