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とあるの世界で何をするのか

作者:神代騎龍
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第七話  郵便局強盗と白井さん

「それじゃー、俺たちは30分経ったら迎えに来るぜい」

 郵便局前で車から降りると、そう言い残して土御門さんたちはそのまま車でどこかへ行ってしまった。

 いくら何でもお金下ろすのに30分は掛からないだろうと思いながら郵便局に入るが、土御門さんたちにも何か用事があってその時間になるのだろう。郵便局の中を見回してみると、それなりに人が居るものの混んでいるというほどではなく、ATMコーナーも空いている場所こそないが並んでる人も居ないという感じだ。

 俺は通帳と印鑑しかもっていないので、お金を下ろす引き出しカウンターを探す。カウンターは目的別に分けられていて、『お預け入れ・お引き出し』というカウンターの整理券を取って空いている長椅子に座った。

 それほど待たされることも無く整理番号を呼ばれると、俺はカウンターへ向かった。通帳を出して20万円の引き出しを告げると、通帳を受け取った局員が奥へと通帳を持っていった。

 手持ち無沙汰のまま辺りを見回すと、ATMコーナーに固法さんが並んでいた。そして、その後ろには白井さんが待っていて、更に今入り口からお花畑……ならぬ初春さんが入ってきたところだった。

 白井さんと初春さんは何やら話をしはじめ、白井さんが冷や汗をかいていたり初春さんが目を輝かせていたりするのだが、この展開は名違いなくアニメで見たアレだと思う。そう言えば、この時期に郵便局といえばこのイベントがあったのを完全に失念していた。というか、アニメでの郵便局強盗の話のときは、白井さんも初春さんもずいぶん幼く見えるような描かれ方をしていたので、イメージ的にもっと昔の話のような気がしていたのである。

 近くには発砲をする人が居るはずなので周囲をしっかり確認していくと、あからさまに挙動のおかしい人物が一人居た。片手をポケットに入れたままにしていることから、恐らく拳銃を隠し持っているのだろう。だが、本命は別に居るはずなのだ。初春さんを人質に取るほうのイコールスピードっていう能力者だったのだが、特徴などを全然覚えていないので特定することは出来なかった。

 そうこうしている内に固法さんは局員に話をしに行って、白井さんは拳銃を持った犯人のほうをじっと見つめていた。そんなにじっくりと見てたら犯人に気付かれるのではないかとも思うが、犯人は周囲を確認する余裕すらないみたいで、白井さんの視線には全く気付く様子がなかった。

 この状態で待った時間は10秒あっただろうか……挙動不審男は俺のほぼ真後ろに居て、いきなり天井に向けて拳銃を一発撃った。そうなることは分かっていたし、心の準備も出来ていたつもりだったのだが、この至近距離での銃声ははっきり言って心臓に悪い。音量もさることながら、何か衝撃が来たような感覚すらあるのだ。

 銃声にびっくりしていた事もあり演技ではなく驚いていた俺は、白井さんの先走った行動により我に返った。

(アリス、取り敢えず今だけ、俺のケータイをどう操作しても音が出ないようにしてくれ)

(了解、終了)

 犯人に気付かれないようにケータイから出る音をアリスにカットしてもらい、土御門さんに電話をかけようと思ったのだが……まだ操作に慣れてないこともあって、ポケットの中でどう操作していいか分からなかった。

(アリス、このケータイから土御門さんに電話をかけてくれ)

(了解、……つながった)

「きゃっ!」

「なーにガキにのされてんだよっ! ったく使えねー」

 アリスに頼んで土御門さんにかけてもらい、繋がった直後に本命の郵便局強盗が初春さんを人質にとっていた。

「初春っ!」

「あぁ? こいつの知り合いか? お前ジャッジメントだろ。ジャッジメントが人質を見捨てるわけねーよなー」

 初春さんを人質に取った犯人がしゃべり終わってすぐ、郵便局の警報装置が鳴り出した。

 警報が鳴り出すと郵便局内の電気が全て消え、シャッターが閉まることでかなり暗くなった。アニメでは普通に見ていた気がするので、恐らく暗くなった感じはあっても見えにくくなるほどの暗さにはしてなかったのだろう。しかし、実際に非常口の明かりやコンピューター画面など、少々光を出しているものがあるだけでは、人の顔を識別できるほどの明るさにならない。

(シェーラ、取り敢えずカタがつくまでは、そこに居る強盗の仲間が起きないようにしといてくれ)

(かしこまりました)

(アリス、ケータイの明かりが点く部分を全て消灯状態にしてくれ)

(してある)

 シェーラとアリスにそれぞれ頼みごとをした時には、警備ロボットが警告を終えて動き出していた。

 白井さんが警備ロボットに隠れるようにして動き出す。アニメで見たときは「そんなの一発でバレるだろう」と思っていたのだが、実際にこの暗さでは分かりづらいのかもしれない。……いや、でもやっぱり分かるだろうな。

 ドガンッ!

「きゃっ!」

「いてっ」

 警備ロボットが破壊され、白井さんは固法さんに助けられ、固法さんは恐らく大怪我をしているのだろうが、俺の腕にも警備ロボットの破片は結構な勢いで当たっていた。

「こういうのって、別に俺たちの仕事じゃないんですよね?」

『あー、そうだにゃー』

 カウンターを仕切る板で犯人側から見えないようにケータイを取り出して土御門さんと話をする。当然小声でしゃべっているし、警報音も鳴っていて、さらに白井さんが「先輩!」などと叫んでいるので、犯人に気付かれることはないだろう。そして、土御門さんはこれまでの郵便局内の音や声などから、こちらの事情を察してくれているようだ。

「俺は手を出さずに見てたほうがいいんですかね?」

『まー、それしかないだろうにゃー』

 破片が腕に当たったことでちょっと頭にきていたのだが、犯人に仕返しをすることは残念ながら出来ないようだ。やはり、表の事件に暗部組織が関わるのはまずいのだろう。

「治癒魔法とか使っても大丈夫ですかね?」

『自分に使うなら全然問題ないんだが、他人には使わないほうがいいかもだにゃー』

 固法さんの怪我を治そうかと思っていたのだが、それも今は使わないほうがよさそうだ。

「了解ー、一応このまま繋げときます」

『おう』

 土御門さんとしゃべり終えると、犯人が白井さんをボコった後で、ちょうど白井さんが初春さんを外へテレポートさせるところだった。

 俺は静かにケータイをカウンターの上に置いて、警備ロボットの破片が当たった右腕を左手で押さえてみる。多少痛みはあるがそれほどたいした事はないようだ。

(アリス、俺とそこの人以外で警備ロボットの破片に当たったやつは居るか?)

(居るには居る。けど、服に何かが当たったとぎりぎり気付ける程度だから、怪我などには至ってない)

 どうやら警備ロボットの破片は後ろの方向へたくさん飛んできたようで、俺と固法さん以外の人に被害は出なかったようだ。

 俺が被害の確認をしている間にも犯人は白井さんに、お前はこうするつもりだろうが残念だったな、みたいな事を得意気にしゃべっていて、ポケットに入れていたほうの手を出して少し振るように動かした。

 ガシャン、バリバリバリッ!

 犯人が変な仕草をして少し時間が経った後、郵便局の窓ガラスが割れシャッターが壊れた。というか、俺はアニメを見ているので犯人がパチンコ玉らしきものを投げたことは知っている。しかし、8割が学生の学園都市でパチンコ玉を手に入れるのって結構難しいんじゃないのかな、とか思ってみたりもしなくはない。

 俺が変な考え事をしてる間にも犯人は白井さんに対して、自分の手伝いをすればまだ郵便局内に残っている人たちは助けてやる、みたいな事を言っていた。

「ずぇーーーったいにお断りですの!」

 白井さんが犯人に言い放つ。犯人は少し驚いたような顔をしたが、白井さんはさらにしゃべり続け、最後にこう言い放った。

「もう心に決めてますの。自分の信じた正義は、決して曲げないと!」

 この場面だけ見れば白井さんはかっこいいんだけどな、なんて考えながら俺は白井さんの目の前に保険だけかけておき、あとはのんびりと眺めていた。

 白井さんの言葉を聞いた犯人は、白井さんに向けて複数のパチンコ玉を投げる。

「一度に一つしか投げられないとは言ってないぞ」

 犯人はまたもや得意気にそう言って自分の勝ちを確信したようだったが、白い閃光がパチンコ玉を飲み込んで抜けて行き、パチンコ玉は跡形もなく消え去っていた。

 恐らく御坂さんの電撃だろうと思われるものがパチンコ玉を消し去ったのを確認すると、俺は保険として白井さんの目の前に展開していた空間盾を即座に解除する。その直後、白井さんは犯人に向かって走り出し、確保したのである。

 俺が白井さんに対してかけていた保険の空間盾というのは俺の空間操作能力の一部で、存在しない空間を作り出すものである。存在しないものを作り出すというのもおかしな話だが、その空間の存在をなくすとでも言えばいいだろうか、一応俺の魔法によって光と音はなくなった空間を抜けて届くようにしているので、空気中であれば見た目には何ひとつ変わることがない。しかし、その場所には空間が存在しないので風が抜けることもないし、物が通過することも出来ないのである。なお、白井さんの目の前に展開していた空間盾は厚さ0.001mm程度である。

 これで事件は解決ということでいいのだろう。俺はカウンターの椅子に腰を下ろし、繋がったままのケータイを手に取る。

「何とか片付いたみたいです」

 一応土御門さんに報告しておく……つもりだったが、何も反応がない。

(すでに電池が切れています)

 アリスからの報告で気付いたのだが、良く考えたらケータイ買ってから俺は充電していない。買ったときに店側が動作チェックでもしたのだろう程度の充電しかされていなかったのである。

 仕方なくケータイをポケットに入れて、アンチスキルの到着を待つ。

(あーそうだ、アリス、ケータイの光と音は戻しといてくれ)

(うん、充電をしたときに戻しとく)

(シェーラは犯人が確保された時点で干渉を止めてくれ)

(はい、とは言っても犯人に起きる気配がなかったので、現時点では何もしていないのですが……)

(そうか、まぁ、確保されるまでは見ておいてくれ)

(かしこまりました)

 しばらく待つとアンチスキルが到着し、犯人の確保や固法さんの治療などを始める。俺や他の客に対しての事情聴取はもうしばらく後になりそうだ。そして、白井さんは治療を受けた後のようで初春さんとおしゃべりをしていた。

 鉄装さんから事情聴取を受け、俺が見た範囲での説明をしていたのだが、その時視界の隅に黄泉川さんの姿を捉えた。黄泉川さんは俺の通帳を持っていった郵便局員に事情聴取をしているようで、局員が通帳を見せて俺のほうを指差した時に黄泉川さんと目が合った。

 俺が軽く頭を下げる感じの挨拶をすると、黄泉川さんも肯くような仕草を見せてくれた。とても良い先生であることは原作からも伺えるので、俺としてはちょっと嬉しかったりする。だが、局員は俺の通帳についての何かを説明しているらしく、しばらくして黄泉川さんがもう一度こちらを見たときには、何故か厳しい視線を向けられたのである。

 事情聴取も一通り終わり帰り始めている人も居る中で、まだお金も下ろせてないし通帳も戻ってきていないので、俺はカウンターの椅子に座ったまま待っていた。

「ちょっと聴きたいことがあるじゃん」

「あ……はい」

 声を掛けてきたのは黄泉川さんだ。やはり通帳に何か不審な点があったのだろうか、黄泉川さんは俺の通帳を持っていた。

「こいつについての事なんだが、どうやって作ったじゃん?」

 通帳をひらひらと振りながら尋ねてくる黄泉川さん。

「どうやってと言われましても、俺はちょっと特別待遇らしくて学園都市側が作ってくれていたので……」

 さて、こんなことを言ってしまっても良かったのだろうか。しかし、俺のケータイは電池切れで、暗部用のケータイは土御門さんたちと一緒に車の中、今は土御門さんと連絡が取れない状態で、特にうまく言いくるめられるような嘘も思いつかなかったので、とっさの判断で言ってしまったのだ。まぁ、ケータイの電池が切れてなかったとしても、今の状況で土御門さんに「どう説明したらいい?」とケータイで聞くわけにはいかないだろう。

「特別待遇? ちょっと身分証明書を見せるじゃん」

「はい」

 黄泉川さんに言われて俺は身分証明書を出した。

「ちょっと待っとくじゃん」

 身分証明書を少しの間見ていた黄泉川さんは、そのまま郵便局の外へ出て行ってしまった。

「本当に見るだけだったのか……」

 恐らく黄泉川さんは俺の身分証明書から、バンクのデータを照合しに行ったのだろう。俺のバンクのデータがどのようになっているのかは分からないが、アンダーラインで聞いているのならアレイスターさんが何とかしてくれているに違いない。してくれてなかったとしても、特別待遇でもバンク上では一般生徒と同じようにしか登録されてません、といった言い訳ぐらいなら出来るだろう。

 それほど待つということもなく、ほどほどの時間で黄泉川さんは戻ってきた。

「特別待遇というのは理解したじゃん。そしてこの通帳も返すじゃん。郵便局には私のほうから説明しとくじゃん」

「……あ、はい。ありがとうございます」

 黄泉川さんが俺の思っていた以上に「じゃん」を連発するので、あっけに取られていた俺は一瞬の間を空けてお礼を言った。

 それからしばらく待っていると郵便局員がやってきて、下ろした現金と通帳を渡してくれる。そして、カードを作るよう促されたので手続きを済ませ、カードは後日発送されるということで郵便局での用事が全て終わった。

 俺が郵便局を出るとちょうど土御門さんが歩いてきたところだった。

「大変だったにゃー」

 土御門さんはすでに事件の内容をほぼ知っているらしく、俺との通話が切れた後も情報の収集は出来ていたようだ。

 その後は塗装屋でケータイをメタリックブルーに塗装してもらい、何事もなくアパートまで送り届けてもらったのである。
 
 

 
後書き
やっとアニメに出てきた場面までたどり着きました^^;
でもまだ原作開始時期にすらなってないんですよねー。
この先はもう少し日常をやってチート能力を強化してから原作に入ろうかと思います。 
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