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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第十九章 交差する覚悟、動き出す終焉

 
前書き
胸の奥から染み出してくる、黒く熱い感情。
それは悲しみでも恐怖でもなかった──。 

 
第四次忍界大戦



──戦場

焦げた匂いが風に乗って鼻を刺し、十尾の咆哮が大地を揺らす。白ゼツの群れと、穢土転生された忍たち。
途切れることのない敵の波が戦場を飲み込んでいた。

その混沌の中で、ミズノはひたすら走り続ける。

「危ない!!」

巨大な岩が一人の忍に降り掛かろうとしていた。
ミズノは叫び、素早く印を結ぶ。

「土遁・土流壁!!」

地面を割って伸び上がった土の壁が、岩を真正面から受け止めた。

衝撃が壁を揺らし、細かな土が飛び散る。

「助かった……」

「まだ来ます!気をつけて!!」

振り返る間もなく、ミズノは再び走り出した。

崩れた地面。倒れた仲間。血の匂い。

どこを見ても、戦いの痕跡が刻まれている。

「大丈夫ですか?ゆっくり息をして……」

倒れている忍の側へ膝をつき、掌を傷口へ。緑の光がじわりと広がっていった。男の荒い呼吸が少しずつ安定していく。

「すまない……」

「動けると思うけど……無理はしないで下さい」

そう言って立ち上がると、ミズノの足元がふらついた。額からは大量の汗が流れ落ちていく。

その汗を静かに拭った。

(まだいける……止まっていられない!!)

大きな使命感がミズノを動かしている。彼女は仲間を守り、癒し、幾度となく走り出す。

休む間もなく、目の前の現実に抗っていた。




──岩壁の上

ミズノの姿に冷たい視線をおくる一つの影。

「無駄な事を……」

彼の口元がわずかに歪む。

「だが……あの甘さこそ柱間の血か」

ひとこと呟き、彼女をじっと見定めているのだった。




──突如、辺りに白いモヤが浸食するように広がってきた。

ミズノは立ち止まり、呼吸を整えながら目を細める。

「これは……霧?」

霧が厚みを増していくと、前線の忍が大声で叫ぶ。

「おい!待て!!まさかこの霧……」

その声は途中で途切れ、何かが地に倒れる音がした。

同時に血飛沫が霧に溶け込んでいく。

「……え?」

戦場に戸惑いの沈黙が落ちた。

「……あははっ」

霧の中から、楽しげな笑い声が響く。

「いやぁー久しぶりだなぁ。この感覚」

ゆっくりと霧が割れ、現れたのは己の背丈よりも長い黒鉄の大太刀を肩に担ぎ、癖のある髪を後ろに束ねた巨躯の男。

その顔には愉悦しか浮かんでいなかった。

「こいつは……霧隠れ元暗部の抜け忍……」

震える声がどこかから漏れる。

「処刑人……槍霧(そうむ)!」

その名を聞いた瞬間、数人の忍が後退した。

「え? なんで俺のこと知ってるの?」

槍霧は笑顔で首を傾げる。

「俺って有名だったんだなぁー……嬉しいよ」

次の瞬間、視界から巨影が消え去った。

「!!」

ミズノは写輪眼を光らせる。

──背後

振り向く暇もなく、空気ごと押し潰すような斬撃が辺り一面を薙いだ。

数人の忍が切り裂かれ、吹き飛ばされる。

ミズノは即座に横へ飛び退く。

首元を刃先がわずかにかすめたものの、寸前のところでかわした。

「へぇー!お前すごいね。俺の攻撃をかわすなんて」

無邪気に血の気配を喜ぶ瞳と視線が交わる。

(この人……命を奪うことを楽しんでる……)

ミズノは身体に力を込め、奥歯を噛み締めた。

「どうしたの?そんな顔しなくても大丈夫だよ。みーんな殺してあげるからさ」

槍霧は黒鉄の大太刀を振りかぶる。

「火遁・炎籠(えんろう)の術!!」

ミズノが術を放った。

周囲に赤い炎が立ち上がり籠のように彼女と仲間達を包み込む。

しかし、攻撃を防ぎきれずに炎の籠が粉砕。

その破片が弾丸のように飛び散った。

なんとか大きな衝撃は逃したが、ミズノの頬が浅く切れている。

(すごい力……!)

「ふーん、なかなか壊れてくれないね。じゃあ……次はどうしようかなぁ」

槍霧がゆっくり印を結ぶと、視界を奪う程の濃い霧が吹き出し、忍たちの動きを鈍らせた。

「くっ、なんだこれは!身体が重い……!」

「ダメだ……動けない……」

霧が重くまとわりつき、身体の動きを鈍らせる。

皆が膝をつき始め、絶望的な状況に陥っていった。

しかしその中で、ミズノは相手の様子を分析する。

(この霧で感覚と動きが鈍らされている……でもその分相手の気配の揺れも重い。今、あいつは一撃のために動かずチャクラを集中させているはず……それなら……!!)

重い腕と指をなんとか動かし、印を結んだ。

「木遁・樹海降誕(じゅかいこうたん)!!」
 
地面が裂け、無数の大木が暴れ狂うように生え上がる。

槍霧を包囲し、上から、横から、全方向から押し潰そうとした。

「へぇ……木遁か!初めて見たよ。本当に使える奴がいるなんてね」

槍霧は表情を変えずに一歩踏み込み、チャクラを纏った黒鉄を振う。

大木がまとめて薙ぎ払われ、木片と霧が嵐のように舞い散っていった。

ミズノは術を重ねる。

「木遁・木龍(もくりゅう)の術!!」

巨木の龍がうねりながら槍霧に襲いかかった。しかし、木龍は姿を保てない。槍霧に届くことなく崩れ去った。

(ダメだ……この術はまだ思い通りに扱えない……)

同じ名を冠するだけで、同じ力になるわけではない。

“本物”には遠く及ばなかった。

「なんだ、木遁なんて全然大したことないなぁ」

槍霧が木片を踏みしめながら、ミズノ達へ迫っていく。


──ふと、背筋が凍るような気配。


ミズノと仲間の忍達、槍霧でさえもその異様な気配に動きを止める。


そして、それは地に降り立った。

 

──うちはマダラ

 

「……久しいな、柱間の術を見たのは」

ミズノの背筋がぞくりと震え、表情が警戒の色に染まる。

「マダラ……!なぜここに……」

「うちはマダラ?……へぇ、あんたも生き返ったってわけか。
流石に強そうだな…… でもさ、今いいところなんだよね。邪魔しないでくれる?」

槍霧は笑顔を崩さず、大太刀を構え直した。

「あんたの相手はこっちを先に終わらせてからでいい?俺いま──」

──言葉の途中、槍霧の巨体が地へ押し付けられている。

何が起きたのか、その瞬間をミズノの写輪眼ですら捉えられなかった。

「雑魚に用はない」

マダラは槍霧の背に片足を乗せたまま、吐き捨てる。

槍霧の身体は鎖に囚われ、封印されていった。

たった一撃で完封。誰もが息をするのを忘れるほどの威圧感。

空気の密度が変わり、ただそこに立っているだけで世界が変わったように感じる。

(この人は……次元が違う)

ミズノは震える呼吸を押し殺し、マダラを見つめていた。

周囲の忍たちも言葉を失い、指一つ動かせない。

場は異様な静寂に包まれている。

その中でマダラはただ、ミズノだけを見ていた。

「さて……お前だ」

ミズノの心臓が跳ねる。

「どれだけの利用価値があるか……俺が直接確かめてやろう」

マダラが一歩前に出ると、空気が揺れた。

ミズノは立ち尽くす仲間たちを背に庇いながら、写輪眼でマダラの姿を追う。

ミズノが印を結びかけたその瞬間──


マダラの姿が消えた。


次に見えたのは、目の前。


マダラの眼がミズノの眼を射抜いている。

「な……っ!?」

ミズノは咄嗟に後ろへ飛び退こうとするも、それより早くマダラがミズノの身体を軽く掌ではらう。



──ドンッ!!!



ミズノの身体は、十数メートル後方の地面に叩きつけられた。

肺から空気が一気に抜ける。息ができない。
視界が歪み、砕け散った石の破片と土埃が舞い上がった。

「ミズノ!!」

「一撃であそこまで……」

仲間の声が響きわたる。

「くそっ!このままじゃ……彼女を援護するぞ!」

忍達が一斉にマダラへ向かい術を放った。

マダラは短く息を吐く。

「虫ケラ共が……」

口の中に広がる鉄の味を感じながらミズノが必死に顔を上げると、仲間達が次々に弾き飛ばされ、地面に叩きつけられていく光景を目の当たりにした。

「やめ……」

声にならない叫びが、喉の奥で潰れる。

すると、砂埃の向こうからゆっくりとマダラの姿が近づいてきた。

「……立て」

ミズノは眉を寄せ、苦痛の滲む表情でマダラを見上げる。

「どれほど使えるのか試しているところなのだからな」

(力の差がありすぎる……でも……)

地面に手をつき、痛みに耐えながら起き上がる。

奥歯を噛み締め、震える足で立ち上がった。

「私は……絶対に倒れない!!」

呼吸をひとつ整え、折れぬ意思を頼りに印を結ぶ。

「木遁……樹海降誕!!」

再び大地が裂け、大木が噴き出した。

幹、枝、蔓、根。それらすべてがマダラへ集束する。

「火遁・豪火滅却(ごうかめっきゃく)!」

マダラが放った炎が、広範囲に広がった。樹海を燃やし尽くし、火花が散る。

「水遁・水弾波!!」

ミズノの口元から放たれた何本もの水圧が、一直線にマダラへと突き進む。


しかし──


轟音と共に立ち上がる業火に触れた瞬間、水は霧散し跡形もなく掻き消された。

(うそ……)

理解が追いつかない。彼の前に術の相性など関係ない。

マダラは、品定めをするような視線で青ざめるミズノを静かに見据えている。

「……期待外れだな」

淡々とした声。

「柱間には遠く及ばん」

「くっ……」

ミズノの瞳に、万華鏡写輪眼が浮かび上がる。

その変化を見て、マダラの口元がわずかに吊り上がった。

「万華鏡か……さて、どうなる」

ミズノは右目に意識を集中させる。


「寂滅陣!!」


マダラの足元に黒い陣が滲み広がっていくも、彼は素早く飛び退く。黒い穴が地面を飲み込んでいった。

「時空間の穴...…これがお前の万華鏡の能力か」

マダラは興味深そうに目を細める。

ミズノの呼吸は乱れ、右目からは血の涙が流れていた。

「まだ...…!!」

親指で血の涙を拭い、震える手を地面につく。

「口寄せの術!!」

地が大きく揺れ、白煙が立ちのぼる。

現れたのは──大猿、猿鬼。

「よぉ、ハニー!会いたかったぜ……って……」

言葉の途中で異様なチャクラを感じ、猿鬼の表情が一変した。

「……なんだよ、やばそうじゃねぇか」

マダラは腕を組み、蔑むように猿鬼を一瞥する。

「……ただの畜生に何ができる」

その言葉に猿鬼の体毛が逆立った。

荒ぶるチャクラが噴き上がり、周囲の空気が渦を巻いていく。

「おい、畜生だと? 誰のこと言ってんだ……」

低く唸り、猿鬼はマダラを睨みつけた。

ミズノは荒い呼吸を整えながら、猿鬼へと視線を送る。

「猿鬼……」

「おう!」

視線と短い言葉だけで、互いの意思が通じ合う。それが二人の絆の深さだった。

ミズノは素早く印を結ぶ。

「木遁・修羅炎爆樹!!」

地面が裂け、無数の蕾がついた枝の蔓がマダラに襲いかかっていく。

「……見たことのない術だな」


──マダラは動かない。ただ迫り来る術を見据えていた。


猿鬼が地面を両拳で叩きつける。

地面が波のようにうねり、マダラの重心が揺らぐ。

その刹那──

枝の蔦が一気に絡みつき、マダラの身体を縛り上げていった。

ミズノは両手を鋭く打ち合わせる。

蕾が一斉に膨張し、破裂した。

「火遁・豪火球の術!!」

吐き出された火球が蕾の破裂を巻き込み、一気に膨れ上がる。

轟音と熱風。

黒煙が戦場を覆い尽くした。

ミズノと猿鬼は息を詰め、その奥を見つめる。

ゆっくりと煙が晴れていくと、須佐能乎の青白い光が彼を包みこんでいる。

マダラは小さく肩を振るわせた。

「ふっ……」

低く漏れた声。

「なかなか面白い連携だ」

その声には、皮肉めいた賞賛が込められていた。

マダラは須佐能乎を消す。

不敵な笑みを浮かべたまま、ミズノに近づいていく。

「おい!!こいつに近づくんじゃねぇ!!」

猿鬼が拳を振り上げたその時──

マダラの輪廻眼が猿鬼の瞳を射抜いた。

すると、糸が切れたように猿鬼の巨体が崩れ落ちる。

その姿は白煙と共に消え去った。

「猿鬼!!」

(一瞬で幻術をかけて……口寄せを解いた……)

ミズノは手の震えが止まらない。全身が警鐘を鳴らした。

辺りを見回すと、ぴくりとも動かない仲間達の身体が横たわっている。

全てが終わっていた。

喉が詰まり、ミズノの胸の奥で何かが音を立てて壊れる。

自分の使命も、役目も能力も──この男の前では意味を持たなかった。

胸の奥から黒く、熱を持った何かが染み出してくる。

それは悲しみでも恐怖でもない、今まで感じたことのない感情だった。

「……」

歯が軋み、身体が震える。

“この存在”がここに在ること自体が許せない。

目の前の“これ”をこのままにしてはいけない。


──マダラが一歩ずつ近づいてくる。


「……まだ弱いが、木遁を使う純度の高い柱間の血筋と、万華鏡を開眼した完全なうちはの血。お前は……俺を完璧な段階へと進める触媒になり得る」

マダラの口元が歪む。

ミズノは拳を握りしめた。

「……そんなことのためにみんなを犠牲に……」

ミズノの身体を淡い緑の光が包み込み始める。

彼女の周りに、巨大な骨格が浮かび上がっていった。

肋骨、腕、頭蓋骨。

それは徐々に形を成していく。



──須佐能乎。淡い緑の光に包まれた、未完成の戦士の姿。



ミズノの眼差しには確かな怒りが宿っていた。

(……許さない)

須佐能乎の槍の先がマダラに向かって伸ばされる。

「ほう……お前も須佐能乎を使えるか」

マダラは目を細める。

しかし、ミズノの須佐能乎はまだ骨格と少しの筋肉だけ。

マダラも再び須佐能乎を発動させた。

完全体の須佐能乎。青い光に包まれた、圧倒的な力。

お互いの須佐能乎が向かい合う。

「さあ……どこまでやれるか、見てやろう」

マダラの須佐能乎が剣を振りかぶった。

ミズノは須佐能乎の槍の柄で、剣を受け止める。

重い衝撃が走り、ミズノの須佐能乎が揺らいだ。

「くっ...!」

ミズノの目が激痛に襲われ、さらに血の涙が流れる。

視界が滲む。

身体が軋み、悲鳴を上げる。

それでも──

ミズノは立ち続け、マダラの攻撃を受け止めていた。その姿を見てマダラは小さく笑う。

「その精神力だけは褒めてやろう」

彼は須佐能乎の刀にさらに力を込め、押し込んだ。

須佐能乎の槍がひび割れていく。更なる痛みがミズノを襲った。

額から、冷たい汗が伝っていく。

(もう……)


──その瞬間



二人の間に固い砂の壁が現れ、間を遮った。


周囲に次々と五つの影が降り立っていく。

我愛羅、オオノキ、照美メイ、エー、綱手。

綱手はミズノの横に立った。

「すまない、遅くなった。あとは私たちに任せておけ!」

「綱手様……」

安堵と共に須佐能乎が消え去り、ミズノはその場に膝をつく。もうチャクラがほとんど残っていない。

我愛羅が砂でミズノを包み、後方へと運んだ。

マダラは影たちを見回し、口元を歪める。

「五影か……退屈はしないですみそうだ」

激戦が始まろうとしていた。




──その頃、イタチとサスケはカブトと対峙していた。

蛇のようにうねる影。

音忍達の細胞を取り込み、仙術チャクラを纏ったカブトの身体は、常識を超えた再生力と変化を見せる。

サスケの須佐能乎の刃が勢いをつけ、カブトの身体目掛けて振り下ろされた。

しかし、──刃は狙いを外す。

「チッ……」

舌打ちと共に、サスケは眉を寄せた。
本来なら、今の一撃を外すことはなかったはず。

頭の奥をかすめた“別の気配”を無理やり振り払った。

「手荒いぞサスケ!殺すなというのはわかっているな!」

「大蛇丸の力を手に入れてるようだしな。そうそう死にはしねーよ!」

イタチの声にサスケは聞く耳を持たない。

脱皮しながら動き回るカブトを万華鏡で追い、休む間もなく攻撃を仕掛けていく。

「脱皮して逃げてるだけか?大蛇丸の劣化版だな」

「サスケ君……君、僕のことなめてるよね。でも君の動き、だいぶ乱れているよ」

サスケの動きは確かに乱れ、冷静さを欠いていた。

「……焦るな、サスケ!」

名を呼ばれた瞬間、サスケの肩がわずかに揺れた。

「……気が散っているみたいだね」

カブトが嘲笑っていた。

「黙れ……!!」

「君が気にしているのは、僕の最高傑作が今頃彼女を──」

「黙れと言っている!!」

サスケが須佐能乎の弓を引き絞り、矢を放った。

しかし、カブトは軽々と避ける。

「仙法・白激の術!!」

カブトの口から龍が吹き出し、光で視覚と聴覚を奪い、イタチとサスケの感覚を麻痺させていった。

二人は目を閉じ、耳を塞ぐ。

サスケは耳と骨の軋みに耐えられず、須佐能乎を維持することができない。

イタチは咄嗟に自分の須佐能乎でサスケを攻撃から守る。

「サスケ、今は……カブトを止めることだけを考えろ」

サスケは拳を握りしめ、息を呑む。

イタチはカブトへと視線を戻した。

カブトは天井へ張り付きながら口を開く。

「いくら二人だろうと、付け焼き刃コンビじゃ僕を出し抜けやしないよ。しかも嘘つきな兄貴のせいでずっと仲違いしていた兄弟なんかじゃね……」

その言葉に兄弟は黙した。
しかし、イタチからの提案で二人は見事な連携をみせる。

その姿に、カブトは再び揺さぶりをかける。

しかしイタチはサスケにカブトの言葉に耳を貸すなと告げた。

「カブトは俺以上のスパイだった、つまり俺より嘘がうまいと言うことだ。それにな……」

イタチは揺るがぬ信念を込めた瞳で語る。

「里がどんなに闇や矛盾を抱えていようと、俺は木の葉のうちはイタチだ」

サスケは、わずかに目を見開いた。
兄の横顔から視線を逸らせず、驚きと問い、二つの感情が胸の奥で静かに揺らいでいるのを感じる。

「サスケ……お前をそうしてしまった俺が、今さらお前の決断にどうこう言える立場ではないのかもしれない。だがこうなってしまった以上、一言だけ言っておきたい言葉がある……場を整えてからな」

カブトは二人を見据えながら、再び自身の能力を語る。

「僕が穢土転生の術者である以上、僕は殺せない。傷を負わせても、この身体の回復力がある限りそれも意味をなさない。僕は視力を絶った。君ら自慢の瞳力も幻術も一切効かない。君たち二人に勝ち目はないよ!」


「……奴の演説は聞くに堪えんが、状況説明だけは一理ある」

「言われなくてもわかっている。で……どうする?」

「奴はうちはの本当の力を知らない。うちはには相手の視覚に訴えることなくはめる瞳力がある。光を失う事と引き換えにな……」

サスケの脳裏にダンゾウの記憶が蘇った。

「……イザナギ……?」

「イザナギを知っているのか?」

イタチが驚いた様子で問う。

「……ダンゾウと戦った時にそれを使ってきた」

「お前……よく生きていたな」

「それはいい。どうやってイザナギを使う?」

「イザナギではない。それと対になるもう一つの禁術」

「もう一つ?」

サスケが眉間に皺を寄せた。

二人が会話している隙に、すでにカブトがイタチを討つために動き出そうとしている。

イタチはわずかに息を整えた。迷いはなく、あとは“引き金”を引くのみ。

「……すでに仕込みは整った。奴の運命を握る究極の瞳術……」



「イザナミだ」



瞬間、イタチは刀でカブトの攻撃を受け止めるのだった。




──交わるはずのなかった兄弟によって、穢土転生という禁術が解かれようとしている。

それは戦争を終わらせるための戦いであり、同時に最後の別れへと続く道でもあった。 
 

 
後書き
ここまで読んでくださり、ありがとうございます。
圧倒的な力の差、守ろうとする意志と、抗えない現実。
それでも前へ進もうとする姿が、少しでも心に残っていれば嬉しいです!
次章もお付き合いいただければ幸いです。 
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