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万華鏡

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第十四話 成果その六


 だが今はどうか。確かに辛そうではあるが。
「皆と一緒に走られる様になったから」
「最初は駄目でも」
「何とかいけてるからね」
「努力なのね、やっぱり」
「というか私嫌いなの」
 里香は今度はきつい顔で言った。
「そんなことを言う人はね」
「駄目な人を何をやっても駄目っていうのは」
「努力否定したら駄目だと思うの」 
 だからだというのだ。
「私そういう人は絶対に伸びないと思うわ」
「努力否定する人は努力しないからよね」
「ええ、だからね」
 それでだというのだ。
「私そういう人とはお付き合いしたくないわ」
「確かに。私も」
 琴乃も走りながら言う。
「そういうこと言う人は」
「好きになれないわよね」
「どうしてもね」
 こう里香に答える。
「好きになれないと思うわ」
「うん。そうよね」
「けれどそれだとね」
「それだとって?」
「里香ちゃん頭いいけれど」
 勉強が出来るというのだ。
「けれどそれってね」
「それって?」
「やっぱり最初は」
「小学校一年の頃はね」
 その頃はというのだ。
「私もあまりできなかったわ」
「それでもなの」
「そう、勉強してそれでね」
「出来る様になったのね」
「うん、そうなの」
 里香はこう琴乃に話した。
「最初はね」
「誰でも最初は出来ないけれど」
 これは琴乃もだった。成績があがったことだけでなく。
「ギターにしても」
「今出来るわよね」
「うん」
 明るく答えることが出来た。確かに今はそうだ。
「何とかだけれどね」
「キーボードだってそうだし」
 里香の担当のそれもだった。
「何とかね」
「私もベースは最初難しかったわ」
「ギターわからなかったし」
「ドラムって格好いいけれど難しいんだよな」
 景子に彩夏、美優も言う。
「やっぱり毎日やってたらね」
「ギターも弾ける様になったし」
「やれる様になるよな」
「駄目なままじゃないから」
 また言う里香だった。
「絶対に出来る様になるから」
「そうだね。じゃあテストの結果も出たし」
 琴乃もランニングをしながらにこにことして言う。
「頑張ろう」
「ええ、そうしましょう」
 笑顔で話しながら走る五人だった。里香もランニングをかなり出来るようになっていた。そうして家に戻ってもだった。
 穏やかな顔だ。里香の母はその娘を見て言う。102
「最近ね」
「最近って?」
「里香ちゃん帰ってきても穏やかな顔ね」
「穏やかって」
「ほら、軽音楽部って身体も動かすでしょ」
「ええ」
「それでずっとへとへとになって帰ってきてたのに」
 それがだというのだ。 
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