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魔法少女リリカルなのは平凡な日常を望む転生者 STS編

作者:blueocean
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第12話 機動六課入隊試験

 
前書き
こんにちはblueoceanです。

長々と待たせてしまって済みません。
ですが、本当はキャロの方を先に投稿するつもりでしたが、結構時間がかかりそうなのでこっちを先に投稿することにしました。

時間がかかってしまって済みません……… 

 
新暦74年11月………

「ここね………」
「うわぁ………やっぱり人数が多いね………」

機動六課のオフィスがある湾岸地帯。
その機動六課にティアナとスバルはそれぞれ来ていた。
新設された建物の綺麗さとその大きさ、広さに驚く2人だったが、それ以上に予想以上の人数に驚きが絶えない。

「私達大丈夫かな?」
「まあ厳しい門よね。だけど承知の上でしょ?なら今の私達の力を見せつけてやりましょ」
「そうだね!!頑張ろうティア!!」

不安そうな顔をして俯き気味だった相棒の元気な顔を見て安心するティアナ。
今回の試験、合格者の定員は特に決まっておらず試験内容も公表されていない。

そんな今日の試験に2人も不安など無いわけは無く、声を掛けたティアナも気丈に振る舞いながらも内心緊張していたり。

『では試験希望の方は演習場へと移動してください』

さて、そんな心中でも試験は待ってくれずアナウンスが流れる。
聞いた2人も指示通り移動しようとした時、

「きゃ!?」
「あたっ!?」

スバルの足元に誰かがぶつかった。

「ごめんなさい!!」
「いやこっちこそ………しかしこの弾力、綺麗な肌………これは美人に違いない!!」

そう言って顔を上げる声の主。

「ボーイッシュ巨乳美人来たーーー!!!」

まだ2桁の歳にも成長していない子供の男の子は、スバルに対してそんな叫び声を上げたのだった………












「初めまして、俺は江口信也って言います」

スバルとぶつかった少年、江口信也はティアナとスバルと共に歩く。

「私はスバル・ナカジマだよ。で、こっちが………」
「………ティアナ・ランスターよエロガキ」

そんな素っ気ない返事をするティアナだったが、信也は気にせず、目をキラキラさせて見ていた。

「こんな所で仲間とはぐれて人生終わったな………って思いましたけど、まさかボーイッシュ巨乳美人のお姉さんと、ツンが強いツインテールお姉さんとこうして出会えるなんて………神様、ありがとーーー!!!」

「ティアナ、面白い子だね!」
「その歳で犯罪予備軍とか先が思いやられるわね………」

後ろで騒いでいる信也を見ながらそんな会話をする2人。

「それにしても………」
「目立つわね………」

騒いでいる信也のせいで視線が3人に集中し、スバルやティアナは落ち着かない。
しかしそんな信也の行動のおかげで気づかない内に緊張が影も形も無くなっている事に2人は気づかない。
………しかしそれが信也の狙いでは無く、本心からの暴走なのだが。

「もう我慢できない!!一回ぶん殴って………」
「いた、信也君!!」

ティアナが拳骨を落とそうとした時だった。
人混みをかき分けて中から頭に月のアクセサリーをつけた女の子が現れたのだった………











「よう真白ちゃん、見ろよこのお姉ちゃん達、凄い美人だろ!?」
「エローシュ君、何でテンション高いんですか………?キャロちゃんと一緒にはぐれてこっちは捜すのに苦労したのに………」
「真白、居た………?」
「うん、お姉さん達と一緒にいた」
「本当に………このエロバカは………」

真白と呼ばれた女の子を追ってきた2人の少年少女、エリオ・モンディアルとルーテシア・アルピーノだ。

「アンタの連れ?」
「うっす、この月のアクセサリーを付けたのは真白ちゃん、そしてこっちのイケメンがエリオ、ツンとしてる紫の髪の女の子がルーちゃんだ」
「誰がツンよ!!」

「初めまして、信也君がお世話になりました………」
「あっ、こちらこそ………」

真白の丁寧なお辞儀に思わずスバルもお辞儀し返した。

「それとあれ?キャロちゃんは?」
「まだはぐれたまま………まあキャロならここに知り合いも居るし大丈夫だと思うけど………」

ちなみにキャロに関しては人混みから外れた所で泣いている所をたまたま通った加奈に見つけてもらい、後にエローシュと合流する。

「………ってあなた達も試験を?」
「あっ、はい。エリオ君と一緒にみんなで受けに来ました」

ティアナの質問に答えた真白だったが、そんな真白の答えがティアナは気に入らなかった。

「………あなた達遊びに来てるなら帰りなさい。そんなに簡単な門じゃ無いわよ」

少しキツ目に言うティアナに雰囲気が緊迫したものに変わる。
ティアナにとってはこれは執務官になるという目的に近づくための最短コースであり、何としても受かりたいと思っていた。
それなのに『友達と受けに来ました』何て言われてとても『そうなの………お互い頑張りましょうね』なんて言える心境では無かったのだ。

「………ティアナさん違うぜ。俺達は俺達の目的のために来ているんだ。エリオ受けたからってのもあるが決してそれだけじゃない」

緊迫した空気の中、エローシュが年上のティアナにも負けず真っ直ぐな目でそう答える。

「ティアナさん、あんたみたいなツンな女の人はマジで本当にドストライクって言えるほどタイプだ。だが、これだけは引けない」

そんなエローシュの言葉に他の3人をしっかりと深く頷いた。
一番気弱な真白も少し怯えながらも目を逸らすことは無い。

「余計な事を言わなければ完璧なんだけどね………」
「まあエローシュだから………」
「そこうるさい」

少し静寂があったが、エリオとルーテシアの陰口に少し睨みながら文句を言うエローシュだが、特に効果は無く、エリオとルーテシアは知らぬが顔だ。

そしてエローシュは再びティアナを見る。

「正々堂々戦おうぜ。そして今度その胸を………」

その次の言葉を発する前にルーテシアと真白に平手打ちを喰らい気絶するエローシュ。

「すいませんお騒がせしました………」

そう言ってエローシュを連れていったのだった。

「凄い気迫だったね」
「負けないわ絶対に………」

小さいながらも油断ならないと悟った2人は更に気合が入るのだった………












『皆さんよく来てくれました!!私が機動六課部隊長の八神はやて二等陸佐です。そしてこちらが………』
『副隊長の神崎大悟一等空佐です』

時間になり、機動六課の演習所へ来たスバルとティアナ。
そこには約200名程の人数のがおり、少し狭苦しい。

「あれがエース・オブ・エース………管理局最強の魔導師………」
「気弱そうだね」

スバルの問いにティアナも頷いた。
実際、今壇上に上がっている神崎の顔色はかなり固い。誰がどう見ても緊張しているのが分かる。

「テレビ何かの取材でもカチコチだけど本当なのね………」
「はやてさんが『アイツは変わってからかなりのヘタレやで』って言ってた位だからね」
「変わった?………まあそれは良いとしてかなりイメージダウンね」
「だけど実力は間違いじゃないよ。映像で見たけど、前にあったバリアアーマーとのエキシジジョンマッチで、あの人自分の魔力を下げて、しかもその状態で魔法無しで倒したんだから」
「そうね………私もテレビで見てたけど本当に凄かったわ………」

そんな話をしていた内に話は終盤に差し掛かりとうとう試験内容が言われる。
そしてその内容は壮絶なものだった。

『試験はたった1つ。このエース・オブ・エース対ここにいる新人全員で戦って勝つことです』

「へ?」
「え?」















「さて、それじゃあ頼むな神崎君」
「八神、やっぱりこの内容は流石に無理があるんじゃ………」

さらっと新人が200人ちょっと居ようが負けないと言っている大悟だが、本人は全く悪気は無い。

「当然や。むしろ負けたら加奈ちゃんに別れ話してもらうで」
「……………………………え?」

あまりの衝撃にかなりの間が空いた。

「当たり前やん。いくら志望者248人だとしても新人やで。そないな相手に苦戦するなんてエース・オブ・エースの名折れや」
「理・不・尽だ!!」
「それが許されるのが美少女部隊長はやてちゃんや」

そう言われ、その場にしゃがみ地面に向かって大きく深くため息を吐く大悟。
そして立ち上がると先ほどの雰囲気を全く感じさせない真面目な顔になった。

「………スイッチ入ったん?」
「ああ。俺にとって絶対に負けられない戦いになったからね。………因みに全員直ぐに倒す結果になっても構わないかい?」
「構わへん。これくらいやらへんと機動七課には絶対勝てへん」

その言葉を言うはやての目にはしっかりとした決意の色があった。

「分かった………じゃあ俺も久しぶりに全開で行くぞ」

そう言って壇上から降りる大悟。
ゆっくり降りる大悟に新人皆が固唾を飲む。

「それじゃあ始めるか………全員、デバイスを構えろ」

そう淡々と言う大悟の迫力に押され、それぞれ自前のデバイスを展開する新人達。
その中にはティアナやスバルも含まれていた。

「よし、それじゃあ覚悟しろ。いくら非殺傷設定になっていたとしてもどうなるか俺も分からないからな。バルディス、セットアップ。リミッター解除、魔力開放」
『イエスマスター』

大悟がそう言うと溢れんばかりの魔力が人の目に見えるほど高まっていく。まるでその姿はオーラを纏った様に見える。

SSSランクの魔力。その壮大さと異様さは新人達の心にもの凄い恐怖感を与えた。
その姿に直ぐ近くにいた新人達はヘタリ込み、恐怖感を感じた新人はまっ先に逃げていく。

「10秒待ってやる。覚悟の無い奴、心が折れた奴はここから直ぐに立ち去れ!!」

力強い咆哮が演習場に響く。その咆哮はまるで肉食獣のよう。
そんな咆哮に完全にビビッた大勢の新人が入口に走っていく。人の叫びや怒声が響き、静まり返ったと思うと演習所には前に居て気絶してしまった新人と………

「スバル………」
「これがSSSランクの魔導師………」

しっかりその場に身構えていたティアナとスバル。

「凄かった………真白もよく耐えたね」
「う、うん何とか………」
「迫力から言えばあの時のフェンリルよりも凄かった………」
「お兄ちゃんに聞いてなかったら私折れてたかも………」
「ヤバイ、残ったのは良いが勝てる気がしないな………」

5人で固まった集団、ルーテシア、真白、エリオ、キャロ、エローシュがそこに居た。

「………戦えそうなのはたったの7人か………さて、安心してないよな?試験開始するぞ。全員で協力するもよし、バラバラに挑むもよし、好きにするといい」

大悟にそう言われた瞬間、ティアナとエローシュは互いに目線が揃った。

「………スバル、あのガキンチョ達と協力するわよ。ただしいつもと同じ私達2人で戦闘。戦いはそれぞれやりやすい様に。OK?」
「うん、分かった」

「みんな、俺がいつも通り指揮を取る。それに沿って動いてくれ」
「「「「OK、エローシュ!!」」」」

互いにそう言い合うと、スバルが前衛にティアナが後衛に。
そしてエローシュの方はエリオが最前列に立ち、その後ろに真白。その左右斜め後ろにキャロとルーテシア。

そして一番後ろにエローシュが立つ。

『おい、お前になら言わなくても分かってると思うがどう転んでも勝てる見込みは無さそうだぞ。奴は化け物だ。俺の時代でもあんな化け物そうそういなかった』
「だが、いたんだろ?だったらその時の経験を俺に貸せ。1%でも勝つ道を模索する」
『コイツは………』
「エクス、ユニゾンするぞ」
『………っち、分かったよマスター』

そんな会話を自分の心の中でし終わったエローシュ。
その後、目の前に次元を裂いた様な穴が出現し、そこからエローシュ程の背丈で腰まで肩程まで伸びた黒髪の男の子が現れた。

「『ユニゾン!!』」

互いにそう言うとエローシュとエクスと呼ばれた少年が接触し、光が巻き起こる。
そして光が収まると………

「さあ、始めようか」

まるで指揮者の様な格好したエローシュが180°キーボードに囲まれてそう呟いた。













『あれは………』
『ん?あのガキがどうしたんだバルバドス?』

六課の中にある見学室から様子を見ていたバルトはいきなり言葉を呟いたバルバドスに少し驚きながらも念話で声を掛けた。

エローシュが出現させたユニゾンデバイスの少年。
全く見たことのないそのデバイスに見学室から見ている者だけでなく、他の場所で戦いを見ていた六課の職員達も全員驚いており、当然その中にバルトも居た。
しかしバルトはそのデバイスよりも日常でバルトに話しかける事など滅多に無いバルバドスが念話で呟いた事の方が大きかった。

『まさかとは思うが………だがあれはまさに………』
『んだお前、ぶっ壊れたか?』

そんな冗談に反応することも無く再び黙ってしまうバルバドス。
相棒のそんな態度に少々不満に思うも何も言わず目線を再び演習所へと向ける。

「しかしあのやろう腕を上げたな………あの時とは違い、魔力に凄みがある。“威風堂々”管理局最強の魔導師か………面白い………」

ニヤリと笑みを浮かべてそう呟くバルト。

「ねえねえなのはお姉ちゃん、バルト凄い悪い顔」
「元々悪い顔なんだからあれほど気をつけるようにっていつも言ってるのに………」
「あはは………」

そんなバルトを見て、話すヴィヴィオ、なのは、フェイト。
なのはに限っては母親の様な言葉を言っている。

「大悟、本気でやる気ね………」
「………」

そんな姿を見た加奈の隣で、スバルが心配なのか不安そうな顔で見ているギンガの姿があった………
















「スバル、いつも通りね」
「うん、分かってる」

そう言ってスバルが真っ直ぐ大悟に向かって突っ込んでいく。
ティアナの作戦はいつも通り。スバルがクロスレンジに突っ込み、ティアナが援護。

エリオとガリューも動くがそれよりもスバルの方が速く、先に到達した。

「ジルディス、ブレイドフォーム」

お馴染みの大剣。自身の魔力を開放した事によりいつも以上の魔力が帯びていた。

「一点必中………ディバインバスター!!」

そんな大悟に向かって、魔力を溜めた拳を大悟に向かって放つスバル。
放った後も、自分のローラーで滑るように大悟の後ろへ周りこもうと動く………が、

「ふん」

スバルの放ったディバインバスターを上から一閃。
バッサリと砲撃魔法が寸断された。

「そんなの分かりきってる!!」

更に拳を深く構えたスバルが大悟の腰に向かって拳を突き出す。

「インパクト………バンカー!!」

そのまま拳を突き出すが………

「………へえ、直撃した瞬間溜めた魔力を撃ち込むか………これは桐谷が教えたのかな?」
「うそ………」

バリアブレイクすら可能なスバルの攻撃を大悟は涼しい顔して大剣で受け止めた。

「くっ………」
「スバル、バック!!」

ティアナの声が聞こえて直ぐにその場からバックステップ。
その瞬間に大悟のいる場所に煙が巻き起こった。

「ティア、どうして!?」

ティアナの元へ一旦下がったスバルはティアナに直ぐに不満をこぼした。

「攻撃が通じない状態で無闇に連撃しない、反撃でやられるわ!!、一撃でも喰らった負けと思いなさい!!」
「無茶な事を言うよティアは………だったらちゃんと援護してね」
「任せなさい!!」

その返事を聞いて再び煙の中に向かっていこうとするスバルだったが、その前に大悟に向かっていく2つの影があった。

「でやああああ!!!」
「………!!」

勢い良く槍を振るう少年と無言で拳を突き出す虫の戦士。
エリオとガリューである。

『ガリューはそのまま真っ直ぐ連打を浴びせろ!!エリオはブーストと共に、雷撃を中心とした攻撃を。作戦通りに頼むな!!エレメンタルブースト!!』

エローシュが念話でそう言うとエリオとガリューがそれぞれ光に包まれる。
エリオは黄色、ガリューは緑。
それぞれ雷と風の付加を得たのだ。

「おっ!!」

大剣で煙を吹き飛ばした大悟は向かってきたガリューに少し驚きながらも大剣を地面に突き刺し、拳でガリューの連打に反応する。

「!?」
「流石に重い攻撃だな………しかも速いし」

「うそ!?速さの上がったガリューの攻撃を素手で打ち合ってる!!」

ガリューを召喚したルーテシアが別の虫を召喚しようとして準備をしながらその光景を見て驚く。

「予想より更に上を行くな………キャロ、準備は?」
「うん、大丈夫!!」
「よし、真白のチャージを続けろ。そろそろ動く、行くぞ2人共」
「「うん!!」」
「エレメンタルブースト!!」

そう言うとキャロは赤く、ルーテシアは紫に光始める。

「竜魂召喚、フリード!!」

大きな召喚陣からフリードが現れ、大きな咆哮をあげる。

「はあああ!!」
「雷撃を帯びた槍か。だけど槍はどうしても突きが中心になるから読みやすいんだよね。………まあ実力がある人だとそれを逆手にとった攻撃をしてくるんだけど」

そう言った大悟はガリューを隙を見て突き飛ばし、向かってきた槍を当たる瞬間に体を逸らしてエリオを自分に招き入れた。

「えっ!?」
「まだまだ甘いよエリオ」

そう言って大悟は槍を持ち上げ振り回す様にエリオを持ち上げて、ガリューの方向ヘぶん投げた。

「うわああああああ!!!」

あまりの勢いに槍を持ち続ける事が出来ず、思わず放してしまい、起き上がったガリューに受け止められた。

「ありがとうガリュー」
「………(コクン)」

黙って頷くガリューに苦笑いしながら答えたエリオは大悟の方を見る。

「だけど凄いや大悟さん。レイ兄に聞いていたからその強さは分かったつもりでいたけど、まさかここまで手がでないなんて………」
「………(コクン)」
「それにまだ魔法だって使ってない。エローシュの作戦がどこまで通用するのか………」

そう言いながら上を見るエリオ。

「頼むよ真白、キャロ、ルー………」
そう呟いて立ち上がるのだった。











『悪いがエリオとガリューは囮になってもらう』

エローシュの念話での作戦説明の第一声がそれだった。

『………理由を聞いていい?』
『相手の技量が天と地ほど違うからだ。その状態でフィニッシュを狙うのは無理だ。それにエース・オブ・エースはほぼ大剣での戦いをする。広域戦闘だとブラストスタイルって言う長いライフルを使うらしいんだけどそれは無いだろう。だったら確実に大剣で戦う』
『えっ、でもお兄ちゃんから双銃も使うって聞いたけど………』

キャロがそう言うと、エローシュは『いいや』と直ぐに反論した。

『いや、恐らくない。ここ数年で双銃を使ったのはほんの数回だ。だとしたらここで使う可能性も低い』
『それも“時の記憶”の情報で?』
『まあエクスの能力を使わなくたって多少調べれば分かるさ。何せかなりの有名人だから』

ルーテシアの質問に少し皮肉じみた言い方で答えるエローシュ。

『それに双銃を使われたら俺達の勝ち目は無いと思ってくれ』
『えっ、何で?』
『一発がSランク程の魔力弾で乱発出来ると言ったら?』

『『『『………』』』』

そんなエローシュの言葉に4人の言葉が無くなる。

『それって一番強いんじゃないの?』
『だがそれを使っているのはここ数年数回だけだ。………となると苦手なのか分かりやすい弱点があるのか………まあそれまでは分からないが、それでも使われると今の俺達じゃ勝ちようが無い』
『そうだね………』

エリオの一言でそれぞれ大悟から目を離さず頷く。

『でもそれじゃあどうするの?』

真白が少々不安そうな声で呟く。

『さっきも言ったがエリオとガリューが囮となって相手の目を引いている内にキャロとルーがフリードと地雷王を召喚。そして真白ちゃんは自身の一番威力の高い魔法を合図と同時に発射する準備をしておいてくれ。それで後は合図と共に一斉攻撃。ブーストも付加してそれで倒せなかったら俺達の負けだ』

そうきっぱり負けると宣言したエローシュに他の4人は心の中で驚いていた。

『それくらい勝ち目が薄い相手だって事さ。さて、そろそろツン巨乳姉さんとボーイッシュ巨乳姉さんが一旦下がるだろう。それに乗じて攻めるぞ』

エローシュの呼び方に突っ込もうとした皆だが、攻めると言われて頭を切り替えた。

『それじゃあ行こう、ガリュー』

そう言ってエリオとそれに頷いたガリューが駆け出したのだった………












「フリードってでかくなっても可愛いよな………」

大きな咆哮を聞いた大悟はその声の方向を見て一人呟く。

「だけど好きにはさせないさ」

そう言うと浮かび上がり、フリードの元へ向かおうとするが、

「でりゃあああああ!!」

再び向かってきたスバルの拳を受け止める大悟。

「さっきので諦めないんだね」
「まさか!!それに今回はそれだけじゃ無いですよ!!」
『マスター!!』

バルディスの声を聞いて周りを見渡すと大悟とスバルを円状に囲んでスフィアが展開されていた。

「行くわよ、リフレクトバレットコンセントレイトファイヤ!!」

そう言うとそのスフィアに向かって魔力弾を連射するティアナ。

「嘘だろ!?スバルがいるのに撃つのか!?」
「残念、そのスバルは………」

ティアナがそういう前に魔力弾がスバルに当たるが、当たった瞬間消え去った。

「幻影!?」
「目線を外した瞬間ね。取り敢えず動きは封じた………スバル、決めなさい!!」
「うん!!」

そう返事をしたスバルのローラーブーツのローラーが高速回転。
激しい音と共に土煙を巻き起こす。

「ソニックアクセル……行くよ!!」

足に貯めていたエネルギーを開放するスバル。

「なっ!?」

まるで瞬間移動の様なスピードでいきなり目の前にスバルは現れ、反応しきれない大悟。
それと同時にティアナが展開していたスフィアも消えた。

「コード麒麟!!」

そう言うと更にその勢いを乗せた拳で打撃と蹴りを連続で繰り出す。

「くっ!?」
「はああああああ!!」

今までのスピードよりも速いというのもあるのだが、大剣を持っていた為に、どうしても防御が遅れてしまう。

「よし!!」

そんな大悟の一瞬の隙を見逃さなかったスバルは大悟の腹に蹴りを決め、吹っ飛ばす。

「ぐうう………!!」
「この一撃で!!」

最後に右手に魔力を溜めたまま大悟に向かっていくスバル。

「これが私の切り札だ!!」

そのまま零距離からディバインバスターを放ったのだった………











「危なかった………」

零距離から放ったディバインバスター。
結果から見ればそれは外れてしまった。

「敗因は一度距離をとってしまった事かな。あのまま近い距離で撃てていれば、俺でも反応出来なかったと思う。一度距離を置いてしまった所為で俺も立て直す時間を持てたからね」

大悟は向かってきたスバルに対し逆に向かっていき、タイミングをずらした事でスバルの右拳を払って射線を変え、攻撃を避けたのだ。

「桐谷の技を真似したのはいいけど、最後のディバインバスターをもっと高速で撃てないと駄目だ。戦いが上手い人には付け入れやすい弱点だからね」
「大悟さん………がはっ!?」

呆然と説明を聞いていたスバルの首筋に手刀を入れられその場に倒れるスバル。

「先ずは1人………で、そこにいるティアナさんは撃たないのかな?」
「………気づいてたのね」

そう言うと大悟の後ろからティアナがゆっくりと現れた。

「まあ僅かながら魔力の気配がしたから。最近魔力をセーブしてきた影響なのか、普通なら感知出来ない程の魔力でも感じる事が出来るようになったんだ」
「こんなに弱点が無い相手は初めてよ………」
「光栄だね」

そう言って大剣から双銃に変えた大悟はそのままティアナに向かって剣先から魔力弾を放ったのだった………











「これで先ずは2人戦闘不能。後はキャロ達か………」

そう呟きながら大剣に戻した大悟は、空へと飛び、フリードに向かって大剣を構えた。

「させない!!」

そう言って向かってくるのは槍を構えたエリオと拳を突き出すガリュー。

「そうだった、あまりダメージを与えてなかったね」

そう優しく言う大悟だが、それとは裏腹に大剣を振るスピードはかなりのもの。

「!?」

予想以上の剣速にガリューは思わず両腕をクロスさせ、防御の姿勢をとったが、それを押しつぶすかの様に振り下ろされた大剣はガリューを地面に沈める。

「ガリュー!!」

そのまま消えるガリューを横目に、エリオはそのまま雷を帯びたまま突っ込む。

「さっきも言ったけどそんな単純な攻撃で………」
「だったら予測出来ないスピードで攻撃するだけだ!!空牙絶咬・雷牙!!」

零治の空牙絶咬と同じく神速の突き。

「なっ!?」

それは流石の大悟でも避け切れるのもでは無く、何とか腕先にかすめた程度で逃れた。

「もう一………」
「ブリッツアクション!!」

お返しとばかりに大悟の高速の剣の乱舞がエリオを襲う。

「ううっ、うわああああああ!!」

最初こそ、何とか槍で耐えたエリオだったが長くは続かず、連続で斬撃を浴びて、最後に蹴られ吹っ飛ばされた。

「これで4人目………次は………」

そう呟き、剣の先をフリードに向けて、スピードを上げ突撃する。

「うぐっ!?」

その途中の出来事だった。何かを突き刺したかと思うと、爆発したのだ。

ダメージこそ受けなかったが完全に脚が止まってしまった大悟。
そこに………

「フリード!!」
「キュオオオオ!!」

大きな声と共に 大地に向かって大悟を尻尾で勢いよく叩きつけた。

「ブラストフレア!!」

そして追撃の手を緩めず、炎弾を放出し続けるフリード。

「くっ!?」

何とか踏みとどまり、大剣で斬り捨てるがその上から更に………

「行け、地雷王!!」

ルーテシアの召喚した大きな虫が降ってきた。

「ウソだろ!?」

流石に予想できなかったのか、慌てる大悟。
しかし逃げる前に地雷王は大悟を巻き込み、そのまま地面に着地したのだった。

「地雷王、放電!!」

ルーテシアがそう言うと凄まじい雷がその場に発生し、地面を揺らす。
エローシュのブーストによって更に威力が増していた。

「やった!?」
「いや、まだよキャロ!!」

ルーテシアがキャロにそう言うと地雷王が持ち上がり、そのまま横に放り投げる大悟。

「マジでか!?」
『全身魔力強化………あれだけの雷撃を耐えるほどの強化、流石だな………だがあんな膨大な魔力、よく体が持つな………』
「エクス………防御が脆いって考察は外れみたいだな………」
『戦いを見ていると大剣でガードする場面が多く見られた以上、それは正しい。ただ、別に防御を自身で強化することも可能って事だ』
「だけどそれを最初っからしないのは何故だ?しておけば俺達なんて更に相手にならないだろうに………」
『試験ってのもあるんだろうがそれ以外に欠点があるのだろう』
「欠点か………」

そんなことを考えながらもエローシュは大悟から目を離さない。

「真白!!」
「うん!!行くよスカイシャイン」
『イエスマスター』

真白が返事すると空にいきなり真白が現れた。
しかも………

「集束魔法!?」

気がつかれるまでに貯めていた魔力で背中に大きな翼が出来ており、それは太陽の様にさんさんと地面を照らしていた。

「それにあれほどの高密度の攻撃………流石に不味い!!」
「地雷王!!」

大悟が次の行動を起こそうとしたとき、ルーテシアの声と共に再び地雷王が放電。

「ぐあああああああ!!」

大きな雷に叫び声を上げた大悟は地雷王を隣に投げ、剣先を向けた。

「この………スマッシャースレイブ!!」

剣を振るい、剣先から放った複数の魔力弾は全て地雷王に直撃し、地雷王はそのまま逆さまの状態で動かなくなった。

「地雷王!!」

ルーテシアが慌てて叫びながら地雷王に走る。

「ルー駄目だ!!」
「スマッシャースレイブ!!」

エローシュの言葉を聞かず地雷王に向かって駆けていくルーテシアに対して魔力弾を放つ大悟。

「エクス!!」
『無理だ!!間に合わん!!』

エクスの返事と共に、大悟の魔力弾がルーテシアに当たり、パタリと銃で撃たれた兵士の様に倒れた。

「くそっ!!!」
『落ち着けエローシュ、非殺傷設定の魔力弾じゃ死にはしない。今は目の前の敵に集中しろ!!』
「っ………!!」

イライラを押し止めて大悟に視線を戻す。

「後は空のあの子を………」

そう言って空へ向かおうとした時だった。

「待て………」
「ほう………まだ立つんだ………」

そこには気絶から目が覚めたスバルが立っていた………











「スバルさん!?」
『ほう、面白い体してるな………』
「おい、この変態、何エロい目でスバルさんを見てるんだ。それをしていいのは俺だけだ」
『お前は時々本当に将来が心配な時がある………まあいい、そんな事よりもどうするんだ?』
「決まってる、彼女のリンカーコアとの接続をするぞ」

そう言ってキーボードを展開し、高速で操作し始めた。

「リンカーコア確認………接続回路形成………よし、ブーストアップ!!」

エローシュの操作が終わるとそこに立っていたスバルに赤く光り出す。

「えっ、何これ暖かい………力が溢れてくる………」

自分の変化に戸惑いながらも溢れてくる力に拳を力強く握りしめた。

「これなら………行ける!!」
「………ブースト?補助魔法か何かか?だけどこれは………」
「でやあああああ!!」

ローラーのスピードと共に加速して大悟に向かっていくスバル。

「相変わらず直線的な動きで通用すると………!?」

大剣で向かってくるスバルに合わせ大剣を振るう大悟。
しかしその大剣は何かの衝撃でスバルに向かった剣がスバルの直ぐ右に逸れる。

「魔力弾!?」
「………決めなさいスバル………!!」

剣の軌道を逸らしたのはうつ伏せになりながらも魔力弾を放ったティアナによるものだった。

「バーンインパクトスマッシャー!!!」

炎を纏った拳が大悟の脇腹に入り、ドン、ドン、ドンと大きな音を立てて大きな爆発を起こす。

「ぐうう………」

咄嗟に魔力で身体強化した大悟だったがそれでもダメージを防ぎきる事が出来ず、地面に膝を着く。

「真白今だ!!」
「うん!!届いてサンシャイン………ブレイカー!!!」

大きな翼に溜まったエネルギーが全て杖に向かって集束していき、杖先に集まった魔力は太陽の様に燦々と輝く。
そしてその魔力を放出すると、全てを焼き尽くす程の光を放ちながら大悟に向かっていった。

「全く、恐ろしい新人達だ………」

そう呟いて大悟は光に飲まれた………










「「「「………」」」」

「凄い!!小さい太陽が出来たと思ったら光の柱がビューって!!」
「コイツは………一体どんだけ集束したんだ………」

見学室で見ていた六課のメンバー全員が驚いてその戦闘を見ていた。

「あの真白ちゃんって子、凄い集束率だったね。それに彼女のデバイスって………」
「うん、私のレイジングハートに似てる………」
「レイジングハートの後継機なんて話あった?」
「う~ん、私前にユーノ君にそんな話を聞いた事あったけど確か中止になったって聞いたけど………」

フェイトとなのはが話している内に真白によって巻き起こった煙が収まっていく。

「しかし奴は本当に化け物だな………」










「………駄目だったか」
「そんな………」

煙が晴れるとそこには仁王立ちしている大悟がいた。
しかしその姿は最初の時と比べて随分ボロボロになっており、大悟自身も傷だらけであった。

「………久々だな、こんなに追い込まれたのは。バルトマン・ゲーハルト以来かもね」
「それにしては余裕じゃ無いですか………」

苦虫を噛み締めた様な顔をしてエローシュが呟く。

「まさか、体全体が痛いよ。ハッキリ言ってもう戦いを止めてゆっくり休みたい気分」
「なら降参してくれませんか?」
「嫌だね、ちょっと俺にも負けられない理由があるんだ。だけど………そろそろ新人いじめもこれくらいにしとこう」

そう言って大悟は大剣を担いではやての方を向ける。

「もう試験はいいだろはやて?」
「そうやな。予想以上に善戦したもんで驚いてしもうたよ。こんなに有望な魔導師達がいれば部隊分けもすんなり決められそうや」
「だってさ」

「………ということは?」

「ここにいる7人は全員合格や。あっ、だけどキャロちゃんだけは後で少し話があるから部隊長室に来てもらってもええか?」
「あっ、はい」

「それじゃあ医療班は皆の治療を………シャマル、後は頼むで」
「はいはやてちゃ………八神部隊長」

演習場に入ってくる白衣の人達。その先頭で指揮をするシャマルの元、気絶者や怪我人は次々に回収されていく。

「今日は宿舎でゆっくり休んで明日六課の説明を始めるって事で。以上、解散!!」

そう言ってはやてはその場を後にした………

「えっと………」
『何かサッパリしてたな』

「さてそれじゃあ俺も休むとするか」
「あの………大悟さん!!」

帰ろうとした大悟を引き止めるエローシュ。

「大悟さん、今日の魔力強化ってどのくらいですか?」
「大体5割程だね」
「そうですか………あれで………」
「まあぶっちゃけ5割でも体にガタがきてるんだけどね。もっと体を鍛えないと………」
「これ以上強くなるのかよ………」
「この世界を守る力を………そのために俺はもっと強くならなきゃね」

そう言って大悟は裏のない子供みたいな笑顔を見せたのだった………













「まさか新人で一番の実力を持つクリスを下すとは………」

レジアスは今起こった事態に驚きで座っていた椅子から立ち上がる事が出来なかった。
時を同じくして機動七課。
こちらは機動六課とは違い、レジアスが独自に集めたエリートを集めた部隊。と言っても実力でのエリートなのだが、メンバーは既に決まっており、レジアスもそれで決めるつもりだった。

しかし………

「お、お前は………」

崩壊したバリアアーマー姿で地面を這いながら新人の1人、クリス・ヴァーナルは自分を倒した者を見上げる。

「あ、赤い………鋼狼………」

威風堂々と自分を見ている赤い装甲の人物を見てそう呟き、意識を失ったのだった………  
 

 
後書き
エローシュの使っていたエクスの件や真白のデバイスなど、まだ外伝の方でやっていないのに、こっちが先に投稿することになってしまって申し訳無いです………

まあ読んでない人にとっては関係無いのですが、外伝読んでいる人にとってはネタバレみたいなものです。

エローシュの件に関してはエローシュ達の会話で何故こうなったのかは本編でも説明はあります。

こんな事になってしまい申し訳ありませんでした……… 
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