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カンピオーネ!5人”の”神殺し

作者:芳奈
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第一部
  閑話

 甘粕冬馬は、困惑していた。

「・・・どうして私がこんな場所にいるんでしょうねぇ・・・・・・。」

 【SaintSatan(聖なる魔王)号】。今現在、世界で最も危険で、しかしある意味ではここより安全な場所は存在しないとも言える船である。世界中から【魔界】と呼ばれる国日本。その国に属するカンピオーネ4人が乗り、裏の世界の住人で知らぬものは居ない程の有名人である、『プリンセス・アリス』までもが乗っている。今現在、この船よりも戦力が揃っている場所など、世界中探しても存在しないだろう。

 そんな船に、何故か甘粕は乗船していた。これは別に、彼が無断で乗り込んだとかそういう訳ではない。彼は招待されたのだ。・・・もっとも、招待とは名ばかりで、実質的には強制だったのだが。

「誰も助けてくれませんでしたしねぇ・・・。」

 鈴蘭から、『いくら忙しくても来てね♪』と書かれた招待状(?)が送られてきた時は、流石に焦った。因みに、上司である沙耶宮馨(さやのみやかおる)にも招待状が届いていたのだが・・・

『残念ですが、僕のことを待っててくれる女性が沢山いまして。僕は全員を幸せにしてあげたいのです。デートの約束もしていますし、その先も・・・ね?』

『あ~、じゃぁ仕方がないね!馨ちゃんモテるもんね!女の子を泣かせちゃ駄目だよ~?』

『僕も女の子、なんですけどねぇ・・・』

 たったこれだけの会話で終了してしまった。

「美形っていうのは・・・本当に得ですねぇ・・・。」

 ボソっと呟く甘粕。

 まぁ、彼も分かってはいる。馨が、ただ美形なだけではあそこまでモテないだろうと。あの容姿と、ミステリアスな性格と雰囲気、そして、正史編纂委員会の長になることがほぼ決定しているほどの才覚。それらが全て合わさってこうなっていることを。そもそも、彼女は最初は自分の性別を告げないで付き合うが、ある程度仲良くなった頃に自分が女性だと言うことをちゃんと伝えている。それでもいいという女性たちが多くいることこそ、彼女の持つカリスマ性の象徴ともいえるだろう。

「一度は、モテてみたいものですねぇ・・・。」

 それでも呟かずにいられないのが、男性の持つ悲しい(さが)なのだろう。

「・・・しかし、毎度毎度カンピオーネの皆さんのやることは、スケールが違いますなぁ・・・。」

 自室を見回し、呆れたように言う甘粕。だが、それも仕方がないと言えるだろう。

 彼がいる部屋は、一流ホテルのスイートルームにすら劣らない客室であった。数々の有名な調度品。窓から見える大海原の景色。ルームサービスは流石に有料だが、テーブルの上には『世界樹の葉で作った日本茶。飲めば死人も生き返る・・・かも?』などと、本気なのか冗談なのか良くわからないぶレートが付いたお茶の缶が置いてあった。

 世界樹の葉で作ったお茶とか、魔術師が聞いたら卒倒物である・・・実際、ミス・エリクソンが倒れたようだし。しかも、このお茶は無料なのだ。余りにも豪華な客室を与えられて落ち着かなかった甘粕が、気分を落ち着かせる為に頼んだ物だった。ただ、メニューには『日本茶』としか書かれていなかったので、『世界樹の葉』なんて書かれた代物が出てきたときには、彼も気絶しそうになったが。

「これだけの物を、ほぼゼロ円で用意してしまうのですから、本当にカンピオーネというのは出鱈目な存在ですね。」

 世界樹のお茶を一口飲む彼。

「・・・凄く美味しいですね。複雑な気分です。」

 現在、世界中で鈴蘭しか作ることの出来ない伝説中の伝説『世界樹の葉』。それをお茶にして飲むことに否定的な気持ちではあるが、今までに飲んだ事のあるどの飲み物よりも美味しい事に苦笑する甘粕。オマケに、体中に力が漲り、生命力が湧き出してくるのが実感出来る。まさに、世界最高の飲み物と言っても過言ではない代物であった。

「・・・ここにずっと居るのも、悪くないかもしれないですねぇ・・・。」

 カンピオーネ達と同じ船に乗る事に対する不安はあれど、何一つ不自由しない生活に、順応してきている甘粕であった。


☆☆☆


 さて、場所は少し変わって、船にあるドクターの診療所兼研究所である。

 出航してからまだそんなに日が経っていないというのに、何故かこの部屋は既にドス黒く染まってしまっていた。重症の患者が出たわけでもないのに、何故こんな事になっているのかは誰にも分からない。何故か(・・・)この船に忍び込んでいた他国の魔術結社などの諜報部員が次々と消えているらしいが。ただ、鈴蘭直々にこの区画は『立ち入り禁止区域』に指定されている上に、『客人に手は出さないこと』と厳命されているので、アリスたちには(・・・・・・・)何ら危険はないだろうが・・・。

 さて、今この部屋には二人の男女が存在していた。

 一人はこの部屋の主であるドクター。

 そしてもう一人は、【魔界(日本)】のカンピオーネの一人、白井沙穂である。

 彼女は上半身裸になり、その肢体を惜しげもなく見せていた。彼女の年齢にしては些か発育が足りないように思われるが、その明るい笑顔と合わせて見れば、活発な美少女である。以前は体の至る部分に走っていた大小様々な傷跡も、ドクターに蘇生された時に消してもらっている。

 勿論、彼女たちは怪しい行為をしている訳ではない。これはちゃんとした診察なのだ。

 カンピオーネの体は、超人的な能力を得る。骨は鉄よりも固く頑丈になり、筋肉は千切れにくく柔軟になる。再生能力に至っては、過去の古傷すら完璧に修復するほどだ。・・・それなのに、一体何故診察などという行為をする必要があるのか?

 ・・・それは、彼女が歴史上でも類を見ない、初めての【機械人間(サイボーグ)】のカンピオーネだからである。

 以前、とある事件により、白井沙穂は命を落とした。普通の人間ならば、そこで終わりだっただろう。・・・しかし、彼女を取り囲む環境は、異常であった。

 伊織魔殺商会が世界に誇る最凶最悪のマッドサイエンティスト、ドクター。

 そして、戦乙女(ワルキューレ)と死者の魂の取り合いをし、更には死んだ自分さえも生き返らせたという、稀代の大魔術師リッチ。

 この二人の『アウター』が揃っている環境など、全くもって普通とは呼べないだろう。

 彼女はこの二人の奇跡によって、ほぼ完全な形での死者蘇生を果たした。・・・しかし、元より自身の兄を討つ為にドクターは彼女を蘇らせたのだ。以前のままの彼女では兄を弑逆することなど不可能。それを知っていた彼は、あろう事か彼女の体を改造したのである。

 彼の思惑通りに水無月の時雨を弑逆した沙穂であったが、そこに現れたのは全てのカンピオーネの母親である『パンドラ』であった。新しい娘の誕生に嬉々として現世まで赴いた彼女だったのだが・・・彼女の体の半分以上が魔導機械により構成されていることを知ると、上手くいくのか不安になった。

 そもそも、人をカンピオーネとする術式は、彼女たちが『パンドラの箱』から見つけた、人類の最後の希望である。つまり、出処は不明であり、彼女にもその術式の全貌は未だに掴めていないのだ。魔人がカンピオーネになれないのは既に判明していたのだが、果たして【機械人間(サイボーグ)】はカンピオーネになれるのか?確証が掴めぬまま彼女は術式を行使した。

 結果。

 白井沙穂はカンピオーネになった。なることが出来た・・・が。

 どうやら、彼女の体の機械も、肉体の一部と認識されてしまったようで、全ての機械が生きている(・・・・・)状態へとなった。自己再生もすれば成長もするという、何とも奇妙な性質を得てしまったのである。

 これを知ればドクターが研究したがるのは当然であった。パンドラも、どんな不具合が出るか分からないから定期的に検査を受けたほうがいいと言ったので、沙穂はこうして検査を受けているのであった。

 ・・・・・・しかし、事情を知らない人が見れば、フヒヒヒと不気味に笑っているドクターと、上半身裸の少女が向かい合っているという、犯罪現場にしか見えないのだが・・・それは置いておいたほうがいいのだろう。
 
 

 
後書き
凄く変な部分で切ってしまいました。 
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