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八条学園騒動記

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第二十七話 草原の料理その一


                   草原の料理
「それではですね」
「どうするの?」
 皆あらためてセーラに問う。彼女が何をするのか気になって仕方がないのだ。
「まずはですね」
 セーラは皆の声を受けて応える。相変わらずその後ろにはラムダスとベッキーが控えて不気味な沈黙を守っている。何かそれを見ているだけでよからぬことが起こりそうであった。
「取り出したるこれを」
「お嬢様」
 ラムダスがさっと動いた。そして何かを出してきた。
「それ、何?」
「魔法です」
 セーラはすぐに答えた。
「魔法って!?」
 だが皆その単語を聞いて一斉に不審な目を向けてきた。何をやらかすのかと見ているのだ。
「何、それ」
「話が読めないんだけれど」
「ですから魔法です」
 セーラはそんな彼等に対してのこやかに述べる。
「それさえ使えば簡単にナンさんのお家まで辿り着けます」
「あの」
「幾ら何でもそれは」
 皆にこやかに笑うセーラに対して述べる。
「無茶苦茶じゃないかしら」
「そうよねえ」
「そうでしょうか」
 だがセーラはそう言われて今ひとつどころか全くわかっていないようであった。キョトンとした顔を見せてきている。
「そもそも魔法なんて本当に使えるの?」
「そうよね、そういう問題もあるし」
 パレアナにジュディが応える。
「魔法はマウリアにはちゃんと学問になっていますが」
「へっ!?」
 これまたとんでもない事実が明らかになった。最早何が何なのかわからなくなってきていた。
「ですから魔法もまたマウリアでは存在しているのです」
「そうだったの」
「マウリアの歴史は悠久」
 この時代はこういうことになっている。あまりにも資料が少ないのと神話とミックスされているのでこういうことになってしまっているのである。それがマウリアであった。
「その中では魔法もまた」
「そうだったの」
「もう何でもいいや」
 皆話がわからなくなってきた。マウリアならば何を言っても許される雰囲気があるからだ。それは何故か、やはりマウリアだからであった。
「それでは魔法で」
「ちょっと待って」
 しかしここで名乗り出る者がいた。それは何と彰子であった。
「小式さん?」
「そんなの使わなくてもわかるよ。ナンちゃんのお家だよね」
「ええ」
「それさっきから言ってるじゃない」
 ジュディがそれに突っ込みを入れる。こうした時に彼女はどうにも反応が鈍いのである。
「それじゃあわかるわ。ナンちゃんのお家の場所」
「!?どうしてわかるの、それ」
 皆彰子の突然の言葉に一斉に顔を向けてきた。いきなりそう言われては顔を向けてしまうのが常である。
「だって。この街にパオを置けるような場所って限られてるから」
 彰子は言う。これは彼女が地元の人間だからわかることであった。
「それにこの方角だと。場所は一つしかないわ」
「そうだったんだ」
「駅前の公園ね」
 彰子は言う。
「多分そこよ」
「ああ、あそこか」
 ダンがそれを聞いて顎に手を当てて呟いた。
「あそこだったのか」
「ダン、そこ知ってるの」
「ああ」
 パレアナにも答える。
「そこならな。もう場所はわかった」
「そう。じゃあ」
「後は皆で行くだけね」
「むっ」
 ここでセーラが何か妖しい術を使い出した。その緑の目が何故か青くなっていた。
「これってどういう現象?」
「まさかこれが」
「千里眼の魔法です」
 セーラは答える。
「我がマウリアに伝わる魔法では初歩の初歩ですが。非常に役立ちます」
「本当に魔法使えたんだ」
「もう何が何だか」
 本当にわからなくなってきた。セーラはやはり只者ではなかった。皆本当に人間なのだろうかとさえ思いだしている程である。
「確かにそこですね。ありました」
「やっぱり」
 彰子はそれを聞いて満足そうに頷く。
「パオが見えます。あそこがナンさんのお家ですね」
「そこなのね」
「ええ。ではあそこに行けばいいのですね」
「場所は俺がわかってるから」
「私も」
 ダンと彰子が述べてきた。
 
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