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髑髏天使

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第九話 氷神その十五


「またか」
「これでどうだ?」
 今度は後ろからだった。言葉と共に前脚を出す。それで髑髏天使を串刺しにしようとする。だが髑髏天使はそれを宙返りの要領でかわした。そのうえで宙を舞いマニトーの後ろに着地したのであった。マニトーはその彼に顔を向けて身体を向けて隙を見せないのだった。
「かわしたか」
「今のを受けていたら死んでいた」
 髑髏天使は構えを再び取りながら自分に向かって振り向いてきたマニトーに述べた。
「確実にな」
「当然そうするつもりなのだがな、こちらも」
「それはわかっている」
 言うまでもないことであった。
「だが。貴様の腕の動きはある程度は見切った」
「もうか」
「そうだ、既にな」
 構えながら身を屈めていく。今度は彼から攻撃を仕掛けようとしているようだった。
「だからだ。今度は俺が」
「確かに俺が一つではそうだな」
 ここでマニトーは妙な言葉を口にしてきた。
「俺が一つではな」
「何が言いたい」
 髑髏天使もまた彼のその言葉に対して返した。
「貴様は一人だ。それ以外の何者でもない」
「俺は一人だ」
 これはマニトーも認めた。
「しかしだ。一つとは限らないのだ」
「何っ!?」
「こういうことだ」
 言葉と共に身体を激しく左右に動かしてきた。するとマニトーの身体が忽ちのうちに幾つにもなったのであった。まさに幾つもに。
「分身か」
「日本ではそう呼ぶのだな」
「おおむねな。そう来たか」
「そうだ。これで終わらせる」
 複数になった口からそれぞれ述べるマニトーであった。
「これでな」
「来るか」
「どうする?」
 また複数の口からの言葉であった。
「この攻撃は。貴様とてかわせるか」
「幾つもの貴様の脚をか」
「俺が一つならかわせると言った」
 このことを彼自身も言ってきた。
「だが。それが複数ならばだ」
「できるかどうかか」
「容易ではあるまい」
 問う声に余裕が含まれてきていた。
「少なくとも。そうだな」
「確かにな。しかしだ」
「しかし?」
「俺にもカードはまだある」
 彼の言葉には余裕はなかった。だが落ち着いた声でマニトーに返したのであった。
「まだな」
「諦めていないというのか」
「俺の辞書に諦めるという言葉はない」
 こう言うのであった。
「決してな」
「だからこそ最後まで戦うのだな」
「そういうことだ」
 ここでも彼自身の考えを述べるのであった。
「何があろうともな」
「この心は見事だ」
 彼のそうした考えはマニトーも素直に称賛した。
「そこまではっきりと決めているのならな」
「褒めても何も出ないが」
「そういう問題ではない」
 それぞれの口で言うマニトーであった。分身は少しずつ増えやがて髑髏天使を取り囲んだ。その数は相当なものであり一見しただけではどれだけいるかわからなかった。
「俺とても相手であろうがその褒めるべきものは見る」
「そうか」
「そうだ。それだけだ」
 マニトーもまた毅然とした言葉になっていたのだった。 
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