| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

八条学園騒動記

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第十話 推理漫画その四


「気にしていないさ」
「やれやれ。とんでもない風紀委員ね」
「風紀委員も真面目な奴だけじゃないよ」
 アンに対して言う。
「僕みたいなのもいるさ」
「まあギルバートみたいなのばかりじゃね。嫌になるわね」
「同感」
「じゃあ耳栓を用意しておいて」
「怒られる時用ね」
「そういうこと。じゃあ」
 あっさりした様子で教室を後にしていく。
「二人迎えに行くからね」
「ええ」
「またね」
 こうしてローリーは教室を出て行った。それでまたそこにいるのはアンとルビー、そしてウェンディとジュリアだけになったのであった。
「何だかんだで迎えに行ったわね」
 最初に気付いたのはウェンディであった。
「いいところあるじゃない」
「そういえばそうね」
 それにアンも頷く。
「無責任なようでいてね」
「それでねジュリア」
 ルビーがジュリアにまた声をかけてきた。
「貴女はそれでいい?」
「ええ、是非ともね」
 右目でウィンクして答える。
「悪役はミンチン先生がいいわ」
「ああ、あの糞婆」
「とっとと死ねばいいのにね」
 学園きっての嫌われ者である。同じく嫌われ者では隣のクラスのラビニアがいる。このクラスとは激しい対立関係にあることでも知られている。
「じゃあいつを悪役にして」
「詐欺師がいいわね」
「結婚詐欺師じゃ駄目かしら」
 ウェンディが問う。
「駄目駄目、それは」
「あんな婆誰が結婚するのよ」
 アンとルビーが次々に言った。普段は大人しめのルビーもこの先生に対しては全然違っていた。かなし悪し様に言う。
「じゃあ止めね」
「保険金詐欺師はどうかしら」
 アンが物騒なことを言う。
「それでその助手がラビニアでね」
「あっ、いいわねそれ」
 ジュリアがそれに笑顔で頷いた。
「あいつに相応しいわ」
「顔はこんなのでね」
「あはは、そっくり」
 アンが描いたその顔を見て腹を抱えて笑う。かなり酷く描いている。
「あっ、何か乗ってきたわ」
「そうね」
 アンとルビーの調子が出て来た。
「警部役でギルバート」
「そうそう、それで少年探偵にマルコで」
「おっとりした助手が彰子ちゃんでどう?」
「彰子ちゃんねえ」
 ジュリアは彼女の名を聞いて苦笑いを浮かべる。
「彼女絶対に探偵は無理よ」
「まあそうだけれどね」
「そのギャップがいいんじゃないかしら」
「そこはあんた達に任せるよ」
「で、警部と並ぶお笑いにあの自称名探偵二人」
「あはは、それピッタリ」
「面白い話になりそうね」
 ウェンディもこの話に目を細めていた。
「キャラがね。いいのがいるから」
「圧巻は糞婆とあのラビニア」
「あいつ等には恨みがあるからね。どんどん描いてやるわよ」
「そのうちギッタンギッタンにしてやるけれど。その前に」
「そうそう、派手に描いてやるわよ」
 そんな話をしながら描いていく。かなり楽しそうだ。
 だがそれを見て怯える顔をしているのがいた。クラスの男組である。
「ううん、何て言うのかな」
 スターリングが苦笑いを浮かべていた。
「確かにミンチン先生やラビニアさんには問題があるけれどあれはちょっとね」
「いや、かなり楽しそうだぜあれ」
 タムタムも言う。
「嬉々として描いてるじゃねえか」
「女って怖いな」
「ああ」
 ベンの言葉にマルコが頷く。これが結論であった。
「本当にな」
 そんな話をしながらアン達を見ている。見られている方はそんなことは意に介さずきゃっきゃっと笑いながら漫画のネームの打ち合わせをしていた。


推理漫画   完


                  2006・10・12

 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧