| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ポケットモンスターLEGENDS オーレ

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

黒い翼

「どこ!?」
「フィア!」
「ガウッ!」

 先行するルカリオの後を追って、私たちは道路を曲がる。
 その先に、ようやく道路脇に設置された、大きな給水設備が見えてくる。
 そして、その一部がめちゃくちゃに壊れていた。

「何これ……」

 金属製の配管が潰れている。水が地面にびたびたと垂れ流しになっていて、周囲には作業員もポケモンたちも騒いでいる。

「ラピスは?」

 いない。煙は、さらに向こうから昇っている。

「ルカリオ、分かる?」
「……グルッ」

 ルカリオが目を閉じる。ルカリオの一番の特徴は、波導を感知すること。つまるところ、すごい感知能力を持っているんだ。
 すぐに目を開けて。

「ガウッ!」

 走り出した。

     ◇

 町を抜けて、砂地と風の世界に出てきた。
 そして、いた。

「ラピス!」
「エルサ!?」

 チルタリスと、その後ろで指示を出しているラピスがいた。

「来るなって言ったのです!」
「爆発音聞こえたら来るでしょ!」
「だからって――」

 その時。
 上から巨大な影が落ちてきた。

「え」

 大きい緑と翼。それを見た途端、反射的に口が動いた。

「フライゴン……! いや、ダークポケモン!」
「なのです!」

 大きい。フライゴンとは何回か戦ったことがあるけど、ここまで大きかった記憶はない。多分、最近稀に噂になる、オヤブンポケモンだと思う。
 そして、あの目。陽の光で少し見えずらいけど、赤いゴーグルの中にある目は、機械みたいに何の光もない。戦闘マシーンという言葉が浮かんだ。
 頭上のフライゴンが旋回して、町の方へと進路を定めた。

「まずい!」
「チルタリス!」
「チル!」

 ラピスが白い翼に飛び乗る。

「エルサ!」
「私も行く!」
「飛べないのです!」
「分かってる! ルカリオ、追える?」
「ガウッ!」

 頷いたルカリオが先行して走る。
 私とニンフィアは、その後を追いかけていった。

     ◇

 フライゴンの速度が速い。当たり前だけど。

「無理!」

 全然追いつけない。

「ルカリオ待って!」

 ルカリオはもうかなり先にいる。
 その頭上には、チルタリス。
 そしてさらにその上には、デカいフライゴン。
 突然フライゴンが急降下。その先には、倉庫がある。このままだと爆発だ。

「ニンフィア! ムーンフォース!」
「フィ!」

 ニンフィアの前に、月のような輝きが宿っていく。
 そしてそれを放つけど、フライゴンまでの距離が遠い。途中で、月の光は消えていった。

「くっ!」

 一方、フライゴンの翼が黒紫色のエネルギーを纏う。そのまま炸裂すれば、大変なことになる。
 そして、緑色の槍は大地に強く突き刺さった。
 黒い衝撃が地面を走って、砂や破片が宙を舞う。

「本当に壊してる……!」

 フライゴンがもう一度上昇。

「待つのです!」
「ラピス!」

 もう、ラピスにも声は届かない。

「もう!」

 私、完全に置いていかれてる。

     ◇

 ようやく追いついた。

「はぁ……はぁ……」
「フィア……!」

 ニンフィアも息切れだ。倉庫の向こうの荒れ地で、私たちは完全に疲弊しきっていた。
 ルカリオは少し先でフライゴンと向かい合っている。
 改めて、本当に大きい。

「ルカリオ!」
「グルル……」

 フライゴンが、地面に降りてくる。その緑の翼が、より砂をまき散らしていった。
 そして改めて、その赤い特徴的なゴーグルの中にある目を見つめる。
 空っぽだ。ルカリオがリオルだった頃と同じ、あの目だ。

「フリャァァ!」
「来る!」

 黒紫色の爪が振り下ろされた。

「避けて!」
「ガウッ!」

 ルカリオが横へ反れたのと同時に、地面が大きく抉られる。

「ダーク技……! しかもこれって、ガブリアスと同じ……!」

 同時に、ラピスが着地。

「エルサ! オーラサーチャーは反応してるのです!」
「見れば分かる!」
「念のためなのです!」
「今!?」
「今なのです!」

 フライゴンが再び上昇。

「え、何? もしかして逃げるの!?」
「違うのです!」

 フライゴンは旋回して、またそのかぎ爪を黒く伸ばしてくる。

「ニンフィア! ムーンフォース!」
「フィアー!」

 生成された光が命中、フライゴンの身体が大きく揺れた。

「よし!」
「まだなのです!」

 そう、まだ落ちない。
 これもさっきと同じ。ガブリアスと同じく、弱点のフェアリー技を受けてもまだ立ち上がってくる。

「フリャァァァァ!」

 次は、全身を黒紫のオーラに包んだ突進。
 一度ニンフィアとルカリオは、それぞれ飛びのいて避けたけど、その風圧にその力を推し量る。

「何、これ……!?」
「ダークブレイクなのです! 命中したらただではすまないのです!」
「もう名前から物騒! ルカリオ、はどうだん!」
「ガウッ!」

 ルカリオの手に、波導が集まっていく。そして渦巻く丸い光が、フライゴンへ放たれた。
 だけど、フライゴンの機動力は高い。最低限の動きでそれを避けて、今度は黒い鉤爪で攻めてくる。

「ルカリオ!」
「グルルル!」

 ルカリオはフライゴンの腕を受け止めた。地面を引きずりながら、だんだん追い詰められていく。

「無理しないで!」
「フィア!」

 ニンフィアが触角をルカリオの身体に巻きつけた。そして背中に体を支えて、二匹で一緒に耐える。

「…………」

 ねえ、あのフライゴン……目には何も映していないけど、もしかして。

「怒ってる?」
「エルサ!」

 ラピスが私のところに駆けつけてきた。
 彼女が大きく抱えている鞄を見て、その中を理解した。

「スナッチマシン! もう一回貸して!」
「使うのです!?」
「このまま逃がす方が危ない!」
「……!」

 ラピスは一瞬迷って、頷いた。

「分かったのです!」

 そして現れた機械を腕に装着する。
 ずっしりと、その重さが右腕に圧し掛かる。

「久しぶり……でもないか」
「そんな感想いいのです!」

 ボールを取り出して、機械音とともに光が集まっていく。
 これで、モンスターボールがスナッチボールに変化していく。
 よし。

「ニンフィア! ルカリオ! 離れて!」
「フィア!」
「グルッ!」

 二匹が同時に飛いた。
 今、フライゴンへの道が完全に開かれた。

「いけっ!」

 ボールがフライゴンへ投影された。
 ボールが光になって、フライゴンを吸い込んだ。

「……!」

 ボールが砂の上に落ちた。
 そして、揺れる。
 一回。
 二回。

「…………」

 三回――
 ばんっ!

「うそ!」
「失敗なのです!」
「見れば分かる!」

 自由を取り戻したフライゴンが、砂漠の上で怒鳴る。

「フリャァァァ!」
「来る!」

 黒紫色の爪が、今度は私を狙っていた。

「ガウッ!」

 ルカリオが割り込んできた。
 そのまま、ルカリオが私を放り投げた。

「ルカリオ!?」

 ルカリオが吹き飛んだ。
 地面にどさっと音を立てて、その青い体がうつ伏せになった。

「ルカリオ! 大丈夫!?」
「フィア!」
「……グル」

 傷だらけだ。だけど、ルカリオは無理矢理でも立とうとしていた。

「無理しない!」

 その間に、フライゴンが空へ上昇していく。

「待って!」

 だめだ、追えない。
 そのまま緑色のダークポケモンは、砂漠の向こうへ小さくなっていった。

「……」
「逃げたのです」
「分かってる」

 悔しい。
 でも。

「ルカリオ」
「……グル」
「ごめん。私守ってくれたんだよね」
「………」
「ありがとう」

 ルカリオは目を逸らした。

「フィア」

 ニンフィアが横から顔を出す。

「フィアー」
「……グル」
「喧嘩しない」

 いや、これはしてないか。

「回復させるのです」
「うん。傷は?」
「……どうやら、そこまで深くないのです」
「よかった……」

 受け取ったきずぐすりでルカリオを回復させていく。嫌そうだけど、我慢してね。

「グル……」
「ほら、ニンフィアも見てるよ」
「フィア」
「そこで偉そうにしない」

 一方、ラピスは黙ってフライゴンが消えた方を見つめていた。

「……変なのです」
「何が?」
「あのフライゴン」
「変って、そりゃあダークだからでしょ?」
「それもあるのです。でも、妙な行動なのです」
「なにが?」
「町を壊しているけど、人を狙っていないのです」
「……確かに」

 あのフライゴンが襲っているのは、あくまで給水設備や倉庫に建物。
 私に攻撃したのは捕まえようとした後。

「でも、たまたまじゃない?」
「かもしれないのです」

 ラピスは地面に残っている足跡を調べている。

「ただ暴れているだけなら、もっと無茶苦茶でもおかしくないのです」
「じゃあ何?」
「まだ分からないのです」
「またそれ」
「分からないものは分からないのです!」
「はいはい。でも……次も来るよね」

 フライゴンが飛び去って行った方。今はただ、純粋な砂漠がどこまでも広がっていた。

「可能性は高いのです」
「じゃあ、次は捕まえる」
「……」

 ラピスが私を見る。

「何?」
「エルサ……普通の旅は?」
「……」
「コンテストは?」
「……」
「観光は?」
「……」
「フィア」
「分かってるよ!」

 まだ半日。

「なんでこうなるの!?」
「エルサだからなのです」
「それどういう意味!?」

 その時。

「ナック」
「……え?」

 この声に振り返ると、そこにはオレンジ色の顔があった。

「あれって、前会ったナックラー」
「ナック……」
「もしかして、ついてきたの?」
「フィア?」

 一歩近づいてみる。

「ナァック!」
「わっ!」

 いきなり私に飛び出してきた。びっくりして、砂を蹴り上げる。

「また!?」

 一方でナックラーは、私ではなくフライゴンが飛び去った方向を見つめていた。

「ねえ、もしかして……あのフライゴン知ってるの?」
「ナック!」
「わっ! だから何で私に怒るの!?」

 ナックラーが私の顔に噛みつきかけて、そのまま砂漠へ。走り去っていった。

「……ラピス。あの子」
「何か知ってそうなのです」
「だよね……追う?」
「む。エルサ」
「何?」
「今度こそ少し休むのです」
「……」
「ルカリオもなのです」
「グル」
「……はい」

 反論できなかった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧