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月と樹と写輪眼 ─もう1人のうちは─

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第十八章 覚悟の始動、兄弟の決意

 
前書き
彼女はまだ気づいていない。
自分を追う本物の存在に──。 

 
第四次忍界大戦。

──戦争開始から数時間後、戦場はすでに地獄と化していた。白ゼツの大群と穢土転生された忍たちが次々と襲い掛かる。

ミズノはカカシから、”木遁と万華鏡の力はしばらく使うな“と命令を受け、第三部隊の中では仲間を癒し続けていた。

チャクラは少しずつ削られ、攻撃に倒れ伏していく仲間たち。

戦争が本格化する中、イタチと長門はカブトに操られていた。共に戦場へ向かう途中、イタチはナルトとビーの二人と遭遇する。

イタチは生前、ナルトに"保険"を仕込ませていた。
口寄せしたカラスにシスイの眼、別天神。

──命令はただ一つ。「木ノ葉を守れ」

本来はサスケの復讐を止めるための術だったが、穢土転生という想定外の事態により、イタチ自身にかかってしまった。

カブトの支配を上書きする形で、イタチは自由を取り戻す。
カブトですら驚嘆するほどの出来事だった。

自由を取り戻したイタチは、なおも操られ続ける長門を十拳剣で封印し、成仏させる。

長門は最後にすべてをナルトへ託し、イタチもまたナルトへ言葉を残した。

「火影になった者が皆から認められるんじゃない。
皆から認められた者が火影になるんだ。
仲間を忘れるな」

木ノ葉の忍として、願いと誇りを込めて。

ナルトと別れたイタチは、穢土転生を止めるべく術者・カブトの元へと一人向かう。


しかし、その途中でナルトの元へ向かおうとしていたサスケと遭遇してしまった。サスケはイタチを追いかけながら、問い詰めていく。

イタチはサスケに多くを語らぬまま、ただ“術を止める”という目的のため、木々の間を走り抜けていく。

サスケはその後を必死に追いかけ、そしてカブトの元へ共に並び立つのだった。



── 大戦の最前線

ナルトが戦場に到着した。戦況が大きく変わっていく。
仮面の男の正体はマダラではなく、カカシの友人であったうちはオビト。オビトとマダラ、ナルト達は激しく交戦し合うことになる。

仲間たちはナルトと共に戦う決意を胸に、応援に向かっていた。

しかし、そこへ十尾が復活する。忍連合の皆が次々と倒れていく。十尾の攻撃が激しさを増し、巨大な木の槍がナルト達に襲いかかる。

ヒナタがナルトの盾になるべく彼の前に立ちはだかった。

ミズノが遅れて駆けつけた、まさにその瞬間──

十尾の木の槍が、ネジの身体を貫く。


──時間が止まった。


ミズノの眼にネジの"死の瞬間"が刻み込まれる。

「ネジ兄さん……!」 「ネジ君!!」

ヒナタとミズノの叫び。ナルトの目が見開かれ、その瞳から光が失われていった。

ネジの最期の声が木霊する。命の重みが戦場を震わせた。

ミズノはネジの元へ駆け寄る。彼の姿に涙が溢れた。
周りの仲間たちの士気は削がれていく。そこへリーも到着し、息絶えたネジを見て膝をつき、涙を流していた。

「リー君、ごめんね……私がもっと早くここに……」

「謝らないでください!ミズノさんのせいでも……誰のせいでもありません。ネジは……己の忍道を貫いたんです!!」

ミズノを励ますリーの瞳からは大粒の涙がとめどなくこぼれ落ちている。

その傍で、ネジの死にナルトは戦意を失い動けなくなっていた。

その様子を見つめながら、オビトはナルトを煽り、闇を植え付けていく。


ナルトはもう少しで堕ちる──


マダラがそう口にした刹那、隣にいたヒナタがナルトの頬を打った。ネジが残した想いをまっすぐ言葉に紡いでいく。

「仲間は絶対に殺させない。その言葉も信念も偽りじゃない……!それを胸にちゃんとやってのけたの……ネジ兄さんは!」

ナルトの身体が、わずかに震えた。

「私と一緒に立とう……ナルト君。真っ直ぐ自分の言葉は曲げない。私も……それが忍道だから」

ヒナタの言葉がナルトの心に火を灯していく。彼の目に、再び光が宿った。
周囲の仲間たちにも士気が戻っていく。

ヒナタの言葉はミズノの心にも火を灯してくれた。
仲間達をゆっくりと見渡す。

(私も……自分の信念を貫く……)

決意を胸に、ミズノはガイの元へ歩み寄った。彼にだけ聞こえるように告げる。

「ガイ先生……」

ガイが振り向くと、ミズノが真剣な目で見つめている。

「お願いがあります。私の単独行動を……許してくれませんか?」

「ミズノ、何を言っている……!」

ガイが制止しようとするが、ミズノは臆さず、言葉を重ねた。

「私にしかできないことがあるんです。今動かないと……同じ場所にいるだけではダメなんです……!!」

普段の様子と違うミズノに、ガイは息を呑む。

「お願いします!私が先生を騙して命令に背いたと……そう報告してください!責任は全て私が取ります……!」

「待て、ミズノ……!」

ガイの声を遮るように、ミズノは続ける。

「お願いします……!!」

そう言って頭を下げるミズノの必死さに、ガイは口を引き結んだ。

彼女の声には、強い信念と抑えきれない焦りが滲んでいる。

「……俺が何のために監視役になっていると思っている。お前は大事な部下だ。もう……誰も失いたくない」

ガイは苦渋の表情を浮かべ、拳を強く握りしめた。

「……だからこそ、行かなきゃいけないんです!!」

ミズノは頭を下げたまま語気を強め、再び懇願する。

「お願いします!ガイ先生!私がやらないと……私を信じてください!」

ガイは諭すように尋ねた。

「お前は……1人で一体何をするつもりなんだ」

ミズノは目を閉じ、苦しみを飲み下すように答える。

「眼に焼き付けなければいけないんです。
このまま何もしなければ……もっと多くの仲間が戻れなくなる……」

その言葉の意味を僅かに感じ取ったかのように、ガイの眉が動いた。

「だから……お願いします……!!」

ガイは長い沈黙の後、首を横に振った。

「ダメだ、ミズノ。お前を行かせるわけにはいかない」

「ガイ先生……!」

「俺の任務はお前を守ることだ。お前を危険に晒すことじゃない」 

「先生……」

ミズノは顔を上げ、強い眼差しでガイを見つめ問いかける。

「もし、目の前にいる人が……危険に晒されていたらどうしますか?……ガイ先生なら絶対に助けるはずです」

ガイの瞳がはっと大きく揺れた。

その言葉は、彼の過去の記憶と共に胸を撃つ。

「私は……何もできなかったことを後悔したくないんです」

ガイは、しばらく何かを思い出しているかのように俯いていた。

「……そうか……そうだな……」

そう言って、苦しげに笑った。

「……わかった」

ガイのその声には、信頼と決意が同時に宿っている。

「行け、ミズノ」

ガイの目が真っ直ぐにミズノを見つめた。

「だが……必ず戻ってこい!!俺との約束だ!!……絶対にだ!!」

「ガイ先生……ありがとうございます!!」

ミズノは深く頭を下げ、感謝の言葉を残して一人静かに姿を消していく。

残されたガイは、彼女の背中をただ信じて見送ることしかできなかった。

その時、マダラが視界の端を横切るミズノに気がつく。

「……ん?」

マダラが僅かに顔を向けた。

「おい……ハエが一匹逃げたぞ」

オビトが視線を向けると、マダラは眉をしかめている。

「どういうことだ?あれのチャクラ……柱間と似ている……」

オビトは一瞬沈黙し、静かに答えた。

「うちはの生き残りだ……柱間の姉の血と、うちはの血を引いている」

マダラの目が鋭く光った。

「柱間の姉だと?」

「木遁を受け継ぎ、万華鏡写輪眼を併せ持つ。特異な存在だ」

マダラは興味深そうに口元を緩める。

「そうか……そんなものを隠していたとはな」

マダラは静かに動き出した。

「……追いかけるのか」

オビトの問いには答えず、ただ告げる。

「あれの価値をこの眼で確かめる。お前はこいつらと遊んでいろ」

十尾の攻撃が激しさを増す中、そのやり取りに気づく者は誰もいなかった。



───しめった洞窟の中


カブトの巣へ辿り着いたイタチとサスケ。

洞窟には冷気が漂い、天井から垂れる水の音だけが静かに反響している。

薄暗い洞窟で、仙術を纏ったカブトが笑みを浮かべていた。

「まさか兄弟揃ってここへ来るとはね。予想外だよ……」

イタチは低い声で告げる。

「穢土転生を解け」

カブトは愉悦に濡れた瞳でイタチを見つめた。

「まぁまぁ……そんなに焦らないで。少し話でもしようよ。
特別な血を引く、哀れな忍の話でも……」

イタチの表情は冷静さを保ったまま。

「……誰のことを言っている」

その横で、サスケはただ静かにイタチの反応を見ていた。

カブトは蛇のようにペロリと舌を出し、続ける。

「そうか……イタチ君は知らなかったんだね。千手柱間の血を色濃く引いていたおかげで……君の月読を受けても生き延び、そして一族虐殺の真実を知ってしまった為に、三代目が姿と名を偽らせていたうちはの生き残り……。
ここまで言えばわかるかな?サスケ君はもう、知っているよね」

「……」

サスケの沈黙が、それを肯定していた。

イタチは眉を寄せながら、カブトを鋭く睨みつけている。

「君はサスケ君ともう一人……うちはミズノを孤独に追いやったのさ……そして、彼女はサスケ君とは逆に守りに徹した。でも木ノ葉の上層部にとって彼女の存在は都合が悪すぎる……どういう意味かわかるよね?」

イタチとサスケは無言のまま、彼を冷たい瞳で射抜いていた。

カブトはさらに畳み掛けていく。

「可哀想だよね。必死に自分を犠牲にしたのに、うちはという理由で報われない。だから……僕は彼女を助けてあげるつもりだよ」

「ミズノに……何をするつもりだ」

イタチが鋭さを帯びた低い声で問う。
その声を聞き、カブトはさらに歪んだ笑みを深めた。

「千手とうちはの血、そして木遁と万華鏡。彼女は唯一無二の存在だ。僕なら、もっと上手く“使ってあげられる”」

イタチが纏う空気が、さらに冷たさを増す。サスケは刀の柄に手をかけた。

「イタチ君が殺し損ねたものなんだから別にいいよね?……あれはそもそも、いないはずの存在なんだ。僕が有効に活用してあげるよ」

その言葉に、洞窟の空気が一気に凍りつく。

サスケが素早く刀を抜き、カブトに切り掛かっていった。

「待て!!サスケ!」

サスケは止まらない。しかし、カブトは素早く後ろに飛び退いた。

「サスケ君……ずいぶん感情的だね。何か特別なことでもあるのかな?」

カブトはニヤニヤと笑っている。

「黙れ……!!」

サスケが再び動こうとするのをイタチが素早く前に立ち、制す。

「落ち着けサスケ!術者を殺せば穢土転生は解けない。俺に考えがある……奴の言葉に踊らされるな!」

カブトは不気味に笑った。

「さすが、イタチくん。冷静だね……そんな君にとっておきの話をしようか」

イタチの瞳が鋭く光る。

カブトはゆっくりと指を立て、わざとらしく話し始めた。

「あ、そうだ……その前に言い忘れてたよ。君たちがここで僕と戯れている間、僕の"最高傑作"がミズノを狙っているはずだよ」

「………」

「彼女を狙うのは……誰だと思う?」

カブトはイタチを見つめながらゆっくりと告げた。

「うちはマダラさ。“本物”のね」

サスケが眉間に皺を寄せながら問う。

「本物の……マダラだと?どういうことだ」

「穢土転生で蘇らせた、真のうちはマダラ。トビ……彼はマダラの名を借りた偽物。本物のマダラは戦場でミズノを必ず見つけるはずだよ。彼女の、柱間とよく似たチャクラを感知してね。そして“必ず興味を持つ”」

カブトは笑みを深めた。

「柱間の木遁を受け継ぎ、そして万華鏡写輪眼を持っている。それを彼が見逃すと思う? 君たちがここで遊んでいる間に、彼女はマダラの手に落ちるかもね」

イタチの拳が強く握られる。

サスケは歯を食いしばりカブトを睨みつけていた。

カブトは舌なめずりするように囁く。

「そうそう、さっきのとっておきの話だけど……。
イタチ君、君の身体の行方についてだよ。
トビが戦いの後に回収したみたいだけど、不思議なことに消えてしまったらしい……」

イタチは表情を変えなかった。しかしカブトは恍惚とした眼差しをイタチに注ぐ。

「不思議だよね?君の眼を取り出した後、しばらくして跡形もなく消滅していた。でも、僕の調べによると……木遁のある術を使えばそれも可能なんだよ。これはトビも知らない極秘情報だ」

イタチの呼吸が一拍遅れた。彼は胸の奥に灯った一つの可能性を見出す。

サスケは苛立ちを隠せず声を荒げた。

「何が言いたい!!」

カブトはにやけた口元を隠さない。

「彼女は……君たちの最後の戦いの場に、居合わせていたのかもしれないってことだよ……」

その瞬間、イタチはゆっくりと目を伏せ、サスケは目を見開いた。

「彼女は、君たちの戦いが何を意味するのか全て知っていた。
だからイタチ君の眼を残した。でも、イタチ君の身体だけは渡したくなかったんだろうね……。ミズノも何か策があるのか……どちらにしろ、彼女は守ったんだ。家族と一族を殺した、憎むべき君の身体と、サスケ君に対する想いをね」

サスケの眉がぴくりと動く。イタチは硬く冷たい声で問う。

「お前はミズノの何を知っている……」

カブトは肩をすくめた。

「さあ? ただ、君たち二人が思っているより……ミズノはずっと深く君たちと関わっていたということさ」

イタチの胸奥が疼く。その横で、サスケの眼差しが暗く揺れた。

洞窟の空気がますます張り詰めていく。

カブトはその空気を楽しむように、ゆっくりと続けた。

「健気だよね……君たち兄弟が知らないところでミズノは一人で君たちを守る為に動いていたんだから」

カブトは両手を広げる。

「だから救ってあげないとね。あれは僕の真理を解き明かす為の新しい糧となる」

イタチが静かに口を開いた。

「これ以上、ミズノを巻き込むな」

その声は静かだが、どこまでも深く鋭かった。

「ふふ……さあ、どうする?穢土転生を止めるか、それともミズノを救いに行くか。
でも……どちらを選んでも、結局里に消される。君たちは助けられない。サスケ君は犯罪者として追われる身、イタチ君はもうこの世にはいない。君たちには何もできない……」

カブトの笑い声が、洞窟に響き渡った。

サスケが再び刀を抜きかける。

「待て、サスケ」

イタチがサスケの腕を掴む。その手には今まで感じたことのない強さを感じた。

イタチは静かに、力強く語りかける。

「お前を闇に向かわせたのも……ミズノが狙われる原因を作ったのも……全て俺だ」

彼の声には、深い自責が滲んでいた。

「そして、確かに俺は死人だ。……だが、何もできないと決まったわけではない」

サスケの肩が僅かに動く。イタチの目がサスケを捉えた。

「サスケ。ミズノは俺たちが思っているより……ずっと強い。ミズノを信じろ」

イタチはカブトへ向き直る。

「カブト……お前の計画の誤算は、この俺の存在だ」

イタチの瞳にゆっくりと万華鏡が灯り、力強い闘志が宿っていた。

「いいね。君たちに何ができるのか……見せてもらおうか」

イタチとサスケは無言で構える。

「……行くぞ、サスケ。俺から離れるな」

「ああ……」


二人の赤い眼には、同じ想いが灯っていた。




──同じ頃、離れた戦場でミズノは駆け回っていた。

傷ついた者を癒し、一人でも多くの命を眼に焼き付けるために。



彼女はまだ気づいていない。


自分を追う”本物”の存在に──
 
 

 
後書き
ここまで読んでくださりありがとうございました!

今回色々悩みましたが、「書きたいシーンを書こう」と、ダイジェストでお送りした場面もあります!
にちゃあカブト…書いてて楽しかったですが、めちゃくちゃ腹たちました笑
感想などいただけるととても嬉しいです。 
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