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髑髏天使

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第三話 日々その七


「今ここでな。覚悟するのだ」
「覚悟しろと言われてそうですかと覚悟するつもりはない」
 男と対峙しつつ言葉を返す。
「特に魔物に対してはな」
「俺は蛇男」
 言いつつその顔を変えていく。今までごく普通の男の顔だったそれがまずは目が蛇のものになり顔の形が歪に歪んでいく。口が突き出てそれが細長くなり遂には赤く長い舌まで出してきた。完全に蛇の顔になったのであった。手も首も顔も鱗に覆われ頭の髪の毛は一本もなくなっている。
「貴様等の言う魔物の一人だ」
「俺を倒しに来たのか」
「今から街に向かうつもりだった」
 こう彼に答えてきた。
「今からな。だがここで貴様に会うとは思わなかった」
「奇遇だな。俺もそうだ」
 牧村はまだ変身していない。彼本来の姿で蛇男に言葉を返すのだった。
「腐れ縁というやつか」
「髑髏天使は我等を呼び寄せる」
「奇遇ではないのか」
「そうだ。貴様は我等を倒す存在とされている」
 このことを彼等自身も知っているのであった。五十年に一度この世に現われ悪しき異形の者達を倒す髑髏天使の存在を。知っているのである。
「だからだ。ここで会ったのも偶然ではない」
「俺はこうして行く先々で貴様等と闘うことになるということか」
「その通りだ。だがその運命は今日この場で終わる」
 牧村に対して言ってきた。
「貴様が俺に倒されてな」
「その言葉は現実にはなることはない」
 牧村は蛇男の今の言葉を冷然と返すのだった。
「貴様にとっては残念だがな」
「俺を倒すというのか」
「如何にも」
 前に出ずその場でまず両手を拳にした。
「貴様等を倒すのが髑髏天使の宿命なら」
 その拳を胸の前に出しそして。
 打ち合わせた。するとそこから白い光が放たれ彼を包み込んだ。光が消えたその時そこにいたのは白い髑髏の顔と白銀の鎧に全身を包んだ異形の戦士がいた。髑髏天使が。
「行くぞ」
 変身した彼はこの言葉と共に右手を一旦開き握り締めた。戦闘開始だった。
 まずは髑髏天使が動いた。その右手に剣を出し右斜め上から一閃させたのだった。
「剣か」
 蛇男はその剣を見て述べた。
「いい剣だな」
「貴様等を倒す剣だ」
 髑髏天使はこう蛇男に言葉を返した。
「覚悟するのだな。これで」
「確かにいい剣だ」
 蛇男は剣を見たまままた同じ言葉を発した。
「実にな」
「ただ感想を言っているだけではあるまい」
「如何にも」
 蛇の口の両端を吊り上げさせて応えてみせてきた。
「それだけで言うことはない」
「では何を考えている」
「簡単なことだ」
 蛇男は言いながら己の右腕を大きく後ろに、下手に振った。すると彼の右手に蛇が姿を現わした。数匹の蛇を束ねた鞭であった。
「蛇!?」
「ただの蛇ではない」
 蛇男は答える。
「この蛇男の分身だ。俺の意識で自在に動く蛇達だ」
「意識を持った鞭か」
「そうとも言う。そして」
「そして?」
「貴様を倒す鞭だ」
 こう言いながらその鞭を下から上へ、髑髏天使の剣と対する動きで動かしてきた。剣と鞭が激しくぶつかり合った、 
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