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機動戦士ガンダム0102 Curse of Zeon (完結)

作者:ShAi
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第2章:白き怪物の目覚め

あの激戦から数日後。
ボロボロになった地下基地のドックは、重苦しい静寂と、
死臭の残滓に包まれていた。ウィンは生き残った。
だが、生き残った喜びなど微塵もない。
目を閉じれば、爆散したジャンの機体とあの断末魔の告白が、
呪いのように脳裏を駆け巡る。
手足のない仲間たちの笑い声が響いていた待機室は、
今はただの、冷たい空洞だった。

そんな絶望の底にある基地へ、再び破滅の警報が鳴り響いた。
『敵襲! 連邦軍のモビルスーツ一機が、防衛線を単騎で突破!
 本基地へ接近中!』「単騎……? まさか、バードか……!」
ウィンは弾かれたように立ち上がった。
あいつはまだ、僕らを殺し足りないというのか。
出撃するため、包帯だらけの体を引きずってハッチへと向かう。
しかし、ドックに到着したウィンを待っていたのは、無惨な現実だった。
先の戦闘で基地の戦力は壊滅。
ウィンが乗るべきザクⅢ改も、もはや修理不可能な鉄屑と化していた。
「乗る機体がない……? なら、僕はどうやって戦えばいいんだ!」
叫ぶウィン。その背後から、
あの薄汚れた白衣を着た研究員が、不気味な笑みを浮かべて近づいてきた。
「ひゃはは! 安心したまえ、ウィンくん。
 君には特別な『最新鋭機』を用意してある。
 ……いや、歴史的な遺物、と言った方が正しいかな?」
研究員が指さした先。重厚な遮蔽壁がゆっくりと左右に開いていく。
その奥から姿を現したモビルスーツを見た瞬間、ウィンは言葉を失った。
白、青、赤のトリコロール。額に輝く黄色のV字アンテナ。
それは、かつて一年戦争でジオン公国を恐怖のどん底に叩き落とし、
歴史を決定づけた伝説の機体——『RX-78-2 ガンダム』の回収機だった。
「ガンダム……だと? なんで、ジオンの残党である僕らが、
こんな連邦の骨董品に乗らなきゃならないんだ!」
「贅沢を言うな。動く機体はこれしかない。さあ、早く乗りたまえ!」
ウィンは忌々しげに吐き捨て、コックピットへ飛び乗った。
「こんな骨董品で戦えってか……。モルモットから、
神に捧げられる(スケープゴート)にクラスチェンジか……?」
だが、リニア・シートに深く腰掛けた瞬間、
ウィンは全身に猛烈な鳥肌が立つのを感じた。
「な、んだ……これ……?」オールドタイプであるウィンには、
宇宙世紀の最新技術である「サイコミュ」や「感応」など、
何も感じられないはずだった。しかし、このコックピットは何かが異常だった。
全天周囲モニターが駆動するより早く、シートを通じて、
コックピットの壁面全体が、まるで生き物の心臓のようにドクドクと脈打つような、
おぞましい生理的嫌悪感がウィンを襲う。
ウィンが恐怖に耐えながら操縦桿に手を触れた、
その瞬間。——ピピピッ! 全モニターが突如として鮮血のような『赤色』に変転する。
「うわあああ!? なんだ、勝手に動いて——」
システムがウィンの操作を完全に無視し、機体が自動で駆動を始めた。
操縦桿を握るウィンの手には、何も力が入っていない。
それなのに、アクセルを踏み込んだわけでもないのに、
ジェネレーターの出力が限界近くまで跳ね上がり、
背筋が凍るような激しい駆動音がコックピット内に鳴り響く。
強制的にカタパルトへと固定されたガンダムは、ウィンの制止を振り切り、
暗黒の宇宙空間へと射出された。星の海へ飛び出した白い怪物の前に、
その「敵」は待ち構えていた。連邦軍の最新鋭モビルスーツ。
そのコックピットから、バードの通信が繋がる。
だが、その声に先日のような迷いはなかった。
『ウィン……やはり生きていたか。
だが、もうお前を説得する時間は残されていない』
バードの声は震えていた。ニュータイプとして世界の真実に触れ、
このジオン残党基地の底に眠る「本当の狂気」を察知してしまった親友の、
引き裂かれそうな悲痛な叫び。
『お前がその機体に乗って出てきたことが、何よりの証拠だ……!
頼むから、これ以上何も知るな! 事実を知る前に、この俺の手であの世に送ってやるのが、せめてもの慰めだ!!』
バードの殺意が、空間をビリビリと震わせるプレッシャーとなって押し寄せる。
「何を言っている! 訳の分からないことを言うな、バード!!」ウィンが叫び、
操縦桿を引こうとした。しかし、ガンダムはウィンの意思を完全に無視した。
——カツン。バードの放った純粋な「殺意」。
それに反応したかのように、RX-78-2の駆動システムが異常なまでの超反応を示した。
それは、パイロットであるウィンの反射神経を遥かに超越した動きだった。
ガンダムはトップスピードで突進すると、バードの最新鋭機が放ったビームライフルを、
紙一重の最小限の動作で回避。それどころか、バードが次に動くであろう未来の軌道を
完璧に先読みしていた。『な……バカな!? オールドタイプの動きじゃない
……まさか、その機体の中身は——』バードの驚愕の通信。
それが彼の最後の言葉となった。
ガンダムは、バードの死角へと冷酷に、完璧に回り込んでいた。
引き抜かれるビーム・サーベル。
高熱の光刃が、バードの機体のコックピットを、一切の躊躇なく正確に貫いた。
ズガァァァァァン!!宇宙の闇に、ひときわ大きな光の球が弾ける。
幼馴染みであり、唯一の親友だったバードの命が、
ウィン自身の操る(……はずの)ガンダムの手によって、一瞬で消滅させられた。
「あ……ああ……」爆発の光が、赤いコックピットを白く照らす。
ウィンは操縦桿を握ったまま、ただガタガタと震えていた。
自分が殺した。いや、この機体が殺した。
「ああああああああああああーーーッ!!」
親友をその手で葬ってしまった絶望と、
意志を持ったように動く白い怪物への恐怖が混ざり合い、
ウィンの絶叫が、無人のコックピットに虚しく響き渡り続けた。 
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