| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

万華鏡

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第七話 お泊り会その三


「その為に駄目な生徒とかはそうしてたんだよ」
「それだと嫌になる生徒も多かったわよね」
「ああ、そうした生徒は平気で切り捨ててたよ」
「本当に生徒のことは考えてなかったのね」
「全くな」
 本当に何一つとしてだった。その教師は生徒のことを考えていなかったというのだ。
「他にも普通に殴ったり蹴ったり。しかも何十発もな」
「その先生ってあれ?」
 琴乃は眉を顰めさせて己の右手の人差し指を自分の頭の横に当てて何度か刺した。そのうえでこう言うのだった。
「頭おかしかったの?」
「誰でもそう思うよな」
「頭のネジが何本とかじゃなくて」
 それどころではなくだと。琴乃も言う。
「全部外れてたんじゃ」
「それで教育委員会じゃ問題にならなくてな」
 教育委員会とはおおむねそういうものだ。大きな湖のある県のふざけた市の委員会だけではない。腐敗した、それも極端にそうなっている教育委員会なぞ何処にでもある。教師の不祥事は一切問題にならないことが多いのだ。
「頭に来たどっかの大学生の人が新聞社とか警察に通報してな」
「それでなの」
「ああ、やっと問題になって懲戒免職になったよ」
「ようやく天罰が落ちたのね」
「それから何か仕返ししようとしてやり返されて身体のあちこちの腱切られてな」
 それでだというのだ。
「二度と剣道もできないようになったよ」
「因果応報ね」
「そうした先生もいるからな」
 実に多いのが日本の病理の一つだ。いい鉄は釘にはならないがいい人が教師にならないというのも問題であろう。
「注意しないとな」
「そうした先生がいる部活は」
「幾ら好きなものでも入ったら駄目だろ」
 それこそ絶対にだった。
「さもないと酷い目に遭うからな」
「そうよね。好きなことを楽しむ為に部活に入ったのに」
「辛い目に遭うこともないよな」
「うん。私もそう思うわ」
「そう思うとうちの部活ってな」
「まだ入ったばかりで確かなことは言えないけれどね」
 だがそれでもだとだ。琴乃は言った。
「いい先生達ばかりよね」
「そんなにおかしな先生いないみたいだな」
「そうね。目を見てもね」
 景子も言ってきた。
「おかしな人はいないわね」
「目なの」
「そうよ。私神社の娘で人がよく来るけれど」
 それこそ善人も悪人もだというのだ。
「おかしな人って目が違うの」
「どんな感じなの?おかしな人の目って」
「虚ろだったり。濁っていたり」
 景子はそうした人間の目を琴乃に具体的に話していく。
「険しかったりするのよ」
「そんな感じなの」
「多分その先生の目って」
「ああ、ヤクザみたいな目だったな」
 美優がその教師の目を思い出して話す。
「実際にな」
「やっぱりそうなのね」
「態度も悪かったしな」
 教師のそれではなかったというのだ。
「ヤクザみたいな歩き方でな」
「歩き方もなの」
「教師なのにパーマにしてな」
 とにかく外見から異様だったというのだ。教師のそれとしては。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧