| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

スーパーロボット大戦パーフェクト 第二次篇

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第九十六話 ダバとギャブレー

                 第九十六話 ダバとギャブレー

「そうか、ロゼは当分動けないか」
「はい」
マーグは医師からロゼの様子について話を聞いていた。
「御命には別状はありませんが」
「背中の傷は思ったより深いか」
「暫くは安静にされることをお勧めしておりますが」
「聞かないのかい?」
「はい」
医師は申し訳なさそうに答えた。
「残念ながら」
「そうか、では私が行こう」
「司令がですか?」
「そうだ。副司令を止めるのも司令の役目だ」
「はあ」
「ロゼは今までよくやってくれた。そしてこれからもな。よくやってもらいたい」
「左様ですか」
「ではロゼの部屋に案内してくれ」
彼は医師に対して言った。
「すぐに行きたい。いいね」
「わかりました。それでは」
「うん」
こうして彼はロゼの部屋に向かった。医師に案内されながら。
ロゼの部屋は個室であった。バルマー銀河辺境方面軍副司令官としてかなりいい部屋が与えられているのだ。
マーグは医師と共にその部屋に入った。見ればその部屋はあまり女性らしさを感じさせないものであった。
装飾は何もなく部屋は飾られてはいない。部屋の中は綺麗で掃除が行き届いている。極めて簡素で質素な感じのその部屋の端にベッドに横たわる一人の少女がいた。
「司令」
「ロゼ」
マーグはロゼの顔を見て優しい笑みを浮かべた。
「あの時はどうも有り難う」
「いえ、そのような・・・・・・うっ」
起き上がろうとすると背中に鈍い痛みが走った。
「無理をしてはいけないよ」
マーグはそんなロゼを気遣ってこう言った。
「今の君は負傷者だ。無理は出来ない」
「ですが」
「それに今我が軍は戦力を再編成すべき時に来ている」
「戦力を!?」
「そうだ。ポセイダル軍が母星に帰りたがっている。あちらの事情でね」
「左様ですか」
ロゼはそれを聞いてベッドの上で身体を起こしたまま残念な顔になった。
「致し方ありませんね。ポセイダル軍に関しては」
「そうだね。彼等は私と同じ十二支族だし」
「はい」
実はロゼも十二支族に連なる者ではある。だが本星にはいないので地位はいささか低いものになっている。
ポセイダルもまた本星にはいない。だがオルドナ=ポセイダルは十二支族ポセイダル家の主である。だからマーグも決して無理強いは出来なかったのだ。バルマーは階級社会である。そうした立場は厳然として存在していた。
「彼等の事情であれば仕方ない。ここは帰還を認めるしかない」
「それは今すぐでしょうか」
ロゼは問うた。
「いや、それはまだ先のことだ。少なくても今の作戦中じゃない」
「左様ですか。それなら」
「だが今度の作戦では君の出撃は禁止する」
「えっ・・・・・・」
ロゼはマーグのその言葉を聞いて顔を暗くさせた。
「司令、それは一体」
「君は負傷している。それだけで充分だと思うが」
「こんな傷、何でもありません。・・・・・・グウッ」
「とてもそうは見えないけれどね」
「いえ、これは・・・・・・」
誤魔化せるものではなかった。ロゼは嘘をつくのが下手だった。今も背中の痛みに顔を歪ませている。それだけ見ればもう
充分なのは確かであった。
「君は怪我をなおすことに専念するんだ、いいね」
「・・・・・・はい」
止むを得なくそれに頷いた。
「今回の指揮は全て私が執る」
「わかりました」
「君はロゼのことをくれぐれも頼むよ」
「お任せ下さい」
医師に顔を向けて言うと彼もそれに頷いた。
「ロゼ様、では宜しくお願いします」
「う、うむ」
ロゼはまだ少し戸惑いながらもそれに頷いた。そしてマーグにも顔を向ける。
「司令」
「何だい?」
「私の全て、司令にお預けします」
「いいよ、そんなことは」
彼はその意味深い言葉をまずは受け取らなかった。
「君は君、私は私なんだから。違うかい」
これはバルマーにおいてはかなり異質な言葉であった。霊帝、そして十二支族を絶対とするバルマーの者の言葉としては。
「いえ、それでも」
ロゼは言った。
「ならば私だけがお慕いしても宜しいでしょうか」
「それは一体どういう意味だい?」
「そ、それは・・・・・・」
ロゼは顔を真っ赤にして俯いた。だがそれでも言った。
「それはですね」
「うん」
マーグは気付かない。ロゼの今の彼への気持ちに。
「あの、その・・・・・・」
ロゼも口ごもる。どうしても言えそうになかった。
それでも言おうとする。ロゼは完全に少女の顔になっていた。
「司令」
だがここで兵士達がマーグのところにやって来た。
「どうした?」
「外銀河方面軍司令ハザル=ゴッツォ様から通信です」
「彼からか」
「如何されますか?」
「出ないわけにはいかないだろう。ではすぐに艦橋に戻ろう」
「わかりました。それでは」
「うん。じゃあロゼ」
「はい」
最後にロゼに顔を向けてきた。
「また来るから。それまで静かにしていておくようにね」
「わかりました。それでは」
マーグは部屋を去った。医師もとりあえず今は去る。ロゼは自分の部屋に一人になった。
「やはり。言えないわよね」
仕方ないといった顔で弱々しく微笑む。そこにはいつもの凛としたロゼの顔はなかった。一人の少女としてのロゼの顔がそこにあった。
「お帰りなさい、リツコ」
「ええ、ミサト」
人間爆弾の処理を終えたリツコ達も宇宙に出ていた。そしてオービットでロンド=ベルと合流したのであった。
「そっちは上手くいったみたいね」
「ええ、サコン君のおかげでね」
リツコは笑顔でミサトに応えた。
「彼がいなかったら。とても出来なかったわ」
「僕は何もしていませんよ」
サコンは涼しく笑ってそれに返した。
「皆がいたからできた。それだけです」
「あら、謙遜はよくないわよ」
しかしリツコはそんな彼に対して言った。
「サコン君の頭脳と大文字博士の統率力がなかったら。とてもあんな短期間で皆を救うことは出来なかったわ」
「有り難うございます」
「何かそっちも大変だったみたいね」
「殆ど寝る時間もなかったしね」
見ればリツコもサコンも結構疲れた顔をしていた。
「それでも皆を助けることが出来たから。それでいいわ」
「そう。リツコも変わったわね」
ミサトも親友のその言葉を聞いて笑みになった。
「優しくなったわね」
「そうかしら」
「昔に比べて。今の貴女はいい女になったわ」
「何か昔はそうじゃなかったみたいね」
「昔よりも、よ。これならいいでしょ?」
「ええ、それでいいわ」
「最近皆いい男、いい女になってるし。私達だってうかうかしていられないわよ」
「ミサトさんは今でも充分美人だと思いますけど」
「有り難う、ウッソ君」
「けれど今は赤木博士達の復帰が嬉しいですね」
「そうね。また大規模な戦いになるからね」
ミサトは笑みを消し真剣な顔になっていた。
「来るわよ、彼等」
「バルマーね」
「ええ。また大軍で」
「懲りないわね、彼等も」
「彼等にも彼等の事情があるのよ。引くに引けない理由が」
「けれどそれは私達も同じよ」
「ええ」
ミサトはリツコの言葉に頷いた。
「それはわかってるつもりよ」
「お互いにね。引くに引けない事情があるのよ」
「地球には地球の、バルマーにはバルマーの」
「複雑なものですね、本当に」
「人間は皆そうなのよ」
ウッソにも言った。大人として。
「誰だって。それぞれね」
「そうなんですか」
「ウッソ君だってそうじゃない」
「僕もですか?」
「そうよ。今までの戦いでも色々あったわよね」
「はい」
「そういうことよ。皆、複雑な世界の中で苦しんでいるの」
「はあ」
「今のダバ君もね。同じなのよ」
「ダバさんも」
「彼、何かあったのね」
「ええ、ちょっとね」
リツコに応える。
「少し人間関係のことで厄介なことに」
「そうなの」
「彼なら大丈夫だと思うけど」
「ダバ君は強いから、ということ?」
「繊細だけれどね。今の私達に何も出来ないのが歯がゆいけれど」
「あら、出来るわよ」
「何が!?」
「すぐにわかると思うわ。その時が来ればね」
「そう」
「とりあえず今の僕達は戦いのことを考えるだけですね。次の戦いのことを」
「そうね。ウッソ君いいこと言うわね」
「えっ、そうですか!?」
「大切なこと思い出したわ。今は戦いのことを考えなくちゃ」
「シュバルツさんに助けてもらいましたしね」
「あら、彼も来ているの」
「そっ、いつも通りいきなりだけれど」
「それは相変わらずみたいね。けれど今は少しでも戦力が必要な時だし」
「感謝してるわよ。強力な助っ人に」
「今度もバルマーでしょうね」
今まで話を聞いていたサコンが口を開いた。
「そうね」
それはミサトが一番よくわかっていた。
「それもヘビーメタルが中心で」
「ヘビーメタルはモビルスーツで戦うのには癖があるんですよ」
「ビームコートがあるから?」
「はい。だからビーム兵器は使いにくくて」
「それはわかるわ。そういえば最近面白い装甲が開発されたわよ」
「面白い装甲?」
「そう、フェイズシフト装甲っていうの」
「それ、どんな装甲ですか?」
「簡単に言うと実弾兵器用の装甲ね」
「実弾兵器の」
「それによる攻撃のダメージを軽減するのよ。まあビームコートと状態は似てるかもね」
「はあ」
「何でも今連邦軍が開発している五機の新型機に使用するそうよ。テスト用に」
「五機の新型機ですか」
「こっちに回してもらえれば面白いですね」
「まっ、話はそんなに上手くはいかないでしょうね」
ミサトはここではにこりと笑ってこう言った。
「連邦軍も今あちこちで大変だし」
「ネオ=ジオンもティターンズも今のところ大人しいみたいだけれどね」
「ミケーネもね。なりを潜めてはいるわね」
「ええ」
「また暴れるんだろうけれど」
「そしてプラントとティターンズが争ってるし」
「プラント!?ああ、彼等ですね」
「そう、コーディネイター」
ミサトはサコンに応えた。
「彼等の軍はザフトっていうらしいけれど」
「彼等と連邦政府は何もなかったですよね」
「今のところはね」
ウッソに返した。
「けれど。これからはわからないわよ」
「大丈夫なんじゃない?宇宙には三輪長官みたいな人はいないし」
「あたしもそう思うけれどね」
実はこれはミサトも同じ考えだった。リツコにこう答える。
「けれどちょっちね。心配なことがあるのよ」
「それは何?」
「ティターンズよ」
「彼等が?」
「ほら、あそこって元々連邦軍だったから連邦の兵器も多いでしょ」
「ええ」
今ではかなり独自の兵器も使っているが今でもかって連邦軍にあった兵器を使っているのだ。
「それにブルーコスモスってのがティターンズに協力しはじめたし」
「ムルタ=アズラエル理事だったっけ」
「そう、そしてロード=ジブリール副理事。軍需産業のトップだったわね、二人共」
「ええ」
「彼等、どうやらその兵器と人員ごとティターンズに入っちゃったみたいなのよ。当然連邦軍の軍人もごそっとあっちにまた
行っちゃったらしいのよ」
「深刻な事態ですね、また」
「ミスマル司令も困っておられるそうよ」
サコンの言葉に応える。
「まっ、不穏分子がまたこれでいなくなったんだけれど。けれど人が減ったのは事実だし」
「しかもそれでザフトに攻撃を仕掛ける場合もあるわね」
「それ次第でうちとザフトも対立することになるかもね。そこにネオ=ジオンが介入することも考えられるし」
「四つ巴ですか」
「そう、卍みたいにね」
「こら、ミサト」
ここでリツコはウッソに言葉を返したミサトを叱った。
「子供相手にそんなこと言わない」
「あっ、御免なさい」
「何かあったんですか?」
「あっ、いや何でもないのよ」
リツコは顔を赤らめさせて誤魔化した。
「ちょ、ちょっとね」
「谷崎潤一郎なんて。言えないわよね」
「はあ」
「とにかく今の戦いが終わっても地球圏は戦乱が続きそうですね」
「ドクーガやガイゾックがいなくなってもね。変わらないわ」
サコンもミサトも深刻な顔になっていた。
「当分はね」
「今は出来ることをするだけね」
「そうですね。けれど少しじつよくしていくしかないですよ」
「ウッソ君って意外と大人なのね」
「そうでしょうか」
「そのうちいい男になるかもよ。今から唾つけておいたら?」
「何か最近あたしが少年好きってことになってない?」
「けれど嫌いじゃないでしょ。若しかするとまた新しい出会いがあるかもね」
「期待しないで待っておくわ。もっともあたしアムロ中佐も嫌いじゃないけど」
「アデューって言われたらどうするの?」
「その言葉もいいかも」
何はともあれロンド=ベルは次の戦いに向かっていた。そしてまたしてもヘルモーズが姿を現わした。
「オービットベース近辺に巨大なエネルギー反応です!」
命が叫ぶ。
「これは・・・・・・ヘルモーズ!」
「よし、やはり来たな!」
大河はそれを聞いて大きく身体を動かした。
「防衛指令発動!」
「了解!防衛指令発動します!」
「戦闘用意承認!総員戦闘配置に着け!」
「総員戦闘配置!」
命は大河の言葉を復唱する。そして総員出撃し攻撃態勢に入った。
「よおおおおおおおし!やあああああってやるぜ!」
忍はいきなり獣の様に絶叫した。ダンクーガの目が赤く光る。
「どっからでもかかって来やがれ!まとめてぶっ潰してやらあ!」
「忍さん、気合が入ってるな!」
「当たり前だ!この時を待っていたんだからな!」
凱にもこう答える。
「バルマーの連中とも決着を着けてやるぜ!かかって来やがれってんだ!」
「とか何とか言ってただ暴れたいだけなんだろ」
「何か忍って戦う度に同じこと言ってるよね」
「それがどうしたってんだ!御前等だってそうじゃねえか!」
言葉を入れてきた沙羅と雅人にこう返す。
「亮!用意はできてるよな!」
「ああ、何時でもいいぞ!」
「よし!さっさと終わらせてやるぜこんな戦いはよお!」
気合が入っている忍であったが一人あまりそうではない者もいた。
ダバである。彼は出撃しても尚浮かない顔をしていた。
「ダバ」
そんな彼にショウが声をかけてきた。
「気持ちはわかるけれどな」
「ああ、わかってる」
ダバはそのショウに言葉を返した。
「そんなことを考えてる場合じゃないってことは」
「いや、違う」
「違う!?」
「そのクワサンって娘、助けたいんだよな」
「ああ」
それは事実だった。嘘をつくことはダバには出来なかった。
「だったら。行くんだ」
「いいのか?」
「こういうことは経験あるからな。わかるんだ」
「ショウって囚われのお姫様とか救い出すの得意だからね」
「茶化すなよチャム、けれどそのクワサンって娘がこのままじゃよくないのは御前が一番よくわかってると思うけれどな」
「それは否定しないさ。クワサンは操られている」
「操られているのか」
「オルドナ=ポセイダルに。だからここは何があっても」
「周りにいる敵は俺に任せろ」
「ショウ」
「俺のビルバインだったらちょっとやそっとの数の敵でも相手じゃない。一気に突破口を開いてやる」
「済まない」
「こうした時はお互い様っていうだろ?俺だってダバには助けられてるんだしな」
「それじゃあその申し入れ、受けていいんだな」
「そうさ、じゃあ行くぞ」
「わかった。それじゃあ」
ダバは前を見た。今そこにバルマーの大軍が姿を現わしたのであった。
「やはり動きが早いな、ロンド=ベル」
マーグはオービット前方に展開するロンド=ベルを見て一人呟いた。
「だがこちらもここでオービットを陥落させなければ暫く動きが取れない。ここは攻撃させてもらう」
「それでは」
「うん、ヘビーメタル隊に伝えてくれ。全機を以って攻撃してくれと」
「はい」
尋ねた部下はその返答に頷くこととなった。
「ヘルモーズも前に出る。そしてオービットを何としても陥落させるんだ」
「わかりました」
ヘルモーズも動く。そしてバルマーはロンド=ベル及びオービットへの攻撃を開始したのであった。
まずはヘビーメタル隊が来る。それを見たシナプスとブライトが指示を下す。
「モビルスーツ隊はビーム兵器の使用を控えろ!」
「実弾兵器を使え!無理はするな!」
「了解!」
それに従いまずエマのスーパーガンダムが動いた。
「これならっ!」
ミサイルランチャーからミサイルを一斉に発射する。それで前に展開するヘビーメタルの小隊を襲った。
「うわああっ!」
大破したヘビーメタルからパイロット達が次々に脱出する。だがそこに大きな穴が開いた。
「ビーム兵器だってねえ」
「これならいけるんだぜ!」
そこにルーのゼータとビーチャのフルアーマー百式改が来る。メガランチャーとメガバズーカランチャーで一気に敵を潰しにかかる。
二条の光が敵軍を襲う。そして無数の光と共に多くのヘビーメタルが撃墜された。
「チッ、こっちのビームコートも潰せるビーム兵器を持ってるってのかい」
「それはあたし達だって持っているんだよ!」
「覚悟しなさいよ!」
レッシィとアムがバスターランチャーを放つ。それはネイのオージェの至近をかすめ、さらに敵達を屠っていった。
「チッ、やってくれるね。じゃあこっちだってねえ」
パワーランチャーを構える。その後ろではアントンとヘッケラーがバスターランチャーを放とうとする。
しかしそれを許すロンド=ベルではない。すぐに次の動きに入っていた。
「斬り込め!」
グローバルが指示を出す。
「遠距離兵器を使わせるな!ポセイダル軍の遠距離兵器の威力を忘れるな!」
「そういうこった!」
「覚悟してもらう!」
トッドのダンバインとバーンのズワースがまず突っ込む。そしてアントンとヘッケラーの前にやって来た。
「ヌウッ!」
「チッ!」
剣で攻撃することで接近戦に持ち込む。それでバスターランチャーを使わせない。
ロンド=ベルはそのまま乱戦に持っていった。戦いの主導権は彼等が握りそれにより戦争を順調に進めていた。
その中ダバはショウと共に戦場を駆けていた。周りにいるバルマー軍のマシンは次々と薙ぎ払われていく。
「はあああああああああっ!」
ハイパーオーラ斬りが緑の巨大な光を放つ。そして前にいるバルマーのマシンを一掃していく。
「この程度の敵で!」
「ショウ、やっるうう!」
チャムがそれを見て歓声をあげる。ダバはダバでバスターランチャーとセイバーで敵を的確に倒していた。
「ダバ、これ」
その中でリリスがレーダーの中の一点を指差した。
「これ、多分」
「うん」
ダバはそれを受けて頷く。見ればそこにあのカルバリーテンプルの反応があった。
「ショウ、こっちだ!」
「見つけたのか!」
「そうだ、間違いない!」
「わかった、じゃあ行くぞ!」
「よし!」
二人はダバの行く先に向かった。そして目の前にいる敵を倒しながら行くとそこにカルバリーテンプルがいた。
「・・・・・・・・・」
クワサンは何もしようとしない。ただそこにいるだけだった。
「オリビー!」
「その声は」
クワサンはダバの声に反応を示した。
「お兄ちゃん!?」
「そうだ、お兄ちゃんだ!」
ダバはここぞとばかりに呼び掛ける。
「ずっと一緒にいたお兄ちゃんだ!そしてこれからも一緒にいるんだ!」
「これからも一緒に」
「そうだ、だから来い!」
彼はさらに呼び掛ける。
「俺と一緒に暮らそう!あの時と同じように!」
「あの時と・・・・・・同じ」
「そう、あの時と同じなんだ」
ダバの声が優しいものになった。
「俺もオリビーも」
「私もお兄ちゃんも」
「一緒なんだ、さあ」
「ああ・・・・・・」
クワサンは動きはじめた。ダバの下へ。そして彼女は今ダバの腕の中に戻った。
「お兄ちゃん!」
「オリビー、やっと俺のところに帰って来たんだな!」
「うん、もう離れない!」
「俺だってだ!もう何があっても離れるものか!」
「いい光景だね」
「ああ」
それを見ているショウはチャムの言葉に頷いた。
「ダバも。遠い地球でやっとクワサンを取り戻せたんだ」
「そうだな。それもこれもダバの真心があったからだ」
「真心、かあ」
「ダバはな、それで生きているような男だ。そしてそれで今クワサンを取り戻せたのだ」
「言葉より心ってこと?」
「そうだな。多分」
「あたし、また何か一つ賢くなったみたい」
「ははは、それじゃあこれからもフォローをしっかり頼むよ」
「了解」
「ヌウウ、これは一体どういうことだ」
リョクレイはダバの腕の中に戻ったクワサンを見て歯噛みしていた。
「ポセイダル様は何故、クワサンをあのままにしておられたのだ」
彼はポセイダルの真意がわかりかねていた。そしてそれがポセイダルそのものへの疑念へと至っていくのであった。
「一体何が起こっているというのだ」
もう一人事態に呆然としている男がいた。
「クワサン殿が、どうしてあの男のところへ」
ギャブレーであった。彼はクワサンがダバのところに行ったのが信じられなかったのだ。
「頭、どうしやす?」
「頭ではない!だが」
ハッシャに怒って返してもどうにもなるものではなかった。
「クワサン殿がおられないならば。ならば」
「ギャブレット=ギャブレー!」
そこで彼にダバから声がかかってきた。
「!?」
「もうポセイダルに手を貸すのは止めろ!これでポセイダルの正体がわかっただろう!」
「ええい、黙れ!」
ダバはギャブレーも説得しようとする。しかしギャブレーはそれを受けようとはしない。これも当然であると言えた。
「貴様の指図は受けん!」
「クッ、やはり無理か!」
「だがな」
ここで異変が起こった。
「クワサン殿がそちらにおられる以上私としても戦うのは本意ではない」
「えっ!?」
「今何て!?」
それを聞いたアムとレッシィが思わず声をあげる。
「私はクワサン殿に忠誠を誓っている!ならばクワサン殿の下で戦おう!」
「何だって!?」
「あのギャブレーが俺達のところに!」
「何をそんなに驚いているのだ」
逆にギャブレーの方がロンド=ベルの面々に対して言ってきた。
「私はクワサン殿の為に戦っているのだ。何故そんなに驚く」
「いや、そんな問題じゃねえだろ」
「あんたがかよ」
ジュドーもケーンも言葉を失っていた。
「こりゃまた意外な話の展開だね」
キャオもいささか呆然としていた。だが熱い者達は違っていた。
「そうだ、それでいい!」
ダイゴウジが叫ぶ。
「愛する者の為に戦う!それでこそ男だ!」
「ふっ、わかってくれたか」
「おう!俺のこの心に触れる!ギャブレット=ギャブレー、今から御前は俺の心の友だ!」
「有り難い。すぐに私を受け入れてくれるとは」
「てちょっと待てよ」
「!?」
「なああんた」
リョーコがギャブレーに声をかける。
「ハワイでよ、ビーチにいなかったか?」
「うむ、地球で束の間のバカンスを楽しんでいたが」
「そうだよな。それでな」
「うむ」
「その時緑の髪の女と一緒にいたよな」
「少しな。色々と話をしたな」
「それ、あたしだよ」
「ぬゎあに!?」
それを聞いたギャブレーの顔が急に歪んだ。
「い、今何と!?」
「ちょっと気分転換にデートしたの、覚えてるよな」
「う、うむ」
「それがあんただったなんてなあ。世の中本当に狭いもんだな」
「そうだな、全く」
「まあそれでもいいんじゃないですか?」
ヒカルはそんな二人のやり取りを見てもいつもの調子だった。
「人と人の出会いって縁ですから」
「それもそっか」
「で、何処までいったんだよ御両人」
サブロウタが茶々を入れてきた。
「結局最後までいったのかい?」
「ば、馬鹿言ってんじゃねえ!」
リョーコはそれを聞いて慌てて叫びだす。
「あたしは別にそんなことしてねえ!誤解招くようなこと言ってんじゃねえ!」
「二人でトロピカルジュースを飲んだだけだが」
「おっ」
それを聞いたドラグナーチームの面々がニヤリと笑った。
「リョーコお姉様も隅に置けませんなあ」
「これはまた。お暑いことで」
「仲良きことは美しきかな」
「待ちやがれそこの三馬鹿!」
顔を真っ赤にして激昂していた。
「これ以上誤解招くこと言いやがるとナデシコのサウナに閉じ込めて煮干にしてやるぞ!」
「っておい、煮干かよ」
「そりゃまた勘弁を」
「どうせならビーフジャーキーの方が」
「だったら黙っていやがれ!あたしとこの旦那には何もねえよ!」
「何もないとはアンモナイト・・・・・・」
「何かイズミさんはそれでもマイペースなんですね」
「副長もですね」
「とにかくだ!ギャブレー!」
ダイゴウジが声をかける。
「ああ」
「俺達と一緒に来るんだな!」
「このギャブレット=ギャブレー二言はない!これより私はクワサン殿の為に貴公等と共に戦う!」
「よし!」
「これでまた新たな仲間ってやつだな!」
「待て!」
だがそんな彼等にリョクレイが声をかける。
「ギャブレット=ギャブレー、貴様裏切るつもりか!」
「裏切るのではない!」
「何だと!」
「やっぱり演技じゃないわね」
アムはそんなギャブレーの様子を見ながら言った。
「そうだな。まあ演技が出来る奴でもないけどね」
そしてレッシィがそれに頷く。二人はまだギャブレーを警戒していたのだ。
「私は己が騎士道の為に戦う!それだけだ!」
「愚か者が!」
「何とでも言え!最早私はポセイダル軍でもバルマー軍でもない!クワサン殿の騎士だ!」
「けど頭ぁ」
そんな彼にハッシャが声をかけてきた。
「何だ?」
「本気なんですよね」
「それがどうかしたのか?」
「ロンド=ベルに入るのも」
「そうだ。忠誠を捧げた女性に何時までも尽くす。それが騎士道だからな」
「左様ですかい」
「本当に能天気よね」
「全然変わらないな」
アムとレッシィはまた囁き合う。
「そしてハッシャ、御前はどうするのだ?」
「あっしですかい?」
「私と共に来るか?どうする?」
「いやあ、アムがいますから。今度とっ捕まったら半殺しじゃ済まないんで。遠慮しやす」
「そうか」
「あっ」
アムの方もそれを聞いて思い出した。
「こら、ハッシャ!」
「うわ、噂をすれば」
「待ちなさいよ、今度こそ逃がさないわよ!」
「こういうことなんで。それじゃあまたこれで」
「うむ、達者でな」
「待ちなさいよ、こら!」
だがハッシャはそれよりも速く逃げてしまっていた。結局アムは彼を捕まえることは出来なかった。
ギャブレーの寝返りは大きかった。それで勢い付いたロンド=ベルは一気に攻勢を仕掛けポセイダル軍を破った。そしてヘルモーズにも攻撃を仕掛けていた。
「司令、ヘルモーズのダメージが危険水域にまで」
「わかった。ではこれが限度だな」
「はい」
「全軍撤退だ。そして戦力が回復するまで攻撃は控える」
「わかりました。それでは」
マーグの言葉に従いバルマー軍は撤退した。こうしてオービットベース前での戦いは幕を下ろしたのであった。
「これでとりあえずの脅威は去ったな」
シュバルツは静かになった戦場を見渡してこう言った。
「では私も去らせてもらおう」
「待て、シュバルツ」
「何だ?」
ドモンが呼び止める。彼もそれに顔を向ける。
「御前はこの危機を察していたのか?だからここに来たのか?」
「そう言ったらどうするのだ?」
「何だと」
「今地球圏はかってない程敵が集まっている。特にこの地球の衛星軌道上はな」
彼は言った。
「ならばその危機に私が動かないわけもない。違うか」
「それはそうだが」
「そして危機はこれから続けて起こるだろう」
「続けて・・・・・・」
「それを乗り越えた時地球と人類、そして御前達はまた一つ大きくなっているだろう。その時にまた会おう」
その腕から煙玉を出した。
「さらばだ!」
そしてガンダムシュピーゲルは姿を消した。後には何も残ってはいなかった。
「消えたか」
「それにしても危機が続けて起こるって」
レインはそれがやけに気になった。
「一体何が起こるのかしら」
「どちらにしろ戦いが続くということだけは確かですね」
ジョルジュがそれに応える。
「だったらおいら達がやることは一つだけだね」
「ああ、この拳で敵をぶっ潰す」
「そういうことだ。そして地球を守るだけだ」
「わかり易いって言えばわかり易いね」
アレンビーもそれに頷く。
「まっ、どんな敵が来ても戦うだけよ。結局は」
「そうだな。このキング=オブ=ハートの名にかけて」
彼等は次の戦いにもう心を向けていた。そんな中でロンド=ベルの面々が帰還したオービットベースの中で少し騒動が起こっていた。
「さて、と」
レッシィがシニカルな笑みを浮かべていた。
「どういう心境の変化だい、ギャブレット=ギャブレー君?」
彼女はギャブレーに顔を向けて問うていたのだ。
「真実を知ったと言えばよいのかな」
「真実を!?」
「そうだ。あのリョクレイ=ロンとポセイダルの通信を聞いてな。クワサン殿のことを知ったのだ」
「それはどういうことなんだ?ギャブレー」
「一言で言うとクワサン殿はセンサーだ」
「センサー」
「そうだ。ポセイダルにとってのな。同時に目でもある」
「それってどういうこと!?」
「ポセイダルはクワサン殿を通じて自軍の中を見ていたのだ。監視の為に」
「そんなことをしていたの」
アムはそこまで聞いて嫌悪感を露わにさせた。
「せこいことしているわね」
「私もようやくそれに気付いたのだ。クワサン殿はポセイダルに利用されていると」
「だから俺達のところに来たんですね」
「そういうことだ」
アキトにも答える。
「これでわかってくれただろうか」
「それでクワサンって娘は大丈夫なのか?」
カミーユが問う。
「下手をしたらあの娘も危険だし俺達だってポセイダルに中身を知られてしまうぞ」
「それは安心して」
リツコが彼等に対して言う。
「私とサコン君、あとセニア王女が見るから。それにもう戦闘には参加させないし」
「そうですね、それがいいです」
それにサコンも頷く。
「今の彼女は一見しただけで精神的にも肉体的にも参っている。今はじっくりと治療が必要です」
「大丈夫なんですか?」
「今の時点なら大丈夫ね。けれどもう少し遅かったら危なかったわよ」
「はい」
ダバはリツコの説明に顔を暗くさせた。
「取り返しのつかないところになるところだったんですね」
「そうね。けれどダバ君のおかげで彼女は助かるわ」
「オリビー・・・・・・」
「まっ、あんたはあんたでクワサンに惚れたんでしょ?」
アムは意地悪そうな顔でギャブレーに声をかけた。
「それは違う」
ムキになってそれを否定する。だがそれは肯定と同じであった。
「私はあくまでクワサン殿の為に」
「別にいいじゃない。レッシィだって同じなんだし」
「何だと!?」
「レッシィだってダバに惚れて反乱軍に入ったんだし。似た者同士よね」
「こんな奴と一緒にされては不愉快だ!」
「こんな奴と一緒にするな!」
二人はそれを受けて同時に叫んだ。
「ほら、息も一緒だし」
「うう・・・・・・」
二人はこれ以上何も言えなかった。
「何はともあれこれから宜しくね。折角仲間になったんだし」
「ああ」
ギャブレーはアムの言葉に戸惑いながらも頷いた。
「あたし達と四人で小隊組むんだからね」
「そうか、御前達とか」
「嫌なら別にいいよ、一人でも」
「いや、一人でいるより四人でいた方がいい。それで私に異存はない」
「そうなの」
「ギャブレー、これから宜しくな」
「うむ」
レッシィにも頷く。何はともあれ彼もロンド=ベルに入ったのであった。
「とりあえずオリビーは保護したな」
「そうだな。何はともあれ一つは終わったぜ」
キャオがダバに答える。
「まあまだ色々とあるけれどな」
「とりあえずあの娘はリツコが診ているわよ」
「そうですか」
「時間は少しかかるけれど治療は可能だって。けれどもうヘビーメタルに乗せるのは」
「わかっています。もうオリビーには戦わせたくないですから」
「そうね、それが賢明だわ」
ミサトはそれを聞いて満足そうに頷いた。
「後は。ポセイダル軍だけれど」
「あれだけ派手にやってやったから暫くは大人しくしてんじゃねえの?」
ジュドーが言った。
「ギャブレーの旦那もこっちに来たしさ。それに向こうの副司令官も怪我してるし」
ロゼのことである。だが彼等はまだ彼女の名前を知らないのだ。
「暫くはそっちは気にしなくていいだろ。その間に他の奴等始末しとこうぜ」
「他のか」
シナプスはそれを聞いて何かに気付いた。
「ギガノスもいるしな」
「そう、連中とか。そろそろ決着つけとかないと」
「忘れてたけど俺達の仕事なんだよな」
「そうそう」
「では次はそちらといきますか」
ドラグナーの三人もそれに頷く。だがここで異変が伝えられてきた。
「皆、そこにいたのか」
ナンガがそこにやって来た。
「丁度いい、伝えたいことがある」
「敵かい!?」
「ああ。オルファンだ」
彼はキャオに答えた。
「オルファンかよ」
「そうだ、思った以上に上昇速度が上がっておらん。まだ底の方は対流圏に留まっておる」
獅子王博士がそれに説明する。
「しかし何故だ?」
勇はそれに首を傾げた。
「何故ビムラーの覚醒を待たずにオルファンが動いた」
「やはりオルファンは当初の予想通り地球のオーガニック・エナジーを吸収しているのか?」
ラッセも口に手を当てて考える顔になっていた。
「いや、ノヴィス=ノアからの報告では今のところそういった現象は見られていないそうだ」
「そうなんですか」
獅子王博士は言った。皆それを聞いてまずは安心した。
「ゲイブリッジ司令達の差し金かしら?」
カナンは自身の疑念をゲイブリッジに向けた。
「ううむ、リクレイマーがオルファンを制御出来るとは思えんが」
しかし獅子王博士がそれに懐疑的な返答を述べた。
「かと言ってオルファンが宇宙に飛び出せばオーガニック・エナジーを吸われて地球はお終い」
ラッセが言う。
「そんなのは許すわけにはいかないわよ」
「わかってるわ、ヒギンス」
カナンはそれに同意する。
「それじゃあ博士」
「うむ」
獅子王博士は頷く。そのうえで言った。
「我々はオルファンの活動を止めねばならん」
「はい」
「そしてその鍵を握っているのは」
勇とヒメを見た。
「・・・・・・・・・」
「私達、ですか?」
「そうだ、もうすぐオルファンは姿を現す。全ての決着はその時に着けるしかないな」
「次はオルファンか」
「一体どうなるんだ」
バルマーとの戦いを終え、ギャブレーが加わったのも束の間であった。彼等はオルファンにおいてまた戦いに挑むこととなったのであった。

第九十六話完

2006・5・28


 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧