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万華鏡

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第十五話 雨は駄目その八


「そうしましょう」
「そうね。それにしてもね」
 琴乃は部室の窓の外を見た。それでこう言った。
「ドンピシャね、本当に」
「そうね」
 景子も琴乃の言葉に頷いて外を見る。外には銀色の雨が見える、音こそは立っていないがしんしんと降っている。
 二人はその雨を見ながら今度はこう言った。
「まさに梅雨ね」
「梅雨は雨が降るもので」
「それは休日でもってことね」
「勢いこそ弱いけれど」
「けれどこれでいいだろ」
 美優も外の窓を見ながら答える。
「お寺に何があるか知らないけれどな」
「そうよね。それにしても降るわね」
 彩夏もまた外の雨を見ながら言う。彼女も楽器は部室に置いた。
「昨日からね」
「そうよね。お陰で昨日の甲子園は試合流れたし」
 琴乃はここでも野球の話をする。
「阪神対横浜がね」
「横浜昨日はピッチャー雨野だったからあれね」 
 景子もベースを置いて持っているのは鞄だけになっている。五人は窓を見ながら帰り支度も整えている。
「負けてはいないわね」
「雨野なあ。ドームには関係ないけれどな」
 美優も話に乗る。
「昨日は横浜よかったよな」
「負けなかったからね」
「それはなかったわね」
 琴乃と景子も言う。
「スタープラチナ昨日は平和だったわね」
「あの娘横浜が負けてないと機嫌がいいから」
 負けるとなのだ。
「今日行けばよかったかしら」
「そうかもね」
「まあ今日はな」
 美優は窓の外を見たまま自分の鞄を手に取った。
 そのうえで仕方ないといった顔になってこう言った。
「雨だからカラオケ行ってもしんみりくるからな」
「本当に雨に行くと凄くいいから」
 この場ではそれまで黙っていた里香が口を開いた。
「降ってなくてもいいけれど」
「雨が降れば余計になんだな」
「そうなの」 
 里香も窓の外の雨を見ている。銀色のそれの向こうには灰色の空、雲に完全に覆われたその空が見える。
 里香はその雨と空を見ながら四人に話す。
「いいから」
「ううん、本当に何なのかしら」
 彩夏は首を捻りながら考える顔になる。
「それって」
「行けばわかるから。だから行きましょう」
「それじゃあね」
「行きましょう」
 四人も一緒に行く、そしてだった。
 五人で傘をさして鞄を手にして八条学園の傍にある八条寺に向かった。八条寺は大きく見事な境内がある。
 門からその境内までは石の階段が長くある。琴乃は門の向こうのその階段を見ながらこう里香に言った。
「この階段の向こうにあるの?」
「お庭にあるの」
 里香はそれがある場所も答えた。
「そこにね」
「そうなのね」
「そう。ただね」
「ただって?」
「気をつけてね」
 傘をさしたまま四人に対して言った言葉だ。
「足元にはね」
「足元って」
「だって。濡れてるから」
 雨でそうなtっているからだというのだ。
「滑るから」
「あっ、そうね」
 琴乃はその足元を見る。すると石の門の下はもう水たまりすらできていた。墨には緑の苔も見える。sれを見て気付いた。 
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