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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第二十一章 厄災の宿り樹

 
前書き
※本章には、男性キャラクター(マダラ)が女性主人公に憑依する展開(TS/精神的性転換)や、流血などの痛々しい表現が含まれます。
苦手な方はご注意ください!

──彼女の身体が最悪の敵の『器』となった。


大蛇丸の手により穢土転生された歴代火影たち。

サスケは彼らに「里とは何か、忍とは何か」を問いかける。

先代から語られる、うちはと千手の因縁と歴史。

戦場では絶望がその姿を表していた。
 

 
彼女の身体が、最悪の敵の『器』となった。
その残酷な真実を知った時、彼の心には何が宿るのか。
 
絶望の戦場にかつての英雄たちが今、呼び戻されようとしていた。
 
 
 
──木ノ葉隠れの里、その最深部
 
 
 
うちは一族の聖域である南賀ノ神社の地下には、冷えた空気が満ちていた。
 
「始めるわよ……少し離れてなさい……」
 
大蛇丸が“死神の面”を顔に当てる。
 
──刹那
 
彼の背後に巨大な死神の虚像が揺らめく。
大蛇丸は自らを人柱とし、鋭利な刃で死神の腹を切り裂いた。
 
放たれたのは歴代火影の魂と、かつて奪われた自身の両腕。
 
 
「重吾、サスケ、水月……準備なさい!」
 
その声を合図に重吾がサスケの身体に手をかざした。
サスケの身体から潜伏していたゼツたちが引きずり出される。
 
「くそ……何で!」
 
両腕を取り戻した大蛇丸は術を放ち、喚き散らす彼らを容赦なく捕らえていった。
 
「穢土転生の術!!」
 
ゼツたちは生贄として、泥のように術に呑み込まれていく。
 
彼らの断末魔が響き渡った。
 
「さぁ、来るわよ!!全てを知るもの達……先代の火影たちが」
 
沈黙が訪れた地下室に、忍の歴史そのものが並び立つ。
 
初代・千手柱間、二代目・千手扉間、三代目・猿飛ヒルゼン、そして四代目・波風ミナト。
 
蘇った伝説たちの圧倒的な威圧感が地下室を支配するが、その均衡を真っ先に破ったのは扉間だった。
 
「また大蛇丸とかいう忍か……!!」
 
「どういうことだ?」
 
柱間が問うとヒルゼンが答える。
 
「おそらく我々を死神から解き放ち、そしてそのあと穢土転生を……」
 
彼らが状況を分析する中、大蛇丸は話し合いの場を設けただけだと話す。
 
そして、サスケが口を開いた。
 
「……俺はうちはサスケ。あんた達火影に聞きたいことがある」
 
その瞳は里の英雄たちを前に、微塵も怯んでいない。
 
目の前の忍がサスケだと知るとヒルゼンは驚き、扉間は蔑むような視線と言葉を向けた。
 
空気がピンと張り詰める。
 
柱間が庇うように扉間を叱咤するも、サスケは気にする様子もなかった。
 
「俺のことはいい。三代目、なぜイタチにあんなことを……」
 
低く、抑えられた声。
 
しかしその静寂の奥底には、溜め込まれた激情が隠しきれずに渦巻いている。
 
ヒルゼンはすぐには答えられず、眉を寄せた。
 
「そしてもう一つ……なぜミズノの存在を隠していた」
 
サスケの黒い瞳が、真っ直ぐにヒルゼンを射抜いている。
 
ヒルゼンは短く息を吐き、サスケを見つめ返した。
 
「……もう、全て知っておるようじゃな。
わしは、二人に背負わせてはならぬものを……背負わせた」
 
当時の火影として、彼は真実を一つずつ解き明かしていく。
 
「イタチは同胞を全て抹殺し、反乱を止め、それに繋がる戦争を一人で食い止めた。その後”暁”にスパイとして入り込んでまで里を守った。
わしにお前を里で守る事を条件に出してな」
 
「やはり……そうか……」
 
サスケはどこか否定したかったかのように、視線を逸らした。
 
ヒルゼンは続ける。
 
「ミズノはあの日……わしの元へ助けを求めにきたのじゃ。
その時、偶然にもダンゾウとわしの会話から真実を知ってしまった」
 
その声は、どこか苦渋を含んでいた。
 
「わしはミズノに、イタチの真実を他言しないよう誓わせた。
そして、イタチのような後ろ盾を持たぬミズノが生きていると知られれば、すぐにダンゾウ達に命を狙われる。それを防ぐために、名と姿を偽らせた」
 
サスケは口を閉じ、もう一つの真実に耳を傾けている。
 
「ミズノは“やかぜラン”として再びアカデミーへ入学した。
その後は暗部で任務を遂行しながらお前を見守り、イタチを救いたいと……動いていた」
 
「……」
 
サスケの表情には、抑えきれない怒りと痛みが滲んだ。
 
「あんたは二人を……自分の保身の為に利用した」
 
ヒルゼンが目を閉じ、重い沈黙が場を支配する。
 
二人の献身。
 
自分の知らないところで兄と彼女がどれほどの孤独と痛みを背負ってきたか──。
 
サスケがその事実に拳を震わせた時、扉間の冷徹な声が場に響いた。
 
「うちはの呪われた運命というやつよ。クーデターまで企てるに至ったか。
いずれその様なことになるとふんでおった。
マダラの意思を持つ反乱分子もくすぶっていたからな」
 
彼は侮蔑の念が宿る瞳でサスケを見据えている。

「……うちはを追い込んだのは二代目、あなたの作ったうちは警務部に端を発してるとも言えるわ。
犯罪者を監視させる名目で警務部を牢獄と同じ場所につくり、うちはの家族を露骨に里の隅へ追いやった。あれがマダラ分子を助長させたのよ」
 
大蛇丸の反論を聞いた柱間は、苦悩を滲ませながら扉間を咎める。
 
「扉間!あれほどうちはを蔑ろにしてはならぬと念を押して……!!」
 
しかし扉間は、兄の言葉を意にも介さず言葉を返した。
 
「うちはにこそできる役職を与え、次のマダラが現れようとすぐ対処できるよう考えた結果だ!兄者も知っているだろう。奴らは……」
 
 
「悪に憑かれた一族だ……!!」
 
 
差別の断定。サスケの瞳に仄暗い炎が灯る。
 
「それはどういう意味だ」
 
サスケが扉間へ問う。
 
「……強すぎる愛情を持ったうちはの力は、暴走する可能性を秘めていた。
愛を知ったうちはが愛を失った時、それが強い憎しみに変わり、ある症状が出る」
 
「症状?」
 
「写輪眼だ。心の力と同調し、心の憎しみの力と共に個人を急速に強くさせる。闇が深くなればなるほど手がつけられなくなる。マダラのようにな」
 
「……マダラは弟思いの男だった。貴様の兄以上だろうぞ」
 
柱間の言葉にサスケは瞼を閉じる。
 
歴史に耳を傾けながら、兄の姿を思い浮かべていた。
 
「ワシはうちはの力を里の為に貢献できるよう導いたつもりだ。お前の兄もミズノという娘も、自らその道を選んだだけのこと。
奴らも木の葉の里の役に立ったということだ」
 
「扉間!!そんな言い方はよせ!!」
 
柱間の怒号が石壁に反響する。
 
サスケは怒りの代わりに、凍てつくような空気を纏っていた。
 
「二代目……あんたは自分の一族すら侮辱するんだな」
 
「何だと?」
 
「ミズノには……あんた達の姉の血が流れている」
 
その一言に扉間の眉が動き、柱間の目が見開いていく。
 
「そんな……まさか」
 
ミナトが小さく呟き、ヒルゼンと共に息を呑んだ。
 
「あんたが何よりも嫌悪しているうちはと……自分の誇りである千手。
その二つの血が交わったうちはが、木遁を受け継いでいる」
 
サスケの放った言葉が、地下の空気を完全に停止させる。
 
「姉者の血族……その上、うちはの身で木遁を受け継いだだと……?」
 
扉間が言葉を落とす。柱間は無言でサスケを見つめていた。
 
二人の脳裏に記憶が蘇っていく。
 
かつて里の未来を危惧し、文書に記した事実──。
 
扉間は組み合わせた腕に力を込め、溢れ出る怒気を放つ。
 
「兄者!だからワシはあの時言ったのだ!!
キリコとうちはシグレを処分しろと!兄者の甘さがこの事態を招いた!
うちはの力を千手の能力で増幅させるなど……マダラ以上の火種になりかねん!」
 
「扉間!!そんな話をここでするのはよせ!!話を聞いているのは純粋なうちはの子供だ!!」
 
柱間が怒りを込めて制す。
 
しかしサスケは落ち着いていた。
 
何も驚かない──恐れない。
 
瞼を上げると、万華鏡が静かに光を放っていた。
 
「気にしない。純粋でもなければ子供でもない。
初代火影、あんたに聞く。里とはなんだ?忍とはそもそもなんだ?」
 
「イタチは……兄は利用されたにも関わらず、命懸けで里を守り、木の葉の忍であることに誇りを抱いて逝った。
ミズノはすべての真実を知りながらも里の為に動き、イタチが守った里を裏切らないと語った。
同胞を殺してまで……己を犠牲にしてまで守ろうとする里とは一体なんだ?」
 
「里……忍とはなんぞ?……か」
 
柱間は目を閉じて黙す。
顎に手を添え、里と忍の在り方そのものと改めて向き合った。
 
 
「こんな状況を作り上げた忍、それをよしとする忍とは何だ?
あんたの言葉を聞いて、本当のことを知ってから自分で答えを出したい」
 
サスケの瞳から万華鏡の光が消え去った。
 
「木の葉に復讐をするのか……それとも……」
 
「……木の葉へ復讐だと?うちはの悪に憑かれた小僧が……」
 
扉間が鋭く、巨大なチャクラを放出する。
 
その場にいる全員が背筋を凍らせ、彼の本気を感じ取った。
 
「ここでワシが……」
 
彼が左手の人差し指のみ、持ち上げる。
 
ミナトとヒルゼンが思わず構えた。
 
「二代目様!!」
 
ヒルゼンが止めようとしたその時──。
 
 
「扉間……」
 
 
呼吸すら許さぬほどの圧倒的なチャクラが解き放たれる。
空間そのものが押し潰されるように、壁と床に無数の亀裂が走った。
 
重吾がサスケを庇うように踏み出し、大蛇丸が即座に身構える。
 
その後ろで水月は息を詰め、恐怖に顔を引き攣らせていた。
 
 
「指を下ろせ……」
 
「………」
 
扉間の頬を冷たい汗が伝う。
 
「わかった……そうチャクラを荒立てるな兄者……」
 
彼がゆっくりと人差し指を下ろした途端、柱間は豪快に笑った。
 
「いや、すまんすまん!里について話してやっても良いが、ちと長くなるぞ」
 
その言葉を受け、大蛇丸は短く状況を告げた。
うちはマダラが復活し、戦争が始まっている。早急に説明してほしいと。
 
柱間は頭を抱え、ミナトはナルトと九尾のチャクラを感知する。
 
そして扉間も強いチャクラを感知していた。
 
「嘘ではない様だな。確かにここから二時の方向……強いチャクラを感じる。そしてマダラの……」
 
ふと、扉間の声が途切れた。
 
「二代目様!ワシらも戦場へ向かいましょう!」
 
ヒルゼンの焦る声が響く。
 
「待て……このチャクラは確かにマダラのものだ。しかし、その奥に何か別のチャクラを感じる」
 
扉間の眉が寄った。
 
「このチャクラは……まさか……」
 
その声に重吾がハッとする。
 
「そうだ……さっき言いかけた事がある。マダラは今……」
 
重吾の前に大蛇丸が制する様に手を出した。
 
「……大蛇丸様?」
 
困惑の表情を浮かべる重吾へ、大蛇丸はゆっくりと首を振る。
彼はもう知っていた。マダラが何に宿ったかを。
 
「こうなっては話は後じゃ!!マダラが復活したなど……急いで駆けつけなければならん!!」
 
「……あなた方は私の管理下にあり、行動は制限される。
戦場へ向かいたいなら話をすませてからです。
サスケ君が納得しなければ、あなた達を使ってここ木の葉を潰しかねませんよ……」
 
「大蛇丸とやら……お前何か勘違いをしておる。
そもそもこの術を考案したのはこのワシよ……貴様ごときの穢土転生に縛られるワシではないわ!!」
 
扉間が壁に手をつき破壊を試みるも、大蛇丸により行動を縛られ動きが止まった。
 
柱間はその光景に小さな笑みをこぼす。
 
「猿飛……かなりの忍を育てたものだ。俺の細胞を取り込み縛る力をあげておるのよ!扉間、お前少し勘が鈍っておるぞ」
 
大蛇丸が警戒し気を張り詰める中、柱間は穏やかな表情で彼らへと向き直った。
 
「さて、大蛇丸とやら心配するな。
その子を縛っているわだかまりを解いてやる方を先としようぞ。
俺の話を聞き、どう選択するかはわからぬが……この子を無視すれば後必ず次のマダラへとなろうぞ。
それでは戦争が終わり、勝ったとしても意味がないの」
 
「はぁ……兄者の好きにせい」
 
扉間は呆れた表情で大きく息をついた。
 
「では……どこから話すべきかの。
そうよの……まず里と忍を語るには、うちはと千手についてからだの」
 
忍の神と呼ばれた男は床にあぐらをかき、静かに過去を語り始めるのだった。
 



 
その頃、地上では──


ナルトと仲間達、そして忍連合が十尾と白ゼツ達と必死に応戦していた。
 
またある場所では、ミズノへ憑依したマダラを倒すべく、五影達が死闘を繰り広げていた。
 
戦場はもはや、地獄と呼ぶことすら生温い光景へと変貌している。
 
マダラへの総攻撃。
 
我愛羅の砂が須佐能乎の足を封じ、エーの雷鳴が装甲を穿つ。オオノキの塵遁とメイの沸遁が重なり、綱手の拳が須佐能乎へと迫る。
 
しかし、嘲笑うかのように須佐能乎はその槍で全てを退けた。
 
「この程度か……あまりに退屈だな」
 
マダラが力を込めチャクラを練り上げる──両腕から乾いた音が響いた。
 
強大すぎるチャクラの出力とその動きに、ミズノの肉体が悲鳴を上げて始めている。
 
マダラが力を放出する度にミズノの骨が砕け、筋繊維が断裂していく。

眼と口元から鮮血が流れ落ちた。
 
それでも彼女の持つ血筋の力と医療忍術が、砕けた骨と切れた筋繊維、傷ついた臓器を修復する。
 
 
壊しては治し、治しては壊す──。
 
 
破壊と再生の連鎖。
 
その地獄のようなループが彼女の身体を絶え間なく摩耗させ、焼き尽くしていた。
 
「ふん……やはりか弱い女の身か。脆い器だ」
 
マダラは無造作に吐き捨てると、須佐能乎の腕を大きく振り下ろす。
 
致命の一撃が放たれようとしたその時、ピタリと須佐能乎の動きが止まった。
 
「……?」
 
五影の誰もが息を呑む。
 
 
──『させない……!』
 
 
内側から必死に押し返す意志。
 
ほんの一瞬、本当に一瞬だった。
 
「小娘が無駄な事を……」
 
内側からの抵抗は強大な力にねじ伏せられ、潰される。
 
須佐能乎の動きは先ほどよりも苛烈さを増していった。
 
槍の一振りで大地は割れ、五影たちの連携は砕け散っていく。
 
エーは速度を読み切られ、何度も岩壁へ叩きつけられる。オオノキは腰を砕かれ宙を舞い、激しく地へと落ちた。
 
綱手も修復が追いつかぬほどの攻撃に耐え切れずに倒れ伏す。
我愛羅の砂の壁は身体ごと容易く貫かれた。
 
 
 
── 戦場は水を打ったように静まり返る。
 
 
 
マダラの猛攻になす術もなかった。
 
各里の英雄たちが血溜まりの中に沈んでいる。
 
マダラは震える自らの掌を眺め、冷酷に呟いた。
 
「不便な器だ。俺の力に肉体が追いつかん……。だが、治癒の速度と生命力、そしてこの融合させた須佐能乎は捨てたものではないな」
 
虫の息となっている五影たちを一瞥もせず、マダラは背を向けた。
 
「ま……て……」
 
我愛羅が血の滴る手で砂を掴み、掠れた声を絞り出す。
 
しかし、その呼びかけに答える者はいない。
 
ミズノの姿をしたマダラは大地を蹴り、十尾の咆哮が轟く戦場へと去っていく。
 
 
 
──その背中に、仲間達を守ろうとしていた彼女の面影は微塵も残っていなかった。
 
 
 
 
一方、十尾と死闘を繰り広げていたナルト、カカシ、ガイ、そして忍連合の面々。
 
すると、ナルトと感知班が凄まじいチャクラの接近を察知した。
 
場がざわめく。
 
「……! なんだ?このチャクラは……!?」
 
ナルト達が視線を向けると、“それ”は現れた。
 
砂塵を割り、一筋の影が降臨する。
 
着地の衝撃すらなく、そこにいたオビトの隣へと降り立ったのは──ミズノだ。
 
しかし、瞳には輪廻眼。
 
その表情には、彼女が決して見せたことのない冷え切った傲慢さが刻まれている。
 
「……五影はどうした。お前を追って行ったはずだが?」
 
それは、ほんのわずかな時間差だった。
 
ミズノがガイのもとを離れた直後、戦場の中心へかけつけた影達はミズノとマダラの姿がないことにすぐさま気がつき、異変を察した。
 
 
──そして彼らは後を追ったのだ。
 
 
オビトの問いに、ミズノの身体を得たマダラは興味なさげに答える。
 
「さあな……。だが、無事ではあるまい」
 
ミズノの声色だった。

しかし、その言葉は決して彼女の口から零れるものではない。
 
「ふざけんじゃねぇ!!」
 
その答えを聞いたナルトが声を荒げた。
 
「お前は誰だ!!五影達とミズノに……何したんだってばよ!!」
 
「砂利がよく吠える……」
 
心底つまらなさそうにナルトへ吐き捨てる。
 
「……随分と勝手だな。“それ"は使うつもりだったんだが」
 
オビトは低く、皮肉を滲ませた。
 
マダラは腕を組み、怪しげな笑みを浮かべる。
 
「使っているだろう。これ以上ないほどにな……」
 
「……切り札という意味でだ」
 
オビトの言葉には苛立ちと嘲りが混じっていた。
 
マダラは喉を鳴らし、短く笑う。
 
「おい!聞いてんのか!」
 
ナルトが再び声を荒げると、カカシが制止する。
 
「ナルト!あれはミズノ本人だ……何らかの理由でマダラに意識を乗っ取られている」
 
「!!」
 
周囲の視線がカカシへと集まった。ヒナタは即座に白眼でミズノを凝視する。
 
「確かに……2つのチャクラの流れが見えます……!」
 
「そんな……!!」
 
サクラは大きく嘆いた。
 
共に戦う仲間であるはずの彼女が、忍の世界を終わらせるための最凶となり果てている。
 
その現実を前に、仲間たちは言葉を失っていた。
 
「おい、ミズノ!!しっかりしろ!そんな奴に負けるんじゃねェ!!」
 
 
──返事はない。
 
 
ナルトの祈りにも似た叫びは、戦場の風に掻き消されていく。
 
その中でガイは拳を震わせていた。
 
己が守ると決めた部下。あの時、彼女を一人で行かせてしまった。
 
「ミズノ……」
 
ガイは奥歯を強く噛み締める。自責の念で胸の奥が軋んだ。
 
その隣では、カカシが静かに額をぬらしている。
 
(攻撃すればミズノが傷つく……だが、止めなければ世界が終わる……。一体どうすればいい!)
 
 
──こちらから仕掛けられない。
 
 
そこにいる誰もが同じ思いを抱き、一歩も踏み出せずにいる。
 
倒さなければならない災い。
 
しかし身体は紛れもなくミズノだ。
 
彼はただ冷ややかに告げる。
 
「……次は九尾、お前だ」
 
その一言が、戦場のすべてを凍りつかせた。
 
 
 
 
──彼女の身体を依り(よりしろ)とした最強の亡霊が、ゆっくりと確実に──破滅を連れて再び動き始めるのだった。 
 

 
後書き
ご覧いただきありがとうございました!

里の真実を知ったサスケ、そして最悪の形で戦場に降臨したミズノ(マダラ)
次回、ナルトとカカシ、そしてかつての仲間たちが、変わり果てた彼女とどう対峙するのか。
次回もお読みいただければ嬉しいです!
 
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