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茨の王冠を抱く偽りの王

作者:カエサル
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07.鎧う盾

 
前書き

 
久しぶりの学校。
GHQに集が捕まり、俺が捕まりかけた日以来の学校だ。

「おい見ろよ、あいつらってGHQに捕まった奴らじゃね」

「知ってる、ヒロミが見たって言ってた」

俺たちは下駄箱で靴を履き替えているだけで他の生徒から視線を浴びる。

「じゃあ、犯罪者?」

その言葉に怒ったのか、いのりが噂をしている男子三人組の方へ向かおうとするの集が手を引っ張る。

「行こう」

「あっ、逃げた。いのりちゃん気をつけてそいつら犯罪者だよ」

イラ立ちながらも教室へと向かうと後ろで誰かが頬を叩いたような、パァン!、という音が鳴り響く。
音が気になり後ろを振り返ると、大勢の生徒が野次馬のように集まり、その先にはさっき噂をしていた男子三人のうち一人が金髪の長髪の美女に叩かれている。

その人物は、この学校の生徒会長こと供奉院 亞里沙(クホウイン アリサ)ではないか。

「憶測で言うことではなくて、天王洲第一高校の生徒ならハジを知りなさい」

その姿は、まさに綺麗という言葉しか当てはまらないくらいに綺麗だ。



教室の扉を開けると皆が俺たちのことを一斉に見る。

「シュウ!......」

祭が集を呼び立ち上がるも後ろにいた供奉院会長が一緒にいたせいか、その言葉は途中で切れる。

教卓辺りまで進むと供奉院会長が口を開く。

「GHQの皆さんは優しかった?」

その言葉に俺と集を含めクラスの全員が驚いた。

供奉院会長は少し笑って......

「事情聴取なんてめんどうだったでしょうけど、政府には協力しなくてはね」

「はっ、はい。僕と壊が拾った携帯がなんかGHQのものだったとかで......ね」

「お、おう。たまたま拾った携帯だけで事情聴取とかGHQも大げさだよな」

「そう、無責任な噂を流す人間も多いと思うけど、困った時はこの私がち.....「シュウゥ!カイィ!」」

教室の扉を見るとそこには、いつものように元気な颯太の姿が.....

「そこにおわすわ、シュウとカイじゃないか」

訂正だ。
颯太はいつも以上にテンションが高い。

「どうだったGHQって?尋問とかされたんだろ、カツ丼出たっ!あっ、GHQだからハンバーガーとか」

ものすごく回答に困る。

「桜満君、茨君」

クラスの女子生徒が話しかけてくる。

「わたしもいい?軍隊ってやっぱりホモばっかりなの?」

その質問を境に俺たちは質問責めにはいった。

「取越苦労だったみたいね」

「みたいです」

「そのようですね」

供奉院会長が去っていこうとすると集が......

「でも、ありがとうございます。気を使ってくれて」

「気にしないで生徒会長として当然をしたまでよ」

供奉院会長はそう言って笑顔で去っていった。



まぁ、この後少しだけ予想はついていたのだが......案の定、シオンがこの学校に転校してきた。
これはこれでいろいろと大変だった。
シオンは教室に入り自己紹介をするなり、俺を見つけ直ぐに、王様!、と笑顔で叫ぶものだから俺とシオンの関係を適当に幼馴染という設定にして丸くおさめた。



「生徒会長の供奉院 亞里沙さん。供奉院グループのお嬢様で、容姿淡麗、成績優秀、おまけに性格もいいなんてすっごいよな」

昼休み、いつものように映研の部室で時間を潰す。

「で、こっちが世界史の課題で....このフォルダは貿易のテキストチョット重いけど.....」

集は祭がとっておいてくれたフォルダを自分の端末に移してもらっていた。

「ありがとう。助かるよ、祭」

「ううん、これくらい」

「集、後で俺にも移させてくれ」

「いいよ、そっか貿易の試験もあったけ」

「ねぇ、集。なんか変わった」

「えっ、何が?」

集は自分で気づいてはいないかもしれないけど、ルーカサイト攻略作戦を終えた日から雰囲気が明らかに前とは違う。

「ところでさ、八尋は.....どうしたのかな.......僕たちがつれてかれた日からずっと来てないって」




その日の夜、ガイに突然呼び出され、豪華客船の中に今、俺はいる。

「緊張しているのか、シュウ、イバラ」

「そりゃそうだよ、いきなり呼びつけられてミッションなんて」

「俺は少しワクワクしてるな」

俺達の目の前には口をガムテープで塞がれた今はパンツ一丁の招待客が三人並んで気絶している。

「で、どういうミッションなの?」

「話したい相手がいる。しかし、なかなか表舞台には出てこない人物でな」

「だから、強引に押しかけるってこと?」

「そういうことだ」



フロアに出ると集が誰かを見つけたようだ。

「ハルカ!!」

そう集は少し大きな声をあげ何処かに逃げるようにして消える。

集の見ていた場所を見ると、椅子に座って黒服二人に囲まれた老人の前に、赤い服を着た綺麗な女性が座っている。その女性がハルカだろうか?

すると、一分も立たぬうちに集が走って戻ってくる。

「ガイ!あとは任せた!」

集はそう言い残し、ガイにハイタッチをしてまたも去っていく。

「桜満集!お待ちなさい!」

向こうから金髪のロングに薄い水色のドレスを着た美女が走ってくる。
それは、供奉院会長だった。

なるほど、集の言った意味が理解できた。

ガイは供奉院会長の前を邪魔するように塞ぐ。

「あなた、一体どういうおつもり」

供奉院会長はこちらをチラリと見て、驚いた顔をする。

「何故、あなたまでいるのです、茨君!」

「人違いでは、わたくしはそんな名前ではございません」

苦しい紛れの言い訳が通じるのか.....どうか.....

「人違い.......まあ、いいわ。とりあえずそこを退いてくださる」

ガイは少し供奉院会長に顔を近づけ、何かわかったような顔をする。

「失礼、知り合いに似ていたもので」

「お知り合い?」」

「ええ、キャサリンと言って昔、買っていたアルマジロに」

何を言っているんだガイは!?
そういえば、前に集から聞いたような.....ガイは人のヴォイドが見えるって.....それと関係があるのか?

供奉院会長は怒って、ガイにビンタをしようとするが、それをガイがあっさりと止める。

「本当に似ていたんですよ、自分を守ろうと必死で体を丸めていたところが」

供奉院会長は頬を赤らめる。



「お前はここで待っていろ」

ガイはそう言い残し、さっきハルカと思われる人物が話していた老人の元へと向かう。

あの人がガイの会いたかった人なのか。

ガイが何かを話している最中に集が急いで現れる。

「ガイ!」

集が慌て現れ、ガイを呼んだので俺もそちらに向かう。

「GHQのミサイルがこの船を狙ってるってツグミから」

「船ごとやるつもりか」

「命令しろ、ガイ!この船を救うにはどうしたらいい」

「後部甲板で待て、5分で行く。イバラも一緒に行け」

「わかった」

「了解」

俺と集は全力で走った。



5分ぐらい経つとガイが供奉院会長をつれて後部甲板へと現れた。

「離しなさい、あなたのような無礼な男は初めてです」

「光栄です、あなたの初めてですになれて」

「ふざけないで!!.....」

「目を瞑って」

ガイは供奉院会長の顔の前に人差し指を突き出す。

「これから君に魔法をかける、本当の君になれる魔法だ」

「.......本当の」

「そう、本当の君だ」

供奉院会長は静かに目を瞑る。

「三つ数えたら目を開けて。そう動かないで。......3.....2.....1.....0」

供奉院会長が目を開けるとそこには集が.....

「桜満君!!」

「すいません!!」

集は謝りながらもヴォイドを取り出す。

俺も右腕の包帯を外し、ヴォイドを取り出す。
取り出されたヴォイドは小さな戦輪。

『命中まであとは10秒!!』

「「うぉぉぉぉおおっ!!」」

命中寸前だったドラグーンは供奉院会長のヴォイド......盾のヴォイドによって消滅した。まるで花火をマジかで見たように。

『ドラグーン、続けて発射......1、2、3.....そんなに!!』

どうやら、一斉砲撃してきたようだ。

「シュウ!イバラ!」

「わかってる!」

盾のヴォイドが6つに別れる。
同時に飛んできた、6つのドラグーンを盾が消滅する。

続けて飛んできた、ドラグーンを俺のヴォイド.....戦輪のヴォイドが破壊する。
どうやらこのヴォイドは一つの戦輪が二つに.....三つに.....四つに、っと無限に増えていくヴォイドらしい。
戦輪がドラグーンに当たるとドラグーンは盾のヴォイド同様に花火のように消滅していく。

次々と飛んでくるドラグーンを全て、集と俺のヴォイドで消滅させる。

「弱い自分を鎧う、臆病者の盾、それが供奉院 亞里沙、君のヴォイドだ」

 
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