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スーパーロボット大戦パーフェクト 第三次篇

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第五十話 銀河放浪

                    第五十話 銀河放浪
またエキセドルとベスは一緒にいた。マクロス7の艦長室においてある映像を二人で見ていた。見ればそれは戦闘に関するものであった。
「以上ですか」
「はい」
エキセドルは映像が終わったところでベスに答えてきた。
「先日の戦闘の記録映像です」
「先日の」
「さて、それで」
ここまで語ったうえでまたベスに対して問う。
「どう思われますか」
「少なくとも私が地球や銀河の中で学んだ敵にはありません」
「そうですか」
「見たことのない。そんな相手です」
「そう仰ると思っていました」
そしてエキセドルはそれに頷いてみせてきた。彼の望んだ答えだったようだ。
「そうなのですか」
「はい。使用している機体、戦術」
まずはその二つを語る。
「そして何よりその狙うものといい」
「狙うものも」
「三十五年前に我々に遭遇したあの敵と見て間違いないでしょう」
「あの敵!?」
「そうです」
またベスに対して語るのだった。
「彼等です」
「あの船団がはぐれてしまった」
「はい。再びですか」
エキセドルの言葉に暗いものがさした。
「彼等との戦いが再びはじまりますか」
「三十五年ですよね」
「そうです」
ここでまた歳月が出た。三十五年というその歳月が。
「この三十五年の間」
「ええ」
ベスはその話を聞く。
「我々は彼等の影に怯えながらこの銀河を旅してきました」
「そのようですね」
エキセドルのその言葉に頷く。彼もそれは知っているのだから。
「そしてです」
「どうされました?」
「有効な対処法も見つからないまま今日という日を迎えてしまいました」
「今日を」
「ですが対策を練らなければなりません」
それでもであった。そうでなければ何もはじまりはしないのだ。
「マクロス7の科学班にはあらためて彼等のことを分析させましょう」
「御願いできますか」
「無論です」
ソロシップやイデオンにも関係あることなので。頼み込むのだった。
「それは是非共」
「わかりました。それでは」
「はい。それでは」
これで話が終わる筈だった。しかしだった。ここでエキセドルは不意に声をあげたのだった。
「むっ!?」
「どうしました?」
エキセドルが声をあげたのを見てベスも彼に対して問う。
「何かありましたか?」
「まさか」
彼は深刻な顔をしてまた映像を見ていた。その敵を。
「彼等は」
「どうされました?」
「あっ」
ベスの声に気付いた。それで一旦落ち着きを取り戻してからまた述べた。
「いえ」
「いえ?」
「何でもありません」
こう言って誤魔化すのだった。
「失礼しました」
「そうですか」
(有り得ないですね)
そして一人心の中だけで呟く。
(機体は地球人タイプのものです」
まずはそれが重要であった。
(そんな筈が)
「エキセドル艦長」
またベスが彼に声をかけてきた。
「はい」
そしてエキセドルもそれに応える。
「何でしょうか」
「私はこれでソロシップに戻られるのですね」
「はい。ソロシップも何かと大変で」
言葉が少し苦笑いになっていた。
「それでまた戻っておきたいのです」
「ソロシップも忙しいのですね」
「何人かトラブルメーカーがいまして」
これは本当のことだった。
「本当に色々あります」
「トラブルメーカーですか」
「そうです」
またエキセドルに答えるのだった。
「特にコスモの奴は」
「コスモ君!?ああ」
彼についてはエキセドルももう知っていた。
「彼ですね」
「そう、あいつです」
困ったような笑顔を見せながらまた答えてきた。
「シェリルさんも大変ですがあいつは特に」
「あの赤いアフロヘアの」
「最初は何かと思いましたよ」
確かに奇抜な髪型である。それで彼もコスモをすぐに覚えたのだ。
「また随分派手な髪型をしているなと」
「確かに。あれは」
「しかもです」
さらにそれだけではなかったのだった。
「あいつのあの性格」
「かなり強情なところがありますね」
「それだけではないんですよ」
コスモが問題なのは強情なだけではないのだ。
「かなり乱暴で反抗的で」
「元気がいいと」
「随分と好意的に見ればそうなりますかね」
だがかなり懐疑的であった。今のエキセドルの言葉には。
「かなり、ですが」
「そうでしょうか。ああした若者は結構いますが」
「そうなのですか?」
「はい」
またベスに対して答えてみせてきた。
「以前何人も拝見させて頂いています」
「コスモみたいな奴を何人も」
「アムロ=レイ」
この名前が出た。
「彼もまた」
「アムロ=レイ。まさか」
その名を知らない筈がなかった。誰でも知っている名前であった。
「ロンド=ベルの伝説のエースですか」
「彼とも一緒にいたことがありますので」
「また何処で」
「ロンド=ベルです」
こう答えてみせてきた。
「そこで共に戦っていたのです」
「そうだったのですか!?」
「御存知なかったのですか」
今度は思いきり驚いた顔になるベスに対して問い返した。
「それを」
「ええ、それは」
本当に知らないベスであった。
「今はじめて」
「そうだったのですか」
「すいません、知りませんでした」
それをまた述べる。謝罪で。
「謝る必要はありません。ですがそうした理由でロンド=ベルは知っていますので」
「そうなのですか」
「そうです。宜しく御願いします」
何はともあれそれはわかった。ベスはエキセドルとの話を終わらせた後でソロシップに戻った。戻ると早速カララへの尋問を行うのであった。
「さて」
ベスとカララだけでなく主立った面々がそこに集まっていた。彼等も尋問に参加しているのだ。
「あらためて君に質問しよう」
カララに対して問う。
「まず名前を名乗りたまえ」
「カララ=アジバ」
カララはそれに応えてこう名乗った。
「それが私の名前です」
「そうか。それで」
無論それで終わりではなくさらに問う。
「君は何処から来たんだ?」
「我々バッフ=クランの母星」
それに応えてまた言ってきた。
「バッフ星」
「そうか。それでだ」
また問う。
「何故俺達を攻撃する?」
「それは」
「それは!?」
「貴方達を危険な異星人と考えたからでしょう」
「何だって!?」
コスモはカララの今の言葉を聞いて顔を顰めさせたうえで驚きの声をあげた。
「俺達が危険だって!?」
「何よ!」
カーシャはより感情的になって言い返す。
「先に仕掛けてきたくせによく言うわよ!」
「それはこういうことです」
カララは彼等に対して反論する。
「私が異星人だとわかった時から貴方達が私を危険な女だと思ったのと同じです」
「それは詭弁だわ」
しかしシェリルはカララの今の言葉にすぐに反論する。
「我々の母星は何度も外宇宙からの侵略を受けているのよ」
「私達もこの銀河に来てから何度も違う種族の攻撃に遭遇しています」
カララもこう述べる。
「それと同じことです」
「バルマーにしろ宇宙怪獣にしろ」
モエラは言った。
「敵は多いからな」
「それではだ」
ベスがまた問うた。
「御前達バッフークランは我々を攻撃する為にソロ星へ来たのか?」
「違います」
カララはそれも否定した。
「違うのなら」
「どうしてソロ星に」
「私達はイデを探していたのです」
「イデ!?」
皆イデと聞いて一斉に声をあげた。
「イデっとは何だ?」
「わからん」
「それでカララさん」
皆が声をあげる中でシェリルがカララに対して問うた。
「イデとは何です?」
「イデは無限の力を持つもの」
それがカララの返答であった。
「我々はイデを求めてロゴ=ダウを訪れたのです」
「ロゴ=ダウっていうと」
コスモはそのロゴ=ダウという言葉について考えた。
「ソロ星のあんた達の呼び方か」
「その通りです」
「そうか、やっぱりな」
「で、カララさん」
ベスは今度はカララの名を読んで彼に問うた。
「イデ・・・・・・無限エネルギーのことを我々に教えてもらいたいものだな」
「わかりました。それでは」
「教えて頂けるのですね」
「はい」
ベスに対して頷いてからまた述べた。
「それで宜しいでしょうか」
「御願いします。それでは」
「では」
一呼吸置いてからまた述べた。
「イデの伝説を教えましょう」
「ええ」
「それは私達バッフ=クランの古い言い伝えです」
それが最初の言葉であった。
「昔バッフ星を治めていた女王が凶悪な怪獣にさらわれた時」
「言い伝えだな」
コスモはそれを聞いて述べた。
「おとぎ話っていうことか」
「世の中の光は消え緑は褪せ」
コスモの言葉の中でさらに言う。
「バッフ族は絶滅寸前にまで追いやられたといいます」
「そして一体」
「どうなりました?」
「そんな時その怪獣に立ち向かっていった凛々しい英雄がありました」
「英雄が!?」
「そうです」
ベスに対して答える。
「英雄は女王を助け出す為に怪獣に立ち向かいましたが」
話はしかし、という流れになった。
「その英雄の力では怪獣にかなうべくもありませんでした」
「それじゃあどうやってなんだ?」
ベスはすぐにそこが気になった。
「戦ったのは」
「そこにもたらされたイデの力を持つ果物によって」
これがカララの言葉だった。
「英雄は怪獣を倒したのです」
「そうだったのか」
「そして」
話はここで大団円となるのだった。
「女王を自分のものにした英雄は二人で平和にバッフ星を治めたということです」
「ははは」
コスモはここまで聞いて大笑いした。
「馬鹿みたいな話だな、全く」
「!!」
「そんなことで宇宙を旅して」
表情を一変させたカララに対してまた言い返す。
「その挙句に俺達に攻撃を仕掛けて人殺しだ!冗談じゃないよ!」
「それは」
怒ってきたコスモに対してまた言い返す。
「伝説を裏付ける事実が私達のバッフ星に残っていたのです」
「伝説が!?」
「そうです」
そしてまた言う。
「新しいエネルギーとしてのイデの存在を証明するものが」
「話は聞いたけれど」
シェリルはここまで聞いたうえで考える顔をしてカララに述べた。
「にわかには信じられないわね」
「私達を滅ぼす為の口実じゃないの?」
カーシャはこう考えた。
「結局のところは」
「何とも言えないな」
ベスは腕を組んで深く考えるが答えは出なかった。
「にわかには信じられない話だしな」
こう今のところの結論を出したその時だった。不意にまたサイレンがなった。
「敵か!」
「ベス!」
ハタリがベスに対して叫んで告げてきた。
「この宙域に何者かがDSアウトしてくるぞ!」
「バッフ=クラン」
ベスはまずはそれを考えた。
「それとも例の謎の敵か!」
「わからん。だが」
ハタリはそんな彼に対してまた告げる。
「マクロス7の方は既に迎撃態勢に入っているぞ」
「そうか」
「ベス!」
今度はコスモがベスに告げてきた。
「俺達もイデオンで出る!」
「頼むぞコスモ」
そんなコスモに対して素直に頼む。
「もうすぐブラジラーの宙域に入るからな」
「ああ、わかってるさ」
「その前に」
カーシャはここでまたその好戦性を見せるのだった。
「奴等を全滅させてやるわ!」
こうして戦いがはじまった。既にマクロス7は戦闘態勢に入っていた。
「シティ7切り離し完了」
サリーが報告する。
「安全宙域に退避しました」
「一次防衛ラインBシフト」
今度は美穂が報告する。
「万事整いました」
「バルキリー及びデトロイトは?」
エキセドルはそれを聞いてから美穂に問うた。
「どうですか」
「そちらも準備オッケーです」
「そうですか」
美穂の今の言葉を聞いて頷くのだった。
「ならいいです」
「総員戦闘用意完了!」
「イデオンも出ます!」
またサリーが言ってきた。
「ソロシップも戦闘用意を完了しています」
見ればもうマクロス7の横に来ていた。彼等も準備は万端整えていた。
その中でベスは。イデオンのコスモに対して言っていた。
「頼むぞコスモ」
「戦闘をだな」
「そうだ」
こうコスモに対して答えた。
「我々がブラジラーへ逃げ込む時間稼ぎをしてくれればいい」
「来るぞベス!」
またハタリが報告する。そうして出て来たのは。
「彼等ですか」
「くっ・・・・・・!」
エキセドルとベスは彼等を見てそれぞれ声をあげた。
「バッフ=クランではなく」
「奴等が出て来たか」
「敵なのには変わりないさ」
コスモはこう言ってそれは気にしなかった。
「どっちにしろ。叩き潰すだけだ」
「さてと」
ギギルもいた。彼等は二隻の戦艦を前にして言うのだった。
「ゲペルニッチの奴は様子見だと言っていたが獲物を目の前にしちゃ放っておけねえ!」
それが彼の考えだった。
「行くぜ!」
そして部下達対して命じる。
「奴等のスピリチアを吸い尽くしてやる!」
その言葉と共に進む。今戦いがはじまった。
戦闘はイデオンを中心として行われた。敵の攻撃をかわしながらコスモはあることに気付いた。
「妙だな」
「どうしたの、コスモ」
「いや、あの連中」
敵の動きを見て言う。
「積極的に攻撃を仕掛けて来ない」
「そうかしら」
「ああ、間違いない」
ここで確かな言葉になった。
「どういうつもりなんだ、一体」
「ふむ」
それはエキセドルも感じていた。それを呟く。
「向こうに何か考えがあるようです」
「考えがですか」
「はい。ですから」
美穂に応えて述べる。
「気をつけて下さい」
「わかりました」
警戒をさらに強めつつ敵と戦う。ギギルはコスモに向かっていた。
「よし」
ここでギギルはまた動きを変えた。
「これでいいな。これであいつを目覚めさせられることができるぜ」
「!?あいつ」
彼の動きに最初に気付いたのはカーシャだった。
「コスモ!」
その彼女がコスモに声をかけた。
「あのリーダー機逃げる気よ!」
「そうはさせるか!」
コスモはそれを聞いてすぐに叫んだ。
「ここで逃がしたらまた襲って来るに決まっている!」
「どうするの!?」
「決まっている!」
コスモの考えは積極的なものだった。
「ここで勝負をつけてやる!」
こう叫んでギギルに向かう。しかしエキセドルはそれを見てコスモに通信を入れた。
「いけませんコスモ君」
「エキセドル艦長」
「迂闊な動きは今は」
「守ってるだけじゃ戦いは勝てない!!」
だがコスモはそれを聞こうとしない。果敢に攻撃にかかる。
「だから!」
「デカブツめ!」
しかしギギルはイデオンの動きを冷静に見ていた。それを見ても動きを崩さず反撃にかかった。
「隙だらけなんだよ!!」
「何っ!?」
反転しイデオンに向かう。コスモの予想していない動きだった。
「覚悟しな!」
その牙を剥いて向かう。
「コックピットに直撃を食らわせてやるぜ!!」
「!?来たっ!」
「コスモ、よけて!」
カーシャがまた叫ぶ。しかしそれは間に合わなかった。
「喰らえ!」
ギギルはイデオンに正確に攻撃を加えた。それは今までにない、何かを吸い取るような攻撃だった。接近してきてビールを放ったのだ。
「うわあああっ!!」
「コスモ!!」
ベスがそれを見てコスモを呼ぶ。しかし。
今は反応がない。それが不気味だった。また何かを吸い取ったギギルもまた・
「妙だな」
怪訝な顔をして首を傾げるのだった。
「こいつのスピリチアもよくわからねえ。こんなものをあいつに与えるわけにはいかねえな」
こう呟いて姿を消す。見れば他の敵もそれに続いていた。戦闘はこれで終わった。
しかしであった。イデオンは違っていた。サリーがそのイデオンに通信を入れる。
「イデオンのパイロット!」
まずはこう呼ぶ。
「応答して下さい!聞こえますか!」
「こちらは大丈夫です」
応えたのはモエラであった。
「そうですか」
「ですが」
しかしここで言う。
「Aメカのコスモが
「コスモ!」
カーシャがコスモに声をかける。
「無事なら返事をして、コスモ!」
「ああ・・・・・・」
だが返事はこうだった。生きてはいたが。
「うあああ・・・・・・!」
「いけませんね」
エキセドルは今のコスモを見てすぐに今の彼がどうなっているかを察した。
「ショック症状です。すぐに下がらせましょう」
「は、はい!」
イデオンを回収し何とかブラジラーに向かう。戦いが終わったことが不幸中の幸いであった。
その頃。ギギルは奇怪な場所にいた。そこは氷に包まれた世界であった。
「シビル」
彼は何かの名前を口にした。
「待っていろよ。今御前を目覚めさせてやる」
そう言ってある氷の前に来た。そこには少女がいた。人に近いが細部が色々と異なっている。強いて言うならば妖精に似た、そんな感じの少女が氷の中にいたのだ。
ギギルはその少女を見ていた。そして手から光を放ちそれを少女に対して当てた。するとそこからさらに眩いばかりの光が放たれたのだった。
「うぐうううう・・・・・・」
ギギルはその中で声をあげる。
「うぐうぐぐぐぐぐぐ・・・・・・うおお!」
エネルギーを放射する感じだった。ギギルはそれに必死に耐えている。そしてその中で辺りがさらに光に包まれて。氷が溶け少女が出て来た。
「シビル!」
ギギルはまたその名を呼んだ。
「わかるかシビル!」
また呼ぶ。少女はそこに立っているだけだ。
「眠りから覚ましたのはこの俺だ!」
それを少女に叫ぶ。
「ギギルだ!」
「スピリチア・・・・・・」
「そうだ!」
またシビルに叫んだ。
「俺と来いシビル!」
「シビルが」
「そうだ。そこにはスピリチアが溢れるほどある!」
「スピリチア・・・・・・」
また何かが目覚めた。そして。銀河でまた何かが動いたのだった。
マクロス7とソロシップはブラジラーに入っていた。中年の赤い髪の女性士官が彼等の応対をしていた。
「エキセドル艦長ブラジラーへようこそ」
「ご協力に感謝しますカミューラ司令」
エキセドルがその女性士官の官職氏名を呼んで応える。
「お邪魔して申し訳ありません」
「いえ」
だがカミューラはそれに応えて言うのだった。
「このブラジラー前線基地は移民船団の中継基地として機能しています」
「はい」
「ですから貴方達の来訪を心から歓迎します」
(ふむ)
エキセドルは彼女と応対を続けながら心の中であることを呟いた。
(どうやらこの基地の時間の進み具合はソロ星と同じですな)
時間のことであった。
(やはり我々だけが)
「カミューラ司令」
今度はベスがカミューラに対して言った。
「我々の報告した異星人バッフ=クランがここにも現れる可能性があります」
「バッフ=クランですか」
「そうです」
強い声をまた彼女に伝える。
「今すぐにも基地の防備を固めることを上告します」
「心配は要りません、ベス」
しかしカミューラの返答はこうであった。
「この基地は外敵に対して充分な迎撃機能が装備されています」
「しかし」
「ですが」
ここでカミューラは微笑んだ。そのうえでまた言ってきた。
「貴方の言うことも参考にしましょう、ジョーダン=ベス」
「カミューラ司令」
ここでベスはさらに真剣な顔になった。そのうえでまた言う。
「私は幼年学校で貴方の授業を受けていたベスではありません」
こう言うのだった。
「今の私は」
「おっと、そうですね」
カミューラは笑っていた。穏やかなものだ。しかしエキセドル達はその穏やかさを見てある種の絶望を感じていた。
(いけませんな)
エキセドルはまた心の中で呟いた。
(この基地は我々の置かれている状況を把握していません)
(ではやはり)
(はい)
続いて小声でベスと囁き合う。
(この基地に留まることはここを危険に巻き込むこととなります)
(そうですか)
「ところで」
ここでカミューラはコスモに気付いた。
「その少年は?」
「ユウキ=コスモ」
ベスが彼の名を言った。
「イデオンのパイロットをやらせています」
「この子にですか」
「はい。ですが」
「様子がおかしい」
カミューラはすぐにコスモの異変に気付いた。
「疲れか、怯えか」
「・・・・・・・・・」
だがコスモからは返事がない。呆然としたままだ。しかし彼女はそんな彼に対して優しい笑みを浮かべてこう声をかけるのだった。
「気の毒に。けれど大丈夫よコスモ君」
母性を感じさせる言葉であった。
「もうここにいれば怖いことはないわ」
「カミューラ=ランバン司令」
ベスはここでまたカミューラに対して上申した。
「もう一度申し上げますがこの基地の戦闘態勢では不十分です」
「冗談でしょう?」
しかしカミューラはまだそれを理解してはいなかった。そしてこう言うのだった。
「このブラジラーには外宇宙の橋頭堡として十分な戦力が用意されています」
「十分って」
その彼女にカーシャが問う。
「何を基準にしてでしょうか?」
「地球連邦の外宇宙における戦力配備規定に基づいてです」
これがカミューラの答えだった。だがそれに納得する者はなく今度はシェリルが彼女に言うのだった。
「カミューラ司令」
「ええ」
「カーシャはここの戦力じゃ異星人に対抗出来ないと」
「私達は軍人です」
声が少し厳しいものになった。その顔も。そこには誇りがあった。
「戦闘のプロです」
「ですが」
シェリルはその誇りに対してあえて問う。
「今までに異星人と戦ったことはあるんですか?」
「お止めなさい」
そのシェリルをエキセドルが制止した。
「エキセドル艦長・・・・・・」
「カミューラ司令」
最後にエキセドルがカミューラに対して言った。
「補給が済み次第我々はここを経ちます」
「そうですか。それで」
カミューラはそのエキセドルに対して問う。
「その後貴方達は何処へ向かうつもりです?」
「それはこれから考えます」
これがエキセドルの返事であった。
「ただ」
「ただ?」
「ここに留まることは互いの為にならないでしょう」
「そうですか」
「はい。ですから」
「・・・・・・わかりました」
カミューラは何かを察したがあえてそれは言葉に出さずに頷いた。
「では補給の済むまでの間はゆっくり休まれるといいでしょう」
「おばさん」
ここでコスモがふとカミューラをこう呼んだ。
「おばさんって優しいんだね」
「コスモ君・・・・・・」
「本当に優しい目をしているな、おばさん」
彼はそう言うのだった。その横でエキセドルがベスに声をかけていた。
「ベス君」
「はい」
「カララさんのことはどうするつもりですか?」
「ここで彼女を引き渡しても災いの種になるだけでしょう」
ベスの考えはこうであった。
「尋問は我々で続けます」
「そうですね」
エキセドルはそれを聞いて頷くのだった。
「賢明な判断だと思います」
「さあコスモ君」
またカミューラがコスモに声をかけていた。
「いらっしゃい。ここには戦いはないから」
「うん」
母親の様なカミューラに連れられる。ソロシップの面々も船に戻る。そこでまた話をするのだった。
「さて」
ベスがまず話の口火を切った。
我々の所にいる捕虜のことだが
「捕虜ってカララのことか?」
「他に誰がいるのよ」
シェリルがジェリバに言う。
「いないでしょ?」
「まあ確かにな」
「わかりきったことじゃない」
「済まない」
「それでだ」
ベスがここで言う。
彼女を通じてバッフ=クランに休戦を申し出たい」
「休戦!?」
「そうだ」
モエラに対して答えた。
「それでどうだ」
「そんなの嫌よ!」
それにまず反対したのはカーシャだった。
「何で休戦なんか!」
「それだけれど」
シェリルもベスに問うてきた。
「休戦してどうする気なの?」
「その前にだ」
ここでベスが皆に問う。
「バッフ=クランが俺達を追う理由は何だ?」
「カララの言っていたイデを求めているからじゃないの?」
カーシャはこう考えるのだった。
「やっぱり」
「そのイデの正体が何であるかはわからないけど」
シェリルは考えながら述べた。
「その伝説が確かだとしたら」
「カララの言っていた現実ね」
「ええ。イデオンとソロシップに何らかの関係があると見るのは当然でしょう」
「それに加えてだ」
ベスはまた言ってきた。
「連中はカララを取り戻そうとしているんじゃないだろうか?」
「カララをか」
ジェリバはそれをベスに対して言う。
「そう言えるその根拠は何だ?」
「先日の戦闘であの巨大メカは明らかにソロシップへ取り付こうとしていた」
ベスはまずはこう述べた。
「また物腰から見てもカララは身分の高い女性ではないかと思う」
「身分の高い女性か」
「ああ」
モエラに対して答える。
「俺はそう見ているのだがな」
「けれどよ」
しかしカーシャはここで首を捻るのだった。
「そんな人が何故ソロ星に一人で降りてきたのよ?」
「カーシャみたいだからよ」
ここでシェリルがカーシャの名前を出した。
「私ですか?」
「そうよ」
そしてまた言う。
「貴女の様に勝気で何にでも興味を示す女性ならね」
何気にいささか失礼なことを言う。
「来るわ」
「シェリルさん!」
「そうね」
カーシャを無視してベスに対して言う。
「どう接触するかだけどやってみる価値はありそうね」
「そうだな」
それにモエラも頷くのだった。
「ここの連中が頼りにならない以上それも一つの手だと思う」
「ベス、待ってったら!」
皆がそれに乗ろうとするところでカーシャは必死にベスに主張する。
「休戦なんて臆病者のすることじゃなくて?」
「臆病者か?」
「だってそうじゃない!」
彼女はさらに主張する。
「人質のおかげで敵が本気であたし達に仕掛けられないならこちらが有利な筈よ!勝てるわ!」
「コスモを欠いたままでか?」
ベスが言うのはそれだった。
「それで戦えるのか?」
「大丈夫よ!」
カーシャはここでも強気だった。
「コスモの代わり位あたしがやってみせる!」
「それでは同じだ!」
カーシャのその言葉を聞いてベスは怒った様に叫んだ。
「何ですって!?」
「コスモと同じだ!」
「コスモと!?」
「そうやって奴も先走り」
まずこう言う。
「その結果があれだ!」
「それは・・・・・・」
「いいか、カーシャ」
冷静さを取り戻したうえでカーシャに対してまた言った。
「俺達は生き延びることを考えるんだ」
「生き延びることを」
「そうだ」
またカーシャに言う。
「その為には少しでも可能性のある方法を試してみたい」
「しかしだ」
今度はジョリバが言った。
「休戦の申し入れはどうやるんだ?」
「申し入れか」
話は肝心のそれに移った。
「そうだ。通信の周波数もわからないしな」
「それならいい方法があるよ」
デクが来て言った。だがカーシャはその彼を叱るのだった。
「デク!」
「何だよカーシャ」
「ここは子供が来る場所じゃないわよ!」
「いや、いい」
だがベスはそれをよしとした。
「今はそんなことを言ってる場合じゃない」
これが彼の考えだった。
「デク」
「うん」
「よかったらその方法を聞かせてくれ」
「だからあれなんだろ?」
「あれ?」
「うん。要するに戦う気がないことを示せばいいんだろ?」
「ああ」
ベスもその言葉に頷いた。
「その通りだ」
「だったら」
そして頷くのだった。こうしてデクの話がはじまる。それは。
ブラジラーのレクリエーションセンター。ここにコスモとカミューラがいた。カミューラが彼を連れて来たのだ。
「ねえコスモ君」
緑の中でコスモに声をかける。
「気に入ってくれて?」
「ここがだね」
「そうよ。ブラジラー最大のレクリエーションセンターよ」
「うん」
コスモはまずはカミューラの言葉に頷いた。
「緑がきれいだ」
「あのね、コスモ君」
またコスモに優しい声をかける。
「私にも貴方位の男の子がいたの」
「俺位の」
「ええ。もう十年も別れたっきりになってるけど」
こう言って寂しい顔になるがそれは一瞬のことだった。
「私でよければ何でもおっしゃい。気持ちが晴れるわ」
「おばさん・・・・・・」
「貴方をお医者様に見せることは出来るんだけど」
まずはこう前置きする。
「貴方の瞳は輝いているわ。大丈夫よ」
「大丈夫?」
「そうよ」
それをまたコスモに対して言った。
「貴方は強い子だから」
「俺は」
「ええ。だからすぐ元気になるわね」
「・・・・・・いいよ」
「えっ!?」
不意に言ってきたコスモの言葉に顔を向けた。驚いた顔で。
「俺はもう子供じゃない!」
「コスモ君、一体」
「一人前だ、相談に乗ってくれなくていいよ。何でもかんでも一人で出来るんだ」
不意にこう主張しだしたのだった。
「今さら優しくするなんて嘘だよ。母さんはいつだって自分の都合のいい時だけ出てきてああしろこうしろだ」
「コスモ君・・・・・・」
「俺は母さんのお人形じゃないだ!」
また叫んできた。
「一人前なんだ!戦うことだって出来る!皆を守ることだって出来るんだ!」
まるでそのことを誇示するように叫ぶ。別人の様に。
「あの攻撃だってあのバッフ=クランの攻撃だって」
今度はバッフ=クランの名前を出した。
「俺は・・・・・・あの・・・・・・ああ・・・・・・」
「落ち着いてコスモ君!」
そんなコスモの背中に手を当てて声をかけた。
「ここは安全な場所だから!」
「うう・・・・・・ああ・・・・・・!」
「どうして急に・・・・・・んっ!?」
この時だった不意にポケットに通信のコール音が鳴った。
「緊急呼び出し!?こんな時に」
「ううう・・・・・・」
「コスモ君」
地面に両膝と両手をつき呻いているコスモに対して声をかけた。
「私は行かなければならなくなったの」
こう彼に告げた。
「おばさん・・・・・・」
「ここは安全な場所だから」
そしてこう言うのだった。
「怯えなくても大丈夫よ」
「う、うん・・・・・・」
「いい子ね」
また優しい声をかけてにこりと笑ってみせる。
「きっと君はすぐに元気になるわ」
カミューラは去った。しかしその時にセンターに音楽がかかった。歌まである。それはゆっくりと、だが確実にコスモの心に入ったのだった。
ブラジラーに軍勢が来ていた。既にソロシップは準備していた。
「来るぞ、ベス!」
ハタリがベスに声をかける。
「おそらくは」
「相手がバッフ=クランの場合はだ」
ベスが皆に告げる。
「手筈通りに行くぞ!」
「わかっているわ」
シェリルがベスのその言葉に応える。
「あれをね」
「ああ」
敵が姿を現わした。彼等は。
「バッフ=クランか!」
「よし!」
ソロシップから声があがった。
「それの用意をしろ!」
「わかったわ」
シェリルがベスの声に頷いた。そして出したものは。
白旗だった。それをバッフ=クランに対して掲げたのだ。だがそれを見たバッフ=クランの者達は一斉にその顔色を変えた。朱が差してさえいた。
「ロゴ=ダウの異星人め!」
ギジェがまず怒りの声をあげた。
「我等の力を甘く見てるのか!」8
「バッフ=クランのサムライ達よ!」
それはダミドも同じだった。
「奴等を叩き潰せ!!」
「了解!」
「わかりました!」
敵が向かって来る。ベス達はそれを見て何故こうなったのかわかっていなかった。
「なっ!?」
「どうして!?」
「奴等」
ギジェは突撃するその中でまだ怒りを見せていた。
「我々の戦力を見切った上で白旗を掲げたのか!」
「我々を一人残らず叩くというのか奴等は!」
それはダミドも同じだった。
「各機に告げる!」
そして全員に指示を出す。
「白旗を掲げ我々に徹底挑戦してきた異星人に対して」
「奴等に対して」
「最早容赦するな!」
まずはこう叫んだ。
「最後の手段だ!」
「あれですか!」
「そうだ、あれだ!」
あれが何なのか。今言った。
「我々は無差別攻撃を仕掛ける!異星人を一人残らず殺さねば何時かは我々が異星人の侵略を受けることになるだろう!」
「はい!」
「確かに!」
そしてそれは皆わかっていた。だからこそダミドの言葉に頷くのだった。
「よし!それでは」
そこまで聞いてまた告げた。
「各員の健闘を祈る!」
言ったところで。ギジェに顔を向けて問うた。
「異論はないな、ギジェ」
「うむ・・・・・・」
少し冷静さが戻っての言葉だった。
「そうだな」
「よいか?」
そのギジェに対して言うのだった。
「我々は白旗を掲げられたのだぞ」
「それはわかっている」
「ならばだ」
応えて述べる。
「これがサムライとして黙ってられんことはカララ様とてわかってくださる」
「しかし」
「無差別攻撃のことか」
「そうだ」
彼が気にかけているのはそれだった。
「確かに白旗を掲げられた」
「うむ」
「屈辱だ。しかし」
「無差別攻撃はどうかというのだな」
「カララ様に。何かあっては」
「ならばだ」
ダミドはギジェの気持ちを表面では察したふりをしてまた声をかけた。
「御前はカララ様をお助けするがよかろう」
「いいのか、それで」
「いい」
やはり仮面で答える。
「戦いは私に任せろ」
「すまん、ダミド」
「何、構わんさ」
今度は笑ってみせた。
「ハルル様もああは言ったが妹君が助かることに異論はあるまい」
「そうだな」
「そうだ。だからだ」
(そして)
これは心の中の言葉だった。
(失敗した時にはギジェの責任にすればいいのだ)
こう心の中で呟いた。だがそれは誰にも言わず戦いに赴くダミドであった。
その時。ソロシップの中は混乱状態に陥っていた。
「何故だ!」
最初に叫んだのはベスだった。
「あの白旗が何故いけない!?我々は降伏してもいいという合図だ!」
「違います」
しかしそれにカララが異を唱える。
「カララさん」
「白旗、白いハンカチ、白い手袋を投げる」
「手袋を」
これは皆わかった。何を意味するのか。
「全て挑戦の合図です」
「手袋はそうですが」
「しかし」
「しかも」
カララの言葉はそれでも続く。
「相手を地上から一人残らず殺すという最大級の宣戦布告の合図です」
「そんな、白が」
「どうしてよ!」
「どうしても何も」
デクとカーシャの言葉に困った顔になるがそれでも言うのだった。
「それがバッフ=クランの文化ですから」
「それじゃあ」
それを聞いたベスが問うた。
「停戦の合図とは」
カララ「イデオンの色です」
「赤なのか・・・・・・」
「そうです」
ベスの言葉に答えた。
「それが停戦の色なのです。血の色こそが」
「あの色が。しかし」
ベスは言う。
「あの旗を御前達の仲間が見たということは」
「こちらへ総攻撃を仕掛けてくるでしょう」
「くっ!」
「何でこうなるのよ!」
「こうなったらもう掲げることはない!」
ジョリバはこう判断しすぐに通信を入れた。そこは。
「モエラ、ロッタ!」
「何だ!?」
「何ですか?」
やはり驚いている二人に対して言うのだった。
「旗を降ろせ!」
「えっ、旗をか」
「そうだ!」
モエラに対して叫ぶ。
「そいつは戦いの印なんだとよ!」
「な、何ですって!?」
「嘘だろ!?
ロッタもモエラもそう言われて驚きを隠せない。
「白旗が戦いの合図なんて聞いたことないぞ!」
「まさか・・・・・・」
「こんなことに・・・・・・」
美穂もサリーも呆然としている。しかしエキセドルだけは冷静さを保ったまま呟くのだった。
「文化が違えば常識も違う」
彼にはわかるのだった。
「バルマー戦役時の私達と地球人がそうであったように」
「敵機、来ます!」
サリーがそのエキセドルに報告する。
「どうされますか!?」
「止むを得ません」
エキセドルはすぐに判断を下した。
「バルキリー及びデトロイドを」
「わかりました」
「あっ!」
美穂が頷いたところでまたサリーが報告をあげる。
「エキセドル艦長!」
「何でしょうか」
「新たな機影!」
前にいる敵が間近に近寄ったところでであった。
「周囲にフォールドアウトした艦があります!」
「何っ!?」
「そんな、こんな時に」
「むっ」
その動きはダミドとて知っていなかった。その証拠に顔を歪めさせている。
「まさかあの部隊は」
その間に前方のバッフ=クラン軍からミサイルが放たれる。そのミサイルのうちの数本がブラジラーに命中する。
「しまった」!」
デクがそれを見て悲鳴をあげた。
「ブラジラーが!!」
「何でこんな時に!」
カーシャモ叫ぶ。
「あそこにはまだコスモがいるのよ!!」
そのブラジラーの中で爆発が起こる。そして。そのダメージがさらに加えられていくのだった。
あちこちが壊れ倒壊していく。カミューラはそれを見て呆然としていた。
「そ、そんな」
破壊されていくそのブラジラーを見ながらの言葉だった。
「ブラジラーが何も出来ないまま崩壊していくなんて・・・・・・あっ!」
側の建物が倒壊しその一部がカミューラを襲うのだった。
「司令!」
「うう・・・・・・」
瓦礫の下に埋もれてしまった。全身が痛む。もう手遅れだった。
「大丈夫ですか!?」
「いえ・・・・・・」
そのことは彼女が最もよくわかっていた。
「もう私は・・・・・・」
その時だった。コスモがカミューラのところにやって来た。
「カミューラさん!」
「コスモ君・・・・・・」
そのコスモを見て顔を上げる。だがそれだけでも痛みが走る。
「無事だったのね。よかった・・・・・・」
「俺は・・・・・・」
「もういいのよ」
また優しい声を彼にかける。
「だからもう」
「今すぐここを」
「いいのよ」
コスモの申し出に首を横に振るのだった。
「貴方だけで」
「けれど・・・・・・」
「貴方はもう大丈夫だから」
またコスモを気遣う言葉を述べた。
「だから・・・・・・行きなさい」
「カミューラさん・・・・・・」
「総員脱出」
司令として最後の指示だった。
「コスモ君も・・・・・・」
「うう・・・・・・」
目を閉じるカミューラを見て。コスモは。
「うわあああああああっ!」
叫んだ。彼の中で何かが起こったのだった。
イデオンの中ではカーシャが叫んでいた。
「守っているだけじゃこれ以上は無理よ!」
彼女らしい言葉だった。
「あたしがAメカに乗るわ!」
「無茶はよせカーシャ!」
「だからって!」
モエラの制止も聞かない。
「このままじゃやられるのを待つだけよぉっ!!」
「それでも!」
「コスモがいないから仕方ないじゃない!」
彼女の言い分はこうであった。
「だから、行くわよ!」
「こうなっては、か・・・・・・」
モエラも諦めかけたその時だった。不意に足音が聞こえてきた。
「んっ!?」
「行くぞカーシャ、モエラ!」
「コスモ!」
コスモだった。彼が来たのだ。
「大丈夫なのか御前」
「ああ!」
モエラに応える。そのままイデオンに乗り込む。
「行くぞ!」
「わかった!」
イデオンが出撃したことはすぐにベス達にも伝わった。
「イデオンが出ただと!?」
「ああ!」
ジェリルが彼に答える。
「今出たばかりだ」
「コスモはやれるのか?」
「安心しろ!」
「コスモ!」
そのコスモの声だった。その声に顔を向けると。
「うおおおおおおおっ!!」
「何っ!」
カララはコスモの叫び声を聞いた。すると。
「こ、これは!」
「またゲージが!」
「バッフ=クランめ!バッフークランめ!!」
シェリルも驚く。コスモはその中で叫んでいた。
「徹底的に叩いてやる!!」
「バトル7に通信を送れ!」
ベスはその中で冷静に判断を下した。
「これ以上ブラジラーを守っても無駄だ!俺達も前に出るぞ!!」
「わかった!よし!」
「反撃開始だ!」
マクロス7も攻撃に加わる。彼等は劣勢ながら果敢にバッフ=クラン軍に向かう。その中でコスモはギジェに対して突っ込んだ。
「バッフ=クランめ、バッフ=クランめ!!」
「何だとっ!?」
「うおおおおおおお!!」
その攻撃を受ける。何とかかわしはしたが。
「巨神のパワーが上がっているだと!」
「逃がすな、追え!」
その中でダミドも指示を出すのだった。
「巨神は弱っているはずだ!」
「徹底的に叩いてやる!!バッフ=クランめぇぇっ!!」
「ジョリバ!」
ベスはその中でジョリバに問うていた。
「ノーマルエンジンの調子はどうだ!」
「順調だ」
こうベスに答えた。
「限界までやってくれて構わん!」
「あの重機動メカを落とせば戦局は好転するかもしれん」
ギジェのマシンを見て言う。
「各員攻撃開始だ!」
「ギジェには悪いが」
だがそこにはダミドがいた。他の軍勢も。
「白旗を掲げられた以上は全力で叩く!一族郎党、これで末代まで安泰というものだ!」
「くっ!」
ソロシップの周りにバッフ=クランの軍勢が集まる。ベスはそれを見て苦悶の声をあげる。
「白旗を掲げてしまった以上やり直しはきかないということか!」
「艦長!」
サリーがエキセドルに報告する。
「敵の大多数が射程内です!」
「防衛ライン突破されました!」
「わかりました」
エキセドルは美穂のその言葉に対しても頷いた。
「モニターから目を離さないように」
「はい」
「艦の至近距離で迎え撃ちます」
「わかりました!」
マクロス7も果敢に弾幕を張る。それで何とか攻撃を凌いでいた。
二隻の戦艦は防戦一方だったが彼等にはイデオンがいた。そのイデオンが敵を次々と倒していた。それにより敵の数を大きく減らしていたのだ。
「どけって言ってんだよ!」
「うわあああっ!」
次々と拳とミサイルで敵を倒していく。それを見てギジェが向かう。しかしだった。
「御前もっ!」
「しまった!」
拳をかわしきれなかった。その拳を受けて叩き落されたのだ。
「何故だ!」
ギジェは脱出しながら叫ぶ。
「何故落ちてくれないんだ!!」
「ギジェ!」
「済まないが離脱する!」
機体を撃墜されては最早そうするしかなかった。
「後を頼むぞ!」
「わかった!」
(よし)
顔では友情を見せていても実は違っていた。
(これで俺があの巨神を)
しかしそれは甘かった。ダミドのマシンもまたイデオンの拳を受けたのだ。
「なっ、速い!」
「もう一撃だ!」
そこにもう一撃来た。それをかわしきれずに受けてしまった。脱出装置がここで破壊された。
「くっ、しまった!」
「御前達だけは倒す!」
「ええい!」
助からないとわかってダミドが激昂した。最期だから。
「ガタマン=ザンが落ちる前に巨神を落とせば!!」
「何っ、あいつは!」
「コスモ!」
ベスとカーシャがダミドのその機体を見て叫んだ。
「来たわよ!」
「わかってる!」
怒りに燃えていたがそれでもだった。コスモは敵の動きを冷静に見ていた。
「うおおおっ!」
再び拳を繰り出す。
「バッフ=クランめぇぇっ!!」
「何っ、また!」
やはりかわしきれない。その巨大な拳を受けて後ろに大きく吹き飛ばされる。機体のあちこちから火を吹き。ダミドはその中で息絶えようとしていた。
「こ、この俺が」
コクピットの中で呻く。
「ギジェの上に立つべき俺がこんなところで。死んでたまるかぁぁっ!!」
だが無駄だった。ダミドは愛機と共に爆死した。ギジェはそれを見ていたがどうすることもできなかった。
「ダ、ダミド!!」
「やった、やったわ!」
カーシャは危機を脱したと見て歓声をあげる。しかしその彼女にコスモが言った。
「ぼさっとするな、カーシャ!」
「何豫、助かったのに!」
「そんなことを喜ぶのは後だ!」
こうカーシャに叫ぶのだった。
「敵はまだいるんだぞ!」
「コスモ・・・・・・」
「ベス!」
ハタリがベスに報告する。
「どうした!?」
「この宙域に接近する艦隊がある!」
「むっ!?」
彼はそれを聞いてまずは顔を顰めさせた。
「バッフ=クランの新手か!?」
「わからん。だが」
「来たわよ!」
シェリルが言う。すると彼等の前に巨大な戦艦が姿を現わしたのだった。
「何っ!?」
ギジェがその戦艦を見て声をあげた。
「あの艦はドロワ=ザン!」
「姉さん!」
そしてカララも同じく叫んだ。
「ハルル姉さんが来たの!?」
「えっ!?」
「姉さんだと!?」
シェリルとベスも。今のカララの言葉に思わず顔を向けた。
その巨大な戦艦が攻撃を繰り出す。それはソロシップやマクロス7だけではなくブラジラーにも攻撃を浴びせた。それにより。
「ブラジラーに直撃多数!」
サリーがまた報告する。
「完全に機能を停止します!」
「仕方ありません」
エキセドルはその報告を聞きながら述べた。
「この戦力差ではどうにも」
「カララ!」
ベスがカララに声をかける。必死の顔で。
「君がこの艦に乗っているのは君の姉さんも知っているんだろう!」
「おそらくは」
「それならだ」
ベスはさらに言うのだった。
「「君から停戦を呼びかけることは出来ないのか?」
「それは」
「どうなんだ!?」
「・・・・・・無理です」
無念の顔で首を横に振るだけだった。
「どうしてなんだ、それは」
「気性です」
彼女の返答はこうであった。
「姉の気性を考えれば無理な話です」
「そんな、どうして」
「イデのこと、異星人のこと」
シェリルに対しても答える。
「私一人の生命などそれの前では些細なものに過ぎません」
「そんな・・・・・・」
「これは貴方達も同じだと思いますが」
今度はこう述べてきた。
「異星人よりも身内の方が怖いものです」
「そうね」
それにシェリルが頷く。
「人ならばね」
「そういうことです」
その間にも攻撃は続く。マクロス7もソロシップもダメージを次々に受けていく。
「きゃあああっ!」
「か、艦長!」
サリーが何とかエキセドルに伝える。衝撃の中で。
「この宙域へフォールドアウトしてくる物体が!」
「今度は一体!?」
警戒していると。そこにあの謎の敵が出て来た。
「今度はあいつ等かよ!」
「何てことだ・・・・・・」
コスモとベスが言った。
「これはいけませんな」
エキセドルもまた言う。
「進退窮まりました」
「くっ、このままでは!」
「嫌よ!」
その中でまたカーシャが叫ぶ。
「あたしこんな所で死にたくない!」
彼女がこう叫んだその時だった。またイデオンのゲージに異変が起こった。
「ゲ、ゲージが!?」
「ベス!」
ハタリもベスに言う。
「ソロシップのゲージも光を!」
「これは」
ジョリバもそれを見た。
「ソロ星からDSドライブした時と同じだ!」
「そうか、なら!」
ベスはここまで聞いて悟った。今の自分達の置かれた状況を。そして。
「総員対ショック!」
全員に指示を出す。
「また飛ばされるぞ!!」
「一体何が起こるんだよ!!」
「うわああああっ!」
皆光に包まれ姿を消した。それを遠くバルマーから見ている一人の女がいた。
「あの光」
レツィーラであった。水晶珠からそれを見ていたのだ。
「クロスゲートの発動と似ているようだね。やはりあれは無限力と何らかの関係がある。フフフフ」
それを感じ取って笑うのだった。
「いよいよ、か」
彼女も何かが起こったのを察して笑うのだった。
マクロス7もソロシップもイデオンも亜空間の中にいた。そこでエキセドルは美穂達に問うていた。
「美穂君」
「は、はい!」
衝撃に耐えながらエキセドルに答える。
「シティ7は」
「何とか一緒にいます」
「そうですか。それならばいいです」
彼の心配はそれだった。だがそれが大丈夫だと聞いてまずは安心するのだった。
「ハタリ!」
ベスもまたハタリに問うていた。
「亜空間センサーで俺達がどこに向かっているかを調べろ!」
「し、信じられん!」
「どうした!?」
「俺達は通常では考えられん距離をDSドライブしているぞ!」
「!?またか」
「ああ!」
ベスに答える。
「このまま行くと二万光年近くを一気に飛ぶことになる!」
「何っ!?」
「俺達のDSアウト先・・・・・・」
驚くベスをよそに呟く。
「まさか」
また光に包まれ。そして。
ゲペルニッチはこの時呟いていた。艦内で。
「ギギルめ」
ギギルの名を忌々しげに呟いている。
「シビルを甦らせたか」
「ギギル司令は例の船団と共に銀河の果てへと飛ばされたようです」
そんな彼に前にいる兵士が報告する。
「如何致しましょうか」
「捨て置け」
だがゲペルニッチはそれをよいとした。
「宜しいのですね」
「我が夢を実現すべき種子は他にもある」
「それでは」
「うむ」
ここで彼は仮面を外した。するとそこから豊かな金髪を持った女と見紛うばかりの美しい顔があった。それがゲペルニッチの素顔であった。
「新たな指揮官をもう一つの船団へ回す」
「左様ですか」
「そうだ。それにより貴重なサンプルを捕獲するのだ」
「サンプルを」
「五十万周期の時を経て我が夢」
そしてまた呟く。
「スピリチアファーム。今こそ叶う時が来た」
呟きと共に何かを見ていた。それは彼にとって間近に迫ろうとしていた。

第五十話完

2008・3・8
 
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