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万華鏡

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第十二話 来てくれた人その十一


「こっちは」
「本当に最悪だな」
「おまけに太っていて力もあるから」
「そういえば野性の鹿よりも太ってるわよね」
 彩夏もこのことに気付いた。
「奈良の鹿って」
「そうでしょ。たっぷり食べてるからね」
「子供のお弁当とか?」
 奪い取ったものであることは言うまでもない。
「それでなの?」
「それに加えてなのよ」
「まだあるのね」
「神社も餌あげるし」
 本来の食事である。それはちゃんとあげているのだ。
「おまけに煎餅もあるじゃない」
「鹿煎餅だよな」
「あれも食べるから」
 景子は美優にも答えた。
「必然的に太るのよ」
「それで力が強いのね」
「そうなんだな」
「そう、だから余計に性質が悪いのよ」
「誰かあの連中に天罰下す人いないの?」
「あれは酷過ぎるだろ」
 このことは彩夏も美優も一緒になって言った。
「奈良も広島も」
「神様の使いどころかゲリラじゃねえか」
「いるわよ。あの歯の出てる芸人の人」
「あっ、あの人ね」
「いつもテレビに出てるあの人か」
「あの人奈良県出身なの」
 奈良が生んだコメディアンだ。痩せ気味の顔に黒い見事な髪を持っている。その明るい表情がトレードマークだ。
「それで鹿のコンテストにあそこの鹿をペンキで白く塗って出したらしいのよ」
「凄い善行よね」
「そうだよな」
 彩夏と美優はこの話に顔を見合わせて話した。
「そうしたことをしたからなのね」
「あの人あそこまでなったんだな」
「そうなの。そうしたことをする人もいるのよ」
 景子はあらためて二人に話す。
「厳島はわからないけれどね」
「結局あれね。鹿も甘やかし過ぎたら」
「我儘になるんだな」
 彩夏と美優はあらためて言う。
「人間と同じで」
「そうなるんだな」
「そうなの。猫とかでもそうじゃない」
「だよな。親戚の家に猫いるけれどな」
「甘やかされてる?その猫」
「かなりな」
 美優は笑って景子に答える。
「それでかなり悪い奴になってるよ」
「そうでしょ。何でも甘やかし過ぎるとよくないのよ」
「ある程度ならいいの?」
 琴乃は景子の口調にある程度なら甘やかしてもいいといった考えを察してそのうえで彼女にこう尋ねた。
「甘やかしても」
「ある程度ならね」
 景子もこう琴乃に返す。
「いいと思うわ」
「けれど甘やかし過ぎたら駄目なのね」
「そうなの。奈良や広島の鹿みたいになるから」 
 ああした傍若無人な存在になるからだというのだ。
「流石にあそこまで酷くなる例は稀だけれどね」
「奈良の鹿って確かに酷いからね」
 このことは琴乃も知っている、中学生の時の修学旅行でだ。
「幾らでも食べるし」
「本当に丸々してて毛並みもいいわよね」
 里香も言う。
「あの鹿達って」
「それだけ栄養がよくて大事にされてるってことよね」
「本当に甘い飼い主に飼われてる猫ちゃんみたい」 
 里香もこう言う。
「どれだけ甘やかされてるのかしら」
「それが問題よね」
 こうした話もするのだった。そして。  
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