| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

木の葉詰め合わせ

作者:半月
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

小ネタ
BAD END ルート
  蛇足時代END、別ver

 
前書き
こんな終わり方も考えていました。多分、バッドエンドだと思います。
でもこんな風に終わった方が綺麗かな、とかは思っていました。 

 
「――……本当はさ、お前に一緒に付いて来てくれないか、誘おうと思っていたんだけど」

 口の端から血を零し、砂塵と泥に塗れながらも――彼の人は華麗に、嫣然と微笑んでみせる。
 全身を打ちのめされ、心の臓を抉られ、容赦なく敗北を突きつけられながらも、その姿は依然として“強者”としてあった。

「でも、お前の顔を見ていたら……――そんな事、言えなくなってしまってなぁ」

 溢れ出る血を気にする事なく、大した事など無い様にその人は仕方なさそうに苦笑する。
 ――轟、と音を立てながら二人の間を駆けた冷たい風は、それまで夜風に遊んでいた彼の人の絹糸の様な黒髪を大きく巻き上げた。

「――……私はお前が思い描く救済策を否定しない、と言っただろう?」

 凄惨な死闘を繰り広げた武人とは思えない程に薄く細い掌の片方が、彼の人の前に立つ男の肩にかけられる。向かいに立つ男の、鎧を身に着けた逞しい肩に載せられた掌に――少しだけ力が込められた。

「お前の方とて、生前から考えていた計画みたいだし――それに懸けた執着も軽いものだと……思えなくてなぁ」

 まあ敗者である私がお前相手に言える事なんて、そんなに無いのだけれども。
 空いている片手が、尚も胸元を貫いたままの男の片腕へと触れて、その腕をきつく握りしめた。

「そうさな……取り敢えず計画を果たしてみせろよ――上手くいく、いかないは別にして、そうでもしなければ納得いかんのだろう?」

 ずぼり、と胸元に生えたままだった男の腕が、ゆっくりと引き抜かれていく。
 途中、何度か咳き込んではその度に赤い血が周囲に飛び散ったが、直ぐさま灰となって消えていった。

「――――ただ、頼みが一つだけある。無闇に人を殺さないでくれ」

 ぐじゅり、と肉と男の腕が触れ合った事で眉根を顰める音が響く。
 その瞬間、彼の人の表情が苦痛に歪んだが、腕を引き抜く行為を止めようとはしなかった。

「お前程の実力の持ち主で、尚かつ穢土転生による不死身の肉体を持つお前なら……わざわざ相手を殺さずとも、目的は遂行できるだろう? ……違うか?」

 大きく一息を吐けば、男の腕が完全に彼の人の痩身から引き抜かれた。
 それまで栓となっていた男の腕がなくなった事で傷口が血を噴き出したが、直ちに大量の灰へと変わる。露になった生々しい傷跡を恥じる様に、細い片腕が自らを抱きしめる様にして胸元を隠した。

「出来るだけ、殺さないでやってくれ。これだけは頼むよ――嘗ての、我が同盟者殿」

 世界を救うと豪語するのであれば、そこに住まう人々の命を無闇矢鱈と奪う真似だけはしないでおくれ。
 嘆願する様に言い捨てると、胸を隠す腕とは別の手が握りしめていた男の腕を軽く払う――そうすれば支えを失った彼の人は、バランスを崩して背後へと倒れ込んでしまう。

 そんな彼の人を優しく抱え込んだのは、不意に地面より生えて来た滑らかな幹を持つ若木だった。
 皆が見守る中、見る見る内に葉を生い茂らせた木の枝が彼の人の傷口を覆っていく。

「本当は道連れ覚悟でお前を冥土に送り返すべきなんだろうけど……悪いなぁ、ナル君」

 困った様に微笑んで、必死の形相で駆け寄って来る金の髪の青年へと、その双眸を向ける。
 軽く目を細めてこちらへと近付かない様にと警告を送れば、くしゃりと泣き出しかねない程にその表情が歪んだ。

「――――この悲観主義者な石頭に、付き合ってあげてやってくれ」

 はは、と困った様に微笑んで、凭れ掛かっている若木にその身を委ね――その人は緑の蔓が絡み付く両腕を大きく広げて、晴天の夜空を見上げてみせる。
 そうすれば、それを皮切りに透き通った緑の輝きが足下から天を目指し、瑠璃がかち合う澄んだ音色が鼓膜を震わした。

 心の臓を貫かれ、未だ塞がらぬ傷口からは大量の血が滴り落ちている――その苦痛は如何程のものなのか。
 けれども一度たりとて弱音を零す事も、恨みの言葉を吐く事も無く、ただただ彼の人はその全てを黙って受け止めてみせた。

「――――それじゃあな、我が好敵手殿。今一度のお別れだ」

 最後に一つ、余りにも軽い口調で離別の言葉が贈られる。

 ああそれから。
 健闘を祈っているよ、私の意思を継いでくれた少年達。
 君達に全て押し付けてしまう形になってしまって、本当にすまない。

 広げていた両腕と強張っていた全身から全ての力が抜け落ちて、それまで毅然と前を向いていた眼差しが閉ざされれば、一際強く眩い輝きが戦場にいた誰もの目を塞ぐ。
 その痩身の陰影だけが緑の輝きの中で一瞬だけ明らかになり、一段と高い透き通った音色が世界を震わせた。

 “先に逝って、待っていてやるから――あまり待たせるなよ”

 からかう様に告げられた言葉は目の前の男の耳に確かに届き、無意識に男の手が光の中へと伸びる――けれど、その手は届く事無く宙を切った。

 ――――そうして全ての輝きが失せた後、その場に残ったモノなど何も無く。

 膝を付き、呆然とした表情で片手を前へと伸ばしたままの姿勢で固まる男だけが――そこに、居た。

「…………はし、らま」

 一度だけ、その手の隙間からすり抜けていった相手の姿を乞う様に、小さな呟きが男の喉から絞り出される。

 けれどもその呼声を聞いて、振り向いてくれる相手はもういない。
 その名の持ち主は未練など何も無いと言わんばかりに微笑んで、自分勝手に満足だけして、男のやりたい事を否定する事無く、理に従い彼岸へと還って逝ってしまったのだから。

「――~~っ!!」

 堪え切れぬ激情を押し殺す様に、男が強敵を喪ってしまった事への慟哭の叫びを上げる。
 荒ぶる内心を示す様に、他を威圧する迫力に気圧された様に、静電気に似た痺れが世界を奔った。

 ――暫しの間沈黙が世界を包んだが、直ぐさま男の口より紡がれた煮えたぎる溶岩を思わせる物騒な言の葉によって、その空気は霧散した。

「……良かろう。貴様が止めはせんと言うのであれば、オレに取っても好都合だ。――九尾と、八尾、捕らせてもらう」

 ゆらり、と幽鬼を思わせる動きで男が立ち上がり、鋭い紫の双眸でこちらへと駆け寄ってきた金髪の少年を睨みつける。
 激情に支配された眼差しに、少年が僅かに後ずさり――そんな彼を守る様に黄色い砂が男を拘束しようと空を切った。

「ナルト……。お前は今すぐ本体へ還ってこの状況を知らせておけ」

 夕日に似た赤い髪の青年が、金の髪の少年を守る様に前へと進み出る。

「なに、ワシらとて里の忍びを統べる影じゃぜ? そうそう遅れをとらせんわ」

 どん、と胸を叩いて、空を舞う老忍者が闘志を奮い立たせる。

「初代様のお蔭で残る戦場はこことあちらだけ。ならば尚更、押しとどめておかないと」

 緊張を隠せない表情で、長い亜麻色の髪を持つ女が印を組む。

「うちはマダラか――相手にとって不足無しだな」

 全身を蒼い雷遁のチャクラで包まれた褐色の肌を持つ大丈夫が拳を握る。

「大叔母様に比べたら物足りんとは思うが、此処は意地でも通させんぞ」

 そうして最後に。
 背中で二つに括った金髪を風に靡かせた、豊満な肢体の女が傲然と立ちはだかる。

 世に名高い五影を視界に認めて、男はうっそりと嗤い――波紋を描く眼差しを彼らに向ける。
 肌を刺す勢いで放たれる威圧感を前に、それでも彼らは気圧される事無く応戦の意思を見せた。

「五影風情が随分と粋がるな。まあいい、貴様ら程度ならば少しばかりオレが本気を出しても死にはしないだろうよ」

 投げやりに放たれた挑発に、五影を包む雰囲気が不穏に揺れる。
 ――――そうして、どちらともなく新たに相対した彼らは地を蹴った。

 
 

 
後書き
*これからほぼ原作展開*
・頭領の方が五影相手に最初から本気と言うか、殺しはしないけど遊ぶ様な手抜きはしないため、一気にとまではいかないが原作のVS五影戦よりも早くにケリが付く。
・その後に頭領のVSナルト&ビー&木の葉の上忍戦に合流。若干のタイムロスはあるが、ほぼ原作と同じ展開へ進む。
・五影負傷のために彼らは不参戦、この辺も原作と同じ。
・宿敵との闘いを経て、一方的なさよなら展開のおかげで消化不良のため、かなりフラストレーションの溜まっている噴火寸前の不機嫌頭領による蹂躙戦が発生しかけるフラグ乱立。仮面マダラ(ネタバレを防ぐために敢えてこの名称)がんばれ、お前だけが頼りだ! 流れへ。
・でもナルト達が負けるとは思えないので、おそらく原作の流れに従ってマダラ敗北へと繋がると思われる。(その際、憑き物が落ちた様にすっきりしていればいいなと願う)
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧