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八条学園怪異譚

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プレリュードその六


「じゃあ私達より六つ上よね」
「そうだよ。だから私達が高校生の時」
 その時にだ。どうなるかというのだ。
「お姉ちゃん結婚するかもね」
「そうだよね。学校卒業したら結婚できるよね」
「そうだよ」
 二人はまだそう思っていた。法律で結婚できる年齢があることはまだ知らないのだ。
「だからお姉ちゃんもね。大学を卒業したらね」
「結婚できるんだね」
「そうだよ。お姉ちゃんみたいな奇麗な人と結婚できるって」
 愛実はにこにことしていた。自慢の姉であることがわかる。
「凄く幸せな人だよ」
「そうだよね。じゃあ愛実ちゃんもね」
「私も?」
「そうした人と結婚できるといいね」 
 愛実のその顔を見てだ。聖花は満面の笑顔で言った。
「そうなったらいいよね」
「そうだよね。聖花ちゃんもね」
「うん。それで私達結婚してもね」
 そうなってもだと。また愛実が言う。
「お友達にいようね」
「そうだね。幸せにね」
「幸せになろう」
 こう話すのだった。
「お友達同士でね。結婚してもね」
「そうしようね」
 二人は聖花の家のパンも食べた。そうしたのだった。
 幼稚園の頃に出会い小学校でも二人は一緒だった。それも一年からだ。
 一年で同じクラスになってだ。聖花は自分と同じ制服を着ている愛実にこう言った。
「幼稚園でも同じクラスでね」
「小学校でも同じクラスよね」
「うん。私この学校でよかったわ」
「八条小学校で?」
「八条幼稚園でね」
 それが二人の通っている学園だった。幼稚園から大学院まである私立校だ。
 八条学園は二人がいる神戸市長田区八条町にある。日本最大のマンモス学園で八条町の子供の多くが通っている学園なのである。
 その学園に入ってよかったとだ。聖花は言ったのである。
「だって愛実ちゃんと一緒にいるから」
「私と一緒だから」
「うん、よかったと思うの」
 こう言うのだった。
「だって愛実ちゃんお友達だから」
「いる商店街は違うけれどね」
「違うのそれだけじゃない」
「それだけ?」
「そう、それだけだから」
 だからだというのだ。
「私ね。凄くよかったって思うの」
「私もなのよ」
「愛実ちゃんも?」
「うん、私もこの学園でよかったわ」
「やっぱり。私と一緒だから」
「そうよ」
 聖花と同じ理由だった。まさしく。
「私も聖花ちゃんと一緒だったからね」
「それでよかったの」
「うん、そうなの」
「じゃあ一緒なのね」
「小学校でも一緒でね」
 愛実は聖花の両手を自分の両手で持った。そうして。
 そのうえでだ。こうも言ったのだった。
「聖花ちゃんが困ってたら絶対に何かするから」
「私も。愛実ちゃんが困ってたらね」
「うん、その時はね」
「お互いにね」
 こうした話を二人でするのだった。そうして。
 実際にだ。聖花は。
 入学してすぐにだった。愛実がクラスの男の子達に囲まれてだ。こんなことを言われていた。
「何だよ御前チビだな」
「幼稚園に戻ったら?」
「チビチビ」
「何か太ってる感じだしな」
 愛実が小柄なこと、そして少しばかりふっくらしていることをだ。彼等は囲んで言っていた。 
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