機動戦士ガンダム0102 Curse of Zeon (完結)
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第3章:狂気の告白と復讐の業火
硝煙の漂う暗黒の宇宙から、RX-78-2 ガンダムは帰還した。ドックへ着艦した瞬間、ウィンはコックピットから転がり落ちるようにして外へ出た。
嘔吐感が這い上がり、冷たい床に両手をついて激しく息を荒くする。
自分の意思とは無関係に動き、親友を正確に屠った白い鋼鉄の塊。
その機体を見上げることすら、今のウィンには恐ろしかった。
「説明しろ……説明してくれ!!」
ウィンは包帯だらけの体で研究班の作戦室へと怒鳴り込んだ。
デスクにいたあの白衣の男は、ウィンの姿を見るなり、椅子から飛び上がって両手を広げた。
その顔には、狂気的な歓喜の笑みが張り付いている。
「素晴らしい! 素晴らしいよ、ウィンくん!
一年戦争の遺物が、最新鋭のニュータイプ専用機を圧倒するなんて!
私の理論は正しかった、サイコミュの新たな地平が開かれたんだ!」
「ふざけるな!」
ウィンは研究員の胸ぐらを掴み、壁に叩きつけた。
「あの機体は勝手に動いた! 僕の操作を無視して、バードを……僕の友達を殺したんだ! あれは一体何なんだ! 答えろ!!」
研究員は痛みに顔を歪めるどころか、
ウィンの怒りを楽しそうに見つめ、
くつくつと喉を鳴らした。
「ひゃはは、怒るなよ。君を守ったんじゃないか。
……知りたいかね? あのガンダムがなぜ、
君の危機にそれほど完璧な反応を示したのか。
なぜ、君のオールドタイプの脳に、あれほどの生理的嫌悪感をもたらしたのか」
研究員はウィンの手を冷酷に振り払うと、
眼鏡の位置を直しながら、至上の歓喜に満ちた声で告白した。
「あの機体にはね……君のお姉さんの脳ミソが、
補助パーツとしてサイコミュと連動させられているんだからね!」
「……は?」
ウィンの思考が停止した。男が何を言っているのか、
脳が理解を拒絶した。
「延命治療と称して、私たちは彼女の脳を摘出し、
RX-78-2の生体演算ユニットとして組み込んだのだよ。
彼女にね、『こんな私でも、弟の命を守る盾になれる』と伝えたら、彼女は涙を流して喜んでねぇ!
君を守れるならと、自ら進んでその脳を提供してくれたんだぞ! 素晴らしい姉の愛じゃないか!」
研究員の言葉が、ウィンの鼓膜を、神経を、魂を、
容赦なくズタズタに切り裂いていく。
姉を救うために、この地獄で血を流してきた。その姉は、
とっくに殺され、あの白い怪物の肉体に、
部品として組み込まれていた。
「あ、あ……」ガタガタと震え、下を向くウィンの口から、
掠れた声が漏れる。
「そうか……ジャンの、妹も……」
「ジャン? ……ああ、あの足のないゴミか」
研究員は興味なさそうに鼻で笑った。
「あれは失敗作だな。やはり幼すぎるパーツは、
精神の変調が激しくて使い物にならん。
すぐに生ゴミとして処分——」
『パーツ』
その言葉が、ウィンの中で完全に引き金を引いた。
「ああああああああああああああああああッ!!!」
世界が反転した。姉の無垢な愛は、ウィンにとって世界で最も重く、最も昏い、逃れられない『呪い』へと変わった。
仲間を失い、自分の姉に親友を殺させてしまったというあまりのストレス。
その絶望の臨界点で、ウィンの頭髪から色が抜け落ちていく。黒かった髪が一瞬にして、凍りついたような「白銀」へと完全に変貌を払った。その瞬間、ウィンに亡くなった友達の声が頭に…いや、魂に刻み込まれていく。
『痛い…痛い…』
『暗い…だしてくれ…』
『ウィン…悔しいぜ…』
最後は人懐っこくよくウィンの端末を使ってた友人の声だ…。
「ヒッ、な、なんだその髪は……!?」
研究員が怯えた声を出すより早く、ウィンは傍らにあった重い鉄製の工具を掴んでいた。
「…死んじゃえよ…」
感情の消えた声とともに、ウィンは工具を研究員の顔面に叩きつけた。
肉の潰れる嫌な音が響く。
ウィンは叫びもしなかった。
ただ、人形のように、狂ったように、工具を握り締めた右腕を何度も、何度も、何度も振り下ろした。
返り血がウィンの顔を、白い髪を、衣服を赤く染め上げていく。
男の頭部が完全に原形を留めなくなるまで、
ウィンは殴り続けた。返り血に塗れた修羅となったウィンは、ふらふらとドックへ戻り、再びガンダムのコックピットへ乗り込んだ。
もはや嫌悪感はない。あるのは、すべてを焼き尽くすという昏い炎だけだ。
「…行こう、姉さん…」
液晶が赤く染まる。ウィンが操縦桿を前に押し倒すと、
ガンダムは咆哮を上げるようにジェネレーターを鳴らした。RX-78-2は、基地の内部に向けてビーム・ライフルを乱射し、ビーム・サーベルで隔壁を切り裂いた。
誘爆が次々と起こり、モルモットたちの地獄だった地下基地が、内側から激しく崩壊していく。
逃げ惑う他の研究員や残党兵を、ウィンはガンダムの足で踏み潰し、火の海へと変えていった。
燃え盛る基地の残骸から、宇宙へと這い出てくる白いガンダム。
背後で、残党基地が巨大な光球となって完全に爆破・壊滅する。
ウィンは白銀の髪を振り乱し、血の涙を流しながら、宇宙の虚空に向けて絶叫した。
「ジオンさえ……ザビ家さえいなければ、姉さんも、ジャンも、バードも、誰もこんな目に遭わなかったんだ……!!」
ウィンの目に、狂気と憎悪の光が宿る。
「ミネバ・ザビを殺す……! ジオンの呪いをこの手で、消し炭にしてやる!!」
姉の脳を宿したガンダムと共に、少年は復讐の旅路へと就いた。その向け先が、歴史の表舞台に現れようとしている「ザビ家の遺児」であることを、まだ誰も知らない。
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