『GS美神IF』〜独白〜黒衣の除霊師
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破裂(深淵の蟻編)
「こんっのぉ、下等生物がぁっ!!」
「………………」
砂埃の舞う荒野で、相対する対照的な2人……
仁王立ちで怒り狂う女王と、その前に数メートル程隔てて立ちはだかる無骸。
俺や天狗殿は、それを更に十数メートルくらい後ろから眺めていた。
「邪魔だっ!消えろっ!!」
始めに動いたのは、女王。
俺へしたように右手を突き出すと、そのまま奴の怒りをそのまま乗せたような強烈な魔力波を放って来た。
人、1人を飲み込んでしまわんばかりの膨大な魔力の奔流。並の霊能者が喰らえば、そのまま塵となり得るだろう圧倒的な熱量。
それを無骸は……
「ぬっ……!?」
「………………」
女王の小さな呟きは、当然俺達の元へは聞こえない。ただ、そうに言った気がした。その顔に浮かび上がる、戸惑いの色によって……
「受けましたね」
「うむ……」
そう…無骸は、魔力波を受けた。
あの巨大な棍棒で防いだんじゃない。体の全てで受け切って見せた。棍棒を担いだまま、仁王立ちした状態で……
「このっ!」
「………………」
右手から、再び魔力波を放つ女王。
…………だが、無骸は動かない。再び全て受け切ったまま微動だにしなかった。
「あの鎧ですか?」
「いや、あれは風を操る為の補助具に過ぎん。奴は、自分で耐えておる」
…………なるほど。
奴は、彼の元で風だけでなく、霊的制御と耐久の上昇にも取り組んだわけか。
それなら、あの鬼面の力でより大きな力も吸収しても耐えられる。
ただ、それが今回どこまで生きるか……
「ちぃっ!」
そんな事を考えていると、魔力波では埒が明かないと踏んだ女王が一気に飛び掛かる。今度は、毒爪で蹴散らす気だ。
ガシャン!
それに合わせて無骸も動く。それまで担いていた棍棒を一気に振り抜く。毎度のことだが、体を上回らんばかりの巨大なそれを、奴は棒切れのように扱う。
「くっ……」
それを見て、瞬時にリーチの不利を悟った女王は、腕を止めると、体を反らし回避に回る。
ただ、無骸の方もそれでは終わらない。二振り、三振りと立て続けに振り回し女王を間合いに入れない。
一見すると、無骸が優位に見える。ただ、両者の目的は一致せず……
「糞っ!もういいっ!!」
まぁ、そうなるよな。
女王の本命は、あくまで俺。無骸を面倒と感じた女王は、翅で舞い上がると奴を無視して、俺の方へと襲い掛かって来た。
「ふっ……」
それと同時に俺も跳躍すると同時に黒翼を展開。再び上空へ………本当は、その場で迎え撃っても良かったんだが、天狗殿を巻き込むと面倒だ(いつまでノボセてんだよ?エロ親父)。
「はぁ~っ!!」
再び俺へ向かって咆哮する女王。だが、俺にその気は無かった。
「なっ……!?」
すれ違い様に聴こえる女王の戸惑う声。俺は、空中で軌道を捻じ曲げ女王をやり過ごすと、そのまま無骸の元へ。そして……
「無骸!」
ぱしっ……
「………………」
「使え。やり方は覚えてるだろ?」
何度も言うが返事はない。ただ、それに答えるように奴も受け取った文珠で宙に浮く。背中からは、霊気が濃紺の風を模したようなエフェクトになって漏れ出していた。それが翼を形作るように……
文珠で飛ぶ時は、使用者の背中にああ言った副産物が視覚的効果となって現れる。
ただ、それは使う人間によってまちまち。俺は黒の片翼。雪之丞なら、背から炎が噴き出してるような見た目になる。
「ぬぅっ!また、お前かっ!!」
再び俺と自分の間に割り込む無骸へ、苛立ちを募らせる女王。そこへ、地面へ降りた俺が更に追い討ちを掛ける。
「まず、そいつを倒せ!そうしたら、相手してやる」
「ぐぬっ……!!」
「………………」
さてと、お次は……
《念話》
“聞こえるか?武威”
“ああ!何か、面白いことになってんなぁ♪”
“そっちは、平気か?”
“問題ねぇ。それより、おっさんはどうした?”
“魅了攻撃喰らってダウンした”
“はぁ!?どういうこった??”
“……何でもない。彼は平気だ。それより、蟻を始末したら来ないでそこに居てくれ”
“えっ!?何でだよ?”
“女王が逃げるかもしれないだろ?そん時は、挟み撃ちにする”
“なるほど。じゃあ、無骸は勝てそうなんだな?”
“勝機はあるだろうが、何とも言えん。奴がヤバくなった場合も全員で一気に行くから、とにかく頼む。冰織にも文珠を渡しておいてくれ”
“了解。その時は合図をくれよ”
よし。これで、お膳立ては整った。だけど、どうなることやら……
奴の気持ちを汲み取ってアシストはしたが、女王は強敵。果たして倒せるか?そもそも、女王が馬鹿正直にやり合うだろうか?
女王の本領は、巣穴の奥で無限に卵を産み続けること。態勢の立て直そうと逃げる可能性は十分あるし、そっちの方が面倒だ。
そんな懸念を抱きつつも、上空では既に2人の戦闘が再開していた。展開は、始めと同じように無骸が棍を振って、女王が避ける。
言葉にすると、無骸が優勢のように見える……いや、優勢なのかもしれないが………
「泥試合かよ……」
半ば嘆息気味に呟く。
まぁ、何というか………どっちも飛ぶのが下手。
女王の飛び方が拙いのは、さっきも言ったが、それは無骸も一緒。奴もこの前、初めて飛んだばかりだしな。流れで(文珠を)渡しちまったが……しくったか?
とにかく棍を振り回すばかりで、まるで当たる気配がしねぇ。女王も女王で避けれはするけど、そこから反撃に移れてない。ある意味で失笑もんの膠着。でも……
「長引くのは……不味いな」
こんなことを言ってる間にも時間はどんどん過ぎるが、状況は全く変遷しない。
今の何となく有利な状況は、女王の体への不慣れと怒りによる平静の欠如。とちらも時間の経過と共に徐々に薄れる。
こりゃ、加勢した方がいいか……そう思って、雪之丞に合図を送ろうと思った矢先だった。
女王が距離を取った……!?加えて、そのまま体を反転。
「逃げる気……?いや、これは………」
背中を向けた女王を慌てたように追いすがる無骸。不味い…!
だが、俺がそんなことを思った所でこの距離じゃどうにもならない。逃げたように見せかけた女王は、更に反転。
そして……
「鬱陶しいわーーーっっ!!」
振り向き様に放つ極大魔力波。今までで一番強い。今度は、体をすっぽり飲み込まんとする程の魔力をカウンターでぶつけて来た。
それに完全に飲まれる無骸。いや、無骸が魔力に突っ込んだ形にも見えるが………死んだか?
パァアアアアンッッッ!!
悪い結果を覚悟した次の瞬間に聞こえて来たのは、風船が割れた時にでもなるような小気味の良い破裂音。ただ、風船に比べるとやたら生々しかった。
破裂しちまったよ………女王の体が……
そんな光景に呆気に取られていると、俺の頭に心境とは真逆の呆気らかんとした笑い声が響き渡る。
《念話》
“ギャハハハハハッ!綺麗に逝ったなぁ♪鴉”
“カウンターのカウンター……あの野郎、キャパが随分増えたな”
そう……無骸は、魔力波に飛び込んでやられた………と思われた瞬間に、棍を振り抜いて女王の横合いに叩き着けた。
勿論、ただ叩いたわけじゃない。これまで吸収した3発の魔力波を全て棍の一撃に凝縮して一気に放ったんだ。
向こうとしちゃ、殺ったと思った瞬間に真横から予想外の一撃が飛んで来たんだ。身構えることも……いや、気付くことも出来ずに逝ったかもな。
ただ……
“無事じゃ、済まなかったみてぇだな”
“3発は流石にな……”
当の本人は、ゆっくり着地すると、そのまま天狗殿がしたように膝を着く。見事に耐えはしたが、霊気回路に相当な負担を掛けたんだろう。特に最後のは、渾身の一発だったろうからな。
“そっちに行く。平気そうか?”
“霊気は安定してるから、大丈夫だろ。治してやるさ”
念話で、そう答えながら俺は無骸へ向けて歩き出した。
後書き
派手に登場させた割に女王の存在感……
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