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万華鏡

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第十五話 雨は駄目その二


「無理よ」
「確かに。うちのバンドって歌と演奏がメインだから」
「そこまではね。後ね」
「後って?」
「演奏もね」
 その演奏の話にもなる。
「やっぱりすぐにはよくならないわよね」
「少しずつよ」
 里香も言ってきた。
「あくまでね」
「そうよね。少しずつ上手になるのよね」
「絵でも。漫画家さんがよく言われることだけれど」
「描けば描く程なのね」
「私石ノ森章太郎さん大好きだけれど」 
 唱和を代表する漫画家だ。そうした意味で手塚治虫と並ぶ巨匠であり。ときわ荘に暮らしていたことでも有名だ。
「その人がアシスタントさんに言ってたのよ」
「描けば描く程絵は上手になる」
「そう。何でもなのよ」
「演奏もなのね」
「歌もね」
 最後の一つもだった。
「歌も歌えば歌う程。喉が潰れない様に注意して」
「歌えば絶対に」
「そう。上手になるから」
「それじゃあこのままいけば」
「上手になるからね。頑張ろう」
「そうね。ところでね」 
 今度は琴乃から言ってきた。
「私がメインヴォーカルだけれど」
「私達もよね」
「うん。それぞれ歌うことがあるから」
 プラネッツの特色の一つだ。確かにメインヴォーカルは琴乃だが他の四人もコーラスやメインで歌うことがあるのだ。
 それで琴乃はこう里香に言ったのである。
「里香ちゃんにしてもね」
「歌の練習をしないと」
「うん、どうかしら」
「じゃあカラオケだよな」
 美優は笑ってこれを話に出した。
「やっぱりな」
「カラオケ?」
「それだろ、やっぱり」
 歌の練習ならというのだ。
「あそこならどんどん歌えるしな」
「しかも楽しくよね」
「どうせ歌うなら楽しくしないとな」
 プラネッツのリーダーとしての言葉だ。
「どうだよ。今度の休日」
「いいんじゃない?」
 美優の言葉に最初に彩夏が応える。
「それじゃあそれでね」
「また駅前のあのお店ね」
 景子は店の名前を言った。
「スタープラチナね」
「あそこ本当に皆行くわね」
 琴乃はある意味で感心すらしていた。
「八条学園にいたら」
「他のお店も一杯あるし行くけれど」
 里香の言う通りだ。八条町には八条グループのお膝元であり八条グループが経営するカラオケボックスも巨大な規模の店があるのだ。
 そして八条学園の生徒達はそうした店にも行っているのだ。
 だからそうした店に行くこともあるがそれでもだというのだ。
「やっぱりスタープラチナってね」
「いいわよね」
「雰囲気もいいし清潔だしお料理もお酒も美味しいし」
「安いしね」
「いいお店よ」
 トータルで言ってかなりの高得点である。
「問題もあるけれどね」
「ベイスターズよね」
「勝たないからね」
 里香はここでは少し暗い顔になった。
「あのチームはね」
「勝てないっていうか?」
「暗黒時代の真っ只中にあるから」
 しかも出口が見えない。絶望の時代だ。 
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