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髑髏天使

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第八話 芳香その十六


「それも非常に」
「そうね。私達十二魔神が揃うならば」
「素晴らしいものになります。この時代の髑髏天使もまた強いようですし」
「強い相手でなければ面白くないわね」
「全くです」
 二人の言葉は一致した。
「だからこそ。今度の闘いは」
「アルラウネに任せておいて問題はないわ」
「間違いなくですね」
「私が嘘を言ったことがあるかしら」
 女は妖艶な笑みを浮かべつつ老人に問うた。
「私の記憶にはありません」
「そういうことよ。だから」
「楽しいものになりますか」
「そうよ。ただ」
「ただ?」
「どうも動きがあったようよ」
「動きとは」
 老人は今の女の言葉にその眉を少し動かした。
「何かありましたか?何処かで」
「あちらの世界でね」
「あちらというと」
「そうよ。冥界よ」
 急にこの世界をはまた別の世界の話が出て来た。
「そこでね。動きがあったようなのよ」
「ほう」
 老人はそれを聞いてその目を少し動かした。ただ動かすだけではなくそこには深い読みもあった。
 しかしその読みが何なのかは言葉には出さずに。また女に対して話すのであった。
「それはまた」
「何故なのかは聞かないのね」
「いづれわかりますから」
 悠然と笑って述べる老人だった。
「ですから」
「言っておくけれど聞かないと言わないわよ」
「ならばいいです」
 やはり聞かないのであった。こう言われても。
「私は無欲ですので」
「言うわね。けれどそれならね」
「はい」
「楽しみにしておくといいわ」
 女も楽しそうに笑ってこう言うに止めるのであった。
「今はね」
「そうさせてもらいましょう。それではですね」
「何かあるの?まだ」
「いえ、ありません」
 今度の言葉はこれまでよりも簡素なものであった。
「私からは」
「そう。それならもういいわね」
「そうですね。今宵はこれで」
「お別れね。それにしても今度の闘いは」
「これまでより面白くなりそうですね」
「それはね。わかるわ」
 二人の笑みは期待であった。だがそれは陰惨な期待でありそれを隠そうともしないのであった。やはりそれは人間の笑みではなかった。
「さて。私達も闘えればいいけれど」
「それもまた楽しみとしておきましょう」
「そうね。ではまた」
「御会いしましょう」
 こう言い合ってそれぞれ闇の中へと溶け込む二人であった。その次の夜牧村は街の植物園に向かっていた。植物園の門まで来ると当然ながらそこは閉じられていた。
「やはりな」
「待っていたわ」
 門のところにアルラウネが出て来た。門の上に一人立っている。
「時間通りよ」
「時間は守る主義だ」
 髑髏天使はその彼女を見上げて述べた。
「だからだ」
「そうなの。律儀なのね」
 アルラウネは牧村の言葉を聞いて笑う。妖艶な、それでいて凄みのある笑みであった。
「これから死ぬというのにそれでもだなんて」
「死ぬのは俺の予定には入っていない」
 しかし髑髏天使も負けずにこう言葉を返す。
「だが別の予定は入っている」
「それは何かしら」
「貴様を倒すことだ」
 アルラウネを見上げながらの言葉であった。
「貴様をな。それは入っている」
「噂通りの自信家ね」
 アルラウネはその言葉を聞いても表情を変えることなくこう述べるだけであった。
「どうにもこうにも」
「自信ではない」
 牧村はアルラウネに対して厳然と言い放った。 
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