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万華鏡

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第八話 それぞれの家でその六


「何でも食べるし。それに」
「それに?」
「私牛乳飲んでもね」
 それでもだというのだ。
「背は伸びなかったから」
「ええと。それは」
「そうなんですか」
 五人はここで先輩を見た。五人より幾分小柄で一五五程だ。
 確かに小柄な方だ。先輩はこのことを言うのだった。
「私背はもう少し欲しかったのよ」
「それで牛乳をですか」
「飲まれてたんですか」
「毎日ね。今も飲んでるけれど」
 だがそれでもだというのだ。
「背はこのままだったのよ」
「牛乳飲んだら背が大きくなるっていうんですけれど」
「それでもなんですね」
「そう、大きくならなかったの」 
 そうだったというのだ。
「どうしてかしら」
「胸にいったんじゃないんですか?」 
 景子は今も先輩の胸を見ている。そのうえでまた言ったのである。
「それでじゃ」
「そうかしら」
「背が大きくなるんじゃなくて」
「ううん、胸に」
「胸にいったせいじゃ」
「それっていいことかしら」
「そう思いますけれど」
 景子は切実な顔で言う。
「私は」
「ううん、栄養がいく場所って」
「その人によって違うんでしょうか」
「そうかもね。遺伝もあるし」
 先輩は遺伝も話に出した。
「それでね」
「胸が大きくなったり小さくなったり」
「そうなると思うわ」
 こう言うのだった。
「だから。これといってね」
「確かなことは言えないですか」
「結局胸も背もなのよ」
 先輩は自分の小柄なことを気にしていた。それが実際に言葉に出ている。
「何をすれば、何を食べれば絶対に大きくなるとか高くなるとかはね」
「ないですか」
「そう思うわ。私なんてね」 
 先輩は苦笑いと共に言う。
「背をもっと欲しかったのよ」
「どれ位ですか?」
「一六五はね」 
 それ位だったというのだ。
「あと十センチはね」
「欲しかったんですか」
「木山さんみたいにね」
 美優を見ての言葉だった。先輩は彼女を羨ましそうに見上げてそのうえで話す。
「高かったらってね」
「あたしはまあその」
「背が大きいのは七難隠すよ」
 こう言うのだった。今度は。
「背があったらね。それだけ沢山見られるっていうか」
「あの、先輩それは」
「まあ言っても仕方ないけれどね」
 先輩は美優にまた言う。
「背のことはね」
「それで胸もですよね」
「そっちも」
「結局。人に欲しいものってそれぞれなのよ」
 先輩の場合は背、五人の場合は胸になる。そういうことだった。
 先輩はその話をしてからその場を後にした。それからすぐに休み時間は終わり五人は今度は演奏をした。それからだった。
 今度は彩夏の家に入った。そこはというと。
「ふうん、何ていうかね」
「結構面白いお家よね」
「和風でも洋風でもないわね」
「オリエンタルっていうのか?これって」
 アラベスクや独特の模様のペルシャ絨毯がある家の中に入って四人はこう言った。見ればテーブルもアラビア風だ。 
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