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万華鏡

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第十四話 成果その十三


「そういう感じなのよ」
「満腹してもなの」
「それで止めるのがいいんだって」
「じゃあもうこれでいいって思う辺り?」
「そうそう、その辺りになるかしら」
 里香は琴乃に話した。
「無理して入れる量ってあるじゃない」
「そういうのは駄目で」
「その前のもういいわって思うところで止めるといいんだって」
「成程ね」
「何でもやり過ぎはよくないから」
 里香はこうも言った。
「お勉強でも根詰めるとかえって身体壊すし」
「歌も歌い過ぎたら喉が潰れて」
「ピッチャーでも投げ過ぎたら肩が壊れるわ」
 それで駄目になってしまったピッチャーも多い。
「どんな鉄腕でもね」
「鉄腕でもなの」
「そう、人間だから」
「というか機械でもあれだからな」
 美優も言ってきた。
「あまり酷使したら壊れるからな」
「そうでしょ?何でもオーバーワークというかやり過ぎは駄目なのよ」
 里香は美優に対しても答えた。
「絶対に壊れるから」
「そういえばあれね」
 景子は古い例えをここで出した。
「昔稲尾和久ってピッチャーがいたけれど」
「随分古いわね」
 里香は景子の話を聞いて目を丸くさせた。
「稲尾さんって」
「けれど知ってるでしょ」
「西鉄ライオンズのエースよね」
 西武ライオンズの全身だ。ニックネームは受け継いでいるが西鉄は九州の平和台球場が本拠地だった。もうその球場もなくなっている。
「抜群のコントロールとスタミナだったわね」
「高速スライダーとシュートでね」
「球威も桁違いって聞いてるわ」
 球速以上にそうしたことが凄まじいピッチャーだったのだ。
「一シーズン四十二勝したのよね」
「その人もよね」
「デビューしてからずっと投げ続けてね」 
 一年目から投げて投げた。その結果だったのだ。
「急に成績落ちたのよね」
「それってやっぱり」
「うん、肩が悪くなったって聞いてるわ」
「何年も無茶苦茶に投げ続けて」
「身体って壊れるのよ」
 酷使していると誰でもそうなる。例え稲尾でもだ。
 景子は里香と話しながらこうも言った。
「二十年ずっと活躍できるだけでも凄いわよね」
「何でもやり過ぎたら本当に駄目だから」
「食べることでもなのね」 
 琴乃がまた言った。
「そっちも」
「そう。身体に悪いのよ」
「バランスよくたっぷりと。けれど」
「詰め込まないの」
 一杯のところで止めるというのだ。
「そうしてね」
「よし、それじゃあね」
「早速お家に帰ってなのね」
「食べるわ。お腹一杯までね」
「琴乃ちゃん、肥満には注意してね」
 彩夏が横から言ってきた。
「太ったら元も子もないわよ」
「食べた分動くとか?」
「そうしないとね」
「そうよね。食べたらカロリー消費しないとね」
 琴乃は腕を組み神妙な顔になった。
「さもないと本当に太るからね」
「太るのも悪くないけれど」 
 彩夏は女の子としては珍しい見方をあえて出した。 
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