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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第二十四章 地獄の共鳴

 
前書き
逃げ場のない戦場で、友は互いに刃を向けていた。
 

 
終わらせるべき過去と、守るべき未来。

──逃げ場のない戦場で、友は互いに刃を向け合っていた。





オビトの一撃がカカシを吹き飛ばす。

カカシは受け身を取るも、積み重なった損耗に膝をついた。

「大丈夫か!カカシ!」

カカシは肩を上下させ、オビトを見つめる。
ガイも肩で息をしていた。

オビトは二人を見据え、静かに告げる。

「もういい……カカシ。
お前は俺への後ろめたさから、本気を出すことができない」

彼の言葉通り、カカシの攻撃は迷いに揺れていた。

「オビト、お前はまだ戻れる。昔の自分をもう一度……」

「……俺を改心でもさせるつもりか?
一つ言っておく。俺が戦争を起こした理由がお前とリンの事だけだと思っているなら見当違いもいいところだ」

「!?」

「俺は全部知っている。リンが自らお前の雷切に突っ込み、己で死を選んだことを。
だが、たとえお前がどう言おうとリンを守れなかったお前は偽物だ」

カカシは視線を落とす。オビトの言葉が過去の傷を抉っていた。

「こんな状況ばかりを作ってきた忍のシステム、里……そして忍達。
俺が本当に絶望したのはこの世界そのもの、この偽物の世界にだ。
お前も俺とリンの墓の前でずっと苦しんでいるだろう。
もう……好きなものを望め。
幻術の世界では全て手に入る。お前の心の穴もすぐに埋められる」

カカシはその誘惑を振り払うように声を上げる。

「そんなもので本気で心が埋まると思っているのか?
生きていたリンの思い出まで消すなよ!
リンは命をかけて里を守り、残そうとしたんだ!
妄想で……心の穴が埋まるわけがない……!」

「……きれい事をグダグダと……時間の無駄だな」

オビトは再び構えた。
ガイはカカシを庇うように前に立つ。

すると、カカシはガイの肩を掴んだ。

「カカシ……?」

「俺がやる……かつてのオビトを守るためにしてやれる事は……今のあいつを殺すことだ!!」

その言葉と同時に、カカシとオビトは地を蹴り上げた。

雷を纏ったカカシのクナイ、オビトの黒い杭が同時にお互いの胸をつく。

「ぐうっ……!」 

「……終わりだよ……オビト」

二人が後ろへ飛び退くと互いの血飛沫が舞い散り、オビトの口元からは鮮血が溢れ出した。

「……この戦いは……お前の勝ちでいい……だが、戦争の勝ちは譲らん!!」

オビトは血にまみれたまま空間を歪め、姿を消していったのだった。




──戦場


そこは、一瞬の静寂に包まれていた。

マダラの両目がないことに気がついたナルトとサスケは、同時に動き出す。

それは、最大の好機──

「行くぞ!!」

二人の爆発的な踏み込みに、地面が砕ける。

ナルトは九喇嘛のチャクラを身体に纏わせ、サスケは須佐能乎の弓を引き絞った。

拳と弓が同時にマダラへと向かって行く。

しかしマダラは瞼を閉じ、両腕を組んだまま堂々と佇んでいる。

攻撃が届く──その刹那

マダラの口から、迸る熱波の衝撃が二人の身体と攻撃を同時に弾き飛ばした。

「うわっ!!」

「!?」

咄嗟に受け身を取った二人の足元から、土埃が舞う。

彼らの表情には驚愕が張り付いていた。

「見えぬとでも思ったか?」

マダラの冷徹な声が響く。

「この世に存在する全ての(ことわり)
その肌に焼き付く感覚こそが……今の俺の眼だ」

マダラが一歩、ゆっくりと踏み出した。

それだけで空気が重く沈み、戦場が軋む。


うちはマダラ。


桁違いの存在が場を圧していた。




──その戦場の片隅


サクラといのがミズノの治療を続けていた。

「脈は……正常に戻った」

サクラが診断を下すも、その表情は曇ったまま。

横たえられたミズノは微動だにせず、身体と地面には血の跡が痛々しく残されていた。




その姿は、ある男にとって
この世で最も目を背けたい地獄──




不意に空間が渦を巻き、異質な風が吹き抜けた。

時空間から、傷だらけのオビトが転がり出る。

顔を上げた彼の視線は、すぐさま一点に縫い止められた。



──血溜まりの中に横たわる少女。



オビトの心臓が嫌な音を立てる。

視界が歪んだ。

乾いた息が喉をかすめ、時が巻き戻っていく。


あの日の絶望。


「……あ……」

掠れた声と同時に、二つの光景が完全に重なった。

マダラはオビトの反応を見逃さず、口元を歪める。

「これは……奇妙な偶然だな。オビト」

悪魔の言葉がオビトの鼓膜を揺らした。

「その器は使い物にならなくなったから捨てた。
……お前もそろそろ用済みだな」

オビトの瞳孔が拡がっていく。

彼にとって、マダラの声はもう意味をなさない。

彼の脳内では、現実と過去が溶け合っていた。


ミズノの姿に完全にリンが重なる。


誰かを犠牲にする。

それが、この世界のやり方。

この世界は何も変わらない。


ただ繰り返す──地獄を。


オビトの眼から光が消え、底知れぬ闇が湧き上がる。

彼の両手がゆっくりと動き始めた。

「!!」

何かに気がついたマダラが印を結び、オビトの半身へ黒い杭を打ち込む。

「ぐああっ!」

(くっ………リン……)

「うおおおおお!!」

オビトが渾身の力を込め、印を結ぶ。


その瞬間──


十尾の肉体がうねり始めた。

「!!」

マダラの表情が変わる。

本来なら、自分が十尾を取り込むはずだった。

だが──オビトがそれを奪おうとしている。

「貴様!!」

マダラが杭をさらに打ち込み、チャクラで操ろうとした。


その時──

黄色い光が、オビトの目の前に現れる。



──飛雷神の術



ミナトのクナイがオビトを一閃した。


「せん……せい……」


「……!!」

その顔を見た瞬間、ミナトは言葉を失った。

「オビト……お前……だったのか」

「…………」

オビトは何も答えない。

そのままゆっくりと地へ倒れ伏していった。


「飛雷神のマーキングは決して消えない。
それは教えてなかったね……オビト……」

ミナトの表情に悲しみが滲む。

「生きていたなら……火影になって欲しかった。
なぜ……」

ミナトは伏せたまなざしの奥に、言葉にならない悔恨を沈めるようにオビトを見つめていた。



「……あんたはいつも遅すぎるんだ……」



「!!」

切り伏せたはずの彼の口から言葉が漏れ出す。
その言葉と同時に、十尾がオビトの身体へと完全に吸い込まれていった。

圧倒的なチャクラの質量が大地を砕き、空気を巻き込む。

その勢いに吹き飛ばされそうになったミナトを、ナルトがチャクラの手で掴んだ。

「マダラに操られるのを振り払って、こいつは最初からこれになる為に印を結んでたんだ……!」

「まさか……」

「十尾の……人柱力だってばよ!!」


オビトの姿が完全に変貌していく。


──十尾の人柱力



凄まじい余波が戦場を薙ぎ払おうとした──その時


大地を這い、空を覆い、暴走する衝撃の前に立ちはだかる巨大な砂の壁が現れた。

砂の壁が音もなくほどけ、その中心に五つの影。

「……これ以上、犠牲を増やすわけにはいかない!」

我愛羅の低い声が戦場の空気を引き締めた。

五影は言葉を交わすことなく、それぞれの役割へと散開していく。

綱手は視線だけで状況を掴み取り、サクラたちの元へと歩み出す。

「サクラ、いの……よくやった」

「綱手様!」

綱手は短く頷くと、すでに次の動作に移っていた。

ミズノの額に手を当て迷いなくチャクラを注ぎ込むと、彼女の傷ついた神経が素早く修復されていく。

やがて──

ミズノの瞼が、ゆっくりと開いた。


「ミズノさん!!」

「よかった……!」

サクラ達の安堵の声。

その声が届き、サスケが振り返る。

ゆっくりと身体を起こすミズノの姿が見えた。

「……」

サスケは小さく左手に力を込める。
そして、何事もなかったかのように視線をマダラへと戻した。


ミズノはサクラ達へ礼を告げると、戦場を見渡す。


十尾の人柱力となり、暴走するオビト。

自身の肉体で完全に復活したマダラ。

歴代火影と五影達がそれぞれの覚悟を胸に、戦場へと身を投じている姿。

(こんなことが許されるはずがない……
同じうちはとして……終わらせる)

その只中で──

マダラの意識が、ゆっくりと二人のうちはへと向けられた。

「ちょうど良い。俺の眼が戻ってくるまでの間、お前達どちらかの眼をもらうとしよう……」

「!!」

ナルトが反応する。

「てめェ……!」

「ナルト君!!」

ミズノが叫ぶ。

「ナルト君とみんなはオビトを!!私とサスケがマダラを止める!」

ミズノは力強く立ち上がり、マダラを見据えるサスケの隣へと並んだ。

ナルトは二人の背をしばらく見つめると、拳を握りしめた。

「……わかった。あっちはオレたちに任せろ!」

そう言い切ると、ナルトは視線をオビトへと切り替える。


──迷いは断ち切られた。


ナルトは地を蹴り、仲間たちとともにオビトへと向かっていく。

その姿を見送ると、サスケは隣に立つミズノへと一瞬だけ顔を向けた。

ミズノは小さく頷く。

二人は同時にマダラへと向き直り、その瞼を強く閉じた。


再び瞼が開かれた時──
二対の万華鏡が鮮烈な光を放つ。


その膨大なチャクラに周囲の空気がビリビリと震え始めた。

盲目のマダラですら、肌を刺すその瞳力の強さを感じ取る。

「いくよ、サスケ」

「ああ……」

二人の姿が同時に掻き消えた。

ミズノが疾走しながら、素早く印を結ぶ。

サスケは万華鏡でその動きを捉え、瞬時に意図を理解する。

千鳥を迸らせ、鋭い鳴き声でマダラの注意を引きつけた。


マダラの意識がサスケへと引き寄せられる──


「木遁・修羅炎爆樹!!」

マダラの足元めがけ、無数の赤黒い蕾を持つ木の枝が一気に地面を這う。

生き物のようにうごめきながら、マダラの身体へと絡みついていった。


ミズノが手を打ち鳴らすと同時に、サスケの目が鋭く見開かれる。


「天照!」


マダラを包囲していた無数の蕾が、一斉に大爆発を起こした。

ミズノの術が最上の燃料となり、サスケが放った黒炎が膨れ上がったのだ。


その様子を傍観していた大蛇丸が目を細め、口元を愉悦に歪める。

「やはり……血は争えないわね。
二人揃って、さすがはうちはと言ったところかしら」

大蛇丸の隣にいた香燐は、言葉を失っていた。

圧倒的な二人の戦いに魅入られ、ただ立ち尽くしたまま視線を奪われている。



二人の力が混ざり合い、全てを焼き尽くす灼熱の渦がマダラを完全に飲み込んだ──かに思えた。

灼熱の渦の中心で、青いチャクラが浮かび上がる。
それは、サスケとミズノの連携を防いでいた。

「なっ……!?」

「眼がないのに……須佐能乎を!?」

驚愕する二人の前で、マダラは印を結び終えている。

マダラが息を吸い込んだ。

吐き出されたのは、炎の海。
視界そのものを塗りつぶす火炎が一気に押し寄せた。

退こうとした瞬間──マダラの一撃が二人を捉え、岩壁へと叩きつける。

「ぐっ……!」

瓦礫が散り、二人は同時に苦悶の声を漏らす。

「届かんな。お前たちは俺の“影”すら踏めん」

彼の身体には傷一つない。その絶望的なまでの実力差。

「……っ」

ミズノは瓦礫の中で膝をつき、荒い呼吸を必死に整えていた。


──その時、温かい力に腕を引かれる。


「サスケ……」

彼の手がゆっくりとミズノを引き起こす。

「……ありがとう」

「行くぞ」

サスケは一瞬だけミズノと視線を合わせる。

短い言葉。
けれど、それで十分だった。

二人はふたたび並び立ち、マダラを見据える。

「……やはり、うちはの血は争いの中でこそ輝くか」

「……」

二人は答えない。
ただ、刺すような視線をマダラへと注ぐ。


ミズノ達とは対照的に、マダラは同族である若い二人が自分に牙を剥くその状況すらも楽しんでいるようだった。





──その側では


ナルトたちが、オビトへ向かっていた。

オビトは十尾をコントロールできずに、蛇のような姿へと変貌している。

「十尾を……引きずり出すってばよ!!」


九喇嘛のチャクラがナルトを包み込む。





──戦いは二つの戦場に分かれ、互いに地獄を呼び合っていた。
 
 

 
後書き
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

感情的にとても重い場面なので、
書いていて何度も手が止まりました。

次章からは戦場が完全に分かれ、それぞれの戦いが本格化していきます。 
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