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万華鏡

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第十七話 甲子園にてその十二

「とにかく。阪神は三位だから」
「希望はあるのね」
「あるわ」
 それも例年以上にだ。
「巨人にも勝ち越してるしね」
「希望はあるのね」
「ヤクルトに勝つのは難しいと思うけれど」
「出来なくはないのね」
「優勝は狙えるわ」
 三位である、このことが大きかった。
「大丈夫よ、安心してもね」
「そうなのね」
「これから次第だけれど今は安心していいわ」
 そうして試合を観ていればというのだ。
「去年までみたいに諦めなくていいから」
「それじゃあ」
「問題がない訳じゃないけれど投手陣もしっかりしてるから」
 里香はまた投手陣のことを話した。
「だからね」
「ううん、大丈夫なのね」
「ピッチャーがしっかりしているチームは崩れないのよ」
 昔から言われていることである。投手第一主義と批判されることもあるが投手という存在が野球において重要であることは間違いない。
「だからね」
「安心出来るのね」
「僅差で負けることがあっても」 
 阪神の試合では伝統的に多い。
「それでも崩れはしないから」
「ピッチャーさえしっかりしていたら」
「安心していいわ、三位はね」
「後は夏よね」
「夏ね、夏はね」
 里香は夏についてはこう言った。
「ちょっとね」
「わからないのね、里香ちゃんも」
「確かに今年はいけると思うけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「その時が不安ね」
「そうなのね、どうしても」
 琴乃も里香のその心配に同意する。
「夏ね、どうなるかしら」
「夏を何とか乗り切れば」
「それでいけるけれどね」
「私思うけれど」
 里香は阪神中心主義において考えていた。そして言っている。
「甲子園を使えない間他の球場を本拠地に出来ないかしら」
「神戸グリーンスタジアムとか?」
「そう。それか八条グループの球場ね」
 八条グループだけでプロリーグを経営しているのだ。四リーグ、二十八のチームがある。尚チーム名にジャイアンツはない。
「そこの八条ドーム借りるとか」
「あそこは無理でしょ」
 琴乃は里香の願いに残念だけれど、という口調で述べた。
「やっぱり」
「無理なのね」
「流石にね。あの球場はね」
「八条タイガースの本拠地だからよね」
「そう、だからね」
 八条グループの関西球団の一つだ。他の在阪球団としてはブレーブスやバファローズ等があり活躍している。
「流石にね」
「無理なのね。やっぱり」
「今は大阪ドームも使えるから」
 本拠地にしているチームが遠征の間はだ。
「かなりましになってるんじゃ」
「それはそうだけれど」
「移動の時間も減ってるし」
 新幹線のさらなる発達がそうさせた。
「昔よりもずっと疲れてないじゃない」
「それじゃあやっぱり」
「確かにグリーンスタジアム使えたらいいわね」
 琴乃も里香のこの主張に賛成はしている。だが、だった。 
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