『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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建前
前書き
どうでもいい、日常の息抜き回です。
「おはよう」
「ああ、おはよう……」
席に着くと愛子の挨拶へ、眠気混じりに返す。
今日は、3日ぶりの登校か……昨日は、魔界まで行って擦った揉んだを繰り広げたわけだが、終わると本当に呆気ないもんだな。こうして、学校に来ればいつもの面々といつもの挨拶を交わす。平和だけど、変わり映えしない日常。
まぁ、あったらあったで色々困るから何も無いことに越したことはないんだが……要するに、被害が出る前に食い止められたんだ。もう、数週間対応が遅れたら日本中で大騒ぎになってたかもしれない。
だから、自分達のしたことに意味はあった。誰からも称賛されることはないが、そう実感出来るだけで十分なのかもしれない。
「今回は、何処に行ってたの?」
「……埼玉の山奥」
本当は、静岡の山奥なんだが、言わない方がいいな。無骸のこともそうだし、天狗殿と定期的に関わってることも伏せた方がいいだろう。
※《境界樹林》や《人狼の里》は静岡県の秋葉山の奥地に存在
彼も俺達(特に雪之丞)に対しては、割と砕けて来たけど本来は人と余り関わりたがらない。勿論、彼があの森を塒にしてるのは業界では有名な話だ。
自分から訪ねて来た人間はどうしょうもないだろうが、それでも俺達の方から吹聴する必要はない。まぁ、言った所で誰も信じやしないか……
「また、山奥?」
「別に良いだろ?」
「前は、廃工場とか廃ビルばかり行ってたけど、山奥に変えたの?」
「そんな感じだな」
そう……無骸と絡むまでは、割と郊外の朽ちた建物を中心に除霊してた。そっちの方が都心からも近いからな。
「山の方が割がいいの?」
「そうでもないな……」
山奥も郊外も両方とも塩漬けと言う意味でギャラは一緒なんだが、いかんせん移動に手間取る上に金も掛かる。はっきり言ってマイナスだ。
「そうじゃないのに、山奥にわざわざ行くの?面倒くさくない?」
「面倒だけど、そっちの方が俺達の性にあってんだよ。建物だと、どうしても壊すなとか言われるからな」
「……それが、普通じゃない?」
「俺達は、普通じゃないから……」
色んな意味で……
まぁ、除霊代に関しては本当に減っちまったよ。さっき言った理由以上にウチは完全歩合制。今まで2人で折半してたものが、3人になったお陰で報酬が目に見えて目減りしやがった。
ただ、悪いことばかりでもない。
人手が増えたことで、仕事その物は格段に楽になった。それに、最近は除霊や妖怪退治よりも割の良い境界樹林での素材集めに仕事をシフトしてるから、総合的な報酬は上がった上に割と安定するようになったんで別に不満はない。
俺や雪之丞は修行相手が増えたこともメリットだし、無骸にとっても安定した報酬を得られるわけだからウィン・ウィンになってるはずだ。奴の内心がどうだかは知らんが……
「今後も、ずっとそんな感じなの?」
「そうなるだろうなぁ」
そうして、境界樹林に飽きたら、今度は魔界探索とか言いそうだな。雪之丞……
「生活とか平気なの?」
「前の事務所よりは、貰えてるから平気だよ」
いや、マジで………
美神玲子の下に居た頃はどんな高額案件片付けても、俺は時給255円だし、あっちの方が余程毎日身を削ってたわ。
「そうなの?美神さんの所に居た頃より、地味になってる気がするけど……」
「地味でも、ちゃんと生活出来てる」
確かに、あいつに付いて綺麗なビルやリゾート地に行くことも多かったよ。派手に見えてたかもな。
だけど、あんな思いするくらいなら、妖怪や怨霊の屯する危険地帯に突貫かました方が、まだマシだ……!
そんな事を思ってると、愛子はやや聞きづらそうにしながら聞いてくる。
「美神さんとは……会ったりするの?」
「辞めてから、一度も会ってかねぇよ」
向こうが受け取ってるのは、常に高額案件。こっちは、誰もしたからない塩漬け案件。仕事で絡むことなんて有り得ない。そもそも、事務所の周辺には近寄らないようにしてる。余程の事がない限り、会う事なんてないだろう。
「……会うのを避けてるとか?」
「そうだね」
「嫌いになっちゃったの?」
「嫌いまでは、行ってない。でも、もう付き合い切れなかった」
事務所を辞めてから、もう1年以上経つ。当初は濁していたが、もう意味がないと思った俺は、もろに本音をぶっちゃけた。
すると、愛子は少し顔を曇らせながら呟く。
「残念ね……」
「お前は、別に関係ないだろ?」
「そうだけど……でも、あの人のお陰で私はこのクラスの一員になれたから………」
「そうか……確かに、お前にとっては恩人かもな」
そうだったな。もう、2年近く前になるが得体の知れない “人喰い机” として恐れられていたこいつが、改心したのはあの人の魂の籠もった “一喝” があったからだ。
本人は、単に怒りをぶつけただけだろうが……
「横島君にとっては、もう恩人じゃないの?」
「……複雑だな。全く感謝してないわけじゃない」
これは、決して嘘じゃない。
彼女と一緒に居たから、武神様に出会えた。あのお方から過分なまでの薫陶を受ける事が出来た。何の取り柄もなかった俺がここまで出来るようになったのは、あの方のお陰だ。
そして、雪之丞と言う死地でも背中を預けあえる最高の相棒と出会うことが出来た。奴が居たから、俺は厳しい修行も耐え抜く事が出来た。感謝しても、しきれない。本人には、口が裂けても言わねぇが、それが本音だ。
それに……
「あの人は “天才” (人としては最低だけど)…言い換えれば、邪道を正道に変える怪物と言ってもいいだろう。もっと、彼女から色々と盗んでおきたかったよ」
人並み外れた霊気。様々な道具の扱いに長けて、あらゆる知識も豊富。神魔をも相手取る図抜けた経験値。どれもイカれてるが、どれもさっきの言葉に比べれば些事。
俺じゃ、到底彼女にはなれないが、それでもプラスに出来ることは在ったはずだ。
「盗みたかったの?」
「ああ。盗みたかった。S級スイーパー『美神玲子』からな……」
彼女なしに、今の俺は有り得ない。これこそ、本人に言う機会なんて永遠に無いだろうがな。
…………なんか眠気混じりで適当に返してたら、割と重い話になっちまったな。
◇◇◇
「何かないか?」
「何かって、何だ……?」
休み時間に席までやって来た、ダミ声眼鏡(CV高木渉氏)のいきなりな物言いに顔が引き攣る。
「勉強キツイんだよ」
「来年受験だもんな」
俺には関係ねぇけど……
「息を抜きたい」
「好きに抜け!勝手に抜け!」
「抜き方が分からない」
「俺にどうしろと……?」
「何か面白い話ないか?」
「ない!」
「じゃあ、その場で面白い顔でもしてくれよ」
「殴るぞ、テメェ……!」
いい加減にしろよ。何だ?その言い草……
「冗談だよ。でも、昨日まで除霊行ってたんだろ?何してたか、聞かせてくれよ。日常と違った刺激が欲しいんだ」
「刺激ねぇ……」
まぁ、どんな地味な除霊でも、一般人からすりゃ非日常だよな。
「埼玉の山奥に行ってたんだろ?今回は、何を祓ったんだ?」
「妖怪だよ。熊の妖怪」
「熊の妖怪か……やっぱ、普通の熊より強ぇの?」
「まぁ、そりゃあな。昨日のは、普通の熊の3〜4倍ってとこかな……」
嘘じゃない。そういう手合いは、どこの山でも割と出る。昨日は、全く関与してないけど……
「3〜4倍って……力が?」
「その認識で、大体合ってる。腕を振っただけで大木が抉れちまうよ」
「マジか!?なら、人間が喰らえば……」
「もう、挽肉だよ。でも、全部喰ってくれるから骨も残らねぇぞ」
「それは、どんな慰めだ……?」
「気持ち悪い肉塊を晒すより、良いだろ?死ぬのも一瞬だぞ。痛いと感じなくて済む」
「ヲイ……」
「すまん。だけど、それくらい割り切った方がいい。まぁ、んなとこ行かねぇだろうけどな」
「当たり前だろ。んな、イカれた場所……どうやって除霊したんだよ?」
「三白眼のチビが殴って、頭を潰したよ」
昨日はしてないけど、日常的に何度も見てる。嘘として、そこまで不自然でもない(?)はず。
「………………」
「会ったことあるだろ?去年」
※『霊能武道大会』参照
「伊達さん……?」
「そうだよ」
「嘘だろ?」
「嘘じゃねぇ。あいつはそれくらいやる。嘘だと思うなら、ピートやス…タイガーにも聞いてみればいい」
「……マジかよ?もっと、お札とか神通棍とか大掛かりな罠とかで倒すんじゃないのか?」
「いや、まぁ…他のGSは、そんな感じだな。とにかく、あいつのお陰ですぐ終わったよ」
「えっ……すぐ、終わった?だって、2日くらい休んでたじゃねぇか」
「………見つけるのに、時間が掛かっちまったんだよ。殺るのは、すぐ終わったけどな」
ボロが出そうになった……
取り敢えず、その後もテキトーにそれっぽい話を捏造して、その場を乗り切った。
馬鹿正直に話す必要なんて何処にもないし、ダミ声野郎も楽しめたん(?)だし、別に問題ないだろ。
仕事で世界の境界を越えつつも、普段は普通(?)の高校生。これが、良くも悪くも今の俺の日常だ……
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