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万華鏡

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第九話 春の鍋その十


「覚悟してね」
「ううん、紅茶だけ飲むとかは」
「人は紅茶だけで生きられないわよ」
「それはそうだけれどね」
「だからね。やっぱり食べないといけないから」
 このことは絶対だ。生きているのなら。
「気をつけてね」
「ロンドンって一体」
「あっ、何でもマクドナルドはいけるから」
 言わずと知れたハンバーガーのチェーン店だ。アメリカと国交のある国ならばどの国にも存在している。
「それに中華料理も。華僑の人がいるから」
「そうなの」
「それにカレーもね」
 里香はイギリスで日本人でも味覚的に満足できるものを出していく。
「食べられるから」
「それでもイギリスのお料理はなのね」
「期待できないから」
 またこの話になる。
「和食もね」
「和食もなの」
「さっきの話だけれど私が入った店は」 
 所謂日本食レストランだ。最近ではどの国でも大きな町ならある、ただし各国ごとにアレンジはされておりそのアレンジが問題だった。
「イギリスの人がシェフで」
「そのイギリスの人が」
「何でも元々はスコットランド料理のシェフだったらしいの」
「スコットランド料理って美味しいの?」
「全然」
 やはり食べられたものではないという。
「ロンドンでもそのお店があるけれど」
「駄目なの」
「特にハギスは駄目よ」
 里香はその顔をこれ以上はないまでに曇らせそのうえでそのハギスという料理について語る。
「生臭いっていうか」
「匂いがきついの」
「何をどうして食べるのかわからない位なの」
「そこまでまずいの」
「まずいっていうか何ていうか」
 里香はその「ハギスを思い出しながら暗い顔で話す。
「食べるには向いてないわね」
「食べ物なのに?」
「噂に聞くだけならいいけれど」 
 とにかく食べ物として失格の烙印が押されていく。
「もう一度食べたらね」
「食べたくなくなるのね」
「そういうのだから」
「ううん、お話を聞いてると」
「興味は湧くでしょ」
「ええ。けれど」
 琴乃は雑炊を食べながら苦笑いで述べる。
「食べたいとはね」
「思わないわよね」
「かなりね。イギリスはお料理以外なのね」
「そう、それ以外」
 本当にそうだというのだ。
「それ以外がいいから」
「服もよね」
「ロンドンってファッションの町でもあったわよね」
 彩夏が言ってきた。
「確か」
「そうなの。あの紳士だけじゃなくて」
「ロッカーもよね」
「どっちの人もいるから」
「イギリスって階級社会よね」 
 彩夏は話で聞いたことから言う。
「それでなのね」
「紳士とか上流階級の人は本当にスーツとかタキシードで」
 そしてこの帽子の名前も出した。
「シルクハットもね」
「あれもイギリスだったの」
「そうなの。日本じゃシルクハットっていうとね」
「ルパンとか二十面相よね」
 そうした怪盗がしていることで知られている。だが日本で実際にシルクハットをしている人間は手品師以外はいない。 
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