| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

機動戦士ガンダム0102 Curse of Zeon (完結)

作者:ShAi
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第4章:因果の交錯

ネオ・ジオン残党の地下基地が灰燼に帰してから、
どれほどの時間が流れただろうか。
暗黒の宇宙を漂う、とある密航コロニーの片隅。
薄暗いコンテナ街の影に、不釣り合いなほど巨大な二つの影が潜んでいた。
一機は、全身を重装甲で固めた異形のMS『クシャトリヤ』。
そしてもう一機は、真紅の塗装を施されたあの「赤い彗星」の再来を思わせる機体——『シナンジュ』。
そのコックピットハッチが開かれた薄暗いデッキで、
二人の男女が対峙していた。
「ミネバを……オードリー・バーンを助けて! ネオ・ジオンの御輿に掲げられて、このまま大人たちの操り人形として死ぬなんて、あまりにも残酷よ! お願い、シャア……!」
必死に訴えかけるのは、栗色の短い髪に、神秘的なエメラルドグリーンの瞳を持った少女、メイファ・ギルボード。
彼女こそが、歴史の闇に隠された「本物のミネバ・ラオ・ザビ」であった。
彼女の隣には、相棒であるタクナ・新堂・アンダースンが、苦渋の表情で控えている。
メイファが縋るように見つめる先。
そこに立つ男は、背中まで届く美しい金髪を優雅に揺らし、静かに佇んでいた。キャスバル・レム・ダイクン。かつてシャア・アズナブルと呼ばれ、アクシズを地球へ落とそうとした、本物の総帥。シャアは、哀切に満ちたメイファの瞳を見つめ返し、静かに首を振った。
「ミネバ様……いや、ミイファ。私は一度、あの世界に、人類に完全に失望したのだ。偽物のフル・フロンタルが何をしようと、今の私には関係のないこと。……すまないが、私は君だけの盾にしか、なれそうにない」
冷徹な拒絶。シャアの心は、かつての戦いの中で凍りついたままだった。しかし、その瞬間…

……きらきら……。

重力のないデッキの空間に、突如として緑色の、温かくも幻想的な光の粒子が舞い踊った。
サイコフレームの共振。あり得ざる光の輝きの中に、
シャアの脳裏へ、懐かしくも忌々しい「あの男」の声が直接流れ込んでくる。
『相変わらず、器の小さい男だな、シャア』
「……アムロ!? アムロ・レイか!」
シャアの美しい顔が、驚愕と不快感で歪む。
『まだ残党ネオ・ジオンを率いていたあのフル・フロンタルの方が、まだ器が大きかったんじゃないか?
  彼は少なくとも、自らの役割を演じきろうとしていたぞ』
「黙れアムロ! 私に、またあの泥沼の舞台へ戻れと言うのか! あの時、私と貴様が命を懸けて見た光は、人類を何も変えなかったのだぞ!」
空間に向かって、怒りを露わにするシャア。
それを見つめるメイファとタクナは、ただ事ならぬプレッシャーに息を呑む。
さらに、緑の光の中から、もう一つの優しく、すべてを包み込むような女性の声が響いた。
『子供が道からそれたら、それを正しい道へ戻してあげるのが、大人の役目ですよ、大佐。貴方はまた、その義務を放棄するのですか?』
「ララァ……っ。君まで私を責めるのか……!」
二人の偉大な魂からの痛烈な皮肉と諭しシャアは頭を抱え、
しばらく苦悶の表情を浮かべていたが、
やがてフッと自嘲気味な笑みを漏らした。
金髪を乱暴にかき上げ、彼はため息をつく。
「ええぃ! 気が変わりました、いきましょう。メガラニカへ!」
シャアは踵を返し、真紅のシナンジュを見上げた。
その瞳には、かつての鋭い光が戻っていた。
「子供たちにツケを払わせたまま、私だけが眠るわけにはいかん。
 大人の義務、というやつを果たしに行かねばな。
 ……キャスバル・レム・ダイクン、シナンジュ、出るぞ!」
その頃。
インダストリアル7の巨大建造物『メガラニカ』の内部では、すでに別の「因縁」が爆発しようとしていた。
ドックの片隅、激しく損傷しておりトリコロールのガンダムが鎮座している。
白銀の髪を振り乱し、返り血で汚れた衣服をまとったウィンが、一人の少女に冷酷な銃口を向けていた。
「君が……ミネバ・ザビだな」
銃口の先にいるのは、オードリー・バーン。かつて残党ネオ・ジオンの象徴として祭りたてられ、宇宙世紀憲章の真実を全世界に放送したミネバ・ザビだった。
「やめろ! オードリーには指一本触れさせない!」
その前に封印をといた白き一角獣で駆けつけたのはバナージ・リンクスだった。
ウィンは表情一つ変えず、背後に控えるRX-78-2 ガンダムへと飛び乗る。
バナージもまた、白い可能性の獣『ユニコーンガンダム』にて対峙する。
「邪魔をするなら、お前もあの研究員どもと同じように、ただのパーツにしてやる……!」
ウィンの駆るRX-78-2が、驚異的な速度でユニコーンに襲いかかる。
オールドタイプであるはずのウィンの動き。
ウィンは過去に強化人間の手術をうけていた。
術後、感応波を感じるなどその才が育つことはなかった。
しかし、ネオ・ジオンの研究員の一言がトリガーとなり、
バナージを凌駕する感応波、空間把握能力を得たのだ…。
そうたった一言…。パーツという言葉がウィンを変えてしまったのだ。
またコックピットに眠る「姉の脳」は、ユニコーンの放つ微かなサイコウェーブを完全に逆探知していた。
『う、あああああああッ!!』
ユニコーンガンダムが、ウィンが放つ圧倒的な「殺意」と「憎悪」を感知し、システムを強制駆動した。
装甲が展開し、内部のサイコフレームが不気味な赤色に発光する。敵の感応波を『デストロイモード』への変身。
しかし、今のバナージには、暴走するユニコーンを押さえつけるだけで精一杯だった。
「止まれ! 止まってくれ、ユニコーン!!
 俺達は戦いにきたわけじゃない!わかり合うためにきたんだ!」
「無駄だ!!」
ウィンはその隙を見逃さなかった。完璧な先読み。RX-78-2はユニコーンの懐へと滑り込み、ビーム・サーベルをバナージのコックピット目がけて凪払う。
その時、ウィンの意思とは関係なく操縦桿が僅かにうごいた。
そのせいで狙いとはかけはなれたユニコーンの両足をなぎ払い切断した。バナージの、事実上の敗北だった。
「バナージ! 大丈夫ですか!?」
オードリーが悲痛な叫びを上げる。
「ああ……っ! それよりも逃げろ、オードリー!」
バナージが叫ぶが、ユニコーンにはもう動く力は残されていない。
ウィンはRX-78-2の巨大なマニピュレーターでオードリーの進路を塞ぎ、冷徹にビーム・サーベルを構えた。
「これで終わりだ、ザビ家……!」
引き下ろされる光の刃。
その絶体絶命の瞬間、メガラニカの天井を突き破り、一隻の高速シャトルと、それを護衛する真紅のモビルスーツが乱入してきた。
『そこまでです!』
全域通信に響き渡ったのは、凛とした、だがどこか悲しげな女性の声。
シャトルのハッチから身を乗り出したメイファが、ウィンの登場するRX78-2へ向けて叫ぶ。
『あの女性は影武者です! ザビ家の血を引く真のミネバ・ラオ・ザビは……この私です!今から証明しましょう!』
「何……!?」
ウィンの動きが止まる。
そして、真紅のシナンジュのコックピットから、一人の男が身を乗り出した。バイザーを外し、背中まで流れる金髪の素顔を晒す。
『久しぶりだな、ジオンの残党たちよ。……いや、我が不甲斐なき子供たちよ、と言うべきか』
その伝説の姿、声。
それを見たオードリー・バーンは、頭を激しい激痛が襲うのを感じた。彼女の脳内に施されていた「自分こそが本物のミネバである」という対話型強化人間の暗示が、本物のシャアの登場によって、ガラスのように脆く、粉々に砕け散った。
「私は……影武者……? 偽物……。私のために、私のせいで、こんなにたくさんの人が……ごめんなさい、マリーダ……!」
己の存在意義を失ったオードリーは、その場に崩れ落ち、涙を流した。
だが、白銀の髪の修羅となったウィンには、そんな真実など、もはやどうでもよかった。彼の心にある憎悪の炎は、対象が本物だろうが偽物だろうが、消えることはない。
操縦桿をへし折らんばかりに握り締め、ウィンはメガラニカ全体に響き渡る声で狂ったように笑い、叫んだ。
「関係ない……! 殺す人間が一人増えただけだ! ネオ・ジオン軍モルモット隊、ウィン、RX-78-2ガンダム……全てを、全てを滅ぼす!!」
狂気と憎悪の塊となったガンダムが、シナンジュに向かってビーム・サーベルを構える。
シャアは静かにコックピットへ戻り、メイファの乗るシャトルを背後に庇うようにして、機体を一歩前へと進めた。
「……呪いの元凶は、我が家なのかもな。少年、君の怨念、私が引き受けよう」
ついに、すべての因縁が激突する、最後の決戦の幕が上がる。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧