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髑髏天使

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第十三話 衝突その十五


「だが同じ影の中に入ることができる」
「見破ったというのか」
「その通りだ」
 己の前に出て来た彼に対してまた告げた。
「影というからは。そうだと思ってな」
「ふん、それで今剣を刺しそこから炎を出してみせたか」
「図星だったな。だがこれで影の中に隠れることはできないな」
「確かにな」
 うわんにもそれはわかることだった。技は見破られればそれで終わりだからだ。
「しかしだ」
「しかし?」
「俺はこれで終わりではない」
 こう髑髏天使に対して言うのだった。
「決してな。見るのだ」
「むっ!?」
「俺はこうした動きも出来る」
 言いながらすすすっと横に動くのだった。その速さは尋常なものではなかった。
「影は光のもう一つの姿」
 その素早い動きの中での言葉だった。
「こうして動きながら攻めることもできる。そして」
「むっ!?」
 いきなり髑髏天使の右隣から拳を繰り出したのだった。
「こういうこともできるのだ」
 拳は彼の右肩を撃った。その衝撃で思わず吹き飛んでしまった。
 吹き飛びその身体を墓石にぶつけてしまう。鈍く重い衝撃が彼の身体を撃った。
「ぐっ・・・・・・」
「まだ立てるか?」
「馬鹿にしないことだ」
 一旦倒れたがそれでも立ち上がる彼だった。
「この程度ではな」
「存外頑丈なのだな」
「体力には自信がある」
 倒れた墓石はそのままにして起き上がる。
「生憎な」
「そうか。自信があるか」
「如何にも。それでだ」
 完全に起き上がってからの言葉だった。
「それが貴様のもう一つの武器なのだな」
「力と影の中に入る」
 語るその口から見える歯と舌もまた漆黒のものであった。
「そしてこの素早さだ。この三つが俺の武器だ」
「そうか。それがか」
「その通りだ。ではいいな」
「まだ来るのだな」
「俺は勝つ」
 これがうわんの返事だった。
「貴様を倒してな。だからこそだ」
「来るか」
「今の一撃はかなりのものだった筈だ」
 うわんは冷静に彼を見つつ述べた。
「そうだな。ならば」
「くっ・・・・・・」
「次の一撃で決める」
 言いながらまた動きはじめてきた。
「覚悟するのだな」
「来たか」
 うわんがまた動きはじめたのを見て彼も身構える。しかしダメージのせいで動きが鈍い。構えも満足にはできない程であった。
 右肩に痛みが走る。その痛さに耐えながら考えるのだった。
(どうする?)
 自分で自分に問う。
(このままでは敗れる。だが)
「行くぞ」
 だがその間にもうわんは迫る。最早一刻の猶予もならなかった。
 彼には最早考えている暇はなかった。そして考えなかった。考えるかわりに跳んだ。そうしてその翼ではばたき空を舞うのだった。
「空か」
「それだけではない」
 右腕を上から見据えながらの言葉だった。
「これで・・・・・・どうだ」
 言いながら再び剣から炎を出す。それでまた辺りを焼こうというのだ。 
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