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万華鏡

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第九話 春の鍋その十三


「ちょっとね」
「そうよね。私もね」
「里香ちゃんもなのね」
「軽音楽部に入って」 
 それからだというのだ。
「チェッカーズのこともわかったのよ」
「久留米出身だって」
「ずっと東京、いえ横須賀かあの辺りの出身だって思ってたけれど」
 それが違ったというのだ。チェッカーズといえばだ。
「九州だったのね」
「それどうやって知ったんだよ」
「お母さんに教えてもらったの」
 それでわかったと美優に答える。
「それでなの」
「里香ちゃんのお母さんチェッカーズ知ってんだな」
「ファンだったらしいのよ」
「そういえば冬至女の子達に大人気だったってな」
 初期はアイドルとして人気があった。バンドとして認知され活動する様になったのは中期以降からである。
「だからか」
「そのお母さんが私がチェッカーズのCDをブックオフで買ってきたのを見て」
 それでだというのだ。
「教えてくれたの」
「成程な」
 美優もそこまで聞いて納得した。それで不意にこんなことを言った。
「何かその話を聞いたらな」
「どうかしたの?」
 琴乃がその美優に問うた。
「何か思いついたの?」
「ああ、夏休みにでもな」
 その時にだというのだ。
「久留米に行けたら面白いよな」
「その久留米ね」
「あたし九州にはあまり行ったことがないしな」
「じゃあ福岡とかも」
「一回だけ行ったことがあるけれどさ」
 こう琴乃に話す。
「それで屋台でラーメンも食ったけれど」
「博多ラーメンね」
 あの豚骨ラーメンである。白いこってりとした味のスープがトレードマークだ。
 そこに紅生姜も加える、それをだというのだ。
「まあ美味しかったけれどな」
「それでも?」
「一回だけじゃな」
 それだけではというのだ。
「あまりこれだって言えないんだよな」
「あれっ、一回行ったら充分じゃないの?」
「その時博多はあっという間で出て他の場所に行ったからさ」
「他の場所って?」
「長崎に行ったんだよ」
 その時はそこに行ったというのだ。
「福岡よりそっちがメインでさ」
「で、長崎で?」
「グラバー園に行って中華街に行ってさ」
 長崎と言えば原爆と言う人も多いがそうした観光スポットも非常に有名な町なのだ。歌劇『蝶々夫人』の舞台でもある。
「それでカステラに」
「長崎ちゃんぽん食べたのね」
「そこも一回だけだけれどさ」
 やはりわかりにくいというのだ。
「それでもな」
「充分じゃなかったの」
「どうもな。もっといたかったし」
 それにだというのだ。
「もう一回行きたいな」
「そうなのね」
「博多ラーメンも食ったの一回だけで長崎ちゃんぽんの方がずっと多いんだよ」
「何回食べたの?」
「三回位か。しかも博多ラーメンは一杯でさ」
 食べることは回数だけではない。量も重要になる。
「ちゃんぽんは二杯ずつだったんだよ」
「合わせて六杯ね」
「それだけ食べたからさ」
「長崎ちゃんぽんの方が印象に残ってるのね」
「あれも美味いしさ」 
 だからこそ名物料理になっている。やはりスープは豚骨であり太めで硬い感じの麺の上に野菜や肉が多く乗せられている。 
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